第1 目 標
2.計算事務を処理するのに必要な,算法の知識ならびに商業上の法規・慣習・制度などの知識を習得する。
3.事務を計数的に明確に処理し,合理的に遂行する態度・習慣を養う。
第2 単元の例
2.珠算によって計算を簡便にするには,どのような方法がとられるか。
3.珠算による諸等数の計算はどのように行うか。
4.現金・預金・費用・代価などの計算はどのように行うか。
5.利息・貸借の決済などの計算はどのように行うか。
6.経営に必要な各種の計算はどのように行うか。
第3 学習指導上の要点
1.珠算および商業計算科は,珠算による計算能力を養い,取引を迅速に処理する計算方式の知識や,それに付随する取引慣習などの知識を習得し,計数観念を総合的にはあくして,計数に関する事務の処理能力を増進することを目標とする。
現代の経済社会においては,その取り扱う計数は非常に膨大なものとなっており,また,各種の取引に適用される率表なども,変動する経済界の状態に応じてひんぱんに変更されて行くありさまであるから,学習に際しては,その動向に常に注意していなければならない。計数的事務の処理能力を育成するためには,経済社会の必要とする計算技能と,計算に関する経営的・経済的な知識との,二つの要素が必要である。経営事務を処理する上に,この技能と知識とは等しく重要なものであって,両者が融合して活用されることによって,はじめて企業の経営や産業経済の実情を計数的に理解し,また,計数的に処理する能力・態度・習慣が養われることになる。したがって,珠算をただ単なる計算技術と考え,商業計算を単に商取引の計算方式の知識と考えて,両者を分離して取り扱うことは,学習の価値を減少させることになるであろう。この科目において学習され練磨された技能と知識とを,どのように融合して活用するかによって,将来企業の経営に従事する場合に,大きな影響を生じることを認識しなければならない。
そこで次の二つのことは,特に注意しなければならないことである。
(2) 簿記その他の関係科目で行う計算は,原則としてすべて珠算によって処理すること。
3.単元の例についてその内容を示せば,次のとおりである。
単元 1.珠算による計算はどのように行うか。
(2) 検算法の種類,順序転換法。
(3) 法1位,法2位,法3位の乗法,検算法,定位法,端数処理法。
(4) 法1位,法2位,法3位の除法,検算法,定位法,端数処理法。
(5) 珠算式暗算法,写像の練習,加法,減法,乗法,除法。
(2) 過大商除法の利用,商1けたを利用する場合,価が一つ小さくなった商につらなる最下位の9を除いた全部の9を利用する場合,最下位の9まで利用する場合。
(3) 簡便算法の利用,加乗法,減乗法,加除法,減除法。
(2) 加法,減法,乗法,除法,定位法。
(3) 諸等数の換算法。
(2) 手荷物・小荷物・貨物の運賃,保管科,保険科,手数科,売買諸費用,商品代価,売上高,売買数量などの計算。
(2) 利息の計算,割引料の計算,日歩年利比較表の作成,積数法,預金利子の計算。
(3) 複利の計算,複利表の利用,端数期の処理法。
(4) 取引先との貸借決済の計算,交互計算,利付交互計算,当座勘定の計算。
(2) 減価償却の計算,定額法,定率法,減価償却率表の利用。
(3) 税金の計算,所得税,法人税,事業税などの計算。
(4) 企業の損益の計算,損益処分の計算,組合・会社特に株式会社の場合。
(5) 投資の計算,株券公債社債の売買,利率,配当率,利廻りの計算。
(6) 外国為替の計算,受取勘定相場,支払勘定相場,為替相場の換算。
1.教師の準備と活動
(2) 1年間の指導計画表を作る。
(3) 生徒の自発的な学習を促進する方法,たとえば,珠算については,珠算能力検定試験などの受験によって,学習意欲を刺激したり,商業計算については,株式相場や為替相場の変動の図表を作って計数利用による図表観察から生じる興味を喚起したりする方法をくふうする。
(4) 産業・経済に関する各種の数表・図表を作ったり,率表などの資科を集め,整理しておく。
