第八章 第九学年の水産指導
第九学年の指導に当たっても,各地方の事情にもとづいて最も効果ある指導計画が立てられるべきであるが,今かりに一例として,第九学年の指導の重点を「水産業はどのようにして発達させるか。」という点において指導する場合について述べることにする。
水産業を発達させるためには,まず,水産動植物の資源が対象となる。それ故,単元1の,「海の資源はいくらとっても絶えないか。」において,漁獲を維持し,更に漁獲を高めるということはどんな意味をもっているかを理解させた後,単元2で,海そうの増殖,単元3で貝類の増殖,単元4で魚類の増殖にふれ,それぞれの水産生物に応じた増殖法を理解させることができる。
資源の増殖について一応理解させた後,しかも安全に合理的・能率的に漁獲するにはどのようにすべきかの問題に発展し,単元5で漁船ならびに発動機関についての知識・技能を習得し,単元6では海洋の気象を見きわめさせ,次いで単元7で航海の技術に触れるのである。
水産業の経営を合理的・能率的にし,水産業者をはじめ,漁村に居住する人たちの生活を充実させ,更に豊かな生活をつくりあげるために単元8で漁港の施設を見学し,単元9で漁村生活のあり方を研究することにする。
かくて,単元10の私たちの将来によって,水産を学んだ生徒が,みずから体験した知識と技能を基礎とし,先輩や教師の助言によって,将来の進学や職業をきめるというような指導体系が考えられよう。
各指導単元の割当時間は教材配当表参照(17ページ)
単元1. 海の資源はいくらとっても絶えないか
1. 目 標
(2) 海の資源の増減はどんな原因によるかを理解する。
(3) 水産生物の繁殖を保護するためどんなことを制限し,禁止しなければならないかを理解する。
(4) 水産生物の繁殖を保護し,助成する態度を身につける。
2. 指 導 法
イ. 水産生物の成長・繁殖に関する研究をする。
ロ. 水産生物の成長や繁殖をさまたげることにはどんなことがあるか,調査し,研究する。
ハ. その地方における漁獲の多少は,どんなことがもとになっているかを調べる。
ニ. 漁業上において,制限や禁止にはどんなことがきめられてあるか,また,それはどんなことを目的にしたものかを調べる。
ホ. その地方における漁業上の制限や禁止およびその効果について実情を調べる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 同じ種類の漁獲物について,大小や年齢を調べて記録する。
(ロ) 漁獲高を調べ,グラフを作成する。
(ハ) 漁獲について,制限し禁止していることがらについて調べる。
(ニ) 有用水産生物の害となる生物について調べる。
ロ. 理解のために
(イ) 作成したグラフによって,漁獲の増減には,どんなことが原因になっているか調べる。
(ロ) 水産生物の繁殖について話を聞く。
(ハ) 水産生物の繁殖をさまたげるものにはどんなことが関係しているか話し合う。
(ニ) 生産を維持し,これを増強するにはどんな方法がとられなければならないかを話し合う。
(ホ) 漁獲能率を高めることと,資源とはどんな関係があるかを話し合い,教師の説明を聞く。
(ヘ) 漁業上における制限と禁止にはどんなことがあり,どんな目的のもとに実行されなければならないかを聞く。
ハ. 応用として
(イ) 有用水産生物の繁殖をさまたげる害敵をとりのぞく。
(ロ) 資源を維持し,漁獲を永続させるには,どんなことに留意しなければならないかを研究する。
3. 学習結果の考査
水産資源はどんな原因で増減するかについて考査する。
さらに,私たちがこれを維持し,増強するにはどんな方法がとりあげられるかというような点について考査する。
単元2. 海そうの増殖
1. 目 標
(2) いろいろな海そうはそれぞれ違った場所に生育し,違った繁殖のしかたをしていることを理解する。
(3) 有用な海そうはどんなふうにして増殖するかを理解する。
(4) 附着場所を作るための仕事や増殖材料を作る仕事を練習する。
2. 指 導 法
イ. 海そうの種類とそれぞれの生育,繁殖およびその環境について研究調査する。
