第五章 学習結果の考査
水産の学習結果の考査には,一般の学習結果の考査を参考にすることはいうまでもないが,特に,水産の場合について考えてみると,次のような事がらが挙げられるであろう。
1. 技能の考査
(2) 生徒の中には視覚のきくもの,聴覚の発達したもの,味覚の鋭敏なもの運動器官の発達したものなどそれぞれ個性が形づくられる場合が多い。信号などは視覚や聴覚に,操舟は運動器官に関係があり,塩味やふう味,うま味といったものの区別は製造能力に影響し,方位や計量器の目盛を正確に見きわめるには,運動能力・視覚・知覚などが関係し,魚群の発見には視覚・知覚などが,魚つりには運動能力・触覚・知覚などが大きく影響しているのである。もちろん,その一部分の働きばかりでなく,全体を総合し,推理や判断が最後の決定をするのであるが,上に挙げたようなことが大きな要素となり,たび重なる体験によって個性を作り上げるのであるから,こうした点も考慮して,技能の調査をするのである。
(3) 水産は自然の力に左右されるから,なんら特別の技能を示さないでよい結果の得られる場合もあろうし,また苦心くふうしても失敗する場合も考えられる。したがって,製品や漁獲がすぐれていたといって直ちに可否を断定してしまうことはよくない場合がある。たとえば,素干しのようなものは一日一干しのようにいけばよい製品ができるであろうが,土地の高低,日当たり,風通しの良否,地面の様子,材料の鮮度・品質などの違いから,同じ動作をし,同じ処置をとっても違いが出る。このような場合は,製品だけの考査に終らないで,材料の選択,天候の様子,処理方法というように,技能に関係を持つ要素を幾つかに分析して,生徒の理解や,技術を記述尺度法などによって考査することが望ましい。この分析的方法は,考査するに当たって,ひとりひとりの仕事の最初から最後までつき添って考査すればよいのであるが,これは他の生徒と同時に同じ環境のもとで比較対照することは困難であるから,報告や実習帳などに記録させたものを参考とし,どんな点に注意していたか,どんな手順をとっていたか,また失敗や成功はどんなに反省されているかというようなことまで考査する必要がある。
技術の中では,何回もくり返し熟練を要するものがある。たとえば,編網などはそのよい例であって,おとなの熟練工ならばどれくらいの網目を何編みで一日いくらできるのが普通であるといった標準がある。信号なども,一分間何字ぐらい見分けたり,聞きとったりすることができるという標準がある。このような技能についてはたびたび考査し,その進歩の程度を比較したり,またどんなに速く正確にできるかといったような面から,記述尺度法によって考査するのがよいであろう。
2. 知識や理解について
知識や理解についての考査は,いままでのような論文や,筆答や口答によって,総合的に調査することもできるが,その上更に,知識などを調査するには,真疑法・選択法・組み合わせ法・記録法などによって,分析的に考慮することができる。
考え方や理解の程度を調査するには,完成法・判定法・訂正法・配列法などの分析的方法も考えられる。推理や判断の行われる原理をもとにして具体的な事実をとりあげ,また具体的なものに原理を応用する場合などを問題として選び出すようにするがよい。