第七章 第八学年の水産指導
第八学年の水産指導の一例をあげると,次のような単元の配列が考えられるであろう。
第八学年の指導の重点は,「水産物をいつでもどこでも利用できるようにするにはどうするか。」という点において学ぶことにする。
指導の重点を更にこまかに分け,まず単元1では腐りやすい魚をなまのまま保存できたら,どんなに貯蔵・輸送や調理に都合がよいだろうかというようなことから,水産物の冷凍を取り扱うようにする。単元2では,広くどこでも取れ,その上,あらゆる製造法が試みられるいわしを材料にして,各種の製品を取り扱うとともに,いろいろな製造法の手がかりを得るようにするのである。
単元3では,煮干しから節類に進め,くん乾に使うたきぎのことから単元8のくん製品に連絡することにして,ばい乾やかびつけの意義を会得することにする。
単元4と単元5とは魚類以外の重要な水産物,こんぶやするめにふれる。このうちで製造法としては,かんてんの冷乾法や,酵素の作用による塩からの製法なども指導できる。
単元6では,塩いわしから発展し,便利な塩蔵法の理論と実際とにふれ,単元7では,形がくずれたものでもよし,名もない雑魚でもよし,その上更に,栄養品としてくふうされるべき,かまぼこ類とつくだ煮とを取り扱うように発展する。単元8では,塩蔵やばい乾から発展したくん製品をあげ,なお防腐剤について研究させ,単元9では,栄養上・貯蔵上・製造上・使用上,最もくふうされ合理化されたびんづめ・かんづめについて理論と実際について理解させる。終りの単元10では,取れたものの価値を完全に生かして利用しようという問題や,雑草・害敵をはじめ,製造加工の際の頭・骨・皮・ひれ・内臓を利用することや,煮じるや貝がらなどの利用にまでおよび,資源をむだなく利用するように指導するというように順序を持った方法が考えられる。
単元の配当時間は教材配当表参照(17ページ)
単元1. 水産物をなまのまま保存することはできないか
1. 目 標
(2) 魚や貝が死後腐るのはどんな原因によるか理解する。
(3) 腐敗菌が繁殖するには適当な温度が必要であることを理解する。
(4) 生鮮魚の荷造りの仕方を会得する。
(5) 急速に魚貝類を凍結すると鮮肉に近い状態が保てることを理解する。
(6) 冷凍法の進歩によって水産業が発達したことを理解する。
2. 指 導 法
イ. 魚貝類の化学的成分について研究する。
ロ. 魚貝類の死後の変化について科学的な根拠を研究する。
ハ. 腐敗菌の繁殖について研究する。
二. 各種冷蔵・冷凍法の理論および実際について調査研究する。
ホ. 地方における鮮魚輸送の実情を調査し,なお製氷場なども調べておく。
へ. 冷凍法の進歩によって,えさ・船内冷凍・冷蔵貨車・冷凍貯蔵などの具体的な例を調査し,これらが水産業上どんな役割を果たしているかを研究する。
ト. 実習材料・荷造材料・冷凍法の掛け図・冷凍品・顕微鏡などを準備する。
チ. 見学・実習できる魚揚げ場・製氷工場・冷凍工場・冷蔵貨車などがあったら,指導計画と土地の事情や会社の状況に応じ連絡を考慮する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
とれた魚をそのまま放置して変化を調査する(温度・時間・漁法・取り扱い方・大小・種類などによってどんな変化が見られるか)。
ロ. 理解のために
(イ) たべられる状態とはどの程度をいうのか話し合う(硬直・鮮度)。
(ロ) 腐敗や中毒の現像について話を聞く。
(ハ) なまのまま置かなければならない場合を話し合う。
(ニ) なまの魚の輸送はどうしているか調べてみる(季節・容器・つめ方,魚といっしょにつめるもの)。
(ホ) 魚屋は夏どうしているか,大じかけに貯蔵するにはどうしているか。
(冷蔵室・冷凍室・冷却する方法)。
(ヘ) 急速冷凍の意義について説明を聞く,冷凍魚と生魚との肉の違いを調べる。
ハ. 応用として
(イ) いろいろな魚類についてどのくらいな冷蔵適温があるか調べてみる。
(ロ) 各種の冷凍法の実際と理論について調査し,研究してみる。
3. 学習結果の考査
