第1 目 標
2.タイプライターの構造と機能とについての知識を習得し,機械をたいせつに取り扱う習慣を養う。
3.タイプライターを用いて,迅速・正確・めいりょうに文書を作成し,事務能率を向上する能力と習慣とを養う。
第2 単元の例
2.タイプライティングの基本的技能は,どのようにして身につけるか。
3.速度や正確さはどのようにして向上されるか。
4.タイプライティングは文書事務にどのように利用されるか。
第3 学習指導上の要点
高等学校において学習されるタイプライティングの種類は,一般に,英文タイプライティングと和文タイプライティングとである。目標および単元の例は両者に共通なものとして示したが,学習指導上の注意については,それぞれ別に考慮する必要がある。
A.英文タイプライティング
1.タイプライターは,文書を整然とめいりょうにしかも能率よく作成するために用いられる文明の利器であって,その効用をじゅうぶんに発揮できるかどうかは,これを使用する者の積極的な学習意欲と,不断の練習とにかかっている。このことは,目標に揚げられた知識・技能・能力・習慣を得るために重要なことである。
2.英文タイプライターの機能をじゅうぶんに発揮するためには,印字の基礎的練習が必要であることはいうまでもないが,また,原稿のまちがったつづりや脱字を発見したり,手書きした難解な原稿を判読して印字する場合には,語学の能力が相当に大きいことが要求される。技術的にみて,印字能力が同等であれば,語い(Vocabulaly)が豊富であるほうがすぐれていることは,もちろんである。したがってタイプライティングの練習とともに,その素地をなすところの英語の力をじゅうぶんに養うようにしなければならない。
3.英文タイプライティングでは,印字鍵(けん)(Keys)の操作法について,触鍵法(Touch Method)と視鍵法(Sight Method)との二つがあり,いずれを用いるかということは,場合によって異なり,一方に決定してしまうには,いろいろ議論のあるところである。しかし,両法の優劣を比較すれば,触鍵法がすぐれていることはいうまでもないことであるから,職業的教養としては,この方法を身につけることが必要である。その上,年齢的にみても,高等学校の生徒としては,この触鍵法の練習に適した発達段階にあるといえるであろう。
4.正確に打つことを第一とし,速度のために確実さを失ってはならない。
5.速度を向上するには,あせらないで,指のむだな運動を省くことによって,自然に速度があがるように練習する。
6.印字の誤りがあった場合は,これを集計し,そのつど,その性質や原因を分析して,自分の印字法の欠点を,自分で発見して行くようにする。このために,練習中は後もどし鍵(Back Spacer)を使ったり,消しゴムを使ったりすることを絶対に避けるのがよい。また練習ずみの用紙は,必ず参考資料として整理保存しておいて,役にたてるようにするのがよい。
7.自分にとって不確実な印字や,誤りやすい印字は,できるだけ多く練習するようにする。練習が進むにつれて出てくる,いわゆる「苦が手」の語は,特に拾い出して,これを表に作り,毎回の練習の初めに,それらをひととおり打ってみてから,予定の練習にはいるようにする。
8.基礎練習は,必ずあらかじめ計画された順序に従って行い,用紙の一隅に,練習した日付と姓名とを記入しておいて,必要に応じて教師に提出できるようにする。
9.左右の指の分担を定め,運指はいつも各指の基準位置(Home key Position)から行い,また,終りはこの位置にもどることを実行するようにする。
10.数字は最上段にあって,運指上もっとも困難であるけれども,商業文書には数字は欠くことのできない重要な要素であるから,よくその印字に慣れておくことが必要である。
11.用紙1枚で打つときは,プラテン(Platen)をいためやすいから,必ず数枚を用いて複写するか,または1,2枚の下敷を(Backing Sheet)を入れるようにする。
12.タイプライターの使用については,責任者を定めておき,練習・清掃・保全に対して責任観念を持つようにし,公共の器物を愛護する精神を徹底させるようにする。
13.タイプライターが文書作成の用具として活用されるためには,商業英語・貿易実務・文書実務・商業実践などの各科目とじゅうぶんに連絡を保つことが必要である。
英文タイプライティングの学習についての準備と活動の例を示せば次のとおりである。
1.教師の準備と活動
b.大小ねじまわし・ピンセットなど。
(3) 生徒の優秀印書の掲示板や,作品の保管棚などを備えつける。
(4) 練習の前後および練習中に,機械を点検し,故障を発見した場合には,簡単な故障ならば,生徒にその原因を調べさせて,修理方法を指導する。特にリボンの繰り出し状態を調べて,その破損を最小限度にとどめるようにする。
(5) 機械各部の取扱方を指導する。
(6) 練習内容と練習順序との予定を示す。
