第六章 第七学年の水産指導
第七学年の水産指導は,各地方の事情にもとづいて,それぞれの学校が計画するのであるが,いま,一例をあげると次のようになる。まず生徒の指導の重点を「魚はどんな方法でとるだろうか。」というところにおいて,学習することにする。
生徒が,このような問題に興味を持って,日常生活と魚との関係を調べてみると,水産とはどんなことを学ぶのであるかがはっきりとして来るであろう。そういう立場から「単元1. 私たちは何を学ぶか。」を設ける。
単元1で「水産を学ぶことは有意義だ。」と感じ,いっそう水産に興味を覚えたり,希望も次第に強まって,いよいよ海にでかける手がかりを得る。その端緒となるものが単元2であって,海岸で潮干狩をしたり,岸近くの漁場調査をすることによって,「魚はどこにすんでいるだろうか。」という問題に発展させるようにする。
単元3では,魚のすんでいる海洋が広く深く,しかも魚は広い範囲を移動することがだんだんわかって来ると,「魚はどのようにしてとるだろうか。」の問題が展開するであろう。この問題をまず,海浜にある漁具の考察に結びつけ,基本的な編網やなわの結び方を実習し,漁具の取り扱いや手入れのしかたを習うようにし向ける。
単元4以下単元10までは各種漁業の代表的なものを選んで挙げたのである。生徒は陸上で得られる漁具や漁獲物の調査をもととし,図や模型などをたよりに,教師の説明によって「魚はどんな方法でとるだろうか。」の問題を興味深く学ぶようになるであろう。
各種漁業は,いわし・たい・かつお・まぐろ・ぶりなどの魚類を中心に考えたものと,刺し網・引き網のような漁具を中心に考えたものとにまとめて指導するのである。
各単元の割当時間は教材配当表参照(16ページ)
単元1. 私たちは何を学ぶか
1. 目 標
(2) 動物性たんぱく質の栄養について理解する。
(3) 日本の食糧事情はどんなであるかを理解する。
(4) われわれの学ぶ水産はいかなる役割を持つか理解する。
(5) 水産業を発達させるにはどうすればよいかを理解する。
(6) 職業はたがいに関係あることを理解する。
2. 指 導 法
イ. 水産食物の化学理論を研究する。
ロ. 農産物・畜産物・水産物などの食糧生産高の調査をする。
ハ. 日本の地理的・歴史的考察による産業の相互関係を研究 調査する。
ニ. その地方における水産物の利用状況の調査をする。
ホ. 献立表・栄養実験成績表・食品成分表・産業統計表などの掛け図や表を準備する。
へ. 生徒の自発的活動を促し,理解を容易にするように指導順序を立てる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
いま,漁業をしている人々はどんなことをしているか,また,昔はどんなふうだったろうか,話し合う。
ロ. 理解のために
(イ) 産業や職業はどんなふうに発達したか,話を聞く。
自給自足の生活からだんだん分業化して来たことについて話を聞く。
産業や職業は,たがいにどんな関係を持っているかを話し合う。
(ロ) 水産業では,あらゆる産業のうちどんな役割をしているか,話し合う。
(ハ) 水産業で生産されたものは,どんな方面に利用されているか話し合う。
(ニ) 日常生活のうち,どんなに水産物が役立っているか調べ,まとめてみる。
(ホ) 水産物は食物としてどれほど役立つものであるか,話を聞く。たべものにはどんなものがあるか,数えあげてみる。
いろいろなたべ物は,私たちの身体にどんなふうに役立っているか,話を聞く。
(ヘ) 動物性のたんぱく質は,私たちの栄養としてどんな役割を持っているか,話を聞く。
(ト) わが国の位置・地勢からどんな産業が発達しているか,話を聞く。
(チ) わが国の現状からみて,水産業はどんな役割を持っているか,話を聞く。