ロ. 有用海そうの増殖法について理論と実際を研究調査する。
ハ. その地方の海そうの種類と増殖の実情について調べる。
ニ. 海そうの標本,掛け図,繁殖の図,附着材料(ひび)などを準備する。
ホ. その地方の実情を考慮し,雑草刈り取り,附着面の増設または附着材料の製作などを組み合わせ,生徒の自発的活動を助け,能率的な学習をし得るように指導計画を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 土地ではどんな海そうがどこに生育しているかを調べる。
(ロ) 海そうの繁殖法について話し合い,顕微鏡などによって組織を調べる。
ロ. 理解のために
(イ) 海そうを増殖するにはどうするか話を聞く。
海そうの附着場所をどこに設けたらよいか調べる。
(ロ) 雑草刈り取り・コンクリート塗り・岩面そう破・築いそなどについて,見学したり実習する。
(ハ) 有用海そうの養殖について話を聞く。
あさくさのりの養殖を中心として,次のようなことの研究を進める。
発芽・ひび立ての時期,ひびを立てる場所,ひびの種類,潮流との関係,移殖,害草。
(ニ) 投石・築いその水産生物におよぼす効果について話しを聞く。
ハ. 応用として
(イ) 有用海そうの附着層を考えながら,いろいろ実験してみる。
(ロ) ほしのりの製造法を調べ,実習してみる。
3. 学習結果の考査
この単元の目標によって考査するのであるが,海そうが生育し繁殖するにはどんなことが条件となるか。その条件の中で,私たちが海そうの生活を助けてやるのはどんな点であるかというようなことについて考査するのである。
このような考査は海そうだけでなく貝類・魚類でも同じである。
単元3. 貝類の増殖
1. 目 標
(2) いろいろな貝類は,それぞれ違った所に生育し,違った繁殖のしかたをしていることを理解する。
(3) 有用な貝類はどんなふうにして増殖できるかを理解する。
(4) 有用な貝類の附着材料の作製や,貝類の増殖場を改良する方法を理解する。
2. 指 導 法
イ. 貝類の種類と,それぞれの生育・繁殖およびその環境について調査研究する。
ロ. 有用貝類の増殖法について,理論と実際を調査研究する。
ハ. その地方の貝類の種類と増殖の実際について調べる。
ニ. 貝類の標本,掛け図,繁殖の図,附着材料などを準備したり,養殖場または,浅海を耕す作業,または,客土する作業など,土地の実情に応じ,生徒の理解を容易にして能率的な学習が行われるように指導計画を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 潮干狩の記録,または記憶を新たにして,貝類はどんな場所にすんでいたか話し合う。
(ロ) その地方に行われている養殖貝類の調査をしてみる。
(ハ) あさり・はまぐり・かきなどの有用具類の生育や繁殖について調べてみる。
ロ. 理解のために
(イ) 調べたことを報告し,話し合い,貝類の生活の話を聞く。
(ロ) 貝類を増殖するにはどうすればよいか話を聞く。
(ハ) あさりの適地はどこか話し合い,採苗・放養・収穫などの様子を聞く。
(ニ) はまぐりの適地はどこか話し合い,採苗・放養・収穫などの様子を聞く。
(ホ) その他,有用な貝類を地にまくため,増殖地をどのようにすればよいかを話し合う(浅海を耕したり,客土したりすることを教師が説明する)。
(ヘ) かきの養殖について話しを聞く。
かきの繁殖の仕方から,どの点が増殖の要点となるか話し合う。
地まき式・垂下式・簡易垂下式の実際を見学したり,その実績について話を聞き,得失を考える。附着材料の製作を手傳う。
(ト) 養殖真珠の話を聞く。
ハ. 応用として
かきその他の貝類の養殖上どんなことが大きな被害となるか調べ,これを避ける方法を研究してみる。
3. 学習結果の考査
単元4. 魚類の増殖
1. 目 標
(2) いろいろな魚類は,それぞれ違った水域を移動し,自分の好むえさを求め,産卵場をさがして,生育し繁殖していることを理解する。
(3) 水産業上重要な魚類の採苗・放流,または人工ふ化の技術について理解する。