(7) 印字の速度が着実に向上するように指導する。
(8) アルファベットおよび各種記号などの打ち方を指導し,姿勢の悪い点を正しく直させる。
(9) 随時または定期的に,制限時間テストを行い,その結果について評価し,発表する。テストの内容は,正確度と速度とであるが,速度については,常に正確度と伴なうように指導する。
(10) 日常の練習作品を検査する。
(11) 通信文その他の文書について,商業英語や貿易実務などの科目と関連を保って,総合的に指導する。
(2) 正しい姿勢をとるように努めて,正確を第一として,印字練習を行う。
(3) 誤りの原因を考え,自分の欠点を発見して,それを正して行く。
(4) 機械各部の操作に慣れることによって,故障を未然に防ぐようにする。練習中にも機械の取り扱いに常に注意する。もし故障を発見したならば,独断で処理しないで,必ず教師の指導を受ける。
(5) テストを受けて,その結果について検討する。
(6) 練習の結果をまとめて,教師に提出する。
(7) 練習ずみの印字文書を整理して保存する。
(8) 商業英語科や貿易実務科の学習に,英文タイプライティングを利用できるように,練習を行う。
1.タイプライターは,文書を整然とめいりょうにしかも能率よく作成することのできる利器であって,その効用をじゅうぶんに発揮できるかどうかは,これを使用する者の積極酌な学習意欲と,不断の練習とにかかっていることを,常に忘れてはならない。
2.和文タイプライティングの学習には,和文の印書に興味を持ち,敏活であり,しかも,きちょうめんな性格をそなえていることが必要である。また,タイピストは単に機械的に印書すればたりるのではなく,時には原稿の校正や,誤字・脱字の修正をした上で印書しなければならないこともあるから,文字や文章について相当の素養のあることが要求される。
3.印書練習を始める前に,機械の構造や機能とともに,手入れや注油の方法についても指導しておくことが必要である。それによって,練習を始めてから,いつも,機械をたいせつに取り扱う習慣と,その要領とを身につけるのに役だたせる。
4.基礎練習は,必ずあらかじめ計画された順序に従って行い,用紙の一隅に練習した日付と姓名とを書いて,そのつど教師に提出するようにし,教師の検閲を受けてから,次の段階に進むようにする。
5.文書を印字する段階に進んだならば,単に写字を行うだけでなく,文書実務科と同じように,当用漢字の使用,書式・文案の作成,文書の整理などについて練習するがよい。
6.練習に用いる機械は,管理の責任者を定めておいて,たとえ故障の場合でも,他の生徒の管理している機械を使用しないようにする。
和文タイプライティングの学習についての,準備と活動の例。
1.教師の準備と活動
(2) 機械構造解説図を用意する。
(3) 次の用品を備え,各機械ごとに,1組ずつ配布する。
b.大小ねじまわし・ピンセット・活字配列表・活字索引辞典など。
(5) 各練習段階について,印書時間と,できばえの基準を定めておき,それに合格したときに,次の段階に進ませるように指導する。
(6) 姿勢・印字法・用具用紙の整頓について,練習中常に個別的に指導を行う。また,機械の調子を点検し,故障を発見したならば,その修理方注について指導する。
(7) 練習中には,かなり多くの,活字の折れ損が起るであろう。したがって予備活字を,相当多く用意して,補給に応じるようにする。
(2) 常に正しい姿勢をとり,精神を集中し,正確・めいりょう・美麗・字配り・速度の5点を注意しながら,練習を行う。
(3) 教師のテストを受け,その結果について検討する。
(4) 練習作品は,そのつど,教師に提出して,検閲を受ける。検閲を受けないで,または練習段階の順序を飛び越して練習したりしないようにする。
(5) 練習ずみの印字文書は整理して保存する。
(6) 文書実務科や商業実践科の学習に,和文タイプライティングを利用できるように,練習を行う。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 タイプライティングの基本的技能は,どのようにして身につけるか。
ここには,英文タイプライティングの基本的技能のうち,英文タイプライターの第2段(Home Row)の各鍵の使用法についてのみ,一例を掲げる。
2.目 標
(2) 印字は正確を第一とし,しかもリズムに従って,各文字ともすべて均等な濃度で印書する基礎的技能に習熟する。
(3) 印字動作を敏速にして,三重印字の起らないような基礎的技能に習熟する。
(4) 触鍵法(Touch Method)をとる場合には,印書の際に,鍵盤や印書面を見ないで打つ習慣をつける。
(5) 練習が困難であっても,たゆまずに反復して,その困難を克服して行く学習態度と,精密な機械を操作するための,周到な注意力を養う。
(2) fとjおよびその組合せ練習。
(3) gとhおよび既習文字との組合せ練習。
