つぎにあげる単元の一覧表は,本州中部のある学校のある農業課程に適当であると思われる単元構成の一例である。
“稲作”という単元は,いねを中心とした単元であるが,この単元に結びつけて学んだ方が都合のよいすべての事がらを農業教育の全分野からとりあげ,また反対に,いねについての事がらでも,他の単元の中で学んだ方が都合のよい虫がらは他の単元にゆずるというようにして,各単元を組み立てた。そうして,農業Ⅰ・農業Ⅱ・農業Ⅲに含まれる諸単元は,それぞれの指導の重点を形づくるようにしてある。
農業Ⅰの指導内容,たとえば“稲作”とか“にわとり”の指導はこの年だけで終るのではなく,農業Ⅱの指導の重点である“特殊な農業生産”や,農業Ⅲの指導の重点である“農業経営の確立”と結びついて次第に発展するようになっている。したがって,家庭実習や学校の分担の実習では,農業Ⅰで始めた仕事を年々ひろげながら,さらに新しい仕事を加えていくようになるのである,各学校の各農業課程の学習指導計画はこれに少し手を加えればよい場合もあるであろうが,また,これを参考にして全く新しく作らなければならない場合も少なくないであろう。
また,この例は将来の農民養成の課程を,主として一人の教師が指導する場合に適するようにしくんだのであるが,主任教師のほかに,他の教師の援助を受けるような場合や,やや専門的な事がらもとりいれて初級技術者を養成するような場合には,それに応じた修正を加えなければならない。すなわち,他の教師の援助を受ける場合には,その部分が,全体との関連をもつと同時に,また一つの独立の体系となっていることが必要である。しかも,一年間あるいは一学期間は,その指導時間がほぼ平均に配当されることが必要
総合農業の単元一覧表
|
|
|
|||||
指導の 基本的な
重点 農業生産 |
指導の 特殊な
重点 農業生産 |
指導の 農業経営
重点 の確立 |
|||||
|
|
|
|
|
|
||
|
|
|
|
|
|
|
|
プロジェクトについて
農業クラブ活動
稲 作
豆 類
雑 穀
夏 の 野 菜
茶 と 大 根
秋まきの野菜
麦 類
じゃがいも
さつまいも
う さ ぎ
やぎ・ひつじ
に わ と り
ぶ た
人 力 農 具
木 工・金 工
わ ら 細 工 竹 細 工
|
15
5
10
10
14
23
8
8
10
8
10
8
8
8
7
5
5
13
|
15
5
25
7
10
18
5
8
10
8
10
8
8
8
7
5
5
13
|
プロジェクトについて
農業クラブ活動
秋まきの野菜
じゃがいも
草花 と 花木
種 と り
果 樹
土 と 肥 料
養 蚕
農 村 林 業
牛 と 馬
飼養 と 飼料
畜 力 農 具
木工(簡単な建築を含む) 金 工
土工およびコンクリート工 |
15
5
3
8
5
8
8
3
0
15
13
20
15
8
10
8
13
8
10
|
15
5
8
8
5
8
8
8
5
20
13
0
0
23
10
8
13
8
10
|
農場およびプロジェクトの展望
農業クラブ活動
作物・家畜の管理
土 と 肥 料
作物の品種改良
農 業 経 営
農 業 簿 記
購入 と 販売
農産物の加工
作物の保護
農業法規と政策
農村の生活
農作業と機械
動力農機具
農他の開発と改良
農 業 測 量
|
15
5
8
10
10
18
10
5
25
10
7
7
8
15
17
5
|
|
|
175
|
175
|
175
|
175
|
であろう。初級技術者を養成するような場合も,農業全体の基礎の上に専門的な分野の学習が進められる必要があるから,多くの場合,農業Ⅰに相当する部分を学んだ後,これとの関連を保ちながら,特殊な専門分野に発展することになるであろう。もっとも,その専門分野の性質によっては,第一学年から専門分野をとり入れた方が都合のよいこともあろうし,第三学年になってからとり入れた方がよいこともあろう。また,第二学年から専門分野をとり入れても,その専門分野と平行あるいは融合して,この例の農業Ⅱ,農業Ⅲの内容の一部を学ぶ必要のある場合も少なくないであろう。