ロ. 魚肉の保存や取り扱い方についての理解については,真偽法・完成法・選択法などを参考にする。
ハ. 生鮮魚の取り扱い方や荷造りの仕方などについては,総合的に比較・対照して考査したり,記述尺度法などによって考査する。
単元2. いわしのいろいろな加工
1. 目 標
(2) 鮮魚に日光を当てると水分が除かれ,細菌の繁殖をおさえて保存しやすくなることを理解する。
(3) いわしの煮干し品の作り方を会得する。
(4) 鮮魚を煮ることによって細菌を殺し,たんぱく質をかたまらせ,干すことが容易になることを理解する。
(5) いわしの塩干し品の作り方を会得する。
(6) いわしに塩をふって干すと肉をひきしめ,水分を出し,味のよい干物のできることを理解する。
(7) いわしのみりん干し品の作り方を会得する。
(8) いわしをさいて適当な調味液にひたして干すと,味のよい調味品ができることを理解する。
(9) いわしの焼き干し品の作り方を会得する。
(10) いわしを焼くと水分を追い出し,殺菌し,保存することができることを理解する。
(11) 塩いわしの作り方を会得する。
(12) 魚肉を食塩(または食塩水)につけると,食塩は魚肉中にしみこんで保存することができることを理解する。
(13) ほうちょうの使い方に習熟する。
(14) 食用となる魚粉はどんなふうにして製造されるかを理解する。
(15) 魚肉をしぼった液から魚油がとれることを理解する。
(16) いわし漁業も水産製造の進歩によって,経営がいっそう安全となることを理解する。
2. 指 導 法
イ. いわしの製品にはいろいろあって,しかも分布も広く,材料も手に入りやすいであろうから,各種の製造法をいわしによって研究する。
ロ. 製造室・生徒数・設備などによって,多くのいわしの教材をどのように学習させるべきかをくふうする。
これから後の単元で,たとえば,うるめ節,塩蔵いわし,いわしのくん製,いわしのかんづめ・肥料・魚油などはそれぞれのところで学ぶようにするとしても,なお理論や方法で関係のあるものはどちらで,どれくらいに取り扱うかを考慮する必要があるだろう。
ハ. その地方のいわし製造法の実情を調査し,製品などを学校に集めて,良否を研究するために準備する。
ニ. 素干し・煮干し・塩干し・みりん干しなどの製造法について,魚類としてはこの単元だけで取り扱っているから,いわし以外の他の製品についても調査し,また生徒に実習させるのもよいであろう。
ホ. 魚粉工場や魚油工場などがあったら,内容を調査しておく。
教材と工場の程度とをよく研究して,正しい指導ができるようにしなければならない。
ヘ. 各種の製造法には,材料・設備・場所,その他容器など準備すべきものが多数ある。生徒の実習に当たっては,はたして実習できるかどうか,その目標・方法・準備品などを細心に調べて,効果的に,しかも能率的な学習ができるように教師は注意しなければならない。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
その土地ではどんないわしの製品があるか調べ,作り方を研究する。
ロ. 理解のために
(イ) ごまめ(田作)を作ってみる。
原料には何がよいか,大形のものはなぜじょうずにできないか,天候はどう関係するか調べる。生魚と干し上がったものとの目方を比べてみる。
(ロ) 煮干しを作ってみる。何がよかったか,いわしをどんなふうに取り扱った人がよかったか,品質・温度・時間・水質などについて考察する。
煮ることによってどうなったか,教師に話を聞く。いわし以外のものについても調べてみる。
(ハ) 塩干し(丸干し・目ざし・えらざし・ひらき)を作ってみる。
素干しに比べて,どんな点が都合よいか話し合う。
ほうちょうの使い方もおたがいに見比べる。
塩味はどのくらいがよいかでき上がったのを試食してみる。
いわし以外のものについても調べてみる。
(ニ) みりん干しを作ってみる。
みりん干しにはどんな条件が必要か話し合い,実習する。
たべよいこと,うまみのあること,つやのあることなどに注意して,調理法や調味液の配合をくふうし合う。
