第1 目 標
2.商業経済に関する法規の知識を習得する。
3.法律的に思考する能力,特に商業事象を法律的に判断する能力を養う。
4.商業活動を円滑に処理し,紛争の生じた場合には,合理的に解決する態度を養う。
第2 単元の例
2.権利・義務とは,どのようなことか。
3.権利・義務は,どのように変動するか。
4.財産権とは,どのようなものか。
5.契約とは,どのようなことか。
6.商人とは,どのような人をいうか。
7.商業を営むには,法律上どのようなことが必要であるか。
8.会社とは,どのようなものか。
9.商業には,どのような種類があるか。
10.手形・小切手とは,どのようなものか。
11.紛争を防ぐには,どのようにすればよいか。また,訴訟とは,どのようなことか。
第3 学習指導上の要点
1.この科目は,商業科の中の一科目として,もっぱら商業に関する法規について学習するものではあるが,その内容はやはり法であるから,学習指導にあたっては,法の全般に関する面についても,よく考慮する必要がある。
2.法は、一般化され,抽象化され,客観化されたものであるが,それをそのままの姿で,生徒に注入するような方法は望ましくないことである。生徒の日常生活の経験に事例を求め,理論に片寄らず,具体的に商業現象を法の面から理解し,商業活動が,法の面からどのように行われているかを知るとともに,商業活動を円滑に遂行して行くような態度や能力を養うことが望ましい。
3.事例を,生徒の日常生活の経験に求めることが困難である場合には,一応,法を抽象的概念的に説明しなければならないこともあろうが,その場合でも,法の深遠な学理を説くことよりも,できるだけ具体的に実例をあげて概念の裏づけをすることが,学習の効果をあげるのに役だつであろう。具体的事例をあげるには,低劣に陥らないように注意し,卑近なものから,だんだんと複雑な高度なものに進めるようにし,しかも,生徒の自発的な学習意欲を促進して行くことがたいせつである。
4.この科目の学習については,民法と商法との二つの法典の編別に従って学習を進めて行くような,従来多く用いられた方法よりも,民法・商法を合わせまとめ,それを中心として,その他の商業関係の法令をも加えて,生徒の理解に,つごうのよいようにくふうされた新しい指導計画を立てることが望ましい。
5.上記の単元例のそれぞれには,理解の難易や,内容の分量について,相違があるから,もとより,各単元を一様に平均した時間で取り扱うことはできない。それぞれに適当な時間を配分した1年間の指導計画を立てて,全部の単元にわたって,統一された系統立てられた理解をうるように指導することが必要である。
6.単元の例について,それぞれの内容を示せば次のとおりである。
単元 1.法とは,どのようなものか。
(2) 法の効力・適用・解釈
(2) 権利・義務の主体,自然人・法人
(3) 権利・義務の客体,特に物
(2) 代理,無効および取消,条件・期限および期間,時効など
(2) 債 権
(3) 無体財産権
(2) 匿名組合,交互計算
(2) 商行為
(2) 商号
(3) 商業帳簿
(2) 各種の会社
(3) 特に株式会社
(2) 代理商
(3) 銀行と無尽
(4) 海商
(2) 為替手形
(2) 和解制度
(3) 民事訴訟のあらまし
1.教師の準備と活動。
(2) 法の改廃に常に注意する。法令の改廃がひんぱんに行われる時には,このことは特にたいせつである。官報・新聞の切り抜きや,新しい法令の条文をそろえる。
(3) 判例の研究をする。古い有名な判例ばかりでなく,新しい判例にも注意して法律思潮の変遷を研究する。判例集・判例批評・判例評釈書なども備えて置くがよい。