(リ) わが国の水産業は,これからどのような点について改善されなければならないか,話を聞く。
漁獲高,漁獲能率,資源の開発,完全利用などについて話を聞く。
ハ. 応用として
水産に関係ある仕事をいろいろ調べておいて,これから学習の際に役立てるようにする。
3. 学習結果の考査
単元2. 漁業への準備
1. 目 標
(2) いろいろな水産生物はどんなところにすんでいるかを理解する。
(3) 漁業に必要な水泳や操舟の仕方を会得する。
(4) 漁業をするには取るものと運ぶものが必要であることを理解する。
(5) 漁業をするには水産生物の習性,海洋の性状などによって漁場・漁期・漁法を研究しなければならないことを理解する。
2. 指 導 法
イ. 漁業における漁法・漁具・漁船・漁場・漁期などについて,まず手がかりを得るにはいうまでもなく,水産生物の習性とこれに関連する海洋の性状を明らかにして,科学的な根拠をうることである。したがって,教師はその地方において,生徒が観察・調査・研究できる事がらをよくさがし,これを生徒に体験できるようにくふうすることがたいせつである。
ロ. この単元で実習しようとする漁場調査・水泳・操舟などについては,教師の十分な体験はもちろんのこと,実施に当たっては用意周到な計画によって生徒の管理をはからなければならない。指導者の数,生徒数,船の数,練習場・練習回数・練習期間などについては,それぞれ地方の実情にもとづいて,具体的に,しかも教育の効果があるように計画を立てる必要がある。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
潮干狩の相談をして潮千狩にでかける。
ロ. 理解のために
(イ) 期日・持ち物・調査内容などについて,生徒各自,またはグループによって調査したことを記録し報告する。
(ロ) 沖合からとれる水産生物については,魚・貝・そう類の陸揚げされたものを見るか,あるいは漁業者に話を聞く。
(ハ) 海にでかける準備として,水泳や小型漁船の操縦の指導を受ける。
この練習と並行して,海そうの性質や水産生物の習性についての調査も行う。たとえば,水泳について,水温・水色など,水くぐりによって,水圧・にごり・底質・水深など,操舟によって,潮流・風速・風向などというように問題を持って調査し,記録するようにする。
(ニ) 海流の話,漁場の話,潮流や,潮境や大陸ほうの話など聞く。
ハ. 応用として
重要水産物の分布図を作ってみる。
3. 学習結果の考査
この場合,水産生物とその環境については,特性をはっきりと見きわめられるような問題を作り,生物の種類分けが混乱することがないようにすることがたいせつである。
(2) 技能や熟練の考査は,調査する目標によって一対比較法や記述尺度法によってするのであるが,水泳や操舟などの場合は,ただ一律に時間と距離といったような点にだけ着目しないで,個性と体力を考慮しなければならない。早く泳げるが疲れてしまうとか,飛びこみはじょうずだとか,泳ぎはへただが長時間泳いでいるといったようなことがわかれば,次回の指導法も研究されるし,また適性検査ともなるのである。手旗やモールス信号などは,その程度に幾段階もおいて一歩一歩標準の成績に達するように,最初は適確に,次第に速さを要求するような記述尺度法によらなければならない。
単元3. 漁具の作製と手入れ
1. 目 標
(2) 漁網のあみ方を会得する。
(3) 漁具の取り扱いや保存について理解し,その方法を会得する。
2. 指 導 法
イ. 生徒を漁業に近づけるために,まず海浜一帯に教材をとり,干し網の考察から,基本的な網に関する知識と編網の技術を指導し,網漁具の構成を知らせて,単元4以下の各種漁業の漁法に発展するもとにする単元である。したがって,ここでは各種の漁具の種類分けから基礎的な編網・染網・保管などについて研究し,調査して,生徒の活動が順序よく能率的に進められるように指導計画を立てることが必要である。
