第1 目 標
2.貿易において特に必要な,信用を重んじ,公正を尊び,正確・迅速をはかる,態度・習慣を養う。
3.商業に関する各科目の学習によって得られた知識や能力を,総合して学習し,それらをいっそう確実なものにする。
第2 単元の例
2.取引先の信用を調査するには,どのようにするか。
3.輸出・輸入の契約はどのようにして成立し,その取引条件はどのように定められるか。
4.信用状の授受は,どのように行われるか。
5.貨物の船積みと引き取りは,どのように行われるか。
6.保険契約は,どのように結ばれるか。
7.代金は,どのように決済されるか。
第3 学習指導上の要点
1.国際的な取引においては,国内商業と異なった面について,種々の専門的な知識と技能とを必要とする。たとえば,遠距離の海上運送,それに伴う海上保険,通関手続,外国為替などの分野において,特にこの事が要求される。貿易実務科が,この要求に応じる科目であることは,目標1に示されたとおりである。
2.貿易の実務について学習する間に,世界の経済情勢についての知識を得たり,さらに,わが国の将来の発展は,貿易の振興のいかんにかかっていることを認識することがたいせつである。貿易の振興のためには,信用を重んじ,正確を尊び,能率的に事務を処理する態度・習慣を養うことが,根本要件であって,この事が目標2に掲げられた趣旨である。
3.この科目は,商業経済を始めとし,簿記会計・商業計算・商業外国語・商品・文書実務・タイプライティングなどの諸科目の学習を基として,それらを総合して学習するものである。それらの諸科目に分化された学習が前提となり,その立体的な応用の面が,貿易実務科であると言うことができる。この事が,目標3の示す意味である。
4.上記の理由によって,この科目は,関係諸科目の学習がなされた後で,それらの運用,実践として,高学年において学習されることが適当であろう。
5.民間貿易が再開されて以来,その実務は,いろいろな変遷をたどって来た。管理貿易の下に,煩雑な手続きを必要とした時代から,自由貿易に復帰して,国際市場において自由競争を行うようになった。このような問題については,商業経済科において学習することとして,この科目においては,もっぱら自由貿易による実務を中心として学習することが適当であろう。単元の配列についても,この前提に従って考慮し,自由貿易の実務を,一連の流れに従ってはあくすることが,学習上の効果を多くするであろう。
6.上記の単元の例の中で,単元3はこの科目の中心となるものであるからここに相当多くの時間を配当する必要があろう。契約の成立に関連して,外国電報についても学習する必要があるであろう。又,単元5においては,通関手続についても,研究しなければならないであろう。
7.この科目が国際取引を対象とするのに対して,商業実践科においては,国内取引を対象とする。この点において,この二つの科目は異なるけれども,基礎的な科目の学習を総合して,実務を中心として,学習する点においては,両者共通の性格を持っている。したがって,上記のほか,一般的な指導上の注意については,商業実践科の章を参照することが望ましい。
この科目の学習についての,準備と活動の例は,次のとおりである。
1.教師の準備と活動
(2) 見学計画を立て,その予備調査をして,生徒の自発的活動を援助する。
(3) 校外実習の計画を立て,必要なあっせんをする。また,実地について指導する。
(4) 資料を収集し,書式を整備する。
(5) 必要に応じて生徒が自分自身で,関係諸科目の学習を整理できるように指導する。
(6) 文書の作成・保管・整理について指導する。
(7) 取引の運び方・交渉のしかたについて指導する。
(8) いろいろな帳簿や証ひょう書類の記入法について指導し,随時に,または,定期的に,検査する。
(9) 見学や校外実習の結果について検討し,それをその後の学習に役だつようにくふうする。
(10) その他,商業実践科に準ずる。
(2) 自発的に見学先を調査し選定したり,交渉したりする。
(3) 資料を収集し,整理する。
(4) 調査した資料を参考として取引例を設け,それに従って文書を作成する。この場合,タイプライティングを利用することが望ましい。
(5) 発信・受信文書や記録簿の保管・整理を行う。そのために必要な器具を整理して,利用する。
(6) 商工人名録(Directory)などを利用する。
(7) 帳簿・伝票・証ひょう書類の記入を行う。
(8) 荷造り,荷印など,包装について調べ,実地に行ってみる。
(9) 貿易関係法規を,取引の進行につれて,調べる。
(10) 貿易業者と銀行・運送・保険・倉庫の各会社との間で取りかわされた実際の文書について研究する。
(11) 見学を行い,その結果について,意見を発表し,討論する。
(12) 休暇を利用して,校外実習を行う。
(13) その他,商業実践科に準ずる。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 取引先を選ぶには,どのようにするか。
2.目 標
(2) 取引先の選定に必要な,各種の方法・諸手続についての知識およびそれに関連する商業活動の実務についての技能を養う。
