Ⅰ.学校保健に関する法令(抜粋)
身体検査及び衛生養護の施設に関する事項は,監督庁がこれを定める。
第28条 小学校には,校長,教諭,養護教諭及び事務職員を置かなければならない。但し,特別の事情のあるときは,事務職員を置かないことができる。
小学校には,前項の外,助教諭その他必要な職員を置くことができる。
校長は,校務を掌り,所属職員を監督する。
教諭は,児童の教育を掌る。
養護教諭は児童の養護を掌る。
事務職員は事務に従事する。
助教諭は教諭の職務を助ける。
第35条 中学校は,小学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,中等普通教育を施すことを目的とする。
第36条 中学校における教育については,前条の目的を実現するために,左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
2.社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能,勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
3.学校内外における社会的活動を促進し,その感情を正しく導き,公正な判断力を養うこと。
第26条 市町村立小学校の管理機関は,伝染病にかかり,若しくはその虞のある児童,又は性行不良であって他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは,その保護者に対して,児童の出席停止を命ずることができる。
第41条 高等学校は,中学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。
第42条 高等学校における教育については前条の目的を実現するために,左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
2.社会において果さなければならない使命の自覚にもとづき,個性に応じて将来の進路を決定させ,一般的な教養を高め,専門的な技能に習熟させること。
3.社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立に努めること。
第72条 盲学校,聾学校及び養護学校には小学部及び中学部を置かなければならない。但し,特別の必要ある場合においては,その一のみを置くことができる。
盲学校,聾学校及び養護学校には幼稚部及び高等部を置くことができる。
第73条 盲学校,聾学校及び養護学校の小学部及び中学部の教科及び教科用図書,高等部の学科,教科及び教科用図書又は幼稚部の保育内容は小学校,中学校,高等学校又は幼稚園に準じて,監督庁がこれを定める。
第74条 都道府県は,その議会の議決を経て,その区域内にある学齢児童及び学齢生徒の中,盲者,聾者,又は精神薄弱,身体不自由,その他心身に故障のある者を就学させるに必要な盲学校,聾学校又は養護学校を設置しなければならない。
第75条 小学校,中学校及び高等学校には,左の各号の一に該当する児童及び生徒のために,特殊学級を置くことができる。
2.精神薄弱者
3.聾者及び難聴者
4.盲者及び弱視者
5.言語不自由者
6.その他の不具者
7.身体虚弱者
第76条 第19条,第27条,第28条(第40条及び第51条において準用する場合を含む),第34条,第45条から第48条まで,第50条,第80条及び第81条の規定は,盲学校,聾学校及び養護学校に,これを準用する。
第14条 高等学校には,生徒の養護をつかさどる職員一人以上を置き,そのうちの一人は他の職を兼ねず,又他の職から兼ねない者でなければならない。
生徒の養護をつかさどる職員は,乙種看護婦以上の資格をもつ者でなければならない。
