第一節 健康に適した授業日
一 健康に適した時間割の編成
次に編成上の原則として考えられている事項をあげて参考とする。
1.教科の変換をはかり心身の休養気分の転換を考える。
2.教科の性質難易および学年の高低によって当時間内の教科の組合せ分量の配当を考える。
3.特別教室・運動場・屋内体操場・講堂等の使用,学校管理上の実際から見た編成上のくふうとする。
1.適当の努力によって成し遂げうる程度のもので,児童の負担が過重にならないようにする。
2.家庭の事情を考慮する。
3.児童の健康状態を考慮する。
特に保健上睡眠時間を妨げるような課題は絶対に避けなければならない。
以上の観察によって,なんらか異なった点のある児童には,それぞれ必要な指導を与え,かつ養護教諭の指示を受けさせる。全体の児童に疲労・異常があれば,(1)学習指導の方法や (2)採光・換気等に考慮を加え,(3)座席の変更あるいは(4)学習指導中に休憩を与えることも必要である。
このことについて,重要と思われることを次に述べて見よう。
一 学校生活からのあせりや,不安や恐怖などの原因となるものをできるだけ除去する。
1.教科中心のカリキュラムから,童生活中心のカリキュラムに編成がえをする。
1.学級編成上の注意
児童個人で計画した作業が完成したときにも,じゅうぶん賞賛のことばを与え,特に能力の劣った児童の場合には,その成功の喜びを感得させることがたいせつである。
(2) 教師は児童を友だちとし,また時には案内者として計画を進め,教師自身の計画によって強制的や命令的に指導してはならない。
(3) 学校で児童を精神的にも情緒的にもいちばんよい状態におくことを保障するには,教師は児童各個人の状態をよく理解し,または個人としてその人格を尊敬するよう取り扱うことである。
何ゆえに,何を,いつ,いかにして食べるべきかについての指導は,健康教育の計画の中に含まれるが,しかし,あらゆる方面の知識が,実生活に即してよい習慣になるよう,学校給食は運営されなければならない。この食事を中心とした実地教育のための学校施設として,りっぱにつりあいのとれた食事を調整するための,じゅうぶんな設備と人員と,また児童たちが気持よく食事することのできる場所が用意されなければならない。
この施設の合理的な運営によって,児童たちは適正な栄養を確保し,ふじゅうぶんな家庭食をその日のうちに補給する機会が与えられ,不慣れな食物を食べたり,すぐれた昼食を選択したりする経験を得ることができる。
このような児童の食事の経験は,快適な四囲の情景や,なごやかな仲間どうしのふんい気や,清潔で,じょうずに調理された食物によって与えられなければならない。
統計によれば次のような割合に特殊教育を受ける対象があるといわれている。(教育心理所載)
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異状の程度が比較的軽くて健康児童についていくことが可能の児童に対しては,教師が細心の注意を払いながら教育することが必要である。以下主として普通学級において学習しうる養護児童についてべる。
身体的方面において養護を要するものは,いわゆる身体虚弱児童と称され,その中には発育不良・栄養不良・胸廓異常(扁(へん)平胸・漏斗胸・麻痺(ひ)胸・背柱湾(わん)曲等)や貧血・食欲不振・偏食・体力不足の者・あるいは頭痛・腹痛・夜尿・ねあせ等の習癖ある者・病気にかかりやすいもの・その他体質異状者などがあげられている。このような児童に対しては,医師の診査に基いて異常の原因を明らかにするとともに,治療ときょう正に努め,保護者と密接な連絡をとり学校においても家庭においても,新鮮な空気・日光・温度・湿度・換気等の環境や,栄養・休養・睡眠等に特に注意して,健康の回復に努めるよう指導しなければならない。学習時には,顔色・動作をよく観察し,教室内の座席配置・体操や作業時の運動量が適しているかどうかを調べる。また宿題等を課する場合には負担が重くならないように考慮する。特に疲労の防止には留意しなければならない。
