第二章 水産の学習と生徒の発達

 

 中学校における生徒の身体的・精神的の発達段階は,少年期を脱して成人の域に移り変わろうとする時期であって,水産の学習をするに当たっては,次のような点を考慮すべきであろう。

 1. 小学校のころは,生徒は日常生活の中で,単に船遊びや海水浴などをすることによって,海の生活に触れた程度であろう。しかし中学校になると相当に身体も発達し,体力も次第に増して来て,海上生活に必要な,水泳や潜水の技術的な練習や,船をこぐような,力のいる仕事にも生徒の興味は一だんと高くなるであろう。このような基本的な技能に熟達すると,第九学年ごろは,おとなに従って船の中で生活することもできるようになり,漁船や航海の知識を得るとともに,焼玉機関の運転も覚えて,本格的な漁業に一歩一歩,近寄ることができる。

 2. 水産科の技能の中には,以上のほかに,手先を働かせて手際よく,しかも早く仕上げなければならない仕事があって,なかでも,漁網を編むとか,漁獲物をえり分けるとか,魚類を調理し貝類のむきみを作るというような仕事の技能は,このころにしっかりと身につけておくことが望ましい。したがって,まだ十分に海上活動ができないで危険を切り抜ける能力がそなわらない第七学年や第八学年のころは,漁具の作製や製造加工を主として取り扱うように考慮すべきであろう。生徒はこのような学習において何時間で網目いくつできるようになったとか,三枚に身おろしすることが非常にあざやかになったというような熟練の妙味を体験することができるであろう。

 3. 中学校ごろの生徒になると,おいおい経済的な物の見方・考え方もできるようになる。したがって,産業や職業などが成り立つにはどんな経営や仕事のしかたをすればよいかというようなことも,次第にとり入れることができるであろう。