第1 目 標
2.金融業務についての知識と技能とを養う。
3.信用を重んずることなどの,金融業務に特にたいせつな態度を養う。
第2 単元の例
2.資金の融通は,どのように行われるか。
3.政府の財政は,金融にどのような影響を与えるか。
4.銀行の業務は,どのように行われるか。
5.銀行は,どのように経営されるか。
6.国際金融は,どのように行われるか。
第3 学習指導上の要点
1.商業経済科が,商業課程学習の基礎となるものであって,高等学校卒業後,事務や経営に従事するために必要な,最低限度の知識・技能と,合理的に経済活動を営むための心構えとを養うことをおもな目標としているのに対して,金融科はこの基礎の上に,金融機関主として銀行方面に,将来の進路を定めようとする生徒をおもな対象として,金融の機能と組織とを研究し,その組織の中で,最も重要な地位を占める銀行が,どのように経営され,どのような業務を営むかについて学習することによって,金融業務に従事するのに必要な知識・技能・態度を身につけることをおもな目標とする。
2.金融の機能と組織とを理解するには,国民経済全般についての,じゅうぶんな知識を必要とするから,商業経済科の「経済社会において,商業はどのような機能を果しているか」の単元とは特に密接に関連を保って,その理解を深めておかなければならない。
3.銀行業務をよく理解するためには銀行簿記の知識が必要であり,また,銀行簿記は銀行の業務がわからなければ,じゅうぶんに理解することができない。したがって,金融科と銀行簿記とは密接な関連を保っていなければならない。なお,銀行の業務については,商業経済科の「銀行はどのように利用されるか」の単元との連絡を必要とすることはいうまでもない。
4.金融科は,第2学年または第3学年において,選択され,学習されることが適当であろう。
5.単元の例について,それぞれの内容を示せば次のとおりである。
単元 1.金融は,経済社会において,どのような機能を果すか。
(2) 貨幣と信用との機能。
(3) 利 子。
(2) 工業金融の特質と機関。
(3) 農業金融の特質と機関。
(4) 庶民金融の特質と機関。
(5) 金融市場と日本銀行。
(2) インフレーションと金融。
(3) デフレーションと金融。
(2) 貸出業務。
(3) 為替業務。
(4) 投資その他の付随業務。
(2) 銀行の分課組織。
(3) 銀行の営業政策。
(2) 国際金融。
この科目の学習についての,準備と活動の例を示せば次のとおりである。
1.教師の準備と活動。
(2) 1年間の指導計画を立てる。
(3) 銀行・手形交換所などの見学先を調べておく。
(4) 生徒に金融事情や銀行業務の話を聞かせるため,適当な実務家を依頼する。
(5) 各種の金融機関の書式類・営業案内・考課状を集める。
(6) 金融に関する各種の統計や,新聞・雑誌の記事を集める。
(7) 学校銀行の経営について調べ,その実施方法を考える。
(2) 新聞・雑誌・ラジオを通じて,金融事情の動向を調べる。このために新聞記事を切り抜き,整理をする。
(3) 金融に関する統計を調べたり,統計表や,図表を作ったりする。
(4) 金融機関を訪ねて,その業務を見学したり,実地について話を聞く。
(5) 学校に実務家を招いて,話を聞く。
(6) 研究した事がらについて話し合ったり,小論文を書いたりする。
(7) 学校銀行の経営を計画し,できれば実施する。
第4 学習指導計画の一例
1.単元名 銀行の業務は,どのように行われるか。
ここには,銀行の業務のうち,貸出業務のみについて,計画の一例を掲げる。
2.目 標
(2) 貸出業務の内容を理解する。
(3) 銀行業務に従事するのに望ましい態度,特に信用を重んずる態度を養う。
(2) 貸付は,どのように行われるか。 2〃
(3) 割引は,どのように行われるか。 2〃
(4) 担保には,どのようなものが用いられるか。 1〃
(5) 銀行は貸出に対して,どのような政策をとるか。 2〃
(6) 信用調査は,どのように行うか。 1〃
(2) 貸出業務に用いられる諸種の書式を集める。
借用申込書・手形貸付約定書・借用金証書・担保品差入証・委任状および承諾書・割引依頼書・手形割引約定書・荷付為替手形約定書・当座借越約定書など。
(3) 貸出利率について調べる。
(4) 年度別・月別の預金及び貸出金の残高についての統計図表を用意する。
(5) 貸出業務について話をしてもらう適当な銀行家を選んでおく。
b.貸出業務は,どのように行われるか。
c.貿易手形,農業手形その他割引の対象となる特殊の手形は,どのような制度になっているか。
d.貸出の担保には,どのようなものが用いられるか。