第16条 校舎は,堅ろうで,学習上,保健衛生上及び管理上適切なものでなければならない。
第19条 校舎には,左に掲げる施設を備え,且つそれらの施設は常に改善されなければならない。但し,やむをえない事由がある場合で教育上支障のないときは,一つの施設をもって二つ以上に兼用することができる。
八 医務室,休養室
第20条 高等学校には学習用,体育用及び保健衛生用の図書,機械,器具,標本,模型,その他の校具を備えなければならない。
前項の校具は,学習上,保健衛生上,有効適切なものであり,且つ常に改善し,補充されなければならない。
第22条 高等学校には,学校の規模に従い,保健衛生上必要な給水設備を備え,その水質は,衛生上無害であることが証明されたものでなければならない。
第24条 夜間において授業を行う高等学校には,生徒数に応じて,必要な給食施設を備えなければならない。
第26条 高等学校には,必要に応じて,なるべく左の施設を置かなければならない。
第31条 校舎には,少なくとも左に掲げる施設を備えなければならない。但し,やむをえない事由がある場合で教育上支障のないときは,一つの施設をもって二つ以上に兼用することができる。
都道府県知事は地方の実情に鑑み,学校当局者に左の方法によって学校内外の清掃を実施させ,学校の清潔保持に努めさせなければならない。
なお,学校における清掃の指導訓練は,衛生教育の一環として系統的に実施させ,その実践は,学校だけにとどまらず生徒児童の家庭にも及ぼし,更に社会公衆の衛生思想並びに美的観念の高揚にまで及ぶことを期待しなければならない。
一.日常清潔方法
学校においては,毎日左の方法により学校内外の清掃を行い,清潔保持に努めなければならない。清掃を行う時は,つとめて,マスク帽子等の防じん保護具を使用させるように努めなければならない。
ちり,あくたの飛散を防ぐため,まず水をまいて少し床を潤し,静かに掃き出した後湿ったおがくず,茶がら,もみがら等を床上にまきちらしてこれを掃き出すか,又は湿布でふきとる。
アスファルト,タークレー,コンクリート,石,れんが等の廊下,昇降口,運動場等は時々水で洗浄する。
畳敷は乾燥のまま掃き出すほか,時々湿布でふく。
建具,校具等は湿布でふき,窓ガラスは特に注意し,湿布使用の後乾布を使用させる。
(2) 教室,廊下,寄宿舎等では適当な箇数のくず箱及び消毒液等を入れたたんつぼを配置し,紙片その他の廃棄物の散乱を防ぎ,且つ,たんをたんつぼ以外に吐かせないようにしなければならない。くず箱及びたんつぼは常に清潔に保持し,適時その内容の処理に留意する。
なお,たんつぼ内のつば,たんは,これを便池に捨てる。
(3) 黒板,黒板ふきは常に清潔を保ち,黒板をぬぐい,又はその掃除をする際には,チョーク粉が飛散しないよう注意し,又黒板ふきの粉は必ず室外で払う。
(4) 下履のまま昇降する校舎,寄宿舎等の昇降口には,ちり掃,くつぬぐい,くつ洗器等を備え,室内に砂ほこりのはいらないようにする。
なお,なるべく上履を使用させる。
(5) 小便所の排尿こう,注壁等は毎日水で洗浄し,便池内の汚物はしばしばくみ取り,常に清潔を保ち,臭気抜,便孔のふた,くみ取口のふた等には,防臭,防はえ等の設備をしなければならない。便所の手洗水は流出装置とし,共同手ぬぐいは使用させてはならない。
(6) 宿直室,寝室等は特に採光,換気に留意し,寝具は適宜日光にさらし,敷布,掛えり,まくらおおい等は共用してはならない。
(7) 食堂,炊事場,浴室,洗面所,洗たく場等は,採光,換気に注意して清潔を保たしめ,特に食堂,炊事場等には,臭気抜,防はえ用金網等を設置し,防臭,防はえに注意しなければならない。
(8) ちり,あくたの類は,ごみ箱又は一定の場所にあなを掘り,その中に集めておき,しばしば焼き又は適当の場所に搬送しなければならない。
