Ⅳ 教育課程の評価

 

1. 教育課程の評価はなぜ必要か

 それぞれの学校においては,それぞれの教育課程が作られ,それに基いて教育が行われている。この教育課程は,絶えず,教育課程構成の原理や実際の指導にかんがみて,それが適切であったかどうかが評価されなければならない。評価といえば,学習成果の評価のみを考えやすいが,教育は,そのあらゆる部面にわたって絶えず評価される必要がある。教育課程を評価することによって,われわれは,一つには,その教育課程の目ざしている教育目標が,どの程度に実現されることができるかどうかを知ることができる。また二つには,教育課程の改善と再構成の仕事の資料を得ることかできる。

 教育課程は,このように,それを絶えず評価することによって,常に改善されることになる。したがって教育課程の評価と教育課程の改善とは連続した一つの仕事であってこれを切り離して考えることはできない。この意味において,教育課程の評価は,教育課程の計画,その展開とともに,児童・生徒の学習を効果的に進めていく上に欠くことのできない仕事である。

 

2. 教育課程の評価は誰が行なうか

 教育課程を計画し,その展開について責任をもつすべての人々は,たてられた計画が,どのように実際に行われたか,どのような効果をあげたかについて,絶えず関心をもっているはずである。したがって,教育課程の,評価は,直接にその計画に参加した人々の責任において行われなければならない。

 しかし,教育課程を実際に展開していくのは,ひとりひとりの教師と児童・生徒とである。本来,教育課程の計画や展開について,示唆を与えている学習指導要領や,その他の文書は,あくまで,実施のための手引書であって,それをどのように生かしていくかは,教育を実践する教師のひとりひとりの責任にかかっている。その意味で,みずから実施した活動について,絶えずあらゆる機会においてそれを検討し,評価し,これに改善を加えていく責任が,とりわけ個々の教師には課せられている。

 しかしながら,教育課程の評価は,きわめて広い範囲にわたってなされなければならないし,また,広い見とおしの上に立って多くの人々の実際の経験や意見をもとにして行われる必要がある。したがって,単に個々の教師の評価のみでなく,多くの教師の協力によって,さらに学校長・指導主事・教育長なども参加して,協力的に行われる必要がある。指導主事や教育長は,その地域の教育課程について責任をもつべきであるから,その評価についても深い関心をもち,有効な評価の方法をくふうして教師に示唆する必要がある。また,教育課程の評価は,専門的知識を必要とする部面があるから,教育課程についての専門家の援助を受けることも必要であろう。

 

3. 評価の着眼点

 教育課程の評価は,それが児童・生徒の望ましい成長発達にとってどの程度寄与することができたかということ,すなわちその有効性に関してなされねばならない。このような評価をする着眼点のいくつかを次に考えてみよう。