ロ. 基本的なことは数えあげればたくさんある。したがって,学習する時間も多くこれに当てなければならない。また単元2,単元3には,実際の仕事が多くふくまれているが,これを一時に数多く指導しても効果は上がらないだろうし,興味も低下するだろうから,これを適当に分配したり,他の単元と組み合わせたりして,知らず知らずの間に身につくように練習回数を増して能率をあげるようにくふうする必要がある。
ハ. 土地で行われている漁具・漁法について調査しておく。
ニ. 実習材料をそろえる。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
干し網の見学をする。
ロ. 理解のために
(イ) 干し網の考察から,魚貝類の漁法について話し合う。
(ロ) 漁具の調査・整理をする(種類分け)。
(ハ) 網糸の原料調査(種類・産地・性能実験)。
(ニ) 網糸のよりのかけ方の練習。
(ホ) 網糸やつり糸の取り扱い方の練習。
(ヘ) 二本の糸をつなぎ合わせる場合。
(ト) 網地の考察。
(チ) 網地の作成。
(リ) 網目のへらし方。増し方。
(ヌ) へり綱の考察とその編みつけ方。
(ル) 縮結の度合と網目の変化の考察。
(ヲ) 網はなぜ腐りやすいか説明を聞き,防腐法を話し合う。
(ワ) カッチ・なましぶ・コールタールで網ぞめをしてみる。
(カ) 網の切れた場合の処置・修理の仕方を練習する。
(ヨ) 綱の結び方を練習し合う。
(タ) 浮子・沈子の考察とそのとりつけ方を練習する。
ハ. 応用として
(イ) 漁網を見るたびに網目の寸法に注意し,その使用目的によって種類分けしてみる。
(ロ) 漁網の材料とその使われている部分とを調査してみる。
(ハ) 時間をきめて編網の競技会をしてみる。
3. 学習結果の考査
(2) 網地の構成や染網の知識や理解については,いろいろな條件をとりあげて,その場合どうすればよいかといったようなことを実習させたり,聞いてみたりする。
単元4. いわし漁業
1. 目 標
(2) いわしの性状を調べ,どこにすんでいるかを理解する。
(3) 魚群の意義とこれをさがす方法とを理解する。
(4) いわしの性状・環境と漁法との相互関係を理解する。
(5) まき網漁業(あぐり網)の漁法について理解する。
2. 指 導 法
イ. いわしの水産業上の位置を調べる(漁獲高・利用方面)。
ロ. いわしの種類とどこにすんでいるかを調べる(漁獲物・漁場・漁期)。
ハ. いわしの生物学的研究をする(体色・体形・構造・食物・運動法・魚群など)。
ニ. 魚群をさがす科学的根拠を研究する。
ホ. その地方におけるいわし漁業の実情を調べる。
へ. まき網漁業の対象となる海洋の状態および水産生物を研究する。
ト. まき網の構造・漁法について調査し,研究しておく。
チ. いわし漁業は全国いたるところで行われているのであるが,単元の重点はいわしの習性を利用したまき網漁業にあるのであるから,各地方の実情を適当に選択し,他の単元のところで重複し,混雑するようなことのないように素材を用意する。たとえば,地引きは引き網に,定置網はぶり漁業に,刺し網は刺し網漁業の単元で学ぶように考慮するのである。
リ. まき網の模型,その他のいわし漁具の見学などの調査をし,準備をしておく。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) その地方におけるいわしの陸揚げされる季節・種類・大小などについて調査する。
(ロ) いわしの生物学的な写生をする(体形・体色・口形・えらなど)。
(ハ) いわしの分布と漁獲高を統計によって調べる。
ロ. 理解のために
(イ) いわしの盛漁期と漁場との関係を聞いてみる。