つぎに示すような指導によって,生徒のよい家庭実習や分担の実習が導かれ,また,それらの実習によって,このような指導にもとづく生徒の学習活動はいよいよ盛んになって来るであろう。
この節ではとりあえず,二つの単元だけについて述べた。他の部分は補遺で補うことにする。
ここの各単元に述べてある内容は,少しく多いめに上げてあるから,各学校では,適宜取捨して指導する必要がある。しかし,郷土の特殊な事情によって,つけ加えなければならない事がらもあることはいうまでもない。
|
|
|
|
|
全体に関するもの
永井威三郎著 実験 作物栽培各論 上巻(禾穀類編)
岩槻信治著 年中行事 農作物 増収法
稲作改良精説
農業実習の手引 |
||
(1)水
水の必要な時期 用水設備 水温 (2)気温・標高・日照 (3)土質 (4)収量 (5)労力の分配 (6)郷土の稲作 (8)わが国の食糧事情と稲作 |
(1)郷土の用水・排水設備や水の不足する時期を調べ,改善の計画を立てる。
(2)郷土の気温のグラフを作り,稲作に適する期間を調べる。 (3)郷土の稲作の収量を他の地方 と比べる。 (4)稲作と他の作物との10アール当たりの収益を比べる。 (5)米の栄養を他の作物と比べる。 (6)今日の食糧事情,米の需給,用途をそれぞれグラフに作る。 |
||
|
|||
(1)古い品種と新しい品種
(2)郷土の品種の分布 (3)品種の特性 栽培方法 労力の分配 |
(1)郷土の稲の品種の移り変わりを調べる。
(2)郷土のおもな品種の分布図を作る。 (3)郷土のおもな品種に対する世間の評判を聞いてまとめる。
|
||
|
|||
(1)種もみの分量
(2)純粋種 (5)種もみの消毒 |
(1)本田の面積と種もみの分量との割合を計算する。
(2)郷土の採種組織を調べる。 (3)農事試験場を見学する。 (4)塩水選を実際に行う。 (5)水銀製剤やホルマリンの消毒を実際に行う。 |
||
|
|||
(1)直まきと植えかえ
(2)苗代の種類・時期・苗代日数 (3)苗代の面積
(4)苗代の場所 |
(1)直まきの写真・見学旅行。
(2)いろいろな苗代の写真・見学旅行。 (3)郷土の1㎡当たりの種の量,本田面積と苗代面積の割合を調べる。 (4)郷土の苗代の場所,地力の維持の方法を調べる。 (5)水口と田の中の水温をはかりグラフにする。 |
農民叢書
第24号 稲−丈夫な苗
|
|
|
|||
(1)うすまき・厚まき
株まき・すじまき 種まき機
|
(1)うすまきと厚まきの苗の育ちぐあいを比べる。
(2)一定量の種もみを一定両積にばらまく練習をする。 (3)株まき機・すじまき機を使ってみる。 (4)植木ばちを使って水のかけ引きの実験をする。 (5)実際の田で害虫・病気の発見,ひえの見分けをする。 (6)いろいろな虫を防ぐ方法のくふうをする。 (7)あおみどろを薬品によって退治する。 |
||
|
|||
(1)肥料
自給肥料 肥料の分解 土の乾燥 裏作のとり入れ期 用水 人力・畜力・機械 力の能率 |
(1)施肥の基準に照して肥料設計をする。
(2)郷土の田の作り土の深さを調べる。 (3)郷土の田の打ち起しの時期と,地力利用の上から理想とされている時期を比べる。 (4)郷土の本田の準備における畜力・機械力の利用状況をグラフにする。 |
||
7. 田 植 え | |||
(1)苗の成熟度
CN 比率 不時出穂 (2)植え付け距離 1株の本数 (3)そろったいね 正篠植・並木植・ 横なわ植・能率 (4)植え付けの深さ 二段根 (5)株張り(分げつ) |
(1)成熟した苗を見分ける。
(3)速く植えるけいこをする。 (4)定期的に茎の本数を調べる。 |
||
|
|||
(1)田の草取りの意義
(2)時期・回数・方法 (3)畜力利用 |
(1)田の中や周囲の雑草の標本を作り,その生活を調べて書き入れる。
(2)田の草取りといねの色,若返りの様子を調べる。 |
||
|
|||
(1)栄養成長と生殖成長