(9) 炊事場,手洗場,足洗場,下水みぞ等の排水は特に注意し,かの発生を防がなければならない。下水みぞは適当のこう配を保ち,時々さらい,汚物やどろは適当な方法で他に搬送し,あるいは一定の場所に集積し散乱を防がなければならない。
下水みぞはなるべく暗きょにする。
(10) 運動場は,その手入並びに清潔保持に注意し,ちり,あくたの飛散を防ぐため時々水をまく。
なお状況によっては,樹木を植え又は芝生を造る。
(11) 廊下,昇降口,運動場その他適当な場所に,手洗場及び足洗場を設け,必要ある場合に手足を洗わせる。
(12) 器械室,標本室,戸だな,押入,げた箱,物置,庭園等特別な場所については,前記各項に準拠し適宜その清潔保持につとめる。
定期清潔方法は,少なくとも毎学期一回これを行わなければならない。
(2) 室外に持ち出した器具,寝具等はこれを清潔にし,十分空気を通して日光にさらし,室内が乾燥してから持ちこまなければならない。
(3) 校地,建物,校具,井戸,下水その他の設備を検査し,その改善修理を要するものは,速かに処理しなければならない。
水びたし,その他の災害および公衆の集合等によって不潔になった場合,あるいは伝染病の発生した場合は左の方法によって清掃を行わなければならない。
イ 水にひたされた校舎,寄宿舎はなるべくその建具,床板等を取りはずし,日光の射入,空気の流通を図り,床下の汚物でい土を除去し,十分乾燥させなければならない。
ロ 建具,床板,校具,腰羽目等で水びたしになったものは,よく洗浄した後清水又は熱湯でふく。
ハ 水びたしの害を受けた井戸はこれをさらい,汚物を除き,井戸側は清水で洗い,学校伝染病予防規程第十八条に準じて消毒を行わなければならない。
炊事場,食堂,洗面所その他必要と認められるものについても,適宜消毒を行わなければならない。
ニ 右のほか,日常又は定期清潔方法に掲げた各項を適宜準用すること。
(2) 水びたし以外の災害及び公衆の集合等により不潔となった場合,あるいは伝染病の発生した場合は校舎,便所等についてそれぞれ学校清潔方法の日常清潔方法,定期清潔方法及び学校伝染病予防規程に準じて適当な清潔方法を行わなければならない。
大正15年12月7日文部省訓令第26号は,これを廃止する。
前項に掲ぐる10病の外,此の法律に依り予防方法の施行を必要とする伝染病あるときは主務大臣之を指定す。
主務大臣特別の事由ありと認むるときは前項に依り指定する伝染病に対し,命令を以て此の法律の一部を限り適用し,又は地域を限り此の法律の全部又は一部を適用することを得。
第20条 諸官庁及官立の学校,病院,製造所等に伝染病発生の虞あるときは,其の首長は,地方長官と協議し此の法律に準じ予防方法を施行すべし。
2.唾壺内の唾痰は消毒したる後之を便池に投棄し唾痰の附着したる布片,紙片は之を消毒し,又は便池に投棄すること。
3.咳嗽,噴嚏の際は成るべく布片,紙片等にて口鼻を覆うこと。
4.患者の食器,手拭,寝具等は専用とし衣服,寝具は時々日光に曝すこと
5.患者の居室は採光,換気に注意し,掃除は湿布を以て拭浄する等塵埃の飛散を防ぐこと。
6.患者の常用したる衣服,寝具,書籍,其の他の物件を他人に交付し,又は使用せしめむとするときは消毒すること。
7.患者居室又は住家を転したるときは其の使用したる居室又は住家にして必要と認むる場所を消毒すること。
8.患者死亡したるときは其の使用したる居室,衣服,寝具,書籍其の他の物件は之を消毒すること。
地方長官は前項の規定に依り配置したる唾壺適当ならず,又は其の箇数十分ならずと認むるときは期日を指定して其の変更又は増置を命ずることを得。
唾壺内の唾痰は消毒したる後に非ざれば之を投棄することを得す。
「トラホーム」患者の保護者は其の患者をして速かに医師の治療を受けしむべし。