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2時間 | |
(4) dとkおよび既習文字との組合せ練習。
(5) sとlおよび既習文字との組合せ練習。 (6) aと;および既習文字との組合せ練習。 |
6時間 |
(2) 運指指導のために,鍵盤配置図を作り,基準位置を明らかに示したものを用意する。
(3) 姿勢やタイプライターの位置などを示すために,印字の実況の写真・図解などを用意する。
(4) 生徒の優秀印書の掲示板を用意する。
(5) 生徒は練習の前に,あらかじめ機械の清掃,手入れを行い,教師はこれをよく検査する。また,この作業は練習の終りにも必ず行う。
(2) タイプライターと印字者との場所的な関係と,机上のタイプライターの正しい位置とについて考える。
(1)および(2)については,生徒の中から,良い例・悪い例を教師が取り上げて示し,その良否や判定の理由を生徒各自で考えさせると,効果的であろう。
(3) まず両手をひざの上に置き,次に鍵盤を見ないで各指がタイプライター上の基準位置へ,敏速に,正しく,配置できるように練習を反復する。なお,英文タイプライターは,和文タイプライターと異なり,左右の各指全部を使用する理由について考えてみて,そこに英文タイプライターの特色があることを理解する。
(4) 基準位置は,すべての運指の出発点であり,また,帰着点であって,この基準位置は,英文タイプライティングにおいてきわめてたいせつな意味を持っていることを理解する。特にgとhの鍵と,それらの基準位置であるfとjの鍵との間の,人さし指の動かし方をじゅうぶんに練習して,このことをよく理解する。
(5) 各指に与えられた基準位置を,印字のつど考えることなく,いわゆる「指がおぼえている」ように,練習を反復する。
(6) 第2段の各鍵に対する指頭の接触は,鍵の表面に対して,ほとんど真上から直角に行うように練習する。
(7) ある印字と次の印字との間の時間的間隔は,場合によって異なるけれども,一つの印字の動作は,いつも敏速に行わなければならない。そうでないと,印字が二重になるおそれがあることに気を付ける。教師は実例によって,これを示すがよい。
(8) Pica Typeo 場合は1行60字詰(60—Space Writing Lines)をだいたいの標準とし,1語の練習は3行から10行ぐらいにとどめ,印字のむずかしいものは,一時に多く練習しないで,数回に分けて練習する。
(9) 印字している以外の指頭は,できるだけ基準位置から離れないようにし,各指をできるだけ単独に動かせるように練習する。運指のときには,なるべく,腕や手首を動かさないようにする。
(10) 各指の力がなるべく均等に働くようにし,特に薬指と小指は,比較的に力が弱く,動作が不確実であるから,練習を多くして,力が平均するように努める。
(11) 印字のために,鍵面からあまり離れた位置から指をおろすことは,誤りが多くなるばかりでなく,むだな運動のために,速度の向上を妨げるから,なるべく鍵に近いところから打ち出すように練習する。
(12) 少くとも1行を打ち終るまでは,鍵面や印書面を見ないようにし,打ち終ってから,誤りや,不完全なものを検討し,自分の指の癖を,自分で発見して,それを直すように努力する。
(13) 打ち終った行の中に,誤りがないという自信がついたならば,3行ないし5行を,連続して印字する。このときには,Line-Space Lever の機能を確実に働かせる練習を,あわせて行う。
(14) 毎回の練習の初めには,必ず前に練習した文字,あるいは特にむずかしい文字をひととおりくり返して打ち,その時間の練習の準備運動とする。
(2) 商業通信文の作成には,英文タイプライターは欠くことのできない要具である。したがって,商業英語科や貿易実務科の学習に,これを役立てることが必要である。
(2) 正しいリズムに従って印書できるかどうかを,実地練習によって見る。
(3) 各指の力の均斉(せい)度・各印字の濃度を,練習作品によって見る。
(4) 二重印字の有無・印字動作の適否を,練習作品によって見る。
(5) 触鍵法による場合は,鍵盤や印書面を見ないで打つ習慣が,どの程度に養われたかを,実地練習および練習作品によって見る。
(6) うまずに練習を反復する態度を,実地練習および練習作品によって見る。
(7) 機械の取扱方・故障の発見修理に対する,研究的態度によって学習の熱意と注意力の程度を見る。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
英文タイプライターの知識と練習加 茂 正 一 堀 書 店
英文タイプ理論と練習 束 田 延 尾 語 学 出 版 社
TYPE WRITER 教則本 黒 沢 敬 一 愛 育 社
最新英文タイプ教本 竹 内 甚 一 実 業 教 科 書
タイプライター基準教 加 茂 正 一 研 究 社
最新和文タイプ教本 竹 内 甚 一 実 業 教 科 書