いわし以外にこの方法が適用されないかどうか,試してみる。
(ホ) 焼き干し品を作ってみる。
一般に,魚を焼くときどんな注意がいるか,話し合う。くしの使い方,炭火の温度・距離,焼き上がりの見分け方,塩はどこに使うか調べる。
川魚やたいなどの焼きざかな,または切り身の焼きざかななどについても研究する。
(ヘ) 塩いわしを作ってみる。
塩蔵の理論は後にまわし,ここでは用塩量や油焼け防止などについて指導してもらう。
(ト) 食用魚粉(ふりかけ)の話を聞く。
ハ. 応用として
(イ) いわしの製品は,あらゆる製造法の基礎であることから,いろいろな製造方面の自由研究をしてみる。
(ロ) 魚粉の話から,製造工程の機械について調査し,研究してみる。
3. 学習結果の考査
(2) 知識や理解については,製造中の技術のようすや,話し合いのようすによって総合的な判断ができる。また,選択法・完成法・判定法・真偽法などによって調べることもできる。
製造上の一つ一つ切り離された知識もたいせつには違いないが,煮干し1kg作るにどれだけのものを準備しなければならないかとか,みりん干しの製造順序とかいうような観点から問題を出して調査することも望ましいのである。
単元3. 節類の製造
1. 目 標
(2) 節類を作るにはどうすれば形がよくなるかを理解する。
(3) 節類は原料によってどのような影響を受けるかを理解する。
(4) 節類の製造工程は魚肉にどんな変化を与えるかを理解する。
2. 指 導 法
イ. いろいろな節類の製造の実際と,その土地の実情について調べる。
ロ. かつお節の製造工程の実際と理論の化学的研究をする。
ハ. かつお節の製造工程の図・写真,製品または工場などを調べ,生徒の参考となるものを準備しておく。
ニ. かつお節の製造を生徒に実習させる場合は,一箇月は要するのであるから,あらかじめ土地の事情や,他の単元との関係などを考慮して指導計画を立てる。
ホ. 実習に当たって,節にされない部分の利用は単元10で取り扱うのであるが,ここでは節の製造に重点をおき,残物は捨てないように注意する程度で生徒の自発的活動にまかせる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) その土地ではどんな方法で節類を作っているかを調べる。
(ロ) いわしを煮てから日に干さないで,毎日時間をきめて火にあぶって,そのまま冷やしてみる。
ロ. 理解のために
かつお節の実習を次の順序でする。
(かつおが手に入らない地方では他の節を作る)
(イ) 原料の選択(季節・大小・鮮度)。
(ロ) 節の原形決定(調理する)。
(ハ) かご立てはどうすればよいか(形がくずれないで温度が一様に行きわたるため)。
(ニ) どんなふうに煮ればよいか(温度・時間)。
(ホ) 骨を取るにはどうするか。
(ヘ) 肉から水分をとるにはどうすればよいか(防腐)。
(ト) 修繕はどうすればよいか,すり身はどこの肉で作るか。
(チ) ばい乾はどうすればよいか(温度・時間・回数,くん材の種類)
(リ) 削りはどうすればよいか。熟練者の方法はどうか。
(ヌ) かびつけはどうすればよいか(温度・湿度・回数,節の取り扱い方)。
(ル) 製品の仕上がりはどんな状態か(色・音・硬さ・味など)。
(ヲ) かつお節の保存はどうすればよいか。
ハ. 応用として
(イ) いろいろな魚で節を作ってみる。
(ロ) 削り節の機械を研究する。
(ハ) 修繕や削りの技術に熟達する。
3. 学習結果の考査
(2) 知識や理解の考査は,各製造工程が製品にどんな関係を持っているかというような観点から問題を作り,考査する。
単元4. 海そうの利用
1. 目 標
(2) ほしこんぶやわかめの作り方を会得する。
(3) ほしのりの作り方を会得する。
(4) かんてんの作り方を会得する。
(5) ふのりの作り方を会得する。
(6) 海そうからいろいろな薬品がとれることを理解する。
2. 指 導 法
イ. 海そうの種類とその利用方面について調査研究する。
ロ. 海そうの製品の製造法を研究する。
