第6章 統計調査

 第1 目 標

 

 第2 単元の例

 

 第3 学習指導上の要点

 1.統計調査科は,統計の作り方や見方についての知識と技能とを習得して,これを諸種の調査に応用する能力を養い,統計的方法による実態調査を習慣づけることを目標としている。各種の統計の中で,経済統計や,さらに広く一般の社会統計については,これを作ることは,高等学校の生徒として,困難であるから,もっぱら見ることに中心がおかれるであろう。しかし,経営統計については,見方とともに,作り方も学習することができるであろう。

 正確な測定が自然観察の基礎であるように,正確な統計が社会観察の土台となること,したがって,社会現象と統計との関係は,自然現象と実験との関係に相当するもので,社会現象の実態はこれによってはじめて,はあくされるものであるということができる。

 2.この科目の学習にあたっては,商業経済や商品などの科目や,社会科や数学科などの教科において,生徒がすでに取り扱った種々の統計を資料として出発することがよいであろう。しかし,それらの資料は,この科目の目標に添うように整理され,適当なものが選ばれなければならない。この科目としては,それらの資料に共通する統計の基礎的知識が,明確に学習されることが必要である。数学科において,一般数学または解析1が必修されているのが普通であるから,この科目の学習にあたっては,これらの科目で学習されることをじゅうぶんに利用するのが当然である。もし,解析2を学習している生徒の場合には,「統計と確率」の部分は,特に密接な関連を保つようにしなければならない。

 3.以上のように,この科目の学習には,経済や経営,あるいは数学についての学習がなされていることを前提とするのが適当であるから,高学年において学習することが普通となるであろう。しかし,高学年において学習する場合でも,統計学の理論的方面に深入りすることを避けて,見方・作り方の実務的な方面を主眼とすることが望ましい。この場合,統計調査の学習を,従来のように,集団を構成している個体を数え上げる,いわゆる大量観察の手続のみに限定することなく,さらに,資料の整理や図示の方法を研究したり度数分布や,時間的変化や相関関係を調べることなどに発展するのも,望ましいことである。

 4.統計の作り方の単元においては,統計の範囲・単位・標識・調査方法について,概念を明確にし,棒グラフ・折線グラフ・扇形グラフなどの図示法について習得し,学校の中での各種の統計や,近隣の交通量の統計などを,実際に調査して,作成してみるがよい。

 統計の見方の単元においては,各種の商業統計・金融統計の見方や,賃金・物価・生計費などの指数について調べたり,それらの情勢の見方や,移動平均の方法などについて研究するがよい。作り方・見方ともに,大量観察の方法に限定しないで,小標本理論の方法について研究し,その方法の大綱を,たとえば,消費者価格調査(c・p・s)について調べることが適当であろう。また,相関表や相関図表について研究し,学力の進度によっては,相関係数まで取り扱うこともよいであろう。

 経営統計の単元においては,以上で習得した知識と技能とを応用して,経営統計を作ったり,会社などで作成された経営統計を見て,それを理解したりするがよい。これを作成するのに必要な資料は,主として会計帳簿から得られるわけであるから,簿記会計科との連絡を,じゅうぶんに考慮しなければならない。

 最後の単元では,統計が発達してきた歴史を調べて,統計の本質を知るための助けとし,また,大量観察の方法と小標本理論の方法との関係についても理解する。また,統計法規を調べて,調査したり利用したりする場合に注意しなければならないことを研究する。さらに,統計とわれわれの生活との関係についても理解するのがよいであろう。

 以上の各単元は,例として示したものにすぎないから,実際の学習指導にあたっては,必ずしもこの順序にとらわれることなく,適宜に教材を配列し,適宜の内容について指導することが望ましい。

 この科目の学習についての,準備と活動との例を示せば,次のとおりである。

 1.教師の準備と活動

 2.生徒の準備と活動  

 第4 学習指導計画の一例

 1.単元名  統計はどのように作るか。

 2.目 標

 3.教材区分と時間配当  4.準備と資料  5.学習活動  6.他の教科・科目との関連  7.評 価  

 第5 参 考 書

    書    名         著    者       発 行 所

   統計汎論           森 田 優 三     日 本 評 論 社

   統計概論              〃        産業図書株式会社

   統計学要論          寺 尾 琢 磨     慶 応 出 版 社

   統計学入門             〃        広  文  社

   統計学入門          近 藤 俊 雄     巌  松  堂

   統計学            藤 本 幸太郎     千 倉 書 房

   統計学            米 沢 治 文     河 出 書 房

   実用統計講話         岡 崎 文 規     同  友  社

   統計図書の画き方       白 崎 亨 一     国  勢  社

   統計の作り方見方       井 上 謙 二     ダイヤモンド社

   統計の作り方使い方      森   数 樹     統 計 の 友 社

   統計図表の画き方見方使方      〃           〃

   統計法と統計制度          〃           〃

   経済学研究者のための数学入門 久 武 雅 夫     春  秋  社

   経済学研究のための基礎数学  寺 尾 琢 磨     慶 応 出 版 社

   経済理論と統計叢書      諸     氏     実業の日本社

   経済観測の知識        大 来 佐武郎     ダイヤモンド社

   経営統計           井 上 謙 二        〃

   経済統計論          鈴 木 諒 一     泉  文  社

   工業経済統計         米 沢 治 文     第 一 出 版

   日本国勢図会         白 崎 亨 一     国  勢  社

   日本統計年鑑         統計委員会       毎 日 新 聞 社

   経済統計季報         経済安定本部      白  鴎  社

   財政経済統計年報       大蔵省・日本銀行    大蔵省財務協会

   経済統計月報         国民経済研究会     日本経済新聞社

   統計(雑誌)         日本統計協会      日 本 評 論 社

   財政金融統計月報       大蔵省編集       大蔵省財務協会

   東洋経済統計月報       東洋経済新報      東洋経済新報社

   官  報

   各省の月報・公報・時報など

   各種年鑑