第1 目 標
2.社会現象特に経済現象を,統計によって正しくはあくする能力と,その態度・習慣とを養う。
3.統計を利用して,経営を合理的に企画し執行する能力と,その態度・習慣とを養う。
第2 単元の例
2.統計はどのように見るか。
3.経営統計はどのように作り,どのように見るか。
4.統計は,われわれの生活に,どのように役だつか。
第3 学習指導上の要点
1.統計調査科は,統計の作り方や見方についての知識と技能とを習得して,これを諸種の調査に応用する能力を養い,統計的方法による実態調査を習慣づけることを目標としている。各種の統計の中で,経済統計や,さらに広く一般の社会統計については,これを作ることは,高等学校の生徒として,困難であるから,もっぱら見ることに中心がおかれるであろう。しかし,経営統計については,見方とともに,作り方も学習することができるであろう。
正確な測定が自然観察の基礎であるように,正確な統計が社会観察の土台となること,したがって,社会現象と統計との関係は,自然現象と実験との関係に相当するもので,社会現象の実態はこれによってはじめて,はあくされるものであるということができる。
2.この科目の学習にあたっては,商業経済や商品などの科目や,社会科や数学科などの教科において,生徒がすでに取り扱った種々の統計を資料として出発することがよいであろう。しかし,それらの資料は,この科目の目標に添うように整理され,適当なものが選ばれなければならない。この科目としては,それらの資料に共通する統計の基礎的知識が,明確に学習されることが必要である。数学科において,一般数学または解析1が必修されているのが普通であるから,この科目の学習にあたっては,これらの科目で学習されることをじゅうぶんに利用するのが当然である。もし,解析2を学習している生徒の場合には,「統計と確率」の部分は,特に密接な関連を保つようにしなければならない。
3.以上のように,この科目の学習には,経済や経営,あるいは数学についての学習がなされていることを前提とするのが適当であるから,高学年において学習することが普通となるであろう。しかし,高学年において学習する場合でも,統計学の理論的方面に深入りすることを避けて,見方・作り方の実務的な方面を主眼とすることが望ましい。この場合,統計調査の学習を,従来のように,集団を構成している個体を数え上げる,いわゆる大量観察の手続のみに限定することなく,さらに,資料の整理や図示の方法を研究したり度数分布や,時間的変化や相関関係を調べることなどに発展するのも,望ましいことである。
4.統計の作り方の単元においては,統計の範囲・単位・標識・調査方法について,概念を明確にし,棒グラフ・折線グラフ・扇形グラフなどの図示法について習得し,学校の中での各種の統計や,近隣の交通量の統計などを,実際に調査して,作成してみるがよい。
統計の見方の単元においては,各種の商業統計・金融統計の見方や,賃金・物価・生計費などの指数について調べたり,それらの情勢の見方や,移動平均の方法などについて研究するがよい。作り方・見方ともに,大量観察の方法に限定しないで,小標本理論の方法について研究し,その方法の大綱を,たとえば,消費者価格調査(c・p・s)について調べることが適当であろう。また,相関表や相関図表について研究し,学力の進度によっては,相関係数まで取り扱うこともよいであろう。
経営統計の単元においては,以上で習得した知識と技能とを応用して,経営統計を作ったり,会社などで作成された経営統計を見て,それを理解したりするがよい。これを作成するのに必要な資料は,主として会計帳簿から得られるわけであるから,簿記会計科との連絡を,じゅうぶんに考慮しなければならない。
最後の単元では,統計が発達してきた歴史を調べて,統計の本質を知るための助けとし,また,大量観察の方法と小標本理論の方法との関係についても理解する。また,統計法規を調べて,調査したり利用したりする場合に注意しなければならないことを研究する。さらに,統計とわれわれの生活との関係についても理解するのがよいであろう。
以上の各単元は,例として示したものにすぎないから,実際の学習指導にあたっては,必ずしもこの順序にとらわれることなく,適宜に教材を配列し,適宜の内容について指導することが望ましい。
この科目の学習についての,準備と活動との例を示せば,次のとおりである。
1.教師の準備と活動
(2) 1年間の指導計画表を作成する。また,学校を中心とする付近の地域において,学習のために利用できる,いろいろな施設を調査し,それを利用する計画を立てる。
(3) 生徒が見学したり,統計調査を計画し実施したりするのを,指導援助し,その整理についても,必要な援助をする。
(4) 地域社会の要求や,生徒の就職状況からみて,適当な教材を選択し,重点のおき方をくふうする。教材はなるべく新しいものを用いる。そのために,各種の年鑑・統計雑誌・経済雑誌などを準備する。
