家庭との関連を密にするには、幼椎園や保育所がひとりひとりの子供の家庭的環境をよく知ることが、最もたいせつである。この目的を果たすために「父母と先生との会」を常設することは、最も効果的であり、先生の保育心もまた、これによってよいしげきを受けることが少なくないであろう。
なお「父母と先生の会」を作るには、およそ、次のようなことを頭に入れておくべきである。
(二)複雑な形式は必要でないが、会の運営に必要な程度の簡単な組織はある方がよい。
(三)会の組織は全く民主的で、行きすぎた先生の指導は避くべきである。親は先生の立場をよく理解し、先生は親の苦労を知ることが、何よりもたいせつなことである。
(四)会の活動はもっぱら子供の教育のためである。保育法の共同研究、おりおりの講話、保育上の実際問題の話し合い、幼児の個性発展や個人差について語り合うことや、保育設備の充実、材料の補給、必要な場合には保護者どうしで助け合ったり、各幼児の調査に先生と協力することなどは、すべて、この会を通じて行われる。
(五)会合はなるべく定期的に開く方がよい。こうした会合は先生と父母との親しみを深めるものである。なお会合は常に簡素に、格式張らずに開きたいものである。
方法としては、一般的な講演や講習などのほかに、普通の社会教育よりは、むしろ日々の保育の実際問題を採り上げてやった方がよい。
父母教育の内容は日々の実際問題を主とし、むずかしい原理や抽象的な理屈は少なくする。問題としては、教育のことのみでなく、子供の健康や、家政のことや、衣食住のことや、日常生活のことを、詳しく学ぶことが望ましい。
父母を、もっと知的に向上せしめるのに役立つ社会的、芸術的、学問的教養を与えれば、更に結構なことであろう。要するに、子供がよくなるとともに、父母もまたよくなるような教育と与えることである。
こうした教育が、現在の子供の保護者のみでなく、広く近所の親たちにまで及ぶならば、幼稚園や保育所が、その町や村に存在する意義が一段と大きくなるであろう。
2.幸服な円満な子供にするには、まず健康に育て上げること。
3.子供は家庭の一員として仕事を分け合い、ともに楽しむこと。
4.愛情・権利・責任感の必要、偏愛の害。
5.父母の人がら、夫婦生活の児童への影響、働く母の問題。
(イ)、子供の成長を考え、その段階にしたがって育てること。
2.子供の個人差を考慮すること。
3.成熟の程度及びそれと保育との関係を知ること。成熟には時間を要するということを知るのが重要なことである。
4.それぞれの発達段階における子供の能力を知ること。新しい能力を使用する機会としげきを与えること。
2.子供の成長を考慮に入れ、一家の生活に適応するように日課を考えて変えてゆくこと。
2.自分がのけ者にされていると思うときには子供は反抗的になったり、ひがんだりする。
2.食事の習慣についておとながあまりこまごまと世話をしたり心を配り過ぎないこと。そうするとかえって悪い習慣がつくことを考えておくこと。
2.快く睡眠をとるようにしてやること。床につくのは一般にいやがるものである。
2.感情に走ったり、あまり気をくばり過ぎないこと。あまり気を使い過ぎるとかえってしなくなる。
3.健全な態度をとり、身体機能に関する用語は科学的であること。
2.そのような満足を与えるためにほかの経験をさせる。たとえば手に握るおもちゃを与えるようにすれば直る。
3.はずかしめたり、しかったり、指に薬をぬったりしてこのような習慣を禁止することは危険である。子供がかえっていうことをきかなくなるといけないからである。
(ロ)、悪い行為の原因は、情緒的混乱と、子供の欲求が満たされないところにあること。
(ハ)、子供をでしゃばりにさせたり、あるいは、はにかみやにさせる原因は何か。
(ニ)、子供の不安や恐怖はどうして起り、また起ったときには、どうすればよいか。
いつまでも監督を受けたりせかされたりせずに、自分のことや他人のことを自からするようにする。幼少のころから他人にたよらずにすることは、大きくなってから独立できるもとである。
(ロ)、質問に対しては簡単に、しかも、わかりやすく答えてやる。
(ハ)、幼児の質問には、まじめに、正しい解答を与えて、子供がこの問題でぎもんのおきたときは、いつでも両親に質問するように、子供の信頼を得ておくこと。
(ニ)、幼児も年齢が進むにれて性に関する知識をいっそう求め、理解しようとする。
(ロ)、子供の環境にあるものはなんでも遊び道具となる。
(ハ)、簡単な遊具が感覚器官を発達させ、協働動作の発達を助長する。
(ニ)、粘土・絵の具・積み木・おもちゃなどは、創作的遊びや模倣遊びのよい材料になる。
(ホ)、遊びにおける父母の役割はだいじである。
(ヘ)、遠足・絵本・お話・音楽・唱歌等は、子供の遊びの経験を豊富にする。
(ロ)、グループ内で子供どうしが互に接触して遊ぶことはたいせつなことである。
(ハ)、集団生活の経験を与えるところに幼稚園や保育所の価値がある。
(ロ)、家庭と保育施設との協力、父母の教育がたいせつである。
(ハ)、保育に必要な社会施設を知ることが必要である。
(ロ)、他人の権利を認める。人種・宗教・経済的地位並びに文化的背景に関係なく、あらゆる種類の人間の価値を認めることが必要である。
(ハ)、あらゆるものを理解し、協力してゆく積極的な態度を助長することが必要である。
連絡の事項、有効な連絡法をここに述べる余裕がないので、就学前の教育と、就学後の教育とは、ともに一貫した目的と方法とを持たなければならないことを書き添えるにとどめておく。