第1 目 標
2.速記を用いて,迅速・正確に文書を作成し,事務能率を向上する能力と習慣とを養う。
第2 単元の例
2.速記の技能はどのようにして向上されるか。
3.速記は文書事務にどのように利用されるか。
第3 学習指導上の要点
1.高等学校において学習される速記の種類は,日本語の速記を原則とするのが普通であろう。日本語の速記は,漢字や,かな文字の字画を極度に短縮し簡略にして,談話・講演・講義などを,迅速に筆記して,普通の文字で筆記する労力をいちじるしく軽減するとともに,それらの内容を,正確にそのままに筆記することができる点において,とうてい普通の筆記では及ばない長所を持っている。したがって,速記を事務処理に利用すれば,能率増進に役だつことは,非常に大きいであろう。事務に従事する者にとっては,速記の技能を身につけて,これを実務に利用して,能率を高めて行く習慣を養っておくことは,きわめてたいせつである。
2.しかしながら,速記の練習は,変化に乏しく,地味な努力を不断に継続して行かなければ,上達が困難である。そのため,中途であきやすいが,この点を克服して,しだいに技能が上達していけば,おのずから興味も湧いてくるし,学習の価値を自覚するようになってくるであろう。すなわち,着実にしんぼう強く練習を重ねることが,速記上達の第一の秘けつであるから,この科目の学習によって,そのような美徳も養われるわけである。けれどもまた,一方において,速記練習の単調を救うために,種々のくふうがなされなければならない。たとえば,なるべく生徒に興味の多い題材を選択して,速記練習を行わせるなど,速記内容について注意する必要がある。
3.速記の進んた段階では,略字を用いたり,あるいは,自分で略字を創造して利用したりするようになるが,早急にこれを用いることはむしろ危険である。あせらないで,基礎的練習を,徹底的に行うことが望ましい。朗読速記ができるようになってからでも,常に,基礎文字や単語の練習をくり返して行う必要がある。
4.速記したものを,普通文字で書き直す練習も,非常にたいせつである。その場合には,作文の能力が相当に要求されるし,また,この反訳の練習によって,作文の能力の向上に役だつことも大きい。
5.学習の順序は,上記の単元の例に示されたように,初歩の段階から,しだいに高度の段階へ進むようにし,どの段階でも,実際に,生徒みずから,速記を反復練習することが,この科目の学習の中心である。
6.速記を文書事務に,どの程度に利用して行くかということは,速記技能の発達の程度・文書事務の繁簡の程度によって異なってくるから,文書実務科の学習に,これを応用する場合には,適宜の程度・方法によって行うように指導することが望ましい。
この科目の学習についての,準備と活動の例を示せば,次のとおりである。
1.教師の準備と活動
(2) 毎時間,用紙を与え,または練習用ノートに速記させて,これを点検し訂正・加筆を行う。
(3) 用紙・筆記具・姿勢について適当なものを示し,その適当である理由を理解させる。
(4) 上達するにつれて,生徒各自の発達程度が異なってくる場合が多いから,じゅうぶんに個別指導を行う。
(5) 生徒相互間で,朗読速記を行わせて,速度の調整や,内容の選択などについて,指導する。
(2) 朗読速記とともに,見取速記を行い,速度を計時して,能力の向上をはかる。
(3) 速記したものを普通文字で書き直して,原文と対照してみる。
(4) 生徒相互間で,朗読速記を行い,互に検討・批判し合う。
(5) 略字の表現を練習し,それを用いて速記する。
(6) 文書事務に速記を応用する。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 速記の基本的技能は,どのようにして身につけるか。
2.目 標 速記の基本的技能を養う。
3.教材区分と時間配当
(1) 基礎文字の書き方。
(2) 単語の書き方。 (3) 簡単な文章の書き方 (4) その反訳のし方。
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14時間 | |
(5) やや長い文章の書き方
(6) その反訳のし方。 |
10時間 |
練習用テキスト,基礎文字表,用紙,鉛筆,万年筆を用意する。
5.学習活動
(2) 基礎文字の書き方を練習する。
(3) 濁音・半濁音・発音の書き表わし方を練習する。
(4) 単語の書き方を練習する。
(5) 簡単な文章の書き方について,読んだり話したりするのを聞いて書いたり,書いてあるものを見ながら書いたりして,練習する。
(6) 自分が速記したものを,必ず,普通文字で書き直してみる。
(7) 長音・よう音・つまる音の書き表わし方を練習する。
(8) 書きにくい文字や単語を,特別に練習して,その困難を軽くする。
(9) 用紙の置き方や,左手の使用法についてくふうする。
(10) 万年筆を用いるときは,どんな万年筆が便利であるかを考えて,その使用法に慣れる。
(11) 長い時間,速記を続ける場合には,どんな執筆法や,どんな姿勢が合理的であるかを考えて,できるだけ疲労を少くするようにくふうする。
(12) やや長い文章を速記する練習を行う。それを普通文字で書き直す。
(2) 文書実務科の学習に,可能な範囲で,速記を応用してみるがよい。
(2) どの程度に速く速記できるようになったかを,時間を計って測定する。
(3) 反訳の正確さと速さとを,練習用紙を検閲したり,計時したりして,測定する。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
カナ速記大講座 岩村式カナ速記協会
早稲田大学式速記講義録 早稲田速記普及会
中根式速記法 中根速記協会
超中根式速記法 京都速記研究所
毛利式日本速記術 東 京 堂
日本速記法抜粋 田 鎖 一 浅 間 書 房
日本速記法詳釈 〃
速記五十年史 日本速記協会
速記方式発達史 武 部 良 明 日 本 書 房