ハ. 標本・図・製品見本・実習材料などを準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
土地ではどんな海そうがとれ,どんな方面に利用されているかを調べる。
ロ. 理解のために
(イ) 海そうには,どんな利用方面があるか,話し合う。
食用・のり用・かんてん用・肥料・飼料・薬用・工業用などに分けてみる。
(ロ) 海そうをたべたときどんな栄養がとれるか,話を聞く。
(ハ) 素干し品を作る。
(ニ) ふのりを作る。ねばりけのある海そうにはどんなものがあるか。
(ホ) かんてん(ところてん)を作る。かんてんからところてんにしてみる。
原草からところてんを作って比較してみる。
かんてんの利用方面を話し合う。かんてんを使って食品を作ってみる。
(ヘ) アルギン酸を浸出する実験をし,防水布を作ってみる(塩酸・硫酸・炭酸ソーダなどの準備がいる)。
(ト) 海そう灰をとってみる。海そう工業の工場などを見学する。
(チ) 駆虫剤を含んでいる海そうを調べてみる。
3. 学習結果の考査
単元5. するめと塩から
1. 目 標
(2) いかはどんなところにすんでいて,どんな方法でとるかを理解する。
(3) するめの作り方を会得する。
(4) するめを作るには,どんなところに注意すべきかを理解する。
(5) いかの塩からの作り方を会得する。
(6) 塩からの製造法についての理論を理解する。
2. 指 導 法
イ. いかはどんなところにすんでいるか,どんな習性をもっているかを調べる。
ロ. いか漁業の種類と漁期・漁具・漁法・漁獲高について調べる。
ハ. するめ製品の種類,塩からなどの製造の実際と理論を調べ研究する。
ニ. 標本・製品・実習材料などを準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) いかを飼ってみる。
(ロ) その地方のいか漁業を調べてみる。また,製造法も調べてみる。
ロ. 理解のために
(イ) いかつり漁業について話し合う。
どんないかがとれるか。いつとれるか。どこでどんな方法でとるか。
(ロ) いかつりのつり具の構造を調べてみる。
(ハ) するめを作ってみる。仕上げはどんなふうになればよいのか。
(ニ) 塩からを作ってみる。肝臓や米こうじなど加えるのはどんな意味か。
(ホ) いか以外の塩からについて調べてみる。
ハ. 応用として
(イ) きざみするめ・のしいかはどんなしかけで作ったらよいかくふうしてみる。
(ロ) いかは,するめ・塩から以外にどんな製品にされるか調べてみる。
(ハ) かつお・あゆ・なまこ・うになどの塩からを作ってみる。
(ニ) 雨天の際のするめの乾燥はどうしたらよいかくふうしてみる。
3. 学習結果の考査
(2) 知識や理解については,学んでいる間に聞いてみるとか,または,話し合いのようすを総合的に考査するほか,分析的に真偽法・判定法・選択法・完成法・記録法などによって考査する。
単元6. 食塩と塩蔵品
1. 目 標
(2) 食塩は魚肉中の水分と入れかわって防腐に役立つことを理解する。
(3) 食塩のしみこむ量は温度や食塩の成分によって増減することを理解する。
2. 指 導 法
イ. 海水の成分および食塩の成分について,化学的に研究し,どんな塩がすぐれているかを調べておく。
ロ. 食塩の魚肉におよぼす影響について研究をしておく。
ハ. いろいろな魚類の塩蔵法について,実際と理論を調査し,研究する。
ニ. その土地ではどんな塩蔵品があるか調べて,教材を準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
その土地ではどんな塩蔵品があるか調べてみる。
ロ. 理解のために
(イ) 塩蔵品を作ってみる。次のような点に注意する。
どんな原料を選ぶか(大小・種類・漁期・鮮度)。原料をそのまま使うか,あるいは手を加え身割りして使うか。
どんな製品にするか。すぐたべるか,長期間保存するか。
食塩を選ぶにはどうするか。
原料と食塩の割合はどれくらいにするか。