第4条 行政官庁は「トラホーム」予防上必要と認むるときは左の事項を行うことを得。
3.学校,幼稚園,製造所其の他の多衆の集合する場所,又は旅店,料理店,理髪店,其の他客の来集を目的とする場所に付,病毒伝播の媒介となるべき事項を制限し,若くは禁止し又は場所の管理を為す者,若くは其の代理を為す者に対し「トラホーム」予防上必要なる施設を為さしむること。
第3条 何人も性病にかからないようにつとめるとともに性病にかかったときは,速やかに医師の治療を受けなければならない。
第5条 この法律で「性病」とは梅毒,りん病,軟性下かん及び,そけいりんぱ肉芽しゅ症をいう。
この法律で「保護者」とは親権を行う者又は後見人をいう。
第2条 この法律で「予防接種」とは,疾病に対して免疫の効果を得させるため,疾病の予防に有効であることが確認されている免疫原を人体に注射し,又は接種することをいう。
この法律の定めるところにより,予防接種を行う疾病は,左に掲げるものをいう。
3.腸チフス 4.パラチフス
5.百日せき 6.結核
7.発しんチフス 8.コレラ
9.ペスト 10.しょう紅熱
11.インフルエンザ 12.ワイル氏病
この法律で「保護者」とは,親権を行う者又は後見人をいう。
2.学校,病院その他これらに準ずる施設の長。
3.雇用の目的をもって人を寄ぐうさせる者
第2条 保健所は左に掲げる事項につき,指導及びこれに必要な事業を行う。
2.人口動態統計に関する事項。
3.栄養の改善及び飲食物の衛生に関する事項。
4.住宅水道,下水道,汚物掃除その他の環境の衛生に関する事項。
5.保健婦に関する事項。
6.公共医療事業の向上及び増進に関する事項。
7.母性及び乳幼児の衛生に関する事項。
8.歯科衛生に関する事項。
9.衛生上の試験及び検査に関する事項。
10.結核,性病,伝染病,その他の疾病の予防に関する事項。
11.その他地方に於ける公衆衛生の向上及び増進に関する事項。
(第四中隔は幾分第二中隔より低い方が都合が良い。Ⅱ室からⅢ室へ移るとき中隔を流れ越してⅢ室へ落ち込むような調子の方が病原体抑留に好都合である。)
研究の結果中隔4枚(A型)を標準としたのであるが,寄生虫丈けならば2枚(B型)でも略々安全である。消化器伝染病も夏季だけならば2枚中隔でも略安全である。以下其の構造の大体を説明する。
大きさ
原案は一家族10人として設計したものであるから,都合によって多少の伸縮は差支ない。但し少人数で多人数用の便所を使用すれば効果は一層良い。
標準便所の寸法は
長さ 9尺内外(270糎)
幅約 3尺5寸(100糎)
深さ約 4尺以上(120糎以上)
此の表面積が畳一枚半程であるから,大便所と小便所とを備える場合には,大体其の床下へ納まる面積である。
又容積を同一にして,長さ,幅深さを多少は変化しても差支ない。例えば,長さ若しくは幅を少々減じて深さを少々増すことが出来る。原則として此の便所は深い程効果が多い。
壁の厚さ
コンクリートなれば次の厚さで十分である。
底面 3寸乃至5寸 (10糎—15糎)
側面 3寸乃至5寸 (10糎—15糎)
被蓋 2寸5分乃至3寸 (8糎—10糎)
中隔 2寸5分乃至3寸 (8糎—10糎)
内 径
各室とも幅内径3尺(90糎)以上,水深は3尺(90糎)以上となる。各室の長さは多少伸縮できるが,Ⅰは2尺5寸乃至3尺5寸(75—105糎),Ⅱ,Ⅲ及びⅣは1尺(30糎),汲取槽は1尺5寸(45糎)で宜しい。第二—第四室の合計容積よりも第一室の容積が大なる様に設計せねばならぬ。
容 積
改良便池が十分充たされた場合第一室—第四室の包擁容積は
Ⅰ室 22.5—31.5立方尺(90×90×75乃至105糎)
Ⅱ室 9立方尺(90×90×30糎)
Ⅲ室 同上
Ⅳ室 同上
小計 約50乃至59立方尺……有効容積
Ⅴ室 約10立方尺……泄取室容積(但し任意に大きくすることができる)
