学習指導要領
職業科商業編

 

1.商   業
 
総  論
 
第一章 はじめのことば

 

 このたび新しく実施される教育制度において,中学校の課程を終ったものの進む方向を考えてみると,その一部分のものはさらに上級の学校に進学するだろうが,他の大部分のものは,直ちに実社