(3) 外国貿易が国内商業に比較して,信用と公正とを特に必要とすることを認識して,取引先の選定にあたって,これを実行する態度,習慣を養う。
(4) 取引先の開拓にあたっては,遠距離にある相手がたをじゅうぶんに動かすに足りるだけの,積極的な活動力を養う。
(2) 各種の資料によって取引先を選定する。 4〃
(3) 取引勧誘状を作成し,発送する。 4〃
(4) 取引勧誘状を批判し,検討する。 1〃
(2) 商工会議所やその他の貿易振興機関を尋ねて,引合(Inquily)の有無や見込のありそうな仕向地を調べておく。
(3) 商工人名録などを用意する。
(4) 貿易関係の外国新聞雑誌の市況報告や広告などのような,取引先の選定に役だつ資料をそろえておく。
(5) 取引勧誘状(Circular)の見本を用意する。これは商業英語科第2部を参考として役だてることができる。
(6) 外国郵便,特に航空郵便について調べておく。
(2) 商工会議所などの貿易振興機関を尋ねて,どのような適当な通信先があるかを調べる。また,世界各地のおもな貿易の概要を知るため,商工人名録の引き方を練習する。
(3) 貿易関係の外国新聞雑誌の市況報告や広告などを参考として,取引勧誘状のあて先を定める。
(4) 取引勧誘状を作成し,カタログ・定価表・見本などを添えて発送する生徒相互に,発信・受信を分担し,また,立場を替えて行うことが効果を多くするであろう。
(5) 発信書類はすべて写しを作り,これを整理・保管する。
(6) 取引勧誘は,1回で成功することはまれであるから,書状の内容を変えて,相手がたを動かすまで努力する(follow up)ことがたいせつである。このため,勧誘状を数回にわたり,くり返して作成し発送する。
(7) 生徒相互で,勧誘状の批判・検討を行い,内容の正確性・信頼性および積極性について討議する。
(2) 商品科との関連 貿易商品の特質や産業事情を理解しておくことは,取引先の選定にあたって,欠くことのできない要件である。
(3) 商業外国語科との関連 商業外国語の中で,特に商業英語は,貿易の大部分が英語を通じて行われている現在において,貿易実務科との関連がきわめて密接であることは言うまでもない。特に,商業英語科第2部の「商業上の手紙はどのような要素から組み立てられ,また,どのような形式に分けられるか」の単元,および「取引を始めるまでには,どのような文書が交わされるか」の単元は,貿易実務科のこの単元の学習の基礎となるものである。また外国の新聞・雑誌や市況報告・広告などの調査については,商業英語科第3部の「英字新聞の経済記事はどのように読むか,また,英文市況報告はどのように作るか」の単元,および「英字新聞・雑誌の広告については,どのような知識が必要であるか」の単元の学習が,同様に,大いに役立つであろう。
(4) タイプライティング科との関連 取引勧誘状を始めとして,貿易業務に用いられる文書の作成には,タイプライティングによることがきわめて望ましいことである。
(2) 英字新聞や英文雑誌の市況報告などが,どの程度に読みこなせるかを選択法や真偽法などによって見る。
(3) 新しい取引先を開拓するまでの順序を理解したかどうかを,図解法などによって見る。
(4) 作成した取引勧誘状に基いて品等法などによって,正確さ・信頼性・積極性を見る。
(5) 練習文書の整理能力を,記述尺度法などによって見る。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
貿易実務誌 浜 口 源 蔵 同 文 館
貿易実務入門 〃 〃
貿易慣習の研究 上 坂 酉 三 千 倉 書 房
外国貿易論 〃 東 洋 書 房
貿易実務 〃 泰 文 社
貿易経営実務 〃 東 洋 出 版 社
海上売買論 〃 泰 文 社
外国貿易の手続き 〃 文 雅 堂
貿易取引条件の研究 〃 泰 文 社
民間貿易の実務 古 田 英 雄 ダイヤモンド社
貿易業務論 中 井 省 三 宝 文 館
貿易の基礎知識 日本貿易会 泉 文 堂
輸出入の新方式 外国為替管理委員会 商 工 館
実践貿易の実務 桐 本 陸 良 ダイヤモンド社
輓近外国貿易実践 栗 原 一 平 宝 文 館
最新外国貿易実践 加 藤 操 七 星 社
各国輸入関係手続要覧 商工省貿易局 内外商工時報発行所
海上運送実務 牧 野 幾久男 巌 松 堂
船荷証券の研究 矢 野 剛 文 雅 堂
海上保険実務誌 坂 本 毅 〃
海上保険綱要 藤 本 幸太郎 清 水 書 院
共同海損論 〃 〃
海上危険論 加 藤 由 作 巌 松 堂
海上損害論 〃 〃
各国領事輸出査証手続 名古屋貿易斡旋所 同 左
各国原産地標記法 柴 田 英 吉 柴田貿易事務所
関税論 小 林 行 昌 巌 松 堂
関税及税関 綿 貫 音次郎 〃
商業信用状論 伊 沢 幸 平 有 斐 閣
外国為替の基礎知識 東京銀行調査部 実業の日本社
最新外国為替実務誌 大 槻 為 八 同 文 館
外国為替(理論と実務) 小 林 行 昌 秦 文 社
海商法 田 中 説 二 千 倉 書 房
海商上の諸問題 〃 有 斐 閣
海商法研究 小町谷 操 三 岩 波 書 店
同本貿易経済年鑑 通 産 省 貿易資科出版社