第1 目 標
2.主要な商品・資材の経済的の特質を理解する。
3.商品・資材を科学的に観察する能力と態度とを養う。
4.商品・資材の生産事情を経済的に調査研究する能力と態度とを養う。
5.日本および世界の産業構成を理解し,わが国の経済自立方策を研究する。
2.食料品は,どのように生産され,どんな特質を持ち,どのように人生に役だち,また,どのように取引されているか。
3.衣料品は,どのように生産され,どんな特質を持ち,どのように人生に役だち,また,どのように取引されているか。
4.燃料品は,どのように生産され,どんな特質を持ち,どのように人生に役だち,また,どのように取引されているか。
5.金属は,どのように生産され,どんな特質を持ち,どのように人生に役だち,また,どのように取引されているか。
6.化学工業製品は,どのように生産され,どんな特質を持ち,どのように人生に役だち,また,どのように取引されているか。
7.商品の品質は,どのように鑑識され,どのように格付されるか。
8.商品は,どのように包装されるか。また,包装単位と建値単位とはどんな関係にあるか。
9.わが国の貿易市場には,どんな商品があるか。また,それらの需要・供給の状態はどうなっているか。
10.わが国の経済自立のためには,どんな産業を振興させる必要があるか。
1.商品科は,わが国の平和産業の発展と,貿易の振興のために,活躍しようとする生徒にとって,重要な商品・資材の自然科学的ならびに技術的方面の知識を習得し,これを基礎として,日本および世界の産業の実情を総合的に理解しようとする科目である。
2.商品科は,自然科学的技術的なものと,経済的なものとの,二つの要素を包含している。この両方面は,商品の特質や産業事情を理解するために,等しく重要なものであって,いずれの一方をも軽視することはできない。しかし,この科目の究極のねらいは,商品の特質や産業事情を経済的な立場から理解することであって,自然科学的または技術的方面の知識は,その手段ないし裏づけとなるわけである。現代の商品やその生産は,進歩した科学・技術を基礎としているので,そうした知識がなくては,とうてい,これを理解することができないからである。しかし,同時に,ここに商品科で要求されるところの科学的な知識・技能の深さに,ある限界が存することが認められるのであって,この商品科の学習によって,商品生産の技術家が養成されるものではないことを,注意しなければならない。
3.商品科の学習を指導する上において,上記のような5つの目標が考えられる。目標1に掲げられた自然科学的技術的の特質は,商品・資材の原料や資源や生産方法などによって決定されるので,これらを理解する過程において目標3に掲げられた能力や態度が養われる。目標2に掲げられた経済的の特質は,主として自然科学的技術的特質によって影響を受け,需要供給の消長や価格の騰落や取引方法などにおよぶものであって,この特質を理解する過程において,目標4に掲げられた能力や態度が養われるわけである。また,自然科学的技術的特質との経済的特質との相関関係を総合的に理解することによって,はじめて,目標5が達成されることになるであろう。
4.現代の経済社会においては,物資の生産は特定の需要を目的としないで,一般市場を対象として行われるのが普通である。生産された物資が市場に現れ,流通過程におかれる時に,これを商品と呼ぶわけである。今日,われわれの周囲にある万般の物資は,ほとんど皆,商品として取り扱われたか,あるいは,取り扱われようとしているものであるから,商品科でいう商品とは,広く生産によって実質的な価値を与えられている物資一般と解することが適当であろう。そしてこの科目の目ざすところが産業事情の理解にもあるからには,最終消費用として,小売店の店頭に陳列されてあるものよりも,産業上の基礎物資に多くの興味が注がれるのが当然であろう。また,これらの基礎物資についての理解が無ければ,店頭の商品も,貿易商品も,あるいは構造物のような商品も,理解することができないわけである。このような観点から,質的に,あるいは量的に,重要度の高い,代表的な商品を選択して,一般的な研究態度を養えば,この科目の目標の大半は達成されることになるであろう。
5.商品科の性格は,以上のようであるから,他の教科や科目と関連する面は,かなり広い。特に,社会科・理科・家庭科の各教科や,商業経済・貿易実務・統計調査・商業外国語の各科目とは,密接な関連があるから,これらとは常に連絡を密にして,学習を進めて行かなければならない。したがって,また,商品科の学習は,なるべく高学年において行うほうが,効果が大きいと思われる。
6.単元の例においては,単に,食料品・衣料品・燃料品・金属・化学工業製品と区分したが,これらの全部について学習することは必ずしも必要ではなくて,重要度の異なるに応じて,適宜に取捨選択してもさしつかえはないし,また,それぞれの中の個々の特定商品についても,生徒個々の興味や環境に応じて,任意に選択し,自発的な活動によって,調査・研究を進めて行くことがよい。
それぞれの品目の中で取り上げられる個々の特定商品の例としては,次のようなものが考えられよう。
(2) 衣料品:綿花・綿糸・麻類・羊毛・生糸・化学繊維など。