温度はどのくらいか。どれくらいの間つけておくか。
食塩の使い方はどのようにしたら効果的か。
つけこんでから後で,どんな処理が必要だろうか。
(ロ) 食塩の魚肉におよぼす影響について話を聞く。
(ハ) 代表的な塩蔵品の製法について実習したり,また話を聞く。
ハ. 応用として
(イ) 各種製造法で食塩を使っていたが,それはどんな目的で使われていたのか,話し合ったり,話を聞いたりする。
(ロ) 食塩の成分はどんなであるか調べ,製塩工場にでかけて見学したり,また,製塩を実際に試してみる。
(ハ) いろいろな塩蔵品の製造を練習する(塩いわし・塩だら・塩さば・塩ぶり・塩にしん・塩さんま・塩まぐろ・塩さけ・塩くじらなど)。
3. 学習結果の考査
技術や製品については,製造の目的にかなうような要点を会得していたかどうかを分析して考査する。たとえば,塩をどんな割合に用いたか。塩を一様にしみこませるためにはどんな処置をとったかというような観点から考査する。
単元7. かまぼことつくだ煮
1. 目 標
(2) ちくわの作り方を会得する。
(3) はんぺんの作り方を会得する。
(4) さつまあげの作り方を会得する。
(5) つくだ煮の作り方を会得する。
(6) 魚をどんなふうにしてすりつぶし,すり身を作るかを理解する。
(7) いろいろな練製品の調合材料の種類および分量,ならびに製品にどんな影響をおよぼすかを理解する。
(8) 調味液に長い間つけたまま煮つめると,煮ものの水分はぬけ,殺菌され,貯蔵のきく製品ができることを理解する。
(9) 雑魚や形のくずれた原料でも,製造によっていっそう栄養に富んだ役に立つ製品ができることを理解する。
2. 指 導 法
イ. いろいろなかまぼこの製法について,原料・調合材料・製造工程などや,地方地方の違いについて実情と理論を研究する。
ロ. ちくわの製法について,原料・調合材料・製造工程などや,地方による違いも,実際について調べる。
ハ. はんぺんの製法について,原料・調合材料・製造工程などや,地方によって違うことなどを調べる。
ニ. さつまあげの製法について,原料・調合材料・製造工程などや,また地方によって違うことなどを調べる。
ホ. つくだ煮にはどんな種類があるか,どんな製造法があるか,実際について調べる。
へ. 練製品や調味品について,その土地ではどんな材料が得られ,どんな実習ができるか調べて準備する。
ト. 製造工場などがあったら,その工場の実情を調べ,連絡すべきことがあるかどうかたしかめておく。
チ. 学校における設備,または材料の準備などによって,具体的な学習順序を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
かまぼこやつくだ煮の製品を調べ,製法を聞いてみる。
ロ. 理解のために
かまぼこを作ってみる。
(イ) 原料はなんであろうか,かまぼこの白いのはどうしたのだろうか。
(ロ) すり身を作るにはどうしたらよいだろうか。骨や皮はどうなったのだろうか。
(ハ) すり身にまぜ合わせるものは,どんなものがよいだろうか。
どんな目的で,どのようなまぜものをするだろうか。
(ニ) 特有な形は,どうして作るだろうか,板は何の木がよいか,板がなければどうするか。
(ホ) むすのはどの程度にするだろうか,焼く場合はどんな程度にするか。
ちくわを作ってみる。かまぼこ以外に注意することは,
(イ) 原料にはどんなものが使われているか。
(ロ) ちくわの形にするにはどうするか。また,早く手ぎわよく作るにはどうすればよいか,くふうする。
(ハ) 焼くとき,どんなふうにすれば一様に早く焼けるか。
はんぺんを作ってみる。
煮加減はどんなふうにして見分けるか。
さつまあげを作ってみる。
あげ加減,火加減,油の後始末などをどうすればよいか。
以上の実習で,次のようなことを話し合ってみる。
(イ) 上質のものを作るにはどうしたらよいか。
(ロ) 脂肪を少なくするにはどうしたらよいか。
(ハ) 調味料の配合はどのくらいの割合が多くの人に向くか。
(ニ) 能率をあげ,多量に生産するにはどんなふうにすればよいか。