(4) 水産業上重要な魚類の養殖の実際と経営について理解する。
2. 指 導 法
イ. 魚類の増殖については,品種・水質・えさなどの関係から,水域もそれぞれ違っていて,一定の地盤や附着層に定着する貝・そう類などよりもいっそう専門的な,魚類の生活史の研究が必要である。
ロ. まず,増殖や養殖の対象となっている魚類を調べ,その魚類の生活史上,いかなる部分が人工によってなされているかを調査し,研究する。
ハ. 人工ふ化放流にしても,移殖にしても,いかなる水域で,いかにして卵や稚魚を種苗としてとり得るか。これを生育させるためにはいかなる環境を与え,えさを選んで,飼育するか。あるいは,放流して天然のえさをとらせるかというような点に着目して,魚の増殖技術および理論を研究し,調査する。
ニ. その地方の水域(河川・湖沼・池)などの水質およびそこにすむ水産生物の調査をする。
ホ. その地方の現在および過去において,どのような魚類の増殖が行われていたかを調べ,その効果について実情を調査する。
へ. その地方における水域の利用・改善に対し,施設または土木建築物が,どのような方法を講じているかを調べ,その適否を研究する。
ト. その地方の養殖の実際と経営について実情を調査し,生徒の見学・実習すべきことがらを研究しておく。
チ. 築いそ・投石・魚てい・魚巣・養魚場・ふ化場などの実際について見学するほか,それぞれの模型または掛け図,魚類の標本などの参考品,または実習材料を研究し,準備しておく。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) その地方において,河川・湖沼・池などにすんでいる生物を調べる。
(ロ) その地方において飼育されている魚類を調べる。
(ハ) その地方において放し飼いされている魚類を調べる。
(ニ) その地方において放流されている魚類を調べる。
(ホ) その地方において,魚を保護するためどのような方法が行われているか調べる。
ロ. 理解のために
(イ) 調べたことがらを持ちよって次のことを研究する。
種苗を他の土地から買い入れしているもの。その土地に生育・繁殖するものをそのまま大きくなるまで保護し,飼育しているもの。
種苗を自然の水域から取っているもの。飼育も放し飼いもできないで,ふ化だけさせているもの。
人手を加えないで天然水域を利用し,築いそや投石によってどんな魚を呼び集めているもの。
(ロ) 調べたことがらから,品種・水質・えさなどによって,それぞれの魚はどんな生活史を持っているか話し合う。
(ハ) 調べたことから,それぞれの魚にどんな環境を与えれば,個体の生育を促進させ,また尾数を増すことができるかを話し合う。
(ニ) 築いそや投石の実際について,その方法および効果を調べる。
(ホ) 淡水魚の飼育実習をする。養魚場の見学(こい・ます)。
飼育池の構造・広狭・流水・止水などの関係。
飼育品種と尾数と水域の広狭ならびに流水・止水の関係。
えさの種類とえさの量および飼育品種と尾数または流水・止水の関係などを説明してもらい,えさの選択,えさのまき方などを習う。
なお養殖魚について,その実績ならびに経営に関して話を聞く。
(ヘ) 移殖および人工ふ化について話を聞く。
たとえば,種苗の輸送をどうするか,どんな時期が適当か,どんな方法によってふ化させるかというようなことについて聞く。
ハ. 応用として
(イ) 大きな水そう,または池などで,いろいろな魚を飼ってみる。
(ロ) 水族館ではどんな方法によって海魚を飼養しているか,調べてみる。
(ハ) 放流調査をしてみる。
3. 学習結果の考査
単元5. 漁船と機械
1. 目 標
(2) 漁船の速力,大小などが,漁場・出漁日数・漁獲高にどのような関係があるかを理解する。
(3) 漁業の種類によって,その漁業に特に設備された装置や燃料や魚倉などの配置のあることを理解する。
(4) 漁船の構造はどんなところに重きがおかれて製作されているかを理解する。
(5) 漁船の推進する力はどんな機関や装置によって生ずるかを理解する。