(ロ) いわしの大漁の原因を聞いてみる(魚群・食物・塩分濃度・海流‥‥教師の説明)。
(ハ) いわしの遊泳層について話し合う(体形・体色などから‥‥教師の助言)。
(ニ) 魚群の発見の方法について聞く。
(天候・潮時・水温・比重・水鳥・波紋・水色の観測や音波・電波などの利用‥‥教師)
(ホ) 集魚燈の説明を聞く。
(ヘ) いわしの性状から考えてどんな漁法がよいか話し合う(教師‥‥地引き網→船引き網→刺し網→まき網‥‥のそれぞれの特徴をあげながら次第に魚群を見つけて一挙にとりまく漁法に至るまでの経路を説朋)。
(ト) いわしあぐり網の説朋を聞く(この場合操業時間・漁獲高といったような面から漁業の能率化された面も教師が説明する)。
ハ. 応用として
(イ) 二隻旋法と一隻旋法の違いを考えてみる。
(ロ) 網干し場のまき網の考察,あるいは魚群が網にはいった時の状態などから考えて,まき網の網地の編成について話し合う。
(ハ) まき網でどんな魚類がとれるか調査してみる。
(ニ) 休暇を利用してあぐり網漁船に乗せてもらう。
3. 学習結果の考査
水産生物の習性と漁法との関係とを理解したかどうかを調べるには,学んだ生物と,それに対する合理的な漁法とがいかにして結びつけられているかに重点をおいて調べなければならない。このことは単元4以下の各種漁業にすべて関係するところである。たとえば,いわしは魚群をなしていることから,あるいは光を好むことから,あるいは海の上層を泳いでいるとか沿岸流にすんでいるというようなことから,いわし漁法がこれらとどんな関係があるかたずねてみるのである。
単元5. たい漁業
1. 目 標
(2) たいはどこにすんでいるかを理解する。
(3) たいの習性や環境がたい漁法とどんな関係があるかを理解する。
(4) つり漁業とはどんなものか,どんな場合に都合がよいかを理解する。
(5) たい網(しばり網)について,おどし集める漁法を理解し,まき網に連絡する。
2. 指 導 法
イ. たい漁業についても,いわし漁業と同様に数十種類におよぶのであるが,この単元ではたいの一本づりに力を注ぐように,教師は,教材を調査し,研究するのである。なお,しばり網は,単元4のまき網に,沖引きは単元10の引き網に,はえなわはまぐろ漁業の単元に連絡をはかるようにしておく。
ロ. たいの水産業上における位置を調査する(種類とその漁獲高)。
ハ. たいの種類とそのすんでいる環境について調査する(特にたい科のもの)。
ニ. たいの生物学的研究をしておく。
ホ. たいの漁法を調べ,たいのどんな習性を利用したものかを研究しておく。
へ. 地方におけるたい漁業の実情について調査する。
ト. つり漁業について調査研究しておく。特にたいを素材にできないような地方では十分研究する。たとえば,たらつりとか,さばつりとかいうように,なるべく水産業上重要な魚類を取材する。
チ. つり漁具・標本・掛け図などを準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 漁獲されたたいの種類の調査や写生をする。
(ロ) たいはどんな場合によく利用されるか調べてみる。
(ハ) 地方における漁期や漁法の調査をする。
ロ. 理解のために
(イ) 調査したことを話し合う。まず体形・骨組みなどから運動を考えたり,他のほうぼう・たら・なまず・あんこうなどと比較するのもよい。
(ロ) いわしの口などと比較し,たいの食物を研究する。
(ハ) たいの漁期・漁場について教師から説明を聞く。
(産卵回遊,さくらだい・浮きだいと呼ばれることや,稚魚の生育あるいはたいの運動のしかたなど,たいの生活とどんなに関係があるかを聞く)
(ニ) たい漁業の調査の結果を報告する。
(ホ) 教師からたい網(地こぎ網・しばり網)について説明を聞く。この際かつらなわの働きについても話を聞く。