(2)穂を出す茎と出さない茎 (3)幼穂の形成と環境 (5)穂肥 (6)水のかけ引き |
(1)定期的にいねの株を解剖して幼穂の育つ様子を写生する。
(2)根の張りぐあいを調べる。 (3)穂肥が必要かどうかいろいろな田について調べる。 (4)水温をはかってグラフを作る。 |
||
|
|||
(1)病気・害虫の見分け
(2)早いうちに発見すること (4)ずいむしのはいっている茎の切取り (5)ゆうが燈 (6)気象による災害 |
(1)病気・害虫の標本を作る。生活史を図にかく。
(2)いもち病菌の顕微鏡による見分け方を習う。 (3)ボルドー液その他の薬剤を作ってかける。 (4)葉ざやの色の変った茎を見つけて切り取る。 |
農民叢書
第17号 稲の病気の見分け方 農民叢書 第14号 イネドロオイムシの防ぎ方 農民叢書 第29号 イネゴマハガレ病の防ぎ方 農民叢書 第15号 人力噴霧機とその使い方 |
|
11. 収穫の予想 | |||
(1)穂数と粒数
(2)坪刈−刈り方,生もみからの収量計算 (3)立毛による品種の見分け (4)品種と作柄およびその原因 |
(1)穂数と粒数から収量を計算し実収高と比べる。
(2)坪刈りによる予想と実収高を比べる。 (3)郷土の田を見てまわって,立 毛によって品種を見分け,特徴をかきとめ収量を推定する。 (4)新聞の収穫予想の切抜きを作る。 |
||
12. 稲 刈 り | |||
(1)稲刈りの方法と能率
(2)いねの乾燥 |
(1)郷土のいねについて刈取りの時期を定める。
(2)郷土のいろいろな刈り方・たばね方を見てまわり,能率を調べる。実際にやってみる。 (3)いろいろな稲かけの写真・見学旅行。 |
||
13. 稲こき・もみすり | |||
(1)稲こきの時期・方法・能率
(2)稲こき機の回転数 (4)もみすりの時期・方法・能率 (5)もみすり歩合 |
(1)稲こきのそれぞれの方法の割合・分布をグラフや地図にする。
(2)いろいろな稲こき機の能率を調べ,グラフを作る。 (3)適当な乾燥の程度を見分ける。 |
||
14. 品質の鑑定 | |||
(1)品種と品質
(2)栽培法と品質 (3)とり入れ後の処理と品質 (4)容積重と品質 |
(1)もみ・玄米によって品種を見分ける。
(2)品評会に出品し,また審査に参加する。 (3)玄米の乾燥の程度を比べる。 (4)品質のちがいのできた原因を調べる。 |
||
|
|||
(1)検査規則
(2)俵につめる方法,なわのかけ方 |
(1)俵につめる方法や,なわのかけ方を実際について習う。 | ||
|
|||
(1)もみの貯蔵
白米の貯蔵 (3)空気中の温度 |
(1)貯蔵穀物の害虫の生活史を図にかく。
(2)くん蒸剤を見分ける。 (3)米の貯蔵庫を見学する。くん蒸を手伝う。 (4)貯蔵庫の設計図をかく。 |
||
|
|||
(1)生産費に含まれるもの
(2)評価のしかた (3)田の面積10a当たりの生産費,玄米60kg(1石)当たりの生産費 |
(1)プロジェクトについて生産費の計算をする。
(2)必要労力を作業別に調べ,グラフにかく。 |
||
18. 販 売 | |||
(1)供出割当
(2)供出制度 (3)値段 (4)輸送 |
(1)供出割当の基準や,供出価格の決定についての新聞の切抜きを作る。
(2)郷土の米が消費者に渡るまでの輸送経路を調べる。 |
||
19. わら・もみがら・こめぬかの利用 | |||
(1)わらの利用
(2)もみがらの利用 (3)こめぬかの利用 |
(1)郷土のわら・もみがらの利用状況をグラフに作る。新しい利用を考える。 | ||
20. 稲株・わらの処理 | |||
(1)すいむしの駆除と稲株やわらの処理
(2)いもち病の予防とわらの処理 |
(1)稲株やわらの中のすいむしの幼虫を調べ,グラフに作って掲示する。
(2)いなわらについたいもち病のはん点を調べる。 |
Ⅱ にわとり〔第一学年〕
|
|
|
|
||
(1)養鶏の経営形態
(3)鶏舎として利用できる建物 (4)自給飼料と購入飼料 (5)養鶏に向けることのできる労力 (6)生産物の処分 (7)他の家畜飼養または作物栽培などとの関係 |