(6) 簡単な発動機を取りつけた漁船の運転を会得する(焼玉機関)。
(7) 漁船または,製造機械にすえつけられた電動機を取り扱う。
2. 指 導 法
イ. 漁船の構造および理論について研究する。
ロ. 漁船の種類とその性能について調査研究する。
ハ. 発動機について理論を研究する。
ニ. その土地で実習できる発動機の取り扱いについて習熟する。
ホ. 生徒の実習あるいは見学できることがらについて調べ,その内容について連絡しておく。
ヘ. 他教科の漁船に関係ある既習事項を調べ,その上で生徒がこれまでに漁船に対し,どの程度まで手こぎ・帆走・機走し得たかを知り,生徒に最も効果的な指導計画を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) その地方にはどんな漁船があるか調べる。
(ロ) 漁船としてはどんなことがそなわっていなければならないか話し合う。
ロ. 理解のために
話し合いの結果次のようにまとめてみる。
(イ) 人や食糧・用水・漁具・えさ・機械・燃料・漁獲物をどんなふうにして運んでいるか調べる。
船の大きさはどこできめるか,はかってみる(船の寸法・トン数)。
船の大きさと人員数とはどんな関係があるだろうか。同じ大きさで漁業によって人員はどう違うか。
船の大きさと機械設備とはどんな関係があるだろうか。
船の大きさと漁獲物を運搬する能力とはどんな関係があるだろうか。
国籍証書や船鑑札にはどんなことを書きあらわしてあるか。
(ロ) 運行するために,どのようなものによって走力が出ているか調べる。
ノットとはどんなものか。
船の速さをはかるにはどうするか。
推進装置はどうなっているか。
推進器を動かす機関の構造はどうか(種類・構造・馬力数)。
燃料にはどんなものを使っているか。
燃料はどれくらい積みこむことができるか。
航続距離はどれぐらいか。
各種漁業と航続距離とはどんな関係をもっているか。
(ハ) 船が沈まないため,また傾くのをさけるために,構造はどんなになっているか話を聞く。
重心はどこにあるか。
きっ水とはどんなことを表わしているか。
船の動揺はどうして起るか。
復原力とはどんなことを意味し,その力の大小はどこできめるか。
船の建造にはどんな点に注意されているか。
(ニ) 発動機の取り扱い方に習熟する。
発動機を動かし始めるにはどうするか。
発動機の運転中はどんなところに注意するか。
発動機で故障の起りやすいところはどこか。
運転を止めるにはどうするか。
ハ. 応用として
(イ) 各種漁業と漁船の構造・配置などや特殊設備などについて調べる。
(ロ) 漁船・旅客船・貸物船その他いろいろな船の構造・装置などを研究してみる。
(ハ) 船の発達の歴史を調べる。
(ニ) 造船場の見学。
(ホ) 焼玉機関の取り扱いに習熟する。
(ヘ) 漁船が発達し,水産業がどのように変化したかを調べて報告を書く。
3. 学習結果の考査
(2) トン数・ノット数・馬力数などの単位は,これを応用した問題を作って考査する。
(3) 発動機や電動機の取り扱い方などの考査は総合的な判定をするほか,記述尺度法を参考にする。
単元6. 漁業と気象
1. 目 標
(2) 各地方において気象の変化をあらかじめ知るには,どのようなことに注意しておくかを理解する。
(3) 暴風の性状を理解する。
(4) 暴風避難はどのようにすればよいかを理解する。
(5) 海上勤務者は,常に気象に対して,どんな点に注意しなければならないかを理解する。
2. 指 導 法
イ. 海洋気象について,その性状と理論とを研究する。
ロ. 天気予報の科学的根拠について研究する。
ハ. その地方における気象状態について調べる。
ニ. 天気図,台風の図,波やうねりや霧または風の標準程度を示す表,気圧計・湿度計などを準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 地方における特有な気象の変化,天気の見方,あるいはそれらについてのいい傳えなどについて調べる。
(ロ) しけの場合,漁業者はどんなところに注意しているか聞いてみる。