(4) 地域社会に行われている商慣習について調査し,商慣習法について研究する。
(5) 生徒の自発的活動を促進するように,指導法をくふうする。たとえばケース・メソッドをどのように取り入れるか,どのような問題が,課題として取り上げるのに興味深いかについて研究する。
(6) 時間の配当,教材の配列,研究問題の選択,調査事項の選択について常に検討し,生徒の活動を指導し援助して行く。
(7) 法律の図解や分類表,法律関係の統計表や書式を集めたり,作ったりする。また,法律用語集などの資料をできるだけ多く用意する。
(2) 新聞・雑誌の法律記事に親しみ,法律的事象を理解して,社会生活や商業活動を,円滑に活発に遂行するにはどうすればよいかを考える。
(3) 日常生活の具体的事例に,法をあてはめて,批判したり,それについてのよい法を考えてみる。
(4) 法律用語を正確に理解する。法律用語と一般用語とを比較し対照してみる。
(5) 六法全書を自由に使いこなせるように,常に六法全書を用いる。
(6) 会社の定款・社則・社規などを集めて研究したり,証ひょう書類の見方や,作り方を練習する。
(7) 法の図解・分類表・一覧表などを作ってみる。また,契約書・委任状・社則・定款などを作ってみる。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 法とは,どのようなものか。
2.目 標
(2) 法に関する一般原理的な事項について,なるべく日常生活の事例に即して理解する。
(3) 社会生活を営むために,法がなぜ必要であるか,われわれは,なぜ法に従い,法を守らなければならないかを理解し,遵法の精神を養う。
(4) この単元は,法規科の端緒であるから,後に続く単元の学習にじゅうぶん役だつように,基礎を確立する。
b.社会生活と規則
c.法という規則
b.法の消滅,変更と廃止。
b.公法と私法および経済法
c.普通法と特別法
d.強行法と任意法
e.実体法と手続法
f.国内法と国際法
g.固有法と継受法
c.人に関する効力
(5) 法は,どのように適用され,また,どのように解釈されるか。2時間
a.予備的適用と裁判的適用。
(2) 教材の重点のおきどころ,簡単に取り扱ってよいところをくふうする。
(3) 法の一般原理について,図解や分類表を作り,視覚によって生徒の学習を援助する。
(2) 道徳・宗教・礼儀・慣習など,いろいろな規範を考え,これらと法との異同や,相互関係について考え,討議する。
(3) 議会を見学したり,憲法の法律制定の条項を調べたり,法の一般原理に関する新聞記事の切り抜きを作ったりする。
(4) 法の分類表を作ってみる。
(5) 法の効力を時事問題に関連して研究し,討議する。
(6) グループ別に,具体的問題を取り上げて,法の適用や解釈について研究し,討議する。
(7) 校則・会則・家憲などについて研究したり,作ってみたりする。
(8) 研究したことについて,クラスで報告したり,討議したりする。
(9) 研究したことについて,小論文を書いてみる。
(10) 法の一般原理に関する知識をまとめるために概括表を作ってみる。
社会科特に憲法に関する単元,家庭科の家族関係は,この単元の学習に大いに役だつ。
7.評 価
(2) ノートや概括表・分類表を検閲して,学習の熱意を見る。
(3) たとえば,法と道徳との関係というような研究題目によって,さらに深く研究したものを発表させて,学習態度の積極性を見る。
(4) 学校の規則を守る態度も,遵法の精神をどのくらい身につけているかを見る参考になる。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