(1)養鶏農家および専業養鶏場を見学する。
(2)自分の家について飼料需給の見積りをしてみる。 (3)鶏含・器具類の見積りをして見る。 |
伊藤安■吉著 養鶏大成 |
|
||
(1)古い品種と新しい品種
(2)各品種の特性と分布 |
(1)写真・図譜・図鑑などで調べる。
(2)養鶏農家および専業養鶏場を訪問して調査する。 |
占野靖年編
家畜図鑑 |
|
||
(1)鶏含の種類
繁殖用・ふ卵用 育すう用 (3)採 光 (5)止り木・えさ箱 (7)理想鶏含の設計 |
(1)青写真などで鶏含の設計図を研究する。
(2)自分の家の鶏含の設計図を作る。 (3)優良養鶏農家または種畜(鶏)場などを訪問して研究する。 (4)産卵箱などを作成する。 |
|
|
||
(1)購入先の選定
|
(1)種畜(鶏)場の繁殖および産卵記録について研究する。
(2)優良鶏と劣等鶏の見分け方を習う。 |
|
5. にわとりの飼養 | ||
(1)えさをやる回数
(2)飼料の配合 (3)飼料標準 粒え・粉え・ねりえの特徴と価値 (4)えさ箱と飼料の散逸 (5)飼料の急変 (6)放し飼いの意義 |
(1)配合飼料についてその中に何がまざっているかを調べる。
(2)配合飼料について配合材料の置き換えを研究する。 (3)飼料と卵のからの強さ,卵黄の色との関係を調べる。 (4)飼料の価格を計算する。 |
|
|
||
(1)鶏舎とにわとりの密度
(2)鶏含および運動場の整備と清掃 (3)砂浴場および放飼場の利用 (4)産卵箱の整備 (6)点燈飼育 (7)雌雄配合の割合 (8)鶏ふんの処理 |
(1)養鶏農家および専業養鶏場を訪問して研究する。
(2)羽数とえさ箱の数との関係を調べる。 (3)羽数と産卵箱との関係を調べる。 (4)トラップネストの構造を調べる。 (5)集卵回数と卵のよごれの関係を調べる。 (6)産卵の割合をグラフに表し,季節と産卵の関係を調べる。 (7)点燈飼育の効果を調べる。 |
|
|
||
(1)ふ化の時期の決定,ひなを育てる時の気候,初産の時期
(2)人工ふ化と母鶏ふ化 (3)種卵の選定 |
(1)作業中のふ化場を訪ねて見学する。
(2)ふ卵器の使い方を習う。 (3)検卵の実習。 (4)無精卵と発育中止卵との割合を調べ,受精率・ふ化率を計算する。 (5)ふ化に要する燃料,電気の量およびその価格を調べる。
(6)図によって初生びなの雌雄鑑別の要領を学ぶ。 |
原田実著 図解雌雄鑑別の手ほどき 増井清著 初生雛雌雄鑑別の研究 |
|
||
(1)熱源と育すう器の種類
(2)温度の調節 (5)えさ箱・給水器の整理 (6)えさ付 (9)育すう飼料の設計 |
(1)ひなを育てる時期に種畜(鶏)場を訪ねて見学する。
(2)ひなを育てることの実習をする。 (3)ひなの日齢と保温,えさの摂取量,体重などの関係についてグラフを作ってみる。 (4)石油・練炭・電気などの所要量と費用を調べる。 |
|
|
||
(1)肥育鶏の需要
(3)えさのやり方および管理
(4)肥育用の飼料 (5)にわとりのと殺・整形・解体 |
(1)肥育鶏とそうでないものの価格のちがいを調べる。
(2)肥育用飼料を設計する。 (3)肥育用えさ箱の操作をしてみる。 (4)摂取飼料と体重増加の関係をグラフに作ってみる。 (5)と殺・脱毛・解体の実習を行う。 |
|
|
||
(1)病気の種類
(3)おもな薬剤とその応用
(4)病鶏の隔離とその処分 (5)鶏含・運動場および器具類の消毒 |
(1)ひなはくり検定の実習を行う。
(2)しらみなどの外部寄生虫の駆除を実習する。
(3)鶏舎および器具類の消毒の実習をする。 (4)運動場の土の取換えの実習をする。 |
|
|
||
(1)鶏卵の貯蔵と荷造り
(2)羽毛や鶏ふんの利用と処理 (3)飼料の節約 (4)共同出荷 (5)養鶏生産物の生産費の算出 |
(1)貯蔵鶏卵の新鮮度の低下状況を調べる。
(2)鶏卵選別・荷造りの実習をする。 (3)養鶏生産物の生産費を算出してみる。 |