(ハ) ラジオまたは新聞の天気予報と,その地方の気象とはどんな関係をもっているか調べる。
ロ. 理解のために
(イ) 海岸に立って,波・うねり・風などの観察をする。この場合,波やうねりや風のはかり方を指導してもらう。
(ロ) 波と風とうねりとの相互関係を考察する。
(ハ) 地方の測候所や観測所を見学する。
風や波やうねりの起る原因,天気図の作成される過程,天気の予知できることがらなどの話を聞く。
(ニ) 暴風の種類やその性状について説明を聞く。
(ホ) 暴風をさけるにはどうすればよいか研究し,話を聞く。
(ヘ) 海上で遭難した体験談や危険防止について話を聞く。
ハ. 応用として
(イ) 波と風が天候とどんな関係があるか観測を継続してみる。
(ロ) 波の高さ・速さが暴風とどんな関係があるか注意して観測してみる。
(ハ) 海上衝突予防法の信号・遭難信号・気象特報・暴風警報などについて読む。聞く。話し合う。
3. 学習結果の考査
日常の気像の変化は総合的な関連を持つものであって,気象の知識をただ単に,風・波・雲・霧の階級を覚えているかどうかという考査のほかに,その現象がどんな原因でどんな変化をたどっているかというような点についても考査するのである。
単元7. 航 海
1. 目 標
(2) ら針はいの読み方に習熟し,方位のとり方を会得する。
(3) 海図にはどんなことが記入してあるかを知り,読み方に習熟する。
(4) 航海をするにはどうすればよいかを理解する。
2. 指 導 法
イ. 航海運用に関する理論を研究する。
ロ. 暗夜・濃霧中などの航海についても研究しておく。
ハ. その土地の漁業者はどんな方法で航海しているのか調べる。
ニ. その土地で,海上から見たとき陸上の目じるしとなるものにはどんなものがあるか調べておく。
ホ. 海図・海図式・ら針はいの図,両脚器,定木,漁港の浮標,燈標配置図など準備しておく。
ヘ. その土地で見学できる漁船の操だ室の様子など調べておく。
ト. 生徒の既有の知識・技能を知り,能率的な学習ができるように指導計画を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 船が今どこにいるか,漁場はどこかをきめるにはどうするか,砂浜や校庭で研究し合う。
(ロ) 漁業者が漁場を見覚えておいて,そこへ行くにはどうするか話をきいてみる。
ロ. 理解のために
(イ) 陸上に目じるしが得られる場合,どんなふうにして位置をきめるか,研究する。
目じるしをいくつも得られる場合について,いろいろ考えてみる。
目じるしを一つ利用する場合について研究する。話を聞く。
(ロ) ら針はいの読み方について説明を聞き,練習する。
(ハ) 海図の読み方について説明を聞き,疑問の点をただす。
(ニ) 海図を使って図上で航海の方法をいろいろ指導してもらう。
交さ方位法・四点方位法・船首倍角法など練習する。
(ホ) 海上の航海で,濃霧中または,陸上に手がかりの得られない場合について,どんな方法が行われるか話を聞く。
ハ. 応用として
(イ) 砂浜や校庭で,方位と距離をきめておいて,そのとおり歩いてみる。
(ロ) 海上の距離,時間,速さ,方位などは,操舟とともに練習するほか,沿岸航法を練習してみる。
3. 学習結果の考査
(2) ら針はいや海図の読み方などについては,完成法・記録法・選択法などによって考査する。
(3) 航海の技術や態度の調査は,記述尺度法などを参考にする。
単元8. 漁 港
1. 目 標
(2) 漁港を修築したため,水産業の発達にどれだけ役立ったかを理解する。
(3) 漁港にある施設がどんな役割を果たしているか。その構造・配置・性能などについて理解する。
(4) 漁港に施設してあるものは,個人的・社会的にどんな関係を持っているかを理解し,漁港や漁村に都合のよいようにこれをたいせつにする態度を養う。
2. 指 導 法
イ. 港湾施設の種類とその構造について研究する。
ロ. 港はその土地の実情に応じ,使用目的,地理的,経済的な事情によって,それぞれ,異なっていることを調査して,その施設状況を調べる。