一家族10人とし,1人1日平均5合の(0.0324立方尺)の排泄量としてⅠ乃至Ⅳ室中に150日乃至180日の糞尿を貯えることができる。即ち,この便所へ新しく排泄された糞尿は約5,6箇月後に至って汲み出されることになる。便所内には糞尿以外のものも多少落ちるから大き過ぎる位の方が宜しいのである。
Ⅰ室が広いのは,糞尿紙綿の類がこの室内で十分腐敗液化してから次へ移動するためであるから,成る可く広い方が良好である。少なくとも有効容積3尺×3尺×2尺5寸とするを要する。
Ⅲ室,Ⅳ室で中隔の間隔を1尺としたのは工事の便宜のためであって1尺以下ではモルタル塗の如き仕事がし難いからである。
Ⅴ室は汲取口であるから任意に伸縮しても差支はない。ます1月に1回汲取る位の大きさで宜しかろう。それにはⅤ室の長さが1尺5寸(45糎)内外あれば十分である。
糞尿落込口
Ⅰ室と大便器を連ねる所は内径1尺(30糎)位の土管と8寸位の土管とを二重にして蛆止めにする。土管は一室の中央に据えつけ,その下端はⅠ室へ入れぬようにする。土管の下端を汚物内へ挿入すると土管内へ汚物が堆積する惧が生ずる。使用人員が多く,しかも入る尿量が少なく,または紙綿等が多く入れられる場合は殊にそうである。Ⅰ室の汚物面はⅡ室以上よりも高くなるものであるから,土管の下端はⅠ室の上蓋で止めておくがよい。
大便器は在来のものとは型が少し変り,後穴大便器として市販せられ図に示す如くその裾は土管の内側へ挿入されるようにせねばならぬ。大便器の落し孔は直径7寸もあれば十分なものである。土菅は長い方が利である。それには便所の床を高くするがよい。便所の床と汚物面との距離を3尺以上保たせたい。そうするには便池を地中に深く埋没して,汲取口,非常掃除口だけを地表に出すことも一つの仕方である。
大便器の蓋
この改良便所では多少の糞尿面が露出するを免れることができない。従って蠅が忍び込み蛆が発生して,それが土管壁を這い上り大便器から床へ這い出す機会がないとはいえぬ。
これを防ぐには大便器に木製かブリキの手軽な蓋をつければ蠅の出入りをとめ,同時に蛆の心配もなくなる。蠅や蛆を完全に防ぐためには便器に蓋をする習慣を必ずつけねばならぬ。また大便器と土管との間は密着させねばならぬ。此所に間隙があると床面から蠅が出入する外,汚水,悪臭が漏れ出る危険もある。
被 蓋
便池の被蓋は便池の内容を完全に密封するようにできていねばならぬ。被蓋が不完全であれば,臭気を発散し,蠅,蛆を出入りせしめ,あるいは汚液の流出する惧がある。
小 便 所
男子用の小便所を別に設ける場合には,小便の流口は大便落込土管の成るべく上方へ開口させる。大便所の糞尿落込土管内へは糞尿の外紙綿等も落下堆積するものであるから,男子の尿,あるいは少量の手洗水等をその堆積物の上から落すようにする方がよいのである。
農家等で便所外へ放尿することが多い場合には,時々適宜の水を注ぎ込むで便池内の流動を助ける必要が起ることもある。
汲 取 口
Ⅴ室の真上あるいは片隅へ寄せてコンクリート造りマンホール(汲取口)をつける。マンホールの蓋をとれば普通の肥柄杓でⅤ室の汚水を底まで汲み乾すことができる。但し他室は常に糞尿液で充ちておらねばならぬのであるから,Ⅴ室以外からは汲み出すことをしないようにする。
マンホールの蓋はよく密着して光線,昆虫はもとより,臭気も抜け出さぬようでなければならぬ。マンホールのできが悪いと雨水が流れ込むことがある。マンホールは地盤面より3寸5分(10糎)以上高くするとか,マンホールを少しく斜面にするとか,適当の注意を以てこれを防ぐがよい。
防水モルタル
この便池に外から水が滲透してもいけないし,内から水分が漏出してもいけない。便所の内面は防水モルタルを塗り,よく水が持つことを確めた上で使用を始めねばならぬ。これは最も肝要な点である。殊にⅤ槽を汲取ってもⅣ槽から漏出せぬ様に第四中隔の防水に念を入れなくてはならぬ。
