第16章 商業に関するその他の科目

 

 第1 設定の趣旨

 商業に関する科目としては,以上の各科目に限られるわけではなく,生徒や社会の必要に応じて,商業科の一般目標に添うような,その他の適当な科目を選んで学習するように計画が立てられることが望ましい。どのような科目を選んで学習するかについては,だいたい,三とおりの場合が考えられる。

 第一は,以上の各科目の中にはいっていないものを,新しく取り上げる場合である。

 第二は,以上の各科目をも含んで,融合された科目として,新しく設定する場合である。

 第三は,以上の各科目の内容を細分して,それぞれ独立の科目を設定する場合である。

 第一の場合は,趣旨からみて,そうした必要のある場合には当然のことである。

 第二の場合は,種々な困難を伴うではあろうが,今後大いに研究するに値する問題であって,周到な計画と,遂行する能力とを備えれば,この行き方に創意くふうを働かせる必要は多いことであろう。

 第の場合は,これと反対の方向に向くものであって,特殊な場合を除いては,あまり望ましいとは言えないであろう。たとえば,運送・保管・保険などをそれぞれ独立の科目として学習することは,一般的に必要以上に細分されることになって,かえって相互の関連を薄くすることも考えられるからである。

 

 第2 設定される科目の例

 上述の第一の場合に属する例としては,次の科目があげられるであろう。

  商業美術  産業調査  商業史または経済史  商業地理または経済地理など。

 第二の場合に属する例としては,次の科目が考えられるであろう。

  小売商店の経営  販売員の仕事  書記の仕事など。

 

 第3 単位数について

 新しく設定された科目を何単位とするかということは,もとより原則として自由であって別段の定めはない。しかし,いずれの場合においても,最低として2単位としなければならないことは,他の科目がすべて最低2単位を下るものがないのと同様の趣旨からみて当然であろう。それは1単位というような小さい数にとどめることは,一つの科目として学習する上に,効果を乏しくするので,適当ではないからである。

 又,最高限度にも,教科課程編成上の制約のほかには,限度は無いのであるが,第一の場合としては,5単位とするのが普通であろうし,第二の場合において,数個の科目を融合したものを設定すれば,その単位数は当然大きくしなければならないであろう。

 

 第4 学習指導上の要点

 設定された科目については,いずれの場合においても,その目標を立て,単元を構成し,学習活動の計画を作り,また,評価などについても具体的な計画を立てなければならない。

 上記の科目の例について,その計画の基礎となる範囲・性格の概要を考えれば,次のとおりである。

 1.商業美術

  広告図案・飾窓装飾・店頭装飾・商品陳列などを実習する。

 2.産業調査

  郷土産業の実態調査に重点を置く。

 3.商業史または経済史

  日本史・世界史にわたって,商業・経済の歴史的事実を理解し,社会の変遷と商業・経済との関係を理解する。

 4.商業地理または経済地理

  日本および世界にわたって,地理と産業・商業との関係を理解する。

 5.小売商店の経営

  小売商店の経営に必要な知識・技能・態度を総合的に身につける。

 6.販売員の仕事

  販売員として必要な知識・技能・態度を総合的に身につける。

 7.書記の仕事

  書記または秘書として必要な知識・技能・態度を総合的に身につける。