(5) 学習指導の方法をくふうして,生徒の自発的学習を促進する。たとえば,講義に重点を置きすぎないようにして,調査や統計作成の実務を主眼とし,生徒相互の討論によって学習を進めて行くようにする。また,生徒が,参考書や雑誌を選定したり,図書舘を利用したりすることについて,指導する。
(2) 統計施設について,その設備・機構・資料などを見学する。
(3) 生徒の出席欠席の状態・通学区域別・家庭の状況など,身近い資料について,統計を作ったり,また,簿記で記帳した資料から,統計を作ってみる。
(4) いろいろな社会統計・経済統計・経営統計について,観察し研究する。
(5) 各自で作成した統計表・統計図表や,経済雑誌などに掲載された興味ある統計表・統計図表を写したものを,学校の中で展覧したり,生徒自治会で種々の計画を立てるときに,利用できる場合には,それらの統計の結果を利用したりする。
(6) 統計調査についての報告書や論文を書く。
(7) 各自で研究したことについて,討議し合う。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 統計はどのように作るか。
2.目 標
(2) 作成された統計表によって,平均値・散布度を調べ,その算出法を理解する。
(3) 統計調査を実践することによって統計的研究法を身につけ,それを諸種の調査に応用する能力を養う。
(4) 統計的方法によって,各種の事象の実態をはあくする態度・習慣を養う。
(2) 実際に調査活動を行う。 4〃
(3) 資料を分類整理し,度数分布表を作る。 3〃
(4) 図表を作成し,成果について検討する。 4〃
(5) 平均値を算出する。 3〃
(6) 散布度を算出する。 2〃
(2) 校外において調査を行う場合は,関係のある方面から,必要な了解を得ておく。
(3) 身体検査表などの身近な資料を用意する。
(4) 方眼紙・定規・コンパス・分度器・そろばん・計算尺・数表などを用意する。
(5) 指導用の大型の定規・コンパス・分度器・方眼黒板などを用意する。
(2) グループ別にそれぞれ計画を立て,範囲・単位・標識を決定し,調査票を作る。
(3) グループ別にそれぞれ調査活動を行う。
(4) グループ別に資料の分類整理を行い,度数分布表・図表を作成し,その成果について検討する。
(5) グループ別に度数分布表から算術平均・中央値(中位数)・並み数(最頻(ひん)値)などの平均値を算出する。中央値の算出に関係して,累積度数図表を考えてみる。また,実験公式Mo=Ma−3(Ma−Me)の関係についても研究する。これらの計算を行うときは,まず適当な計画に基いて表を作成し,順序よく整理しながら,計算を進めて行くようにする。
(6) グループ別に度数分布表から標準偏差・四分偏差などの散布度を算出する。自乗や平方根の計算には,数表や計算尺を利用する。正常分布においては,大体Q=2/3σの関係があることを研究する。
(7) クラス全体で各グループの研究発表を行い,互に討議する。
(8) 作成した統計表・統計図表を学校の中で展示する。
(2) 統計の計算には,数学科の知識・能力が基礎となるものであり,また,珠算や計算尺を利用すれば,大いに便利である。
(2) 資料の分類整理や度数分布表・図表の作成について,どの程度の能力を身につけたか。
(3) 平均値や散布度についての理解の程度と,その算出の能力はどの程度に養われたか。
(4) 統計的方法によって実態調査を行う態度・習慣はどの程度に養われたか。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
統計汎論 森 田 優 三 日 本 評 論 社
統計概論 〃 産業図書株式会社
統計学要論 寺 尾 琢 磨 慶 応 出 版 社
統計学入門 〃 広 文 社
統計学入門 近 藤 俊 雄 巌 松 堂
統計学 藤 本 幸太郎 千 倉 書 房
統計学 米 沢 治 文 河 出 書 房
実用統計講話 岡 崎 文 規 同 友 社
統計図書の画き方 白 崎 亨 一 国 勢 社
統計の作り方見方 井 上 謙 二 ダイヤモンド社
統計の作り方使い方 森 数 樹 統 計 の 友 社
統計図表の画き方見方使方 〃 〃
統計法と統計制度 〃 〃
経済学研究者のための数学入門 久 武 雅 夫 春 秋 社
経済学研究のための基礎数学 寺 尾 琢 磨 慶 応 出 版 社
経済理論と統計叢書 諸 氏 実業の日本社
経済観測の知識 大 来 佐武郎 ダイヤモンド社
経営統計 井 上 謙 二 〃
経済統計論 鈴 木 諒 一 泉 文 社
工業経済統計 米 沢 治 文 第 一 出 版
日本国勢図会 白 崎 亨 一 国 勢 社
日本統計年鑑 統計委員会 毎 日 新 聞 社
経済統計季報 経済安定本部 白 鴎 社
財政経済統計年報 大蔵省・日本銀行 大蔵省財務協会
経済統計月報 国民経済研究会 日本経済新聞社
統計(雑誌) 日本統計協会 日 本 評 論 社
財政金融統計月報 大蔵省編集 大蔵省財務協会
東洋経済統計月報 東洋経済新報 東洋経済新報社
官 報
各省の月報・公報・時報など
各種年鑑