便池の埋没
改良便所の便池は殆ど全部便所の床下の土中に埋め,汲取口非常掃除口の所だけ屋外に顕われていればよい。従ってⅠ室の糞尿面は地表以下1尺(30糎)に近い。便所使用者の眼と鼻から糞尿面を成る可く遠ざけようと思えば,大便器を据える床を成るべく高くするがよい。そうすれば土管の部が長くなり便池内は益々暗くなる。
寒い所などでは便池を更に地下1尺(30糎)位埋設する方が宜しい。
かく,便池は成る可く低く,大便器は成る可く高くと心懸ければ,気持のよい便所ができる。大便所と小便所との配置は上屋の構造に従ってどう変えてもよい。またⅤ室の如きはこれを切り離して任意の場所に置いて差支えない。
非常掃除口
この改良便所を長く使用している内に滓がたまることもあろうし,不溶解性の物を取り落してそれが段々堆積するようなこともあろう。そういう特別の掃除口としてⅠ及び,Ⅱ室の一隅に非常掃除口を取りつけておく方が安全である。
換気装置
臭気はこの改良便所においては在来の便所に比して甚だ少ない,然し完全に臭気を避けるためには換気管を糞尿落込土管の上部側壁から,または直接第一槽から導き出すことが必要である。内径3寸半(10糎)高さ13尺(4米)以上とする事。
あるいは便所の天井に空気抜きの窓をあけて換気をよくするのもよい。あるいは便所の窓に金網を張って置いて窓を開放するのもよい。
手 洗 水
少量の水を掬して手を流う場合,あるいは点滴装置などの水洗水なれば小便管の中へ落しても差支ない。只水道を直接使用するとか,水流の盛んなタンクを使用する場合には,余り大量の水が便池へ流し込まれる結果汲取分量を激増し便池の効果を減殺する惧があるから,この点を注意して過度の水分投入を避けねばならぬ。
Ⅲ.参考文献
1.文部省著作並びに監修図書
新制中学校,新制高等学校の望ましい経営の指針
新しい中学校の手引
教育心理(上・下)
新制中学校,高等学校管理の手引
中学校建築の手引
学習指導要領一般編
社会科学習指導要領(中等学校)
体育科学習指導要領(中等学校)
社会科補充学習指導要領
理科学習指導要領(7,8,9学年用)
理科学習指導要領 高等学校用(物理,化学,生物,地学)
小学校経営の手引
児童の理解と指導
中学校,高等学校の生徒指導
2.保健関係図書
書名 著者 発行所
衛生教育概論 荷見秋次郎 栗林書房
新学校身体検査法精義 荷見秋次郎 栗林書房
中学校の衛生教育 荷見秋次郎 牧書店
外3名
衛生教育テスト 荷見秋次郎 栗林書房
外3名
健康教育の理論と実際 荷見秋次郎 牧書店
外3名
学校衛生 川畑愛義 学道書房
衛生教育 斎藤 潔 公衆衛生社
滋賀秀俊
運動医学講座 東 俊郎 七星閣
(第1号より5号まで) 外10名
公衆衛生学(第1集) 古屋芳雄 監修 日本臨床社
公衆衛生学(第2集) 古屋芳雄 監修 日本臨床社
公衆衛生学(第3集) 古屋芳雄 監修 日本臨床社
公衆衛生学 戸田正三 東洋書館
学校給食の実際と理論 小田靜枝 家政教育社
実用環境衛生学 川畑愛義 東洋書館
スポーツ医学概論 斎藤一男 文光堂
佐藤 宏
予防医学の理論と実際 飯村保三 寧楽書房
健康教育技術 下田 巧 牧書店
APPROVED BY MINISTRY OF EDUCATION (DATE NOV.14, 1949)
中等学校保健計画実施要領
昭和24年11月14日 印刷 同日翻刻印刷
昭和24年11月18日 発行 同日翻刻発行 定価24円20銭
[昭和24年11月18日 文部省検査済]
著作権所有 著作兼発行者 文 部 省
東京都中央区銀座一丁目五番地
翻刻発行者 大日本図書株式会社
代表者 佐久間長吉郎
東京都新宿区市谷加賀町一丁目十二番地
印刷者 大日本印刷株式会社
代表者 佐久間長吉郎
東京都中央区銀座一丁目五番地
発行所 大日本図書株式会社