(ヘ) たいつりについて調べたことを話し合う。
(ト) つり漁業一般について研究してみる。つり針を持ちよって比べながら(形の大小,太さ,くきの長短,ふところの広狭,あぐのつけ具合,さきの向き,えさのつけ方,つり糸の作り方,沈子のつけ方など)目的物の運動力や習性などと関連して研究し合う。
(チ) つり漁法の話を聞く。
(リ) さばの天びんづりについて話を聞く。
(ヌ) いそづりや小川のつりの見学をし,また実際にやってみる。
ハ. 応用として
(イ) 各種のえさの研究をしてみる。
(ロ) はえなわづりについて調査して,まぐろ漁業のところで学ぶ準備をしておく。
3. 学習結果の考査
いうまでもなく知識と技能とは結びつけられたものであるから,水産の実際をいつも考慮して発問する必要がある。たとえば,たいつりのおもり(びし)のつけ方,えさのつけ方というような技術に即した知識が習得できたかどうかを考査するのである。
単元6. かつお漁業
1. 目 標
(2) かつおはどこにすんでいるかを理解する。
(3) つり漁業にでかける遠洋漁船の特殊設備を理解する。
2. 指 導 法
イ. かつおの水産業上の位置を調べる(漁獲高・利用方面)。
ロ. かつおの性状と漁期・漁場の調査研究をする。
ハ. かつお漁業にはどんな種類があるか調査する。
ニ. かつおつり漁業について調査研究する(漁具・漁船・えさなどについて)。
ホ. かつおつりざお・ぎじ針,その他,模型・標本・掛け図などの参考品を準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) かつおの体形から運動能力を話し合う。
(ロ) 地方のかつお漁業の実情について調査しておく。
ロ. 理解のために
(イ) かつおの習性について話を聞く(話を聞きながら,次のような要点を書きとめる)。
外洋性(漁場)
適水温
回遊魚(盛漁期の移動)
魚群
魚群発見の様子
かつおのえさにするいわしの飼い方,およびいわしのまき方
散水のしかたとその意義
ぎじ針の構造・使用時期,さおの長さ
かつおつりの操業状態・操業時間・漁獲尾数
(ロ) 話を聞き,6mさおとつり糸に5kgぐらいのかつおがつられて頭上をとびかう様子を試してみる。
ハ. 応用として
(イ) ここでは,つりざおの研究をする。
種類・産地・年齢・伐採季節およびさおの作り方などを調査する。
(ロ) つり糸の結び方を練習する。
(ハ) ぎじ針はどんな魚をとるのに使われるか調査してみる。
(ニ) 休暇を利用してかつおつり漁船に乗せてもらう。
3. 学習結果の考査
単元7. まぐろ漁業
1. 目 標
(2) まぐろ漁業の特異性について理解する。
(3) まぐろ漁業のうち,特にはえなわづりの漁具および漁法について理解する。
(4) はえなわづりの種類と,それぞれの目的物との関係について理解する。
2. 指 導 法
イ. まぐろの水産業上における位置について調べる。
ロ. まぐろの種類と習性について調査研究する(漁期・漁場)。
ハ. まぐろ漁業にはどんな種類があるかを調査する。
ニ. その地方では,まぐろをどんな方法でとっているかを調査する。
ホ. はえなわづりの種類と漁具・漁法について調査する。
へ. その地方におけるはえなわづり漁業の実情について調査する。
ト. まぐろの習性とまぐろはえなわづりの相互関係を見きわめる。
チ. はえなわの漁具・掛け図・標本などを準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) つり漁具で一時にたくさんつり上げるしかけになっているものはないかどうか調査してみる。
(ロ) その地方におけるまぐろ漁業について調査してみる。
ロ. 理解のために
(イ) まぐろにはどんな種類があるか,どんな性状を持っているか話し合う。