精神的方面において養護を要する児童としては,知能劣等児・性格異常児・神経質等があげられるが,不安・憂うつ・寡黙・言動渋滞・興奮等があったり,また学科に対する好悪が強すぎたり,おもしろく遊ばない,人ぎらい・はにかみ・疲れやすい・感情にむらがある・怠け癖・怒りやすい・うそを言う・虚栄心・強情・動物虐待・盗癖‥理解力に乏しく・記憶が悪い・注意力不足・散慢等が見られ,一般に学業成績不振の場合が多い。
このような児童に対しては遺伝関係・出生時の状態・育児状況・既往症・家庭・交友等の環境を調査し,専門家に連絡してその原因を追求してみる必要がある。原因の除去可能なものについてはあらゆる手段を講じてみるのがよい。取扱上としては他の児童に対する劣等感を起させないようにするとか,不安とか懲罰などによる刺激を避けて,生活環境の調整をはかり,明朗性を与えるように指導する。
以上心身になんらかの障害がある児童に対しては,直接教育にあたる教師が行き届いた指導を行うのみならず,学校としては学校保健委員会において,養護の計画をたて,適切な施設をしなければならない。たとえば,身体検査・健康相談・性格調査・知能検査・生活調査等を行い,その結果に基いて養護児童を選定し,保護者へ連絡して医師その他専門家の協力を求め,校内校外での指導,進学,職業指導等について具体的な方策と組織を設けて義務教育の課程を修了しうるように努めねばならない。
特殊学級あるいは養護学校においては,次の事項に留意する。
2 教育課程については,できるだけ普通児と類似のものであるように考慮し,進級・進学についても同様にする。
3 医師,病院その他関係機関との連絡を密にする。
4 健康に復し得た場合には普通学級に復帰させる。
5 単に適切な健康管理・健康的な環境のもとに学習を行うだけでなく,衛生知識および衛生的な生活方法を体験会得させるように努める。
6 職員には専門的に訓練された教育愛に燃えた教師を必要とする。
7 このような特殊教育施設は,世論の支持と保護者および一般社会の啓発を必要とするので,保護者はもちろん各種公共団体等の関心と協力を望むことが必要である。
一 授業時間中の運動と気分転換
授業時間中の運動は,学級が単位となるが,担任教師はその学級に適応する運動プログラムをたてて実施することが望ましい。すなわち,児童の疲労,健康状態をよく観察して,それに応じた運動の種類・項目をきめて実施しなければならない。また学習には動作の巧みさが基本的に役だつものであるから,技能を取り入れることによって学習活動をいっそう活発化し,興味を増す助けとすることができる。教師は知覚と運動との巧みな調和を常に心掛けねばならない。
(学習指導要領小学校体育篇参照)
社会生活を営むものの一員としては,常に情緒的に愉快で健康的なふんい気をかもし出す資質の持主であることが望ましい。この資質は,常に愉快で健康的な環境の中に生活することによって養われる。したがって,学校生活はかかる社会的情緒的発達を促進するようにくふうすることが必要である。これらに対しても学校におけるレクリエーションの実施が最も有効である。
健康診査によって,児童個々の健康状態をはあくし,健康者と疾病異常者とを分けて,適正な取扱をすることが必要である。
(二)疾病異常者の指導には,適当な医師または専門家があたるべきである。
その計画をたてるには次のことに注意する。
2.心臓疾患の軽度のものは,軽い散歩・限られた徒手体操程度とする。
3.結核性疾患のものは運動を禁止する。
4.脱腸・月経障害のあるものには,運動を禁止するか,またはその程度によって重技・跳躍運動を禁止する。
5.耳疾・眼疾には水泳を禁止する。
6.てんかん・その他感覚器および神経系の疾患については特に注意をする。
7.運動器障害,胸廓異常者,扁平足のものにはきょう正体操を行う。
2.準備運動,整理運動を行う。
3.運動はいずれの場合にも漸進的に実施する。
4.実施に際しては食事の直前直後または空腹時を避ける。
5.炎暑・寒冷時,ほこりの多い場所を避ける。
6.実施後は汗をふき,手足・身体を洗い,できればシャワーにかかるなど,清潔に努める。
7.自覚的・客観的に疲労の発見に注意する。特に個別的に疲労の発生状態が異なることに留意する。
8.疲労の回復には適度の休養・マッサージ・入浴・特に睡眠が効果的であることを会得させる。
9.適正な運動負荷であること。すなわち年齢・発育・健康・性別に応じた運動種目,運動強度・運動時間について考慮する。
10.傷害の防止に努める。