ハ. その土地における漁港はどんな性格を持っているかを調べ,生徒の見学のため,実際について施設の内容や,見学順序などを研究しておく。
ニ. その地方における漁業者・水産製造者・養殖業者ならびに漁船数および生産高,魚市場の陸揚げ高などについて調べておく。
ホ. 漁港の施設の配置図または漁村のおもな施設などを書き入れた表を用意する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 港に出入りするには,次のような場合どんなふうになっていれば都合がよいか話し合ってみる。
出漁回数の多い時,休漁の時。
豊漁で魚が多量に陸揚げされた時。
夜間出漁したり,また帰港したりする時。
港内・港外に浅瀬がある時,暴風がある時。
(ロ) その土地の港はどんなふうになっているか調べてみる。
(ハ) 郷土の人はどう改良したいといっているか調べる。
ロ. 理解のために
(イ) その地方の海浜の地形の略図または地図に,水深・潮流・河口・風向きなど書き入れてみる。
(ロ) 防波堤・船揚げ場・船だまり,埋め立て地・燈台および船の数,船の出入りの様子など話し合う。
(ハ) 漁獲物をあげる場所について話し合う。
岸壁・魚揚げ場は,どんな様子になっているかを調べる。
(ニ) 漁船・漁具の手入れや保管場所は,どんなふうになっているか調べる。
(ホ) すぐ出漁できるため,燃料・水,その他の物質の補給が都合よくなっているか調べる。
(ヘ) 漁獲物を処理し,加工するのにどんなふうに都合よくなっているか調べる。
(ト) 乗組員の休養するためにどんなに都合よくなっているか調べる。
(チ) 調べたことをまとめて話し合い,漁港はどんなに役に立っているか,また施設の有無が郷土の水産業にどんな関係をもっているか研究してみる。
ハ. 応用として
(イ) 漁港の修築は,いつ,だれがしたのか調べる。
(ロ) 漁港の修築ができてから,どれだけ便利に能率的になったか各地方の様子を調べる。
(ハ) その土地の漁港について改善の方法について論文を書く。
3. 学習結果の考査
(2) 知識や理解については,港を整備することによって,その施設の一つ一つが水産業の発達にどれほど影響しているかというような面について考査する。
単元9. 漁村の生活
1. 目 標
(2) 漁村生活を向上させるには,水産業の特質をよく見きわめ,これを計画的に合理化することによって日常生活をいつも安定し,豊かにすることができることを理解する。
(3) 水産業の経営においても,また日常生活の面においても,科学をとり入れ,安全に能率的に,しかも計画的に行うようにして,個人個人の労力と休養との調節をはかり,経済的にはゆとりを持ち,経営は多くの人の意見によって行われなければならないことを理解する。
(4) 漁業上の制度や組織は,おたがいの最も都合のよい理想的なものとし,おたがいの技能に応じて協力一致するようなものでなければならないことを理解する。
(5) 漁業の組合は漁業者の手によって組織され,漁業権を持ち,単に漁業の発達だけでなく,広く漁村の経済的・文化的・社会的な中心をなす団体であることを理解する。
(6) 漁村生活の向上は,制度・組織はもちろんであるが,私たちの希望を達成するために,ひとりひとりが根気よく仕事に身を打ちこまなければならないことを理解する。
2. 指 導 法
イ. 生徒の日常生活の実態をよく知る。
ロ. その土地の生活内容について,環境・産業・職業・仕事などと,どうむすびつけているかを調べる。
ハ. その土地の風俗・習慣や傳統の中にどんなものがあるか調べる。
ニ. その土地の漁村生活のあり方はどのようでなければならないか。各方面の人と話し合う。
ホ. 漁業の組合はどんな制度であり,その組織や活動はどのような情勢であるかを調べておく。
へ. 組合ではどのような簿記を採用しているか調べておく。
