高等学校物理科の学習指導要項(試案)
これは学習指導上の目標や注意事項などの基準を示した一案であって,将来は完全な学習指導要領が編修されなければならない。
1.目標
中学校で身につけた理科の能力・態度及び知識を基礎として,物理現象に関する研究の方法や知識体系を確実に学び取らせ,その結果さらに高い学習に進む基礎を作り,またこれを実生活に活用する能力を得させる。
2.理解の目標
2.一つの系の中のエネルギーの増減は,そこにはいり,あるいは出たエネルギーの量と同じである。
3.物理的の量の多くはスカラーやベクトルで表わされる。
4.物理的の量は,適当な方法によって測定することができる。
5.物質の性質は,それを作っている分子・原子の性質により,かつそれらの結合または集合の状態によってきまる。
6.物質の状態(気体・液体・固体)は,それに加えられる圧力と温度によってきまる。
7.物体は外力によって変形する。
8.物体の運動の変化を起す原因は力である。
9.一つの作用があれば,大きさが等しく向きが反対の反作用がある。
10.物体は,その位置エネルギーが極小のところで最も安定である。
11.物質の各部分は互に引力を及ぼし合っている。
12.物体の運動は,いろいろの抵抗によって変化を受ける。
13.熱は高温の物体から低温の物体に移る。
14.磁荷の間,電荷の間には力が作用し合う。
15.電界が変化すると磁界を生じ,また磁界が変化すると電界を生ずる。
16.波動によってエネルギーが伝えられる。
17.波動は重畳される。
18.波動は媒質によって速度が変わるが,振動数は変わらない。
19.電気量には素量がある。
3.教材一覧
2.運動の法則(速度・加速度,力と加速度,質量・慣性,運動量と力積)
3.剛体の運動(回転慣性量)
4.運動と抵抗
5.仕事とエネルギー(単一器械)
6.流体(流体圧,浮力,圧縮,流れの法則,粘性,流体の抵抗,表面張力)
7.弾性とそ性(塑性)
8.熱と物性(温度,熱膨脹,絶対温度,熱量,比熱,蒸発と凝結,湿度,熱伝導・熱ふく射)
9.熱理論(等温変化と断熱変化,熱機関の循環過程,熱効率,分子運動)
10.振動体(単振動・減衰振動・強制振動,振動の合成)
11.波動(縦波と横波,ハイゲンスの原理,反射・屈折・干渉・定常波,波動の速度)
12.音(楽音と騒音,音の高さ・強さ・音色,音の調和,共鳴,ドプラー効果)
13.幾何光学(光の反射・屈折・分散,光学器械)
14.波動光学(光波,干渉・回折,偏光)
15.磁気(耐久磁石,磁界,磁気誘導,地磁気)
16.電気抵抗(起電力,電流,電気抵抗・直流抵抗の法則)
17.電流の作用(熱作用・磁気作用・電解・電池,電気計器)
18.静電気(電気量・電子,電界・電位,電気容量,電気変位)
19.電磁誘導
20.電磁気単位(静電単位・電磁単位・実用単位)
21.交流
22.電気振動と電磁波
23.粒子線とふく射線(放電・電子線・エックス線・放射能・スペクトル・結晶構造)
24.原子構造
4.指導上の注意
2.基礎的な事項については十分な理解を得させることを主眼とする。
3.なるべく観察・実験を中心として自発的に学習を進め,かつ,簡単な実験の技術を身につけさせる。
4.物理現象の教量的取扱いは,数学の予備的知識を身につけることによって達せらることを具体的に理解させる。
5.実験と理論との関係を明らかにし,実験の結果については常に吟味,検討させる。
6.重要な概念・法則及び理論は,いろいろな事象においてくり返しこれを取り扱い,その意義を徹底させ,個々の場合に対する応用に慣れさせる。
7.日常生活並びに産業との関連に留意し,物理学の発達が文化の向上にいかに貢献したかを知らしめる。
8.例えば,自動車・水力機械・ラジオなどについて総合的な学習をさせる。
9.疑問や未知のものを明らかにしようと努めることによって,法則や原理が発見され,物理学が進歩したことを理解し,常に新しい方法のくふうに努力する態度を養う。
10.危険・災害等の防止に留意する。
11.参考書・参考資料を活用する能力を養い,自発的学習態度を起すように努める。
12.つとめて研究所・工場等の参観を行い,また物理に関する講演会・映画等によって理解を助けるように努める。