まぐろの適水温・分布・回遊・えさ・遊泳層などについて教師から説明を聞く。
(ロ) まぐろの漁場・漁期について話を聞く。
(ハ) まぐろはえなわの構造について研究し合う。
なわの太さと目的物
長いなわの取り扱い方(一はちの目方,つり針の処理)
幹なわと枝なわとの関係
枝なわの結びつけ方
つり針の構造はどんな場合に都合がよいか。
まぐろのえさの種類,えさのつけ方。
浮標やうきなわの働き。
ハ. 応用として
その地方で,はえなわづりにどんなものがあるか調べる。
それぞれの目的物と,はえなわの種類とを比較対照して研究する。
たとえば,
たら・うなぎ・さめ・かれい・かじき・はも・さば・たいなどのようなものに,どんなつり漁業が一番能率が上がっているか調査する。
3. 学習結果の考査
(単元4参照)
単元8. ぶり漁業
1. 目 標
(2) ぶりの習性と定置網漁業との相互関係を理解する。
(3) ぶりの習性と,まきえづり漁法との相互関係を理解する。
(4) いろいろな定置網漁業の構造および漁法について理解する。
2. 指 導 法
イ. ぶりの水産業上における位置について調査する。
ロ. ぶりの漁期・漁場を調査研究する(適水温・分布・回遊・魚道など)。
ハ. ぶりのまきえづり漁法について調査する(漁場・漁期・漁具・漁法・えさ)。
ニ. 定置網の構造とその理論について研究する。
ホ. 定置網の種類と漁獲される目的物との関係を調べる。
へ. 地方における定置網漁業の実情を調査する。
ト. ぶりの定置網漁法について研究する。
チ. 定置網の模型,海岸の地形の模型または等深線図,定置網漁場の図などを準備する。
リ. 定置網の見学,または定置網を敷設する準備の手傳いなど,生徒の参加・実習のできる事がらをあらかじめ調査し,連絡しておく。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) ぶりにいろいろな名のあることを調べ,それぞれの漁期・漁場を聞き,ぶりの成長する様子を調べる。
(ロ) その地方にある定置網漁業について調べてみる。
ロ. 理解のために
(イ) ぶりの習性を話してもらう。
(ロ) ぶりの回遊する道すじについて話を聞く。
ぶりの適水温・産卵場・水深,暖流の影響,海底の性質,たべもの。
(ハ) 回遊する道すじで,ぶりの足止めとなる場所について話を聞く。
ぶりのまきえづり(手づり)について説明を聞く。
(ニ) 定置網はどんなものか附近にあったら見学する。かき網の長さ,かき網と海岸線との関係,ふくろ網の形などは,うきによって考察できる。なお,定置網をたてこむ以前の陸上の作業には手伝わせてもらう。
(ホ) 海岸の地形や定置網の模型によって漁法を研究してみる。
(ヘ) 各種の定置網について,構造・漁場・目的物などについてそれぞれ研究してみる。
ハ. 応用として
(イ) ぶりの大漁と気象との関係を調べてみる。
(ロ) 定置網の防腐について研究してみる。
(ハ) 定置網に魚群のはいったのを知る方法を研究してみる。
3. 学習結果の考査
単元9. 刺し網漁業
1. 目 標
(2) 刺し網にはどんな種類があって,それぞれどんな水産物をめあてにするのかを理解する。
(3) 刺し網漁業の漁法は,どんなところにたいせつな問題があるかを理解する。
2. 指 導 法
イ. 刺し網漁業の水産業上における位置を調べる(資本,漁獲高,漁法の難易)。
ロ. 刺し網漁業の種類と,それぞれの網の構造および漁法について調べる。
ハ. 刺し網でとれる魚・貝・えび・かに類の性状について調べる。
ニ. 地方に行われている刺し網漁業の実情について調べる。
ホ. 刺し網の標本または各種の網目寸法表,各種水産生物の標本・掛け図などを準備する。
へ. 漁具の見学なども計画する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) 泳いで来る魚を受けとめる場合をいろいろ話し合う。
