第2章 文 書 実 務

 

 第1 目  標

 

 第2 単元の例

 

 第3 学習指導上の要点

 1.文書の種類は多種多様であって,商業通信文・社内連絡のための通信文・取引に関して使用される書式など,いわゆる狭い意味での商業用文書をはじめとして,広い意味では,会計帳簿類・統計書類その他営業に関係のある記録・報告書などを含み,さらに広く解釈すれば,文字や図表で書かれたり印刷されたりしたものは,すべて文書であるといえる。文書実務科は,このうちで狭い意味の商業用文書を学習の対象とする。

 用語としては,日本語を用いる文書と外国語を用いる文書とがあるが,外国語文のうち,たとえば英文については商業英語科で取り扱うこととして,この科目においては,もっぱら日本文に限定して学習することが適当であろう。

 2.この商業用文書を能率的に,すなわち簡潔・正確・めいりょうに,しかも迅速に作成する能力を養うことが,この科目の第1の目標であり,作った文書を活版印刷・謄写印刷・複写・筆記・筆写などによって仕上げる知識・技能を養うことが第2の目標である。文書の仕上げについては,タイプライティングが重要な手段であるが,この技能は特にタイプライティング科において学習されるところである。仕上げられた文書は取引先へ発送され,取引先から受け取った文書は係へ回される。この手続が文書の取扱である。処理のすんだ文書や,発送した文書の控のうち重要なものは,整理して保存する必要がある。このような文書の取扱と整理との事務に熟達することが第3の目標である。さらに,文書実務科の学習においては,単に文書事務の能力を養うばかりでなく,これをとおして事務能率を増進する態度・習慣を養うように指導しなければならない。有能な事務家は,文章をじょうずに作り,文字をきれいに書くだけにとどまらず,事務を能率的に処理する態度・習慣を身につけているものである。このような態度・習慣の養成は,商業の各科目とりわけ実務的な各科目によって行われるのであるが,この科目においても,これが第4の目標となるのである。

 3.以上の四つの目標によっても明らかであるように,文書実務科は,単に商業通信文の作成だけではなく,商業用文書に関する事務一般について,広く学習する科目である。このような目標を達成するために,学習指導上特に注意を必要とする事項をあげれば,次のとおりである。

 まず文書実務科は,どの学年において学習するのがよいかということは,もとより原則として自由ではあるけれども,次の点は考慮されることが望ましい。

 4.文書事務能力は,記帳計算事務能力とともに,事務担当者の基礎的素養をなすものである。したがってこの科目は,商業科各科目の中で基礎的な地位を占めるものである。

 5.文書実務科の学習は,実習を中心として行われるべきである。文書の取扱や整理についても,実習を行うためには,相当の設備が必要である。商業科においても,工業科・農業科と同様に,実習設備を重視しなければならない。

 6.上記の単元はこの科目で学習される内容を例示したものであるから,教師が学習指導にあたって単元を作る場合には,これを基準として適当に定めるがよい。たとえば「商業通信文はどのように能率的に書き表わすか」については,特に一つの単元として取り上げないで,第3から第6までの単元に含めることもよいであろう。また,この単元の例の表現を変えたり,あるいは総合したり分解したりすることが必要とされる場合もあう。しかし,この単元の例に示されている内容は,簡略か詳細かの差別はあっても,一応全般的に取り上げられることが望ましいのであって,この一部のみを学習するにとどめることは,学習上の価値を乏しくさせることになるであろう。

 7.「商業通信文はどのように能率的に書き表わすか」については,特に注意を要する。わが国の文書事務の能率は,欧米諸国に比較して,いちじるしく劣っているが,これは従来の和文タイプライターの能率が悪く,持ち運びも不便で,じゅうぶんに利用できないことに大きな原因がある。この欠点を改めるためには,横打ちの小型タイプライターの普及が必要であり,さらにそのためには,文書の形式を左横書きとし,当用漢字を使用することはもちろん,それ以上に極度に漢字を制限する必要があるであろう。また,簡潔で平易な口語文体とすることも当然の要求であろう。この傾向はすでに官庁の文書や進歩的な商社の間に見られるところであるから,生徒を指導する場合には,これに従うことが望ましい。「社内において必要な文書はどのように作るか」においては,社内連絡文の作り方とともに,用件のメモの取り方などについて指導することも適切であろう。

 この科目の学習についての,教師と生徒の準備と活動の例を示せば,次のとおりである。

 

 第4 学習指導計画の一例

 

 第5 参 考 書

    書    名       著    者     発 行 所

   商業通信文の実際      大 井 魯 斎    東 栄 堂

   商業作文新講        黒 田   保    ダイヤモンド社

   文書実務          田 中 安 人    実業の日本社

   文書整理の事務組織     大 田 文 平    青 山 書 院

   文書整理の実務       日本能率協会     日本能率協会

   事務文書の書き方        〃           〃

   新事務必携         上 野 陽 一    同 文 館