(3) 燃料品:石炭・ガス・コークス・石油・人造石油など。
(4) 金 属:鉄鋼・銅・軽金属・易熔金属など。
(5) 化学工業製品:ガラス・陶磁器・セメント・塩・ソーダ・肥料・紙・パルプ・ゴム・可塑物・油脂など。
1.教師の準備と活動
(2) 生徒の自発的活動を促進するような指導法や,生徒の活動をまとめて行くための協力の方法をくふうする。
(3) 新聞・雑誌・ラジオによって,移り変って行く産業事情を調べておく。
(4) 工場・農場・試験所・研究所・商品検査所などの見学先を調べ,見学の年間計画表を作っておく。生徒がグループごとに見学しようとする時にも,その照会や,あっせんをする。
(5) 生産統計・消費統計・貿易統計などを累積的に集めて,整理しておく。また,それらから必要な図表を作っておいて,生徒の調査・研究を援助する。
(6) 商品見本・標本・生産行程図解・商品鑑定資料・鑑定用具をそろえる。
(7) 実地見学や実験の困難な教材については,スライド・フィルムを用意する。
(2) 各自で特に興味を持つ教材を選択し,一定期間に果す研究調査の題目を定める。共通の題目によってグループを編成し,グループ員の協力によって学習を展開し,課題を解決して行く。
(3) 商品の性状や品質については,参考書によって調べるだけでなく,実物について,観察し,実験をする。
(4) 工場などを,できるだけ多く見学する。
(5) 資料を集め,分類整理し,統計資料はできるだけ図表に作る。
(6) グループや個人で調査研究した結果は,順次にクラスで,または学年で,報告会・討論会・展示会を開いて発表し,相互に討議研究する。
1.単元名 衣料品は,どのように生産され,どんな特質を持ち,どのように人生に役だち,また,どのように取引されているか。
2.目 標
(2) 衣料繊維の特質について,経済的に理解し,調査研究する能力と態度とを養う。
(3) 衣料繊維の生産と消費が,日本および世界の産業や貿易と,どのような関連を持っているかを理解する。
(2) 綿花と綿糸 3〃
(3) 麻 類 1〃
(4) 羊 毛 2〃
(5) 生 糸 2〃
(6) 化学繊維 2〃
(7) 織 物 1〃
4.準備と資料 綿花と綿糸についての例のみをあげる。
b.実綿(みわた)——種子に毛茸が密生したままのもの。
c.繰綿——種類別に繊維をそろえて,黒い模造紙にはりつけたものが適当である。
d.紡績工程の綿条・粗紡糸・精紡単糸。
e.綿糸——各種番手・単糸・撚糸(よりいと)・ガス糸・シルケット。
b.乾燥秤量器。
c.検力器——抗張力および伸度試験器。
b.綿花農園・紡績工場などの写真・スライド・フィルムおよび,紡績工程図。
c.綿花・綿糸の生産・需給に関する統計資料および図表。
(2) 参考書によって次のことを調べて,発表する。
b.綿花栽培の歴史。
c.わが国の綿花栽培の沿革。
(4) 以上の資料に基いて,綿花生産の地理的ならびに経済的の条件を考え,討議する。
(5) 綿花の性質を実験によって観察する。
b.一粒の種子に,およそ幾本の綿毛が生えているか。
c.綿毛の長さは,どのくらいであるか。長毛と短毛とがあることを調べて,短毛の処理や用途についても考える。
d.綿毛を拡大してみると,どんな形をしているか。偏平・旋転・溝状の皺(しわ)・中空などの形を図に書いて,その保温性・吸湿性・紡績に際してのからみ合いの性質などを考える。
e.化学的成分はどうか。
(7) 以上の基礎知識から,紡績原料となる繰綿の品位を定めるには,どのような点が考慮されなければならないかについて話し合う。
(8) アメリカやインドにおいて行われている公定標準格付法について調べる。
(9) 綿花の用途を調べる。
(10) わが国の綿花の需給状況を沿革的に調べ,紡績業の消長と対比して,将来の綿花需給のすう勢について討議する。
(11) 参考書によって,次のことを調べて発表する。
b.わが国の紡績工業の沿革。
c.世界の紡績業の盛んな国。
(13) 綿糸の性質を実験によって観察する。
b.抗張力と伸度。
c.吸氷性。
(15) 標本によって,綿糸の種類を調べ,それらの用途を調べる。
(16) わが国において,綿糸の需給は,どのような状態になっているかを調べ,その将来の見とおしについて討議する。
(17) 綿花と綿糸の取引の経路を調べる。
(18) 綿花と綿糸の荷造単位を調べる。
商品科は,人文科学と自然科学との両方面にわたる科目であるから,ほとんどあらゆる教科と関連が深いのであるが,特に,この単元においては社会科・理科・農業科・工業科・家庭科との関連が密接である。
7.評 価
b.資料は秩序正しくまとめられているか。
c.資料に対して適当な判断が行われているか。
d.発表のしかたはよいか。
b.材料の取扱方はていねいか。
c.実験の結果の記録は正確か。
d.実験の結果に対して適当な判断が行われているか。
書 名 著 者 発 行 所
商品学 石 井 頼 三 春 秋 社
輸出入品の知識 中 村 耀 ダイヤモンド社
高等商品学 河 合 諄太郎 三 省 堂
商品の科学 白 崎 享 一 国 勢 社
ダイヤモンド産業叢書 諸 氏 ダイヤモンド社
経済地理通論 佐 藤 弘 同 文 館
国 松 久 彌
日本国勢図会 白 崎 享 一 国 勢 社