(ロ) 刺し網の網地を各方面にわたって調べてみる(網目,長さと幅の関係,原料・太さ・結節・重さなどについて)。
(ハ) 刺し網でとれた水産生物の性質・状態を考察する。
ロ. 理解のために
(イ) 調べたことを持ち寄って話し合う(教師から刺し網の構造・種類・性能などについて話を聞く)。
(ロ) 一枚の網地を拡げて次のような事がらを話し合ったり教師に聞く。
ぴんと網地をはった場合,ゆるやかに網地をはった場合。
泳いで来る目的物が大小種々ある場合,大きさが一定している場合。
浮子に浮力を多くつける場合,沈子に重さを加える場合。
泳ぎの強い魚類,泳ぎが弱く方向がすぐ変えられる魚類。
網を一定の場所におく場合,魚群を知って投網する場合。
昼間操業する場合,夜間操業する場合。
海水のすむ時,にごる時。
すんだきれいな海水の場所,にごった海水の場所。
網目の結節が本目の場合,かえるまたの場合。
網糸が太くてこわい場合,やわらかくて細く強い場合。
潮流を横切って張る場合,潮流と並行に張る場合。
波や風のはげしい場合,おだやかな場合。
網地にいかりをつける場合,いかりをつけない場合。
魚の遊泳層が一定している場合,変北する場合。
揚げ網を風上から行う場合,風下から行う場合などについて研究する。
ハ. 応用として
水産生物の習性や海洋の状態などによって,いろいろな刺し網漁業を比較研究する。
たとえば,
たら・すけとうたら・ひらめ・かれい・ぶり・さば・あじ・にしん・ねずみざめ・さけ・ます・いわし・まぐろ・とびうお・さんま・さわら・ぼら・えび・かになどについて漁業者の話を聞いてみる。
3. 学習結果の考査
単元10. 引き網漁業
1. 目 標
(2) 引き網漁業の特異性はどんな点であるかを理解する。
(3) 漁具・漁法が次第に能率化し機械化された点を理解する。
(4) トロール漁業がどんなに科学的・合理的であるかを理解する。
2. 指 導 法
イ. 引き網漁業の水産業上における位置について調べる。
ロ. 引き網の構造・種類および理論を研究する。
ハ. 引き網の発達した経路を調べる。
二. 引き網によってどんなものがとれるか。漁法と関連して調べる。
ホ. その地方にはどんな引き網漁業が行われていたか。
また,今日どんな引き網が行われているか調査する。
へ. 地引き網の見学,あるいは各種引き網の模型または掛け図など,生徒の学習に参考になるものを予定し,準備する。
(2) 生徒の活動
イ. 端緒として
(イ) ふくろ網をつけた網に引き綱をつけて引く漁業には,どんなものがあるか調べてみる。
(ロ) 地引き網の漁法を見学する。
ロ. 理解のために
(イ) 引き網はどんなところに注意しなければならないか話し合う。
網を移動させることと底質との関係はどうか。
網を引く力は何によるか。
ふくろ網に魚を入れるためには,どのように引けばよいのか。
(ロ) 引き網で取れる生物を調査し,漁具を研究してみる。
たとえば,
かれい・ひらめ・ぐち・かながしら・たい・えい・にべ・ふか・あじ・れんこだい・ほうぼう・えび・貝・なまこ・さんごなどについて
(ハ) けた網・打た瀬網・機船底引き網・トロール網と次第にくふう改良されて行った点を聞く。
(ニ) トロール漁船やトロール網の特殊装置について,模型または図などによって説明を聞く(オッターポールド・ワープ・ウインチ・ガロス・テークル・網の構成・おどしなわ・航続能力・船内冷凍・機関などについて)。
ハ. 応用として
(イ) 海底に障害物があった場合,どのようにすれば損害が少なくてすむか調査研究する。
(ロ) 引き網の長さ,あるいは速さ,網具の重さなどについて研究してみる。
(ハ) 休暇を利用して,引き網漁船に乗せてもらう。
3. 学習結果の考査