ト. この単元には,生活といい,文化といい,組織・制度といい,すベて抽象的なことが多く,生徒には,わかりにくいと思われる。したがって,漁業権といっても,権利のある人,権利のない人はそれぞれどう違うとか,権利を得るにはどうするか,権利を失う時はどんな時かというように具体的に話すことがよい。また文化的といってもわからないだろうから,病気にならないように衛生的にするとか,危険な場所や人の歩くために道標や電燈をつけるとかいうように土地の実情をよくのみこんで,生徒の納得がいくようにくふうしなければならない。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) めいめいの一日の生活のしかたはどんなふうにしているか話し合う。
(ロ) 家庭において収入と支出はどんなふうになっているか調べる。
(ハ) 自分たちおたがいが考えて,どんなことが生活の上で欠けているか反省してみる。
ロ. 理解のために
(イ) 漁業をするには人々がどのように活動しているか話し合う。
(ロ) 水産資源を開発し,利用するには個人個人がどんな心がけでなければならないか話し合う。
(ハ) 漁獲高と一年間の変化および魚価について調べてみる。
(ニ) 出漁日数と休漁日数を調査し,休漁日にはどうしているか調べてみる。
(ホ) 自分たちの家庭の収入・支出の項目について話し合う。
(ヘ) 修養・娯楽や不慮の災害,老後などについてはどうか調べてみる。
(ト) 以上のようなことから,生活のしかたはどのようでなければならないか話し合う。
(チ) 社会的にはどんなことが考えられるか,先生の話を聞く。
(リ) 漁業を経営するものはだれであるか,漁業権とはどういうものか,組合ではどんなことをしているか話し合ったり話を聞く。
(ヌ) 組合を参観し,簿記を習う。
(ル) 市町村ではどんな組織を持っているか話し合ったり調べる。
(ヲ) 土地で行われている風俗・習慣について調べてみる。
ハ. 応用として
(イ) 簿記の練習をする。
(ロ) 年中行事を調べ,その可否を検討する。
(ハ) 漁村の生活改善について論文を書く。
3. 学習結果の考査
生徒が日常生活を討議したり,また生活をもっとよくするにはどうすればよいかといったような話し合いの中から,生徒の能力や個性を判断する。
単元10. 私たちの将来
1. 目 標
(2) 水産技術の進歩は地方の実情について研究すると同時に,教育や試験研究によって促進されることを理解する。
(3) 生徒の希望するところは,その道の先輩に話し,自己の意見の可否を知り,これを解決させるために,その方法を具体化し,これをどこまでも徹底し実行することによってはじめて達成されるものであることを理解する。
(4) 生徒の希望とするところは,これをおたがいに話し合う機会,または研究する組織をもって,たがいに協力することによって達せられることを理解する。
2. 指 導 法
イ. 水産技術の改良・発達は過去においてどうであったか。発見・発明の歴史を研究する。
ロ. 水産業上における功労者または優良団体などを研究調査する。
ハ. 水産教育機関,ならびに水産試験研究機関の内容・程度などについて調べる。
ニ. 生徒の既習事項,ならびに地方において将来どんな方面についてくふう改善されなければならないか研究する。
ホ. 中学校を修了するに当たり,学習の結果,生徒のそれぞれがいかなる希望をもっているか話し合い,また個性表などを参考にして将来の学習・進学・就職などの相談にのる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) その土地の発見・発明した人の功労,または失敗したことなどについて調べてみる。
(ロ) その土地の古老・先輩などの話を聞く。
(ハ) おたがいの将来について話し合う。
ロ. 理解のために
(イ) 私たちの希望はなんであるか,これを満たすにはどうしたらよいか研究し合う。
(ロ) 今後の勉強の方法について話し合う。
(ハ) 試験研究機関について聞く。見る。話し合う。
(ニ) 自分の希望を達成するため,いろいろな組織をつくる。
(ホ) 実習・実験・品評会・競技会などをする。
ハ. 応用として
将来の希望と希望実現の方法を作文する。
3. 学習結果の考査
作文や話し合いなどによって生徒が個性や環境にかなった進路を見出し得たかどうかを調べる。