法学通論 穂 積 重 遠 日本評論社
法学概論 尾 高 朝 雄 有 斐 閣
法学入門 尾 高 朝 雄 勁 草 書 房
法学通論 田 中 誠 二 千 倉 書 房
法学概論 田 中 周 友 有信堂高文社
法学概論 中 川 善之助 角 川 書 店
木 村 亀 二
法学研究の栞(下) 菊井維大外二氏監修 東大学生文化指導会
新民法読本 穂 積 重 遠 日本評論社
民 法 我 妻 栄 勁 草 書 房
民法入門 戒 能 通 孝 巌 松 堂
民法通論 中 村 万 吉 〃
民法入門 野 津 務 有 斐 閣
民法総論 吾 妻 光 俊 巌 松 堂
新民法総則 勝 本 正 晃 弘 文 堂
改訂民法総論 宗 宮 信 次 有 斐 閣
物権法 勝 本 正 晃 弘 文 堂
物権法概説 〃 巌 松 堂
担保物権法論(上・下) 石 田 文次郎 有 斐 閣
担保物権法 我 妻 栄 岩 波 書 店
担保物権法(上・下) 勝 本 正 晃 有 斐 閣
債権総論 我 妻 栄 岩 波 書 店
債権法概論 勝 本 正 晃 有 斐 閣
債権法総則講義 山 中 康 雄 巌 松 堂
債権各論 戒 能 通 孝 〃
契約総論 山 中 康 雄 弘 文 堂
契約各論(1) 勝 本 正 晃 有 斐 閣
商法(上・中・下) 石 井 照 久 勁 草 書 房
商法概論 〃 〃
日本商法 西 島 彌太郎 巌 松 堂
商法講義(1—4) 小町谷 操 三 有 斐 閣
新版商法 田 中 誠 二 千 倉 書 房
新商法大要 野 津 務 柳 沢 書 店
改正商注大意 松 本 烝 治 岩 波 書 店
新訂日本商法論(1) 西 原 寛 一 日本評論社
商法学総論 実 方 正 雄 有 斐 閣
商法総論概説 田 中 誠 二 〃
商法総則 野 津 務 朝 倉 書 店
商法総則 柳 川 昌 勝 巌 松 堂
商行為概説 田 中 誠 二 有 斐 閣
商行為法 柳 川 昌 勝 巌 松 堂
会社法講義案 大 隅 健一郎 有 斐 閣
会社法概論 大 浜 信 泉 勁 草 書 房
会社法学(1) 実 方 正 雄 有 斐 閣
会社法 田 中 誠 二 千 倉 書 房
改訂会社法概論 野 津 務 朝 倉 書 店
新会社法 伊 沢 孝 平 法 文 社
解説改正会社法 岡 咲 恕 一 日本経済新聞社
改正株式会社法解説 鈴 木 竹 雄 日本評論社
石 井 照 久
保険法 野 津 務 白 楊 社
海商法 田 中 誠 二 千 倉 書 房
海商法原論 森 清 有 斐 閣
有限会社法 大 橋 光 雄 〃
日本有限会社法論 佐 々 穆 巌 松 堂
有限会社法 椎 津 盛 一 〃
手形法小切手法 伊 沢 孝 平 有 斐 閣
註解手形小切手法 〃 法 文 社
手形小切手法講義 大 隅 健一郎 有 斐 閣
手形法・小切手法 田 中 誠 二 千 倉 書 房
法律学辞典(1—5) 末 弘 厳太郎 編 岩 波 書 店
田 中 耕太郎
法律学小辞典 我 妻 栄 編
〃
横 田 喜三郎
宮 沢 俊 義
新法学辞典(1—3 ) 末 川 博 編 日本評論社
六法全書 我 妻・宮 沢 編 有 斐 閣
六法全書 末 川 博 編 岩 波 書 店
模範六法全書 〃 三 省 堂
六法全書 末 弘・小 野 編 法 文 社
解説附民・商法条文 武 市 春 男 国 元 書 房
日本判例大成 三宅正太郎外八氏編 非 凡 閣
商事判例集 小町谷・伊沢 編 岩 波 書 店
大審院判例集
最高裁判所判例集
高等裁判所判例集
法律時報 末 広 厳太郎 編集 日本評論社
法律タイムズ 高 柳 賢 三 編集 法律タイムズ社
民商法雑誌 竹 田・末 川 監修 弘 文 堂
私 法 日本私法学会 有 斐 閣
新法令の研究(1—2) 我 妻 栄 〃
法令年報(1—2) 我 妻・宮 沢 編集 〃