(ホ) かまぼこ類は腐りやすい。どんなふうになったのが腐った証拠か,防腐はどうするか。
つくだ煮を作ってみる。注意することは,
(イ) 原料にはどんなものがあるか,海そう・貝・魚(大小)について調べる。
(ロ) 火加減はどうするか。
(ハ) 調味液の配合割合はどのようにするか。
(ニ) こげつかせないようにするにはどうするか。
(ホ) 早く一様に温度がゆきわたるようにするにはどうするか。
(ヘ) 香(ふう味)をよくするにはどうすればよいか。
(ト) つやを出すにはどうすればよいか。
(チ) 各地の名産つくだ煮の製法を聞き,実習してみる。
ハ. 応用として
(イ) かまぼこ類の保存について研究する。
(ロ) かまぼこ類を大じかけで作るにはどんな機械があるか,調べてみる。
3. 学習結果の考査
単元8. くん製品の製造
1. 目 標
(2) くん製品の防腐・香・味について製法がどんな関係をもつかを理解する。
(3) くん製品にそれぞれの違いが起るのはどんなことが関連しているかを理解する。
2. 指 導 法
イ. くん製品の種類およびそれぞれの製法について化学的研究をする。
ロ. くん製設備について,その実際と理論を調査研究する。
ハ. その土地の実情によってどんなくん製品ができるかを調べる。
ニ. 実験用の簡単なくん製装置・製品・標本・掛け図・防腐剤その他実習材料を準備する。
ホ. 生徒の自発的活動をうながし,能率ある学習をさせるため,指導計画を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
その土地ではどんなくん製品があるか調べて,作り方を聞く。
ロ. 理解のために
(イ) くん製の実習をする。
くん製室がなかったら,煙が一様にまわり,温度の調節もできるように,りんご箱や石油箱を利用してくん製の実験装置を作ってみる。
どんな原料を選ぶか。
原料をつるすところはどのくらいの間隔にすればよいか。
原料をそのまま使うのか。加工して使うのか。
温度の加減はどこでするのか,温度をはかる温度計はどこにおけばよいか。
温度はどのくらいにすればよいか,同じ温度で長時間煙を出すくん材には,どのようなものを選んだらよいか。
(ロ) 教師から冷くん・温くん・くん材などの実際を聞き,実習をつづける。
(ハ) 仕上げはどんなふうになればよいのか比べ合う。
(ニ) くん製の理論をきく。
(ホ) くん製品として著名な製品の製法を聞く。
(ヘ) 近くでくん製をしている工場があったら,見学にでかける。
ハ. 応用として
(イ) 魚のくん製ばかりでなく,くじらをはじめ,畜産物のくん製品も試してみる。
(ロ) 防腐剤を調べ,防腐剤につけてから乾燥する方法など研究する。
3. 学習結果の考査
単元9. びんづめとかんづめ
1. 目 標
(2) かんづめ類の製法は,殺菌や保存にどんな影響を持つかを理解する。
(3) かんづめ類は,産業上,または使用上,どんなにすぐれたものであるかを理解する。
2. 指 導 法
イ. かんづめ製造の実際と理論について研究する。
ロ. かんづめの製造工程が機械化され,工業としてどれほど能率的になっているかを調べる。
ハ. その土地の実情を調べ,見学または実習・実験のできることを調べる。
ニ. かんづめ・びんづめの製品・かん材・びん・実習材料・設備その他掛け図などを準備し,生徒の理解を容易にするための指導計画をたてる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) その土地で,びんづめ・かんづめはどんなふうに作られているか調べる。
(ロ) びんづめ・かんづめ製品・あきかん・あきびんなどについて構造を調べる。
ロ. 理解のために
(イ) びんづめをする。
どんな形のびんを選ぶか,ふたについてどんなくふうがされているか。
びんにはどんなものをつめるか。
殺菌はどのようにするか。
つめ方はどのようにするか。
仕上げはどのようにして検査するか。
(ロ) 学校に巻き締め機などがあったら,かんづめの実習をする。
その土地に,製かん工場や,かんづめ工場があったら,見学する。