(5) 各種の業務について,その取引慣習や規約などを調査する。
(6) 生徒のクラブ活動としての学習を指導する。
(2) グループを作って,互に読上算を練習したり,見取算の速度を計時して,能力を向上させて行く。
(3) 能力検定試験の合格などの一定の目標を立てて,計画的に練習を行う。
(4) 商業計算・簿記会計などの計算は,原則としてすべて珠算で行う。
(5) 新聞・雑誌の経済記事に注意して,その中に表われる計数について研究する。
(6) 運賃・保険料などの科率表や,金利・相場について調査し研究する。
(7) 各種の資料を集め,なるべくそれに基いて図表を作り,数を活用する習慣をつけて行く。
(8) 調査研究の結果を,クラスで発表したり,討議したりする。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 珠算による諸等数の計算はどのように行うか。
2.目 標 諸等数の知識と,珠算による計算能力とを総合的に活用して,諸等数の計算を迅速・正確に行う能力を養う。
3.教材区分と時間配当
(2) 諸等命法と定位法 2 〃
(3) 諸等数の加法減法 2 〃
(4) 諸等数の乗法と定位法 5 〃
(5) 諸等数の除法と定位法 4 〃
(6) 諸等数の換算法 5 〃
(2) 各種諸等数の換算表を用意する。
(3) 珠算による加減乗除の算法に習熟しておく。
(2) いろいろな諸等数の命位数は,どんな要素から成り立っているかを調べる。たとえば十進法と不十進法との差異,不十進法の場合の命位数の種類など。
(3) 通法・命法の計算法と定位法を練習する。
(4) 加法・減法を練習する。数種の計算法によって計算を試みて,それぞれの算法の長所・短所を比較し,最も便利な算法を選択して,それによって練習を継続する。
(5) 乗法・除法を練習する。筆算による計算法と珠算による計算法とを比較し,その異なるところを明らかにして,珠算式計算法の特色をはあくする。
(6) 各種の諸等数の換算を練習し,換算表の利用に慣れる。
(7) 定位法が完全に運用されない場合には,計算の誤りをおかしやすいことを,よく理解する。
(8) 計算の練習はなるべく多くの教材を用いて,熟練するまで行う。
(9) 計算した諸等数を記録する方法を練習する。
(10) 各種の商業計算において諸等数計算が必要な場合には,珠算式計算法をじゅうぶんに応用して,能率的に計算事務を行う。
(2) 諸等数の計算を含む事務処理については,文書実務・貿易実務・商業実践・簿記会計などの各科目の学習において,珠算による計算を用いて,これを能率的に行う。
(3) 命位・略字符号・記録法については,商業外国語の知識を応用し,互に関連して学習を進めることが効果的である。
(2) 諸等数の計算方法と定位法とを確実に身につけたか。
(3) 計算の正確さと速さは,どの程度に進歩したか。
(4) 計算の練習はどのくらい熱心に行ったか。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
実務珠算稲 垣 儀 一 ダイヤモンド社
明解珠算要訣 川 村 貫 治 暁 書 房
珠算の理論と方法 石 川 新 次 大 紘 書 院
商業珠算 杉 原 勇太郎 越 後 屋 書 房
珠算による商業計算 阿 部 武 ダイヤモンド社
商業算術 小 野 十 郎 宝 文 館
商業数学 伊 藤 春 三 三 省 堂
利息算及びその応用 北 条 時 重 東 洋 図 書
珠算における補数計算の基礎理論 田 口 秀 丸 珠 算 研 究 社
珠算入門 阪 根 正 雄 越 後 屋 書 房
新しい珠算の基礎 山 本 長五郎 牧 書 店
商業珠算の基礎 山 本 長五郎 〃
松 浦 常三郎
珠算精義 山 本 長五郎 彰 文 館
高等実用数学 北 村 友 圭 葛 城 書 房
数量と計算 塩 野 直 道 国 立 書 房
帰除法要諦 阪 根 正 雄 珠 算 研 究 社
初等和算書の研究 赤 羽 千 鶴 〃
日本珠算史 溝 江 清 同 文 館