e.銀行は貸出に対して,どのような政策をとるか。
f.貸付先の信用調査は,どのように行うか。
(3) 金融統計によって,月別貸出金残高を示す統計図表を作成し,これを預金残高統計図表と比較して,金融事情の変遷や動向を考察する。
(4) 各銀行の貸借対照表を比較して,貸出政策の異なる点を考える。
(5) 調べた事項について,クラスで報告したり,話し合ったりする。また,それについて報告書や小論文を書く。
(6) 貸付金利息や割引料の計算を行う。
(7) 借用金申込書・割引依頼書その他借入に必要な書式を記入し作成する。
すなわち,一般社会科では,金融機関がわれわれの経済生活にどのような関係を持っているかについて,理解することに中心がおかれ,銀行業務については,この理解を助ける意味において取り扱われるにすぎない。また,商業経済科においては,もっぱら,商業に従事するのに必要な知識として,銀行業務がどのように行われ,これをどのように利用するかという点に中心がおかれる。これに対して,金融科のこの単元においては,銀行業務を専門的に研究しようとするのであって,商業経済科ではあまり触れない貸出政策や信用調査についても学習することになるわけである。
(2) 珠算および商業計算科との関連 貸付金利息や割引料の計算について,珠算および商業計算科の利息の計算に関する単元と密接に連絡をはかることが必要である。
(3) 簿記会計科との関連 特に,銀行簿記に関する各単元とは密接な関連があるから,じゅうぶんに連絡をはかることがたいせつである。
(4) 統計調査科との関連 金融統計については,この単元で調査することが,統計調査科の学習の資料となり,また,統計調査科で学習することが,金融科の研究に役だつわけであるから,連絡を密にして,両方の学習の効果を大きくすることが望ましい。
(2) 銀行経営においての各種業務,たとえば貸出業務の重要性を,どの度に理解したかを,報告や小論文によって見る。
(3) 信用を重んずる態度がどの程度に養われているかを,学習態度によって見る。
第5 参 考 書
書 名 著 者 発 行 所
金融論 山 口 茂 春 秋 社
銀行論 〃 新 紀 元 社
資金形成の理論 沖 中 恒 幸 巌 松 堂
新しい銀行実務 大 平 陽太郎 ダイヤモンド社
手形小切手の実務 中 倉 貞 重 〃
農業金融論 東 畑 精 一 泰 明 堂
朝 倉 孝 吉
新国際金融機構論 新 庄 博 永 谷 書 房
古 田 貞 雄
新金融制度の研究 大蔵省金融制度調査会 板 垣 書 店
金融機関発達史 〃 〃
貨幣論 岡 橋 保 春 秋 社
銀行通論 高 木 暢 哉 〃
外国為替の基本知識 東京銀行調査部 実業の日本社
金融論入門 小 島 昌太郎 広 文 社
金融市場と金融政策 河 津 邏 有 斐 閣
金融の常識 金 原 賢之助 千 倉 書 房
金融論 呉 文 炳 巌 松 堂
金融要論 小 島 昌太郎 有 斐 閣
金融論(新経済学全集) 新 庄 博 日本評論社
金融講話 波多野 鼎 ダイヤモンド社
金融基礎論 服 部 文四郎 明 善 社
新金融論 牧 野 輝 智 日本評論社
金融読本 山 本 米 治 実業の日本社
中小商工金融論 井 関 孝 雄 同 文 館
改訂工業金融 粟 栖 赳 夫 千 倉 書 房
証券市場論 波多野 鼎 巌 松 堂
中小金融の現状 大蔵省金融制度調査会 板 垣 書 店
貨幣と物価 荒 木 光太郎 東洋出版社
貨幣金融論 沖 中 恒 幸 労働文化社
貨幣の常識 竹 島 富三郎 千 倉 書 房
貨幣論 服 部 文四郎 改 造 社
貨幣理論(新経済学全集) 宮 田 喜代蔵 日本評論社
改訂貨幣読本 山 崎 覚次郎 〃
改訂銀行論 青 木 得 三 厳 松 堂
コールマネー・マーケット 浅 見 審 三 東洋経済新報
銀行金融の知識 太田黒 敏 男 日本公論社
銀行論 呉 文 炳 日本評論社
新訂銀行経営論 田 中 金 司 千 倉 書 房
新 庄 博
銀行論 丹 後 愛二郎
銀行論 永 田 鉄 山 巌 翠 堂
銀行読本 橋 爪 明 男 日本評論社
銀行のはなし 日本銀行調査局 三 省 堂
銀行の知識 矢 本 五 郎 実業教科書
外国為替の常識 内 野 一太郎 同 文 館
外国為替の話 木 内 信 胤 同 友 社
外国為替の常識 小 林 行 昌 千 倉 書 房
国際為替論 傍 島 省 三 中 外 出 版
外国為替論 傍 島 省 三 千 倉 書 房
増 井 光 蔵
改訂増補外国為替読本 山 崎 靖 純 立命館出版部
金融大辞典(1—3) 日本評論社 日本評論社
新金融辞典 銀行研究社 文 雅 堂
金融統計月報 日本銀行統計局 〃
金融四季報 大蔵省銀行局 大蔵財務協会