(ハ) かんづめ製造工程の脱気・密封・加熱の製品に及ぼす影響について教師から話を聞く。
(ニ) 水煮・油づけ・味つけ・加工品などのかんづめ製品について調べ,製法を教師に聞く。
(ホ) かんづめの材料にはどんなものが使われているか調べ,くだもの・野菜・肉類などについても研究してみる。
(ヘ) かんづめの見分け方について話し合う。
ハ. 応用として
(イ) かんづめの発達の歴史を調べる。
(ロ) かん材にはどんなものが使われているかを調べる。
(ハ) いろいろな魚肉その他の材料と殺菌温度との関係を調べる。
(ニ) かんづめ機械の構造や性能について調べる。
(ホ) いろいろなかんづめを作ってみる。
3. 学習結果の考査
(2) 技術や態度については,学習しているようすや,また製品について,どんなふうに殺菌に注意が集中されたかどうかというような点について,それぞれの製造工程を重点的にあげて考査する。
単元10. 水産物のどこも拾てないで役立てよう
1. 目 標
(2) 漁獲の多少や,水産製造の労力および設備は,処理・加工方法とどんな関係があるかを理解する。
(3) 水産物のなかから,われわれの生活に必要な薬品がとれることを理解する。
(4) 魚肥はどんな肥料効果があるかを理解する。
(5) 魚油はどんな方面に利用されるかを理解する。
(6) 内臓はどんな成分をもって,どんな方面に利用されるかを理解する。
(7) 水産生物の皮はどんな方法でなめされるかを理解する。
(8) 貝がらはどんな方面に利用されるかを理解する。
2. 指 導 法
イ. 水産製造をした場合,材料にされなかった残り物について調べる。
ロ. その土地で水産物をどのようにして完全に利用しているか,実情を調べる。
利用されていない海そう,食用にされていない動物・貝がら・頭・皮・内臓などについて。
ハ. 水産物からとれる薬剤の用途および製法について研究する。
ニ. 製品・材料または掛け図などの参考品を準備する。
ホ. 生徒の自発的活動を助け,能率的な学習ができるように指導計画を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) いままで製造のとき,使われなかった部分はどんなに処理したか反省し,話し合う。
(ロ) 漁獲の際には,有用なものばかりでなく無用なものもとれる。また水産生物中には,雑草や害敵となるものもあるが,これらをどう処理しているか調べる。
(ハ) 豊漁で賣りさばきができなかったり,適当な設備や加工する労力がないために土地ではどんなふうに漁獲物を処理しているか調べる。
ロ. 理解のために
(イ) 調べたことを話し合う。
(ロ) 海産肥料について調べてみる。
どんな方法で肥料に作っているか。
化学肥料などと比べて,どんな肥料効果があるだろうか。
(ハ) 海産の飼料やえさについて調べてみる。
養畜・養殖などにはどんなえさが利用されているか調べる。
(ニ) 魚類をしぼった液からどのようにして魚油ができるか調べたり,また製法や利用方面について話を聞く。
(ホ) 魚油の成分の説明を聞き,薬品・薬剤として,どんな水産物が利用されているか,薬屋または医師から話を聞く。
薬品の製造法,薬品の効果などについても聞く。
(ヘ) 水産製造の際の煮じるはどうしたか反省し,利用方法を聞く。
栄養剤や調味料を作ってみる。
(ト) かまぼこやちくわを作ったとき皮はどうしたか反省し,皮の利用を調べてみる。
水産動物の皮革の研究を発展して,陸上の動物の皮革についても調査してみる。
(チ) 貝がらはどんな方面に利用されているか調べてみる。
打ち抜き機を利用してボタンや碁石を作ったり,いろいろな細工をしてみる。
(リ) ふかひれの利用をする。
ハ. 応用として
(イ) 貝細工として,らでん・えりどめ・帯どめなど,どのようにして作られるか調べてみる。
(ロ) 食用魚粉の研究をする。
3. 学習結果の考査
(2) 技能や態度については,この学習によって,水産物をいつも完全に利用するというような苦心くふうが払われるようになったかどうかというような点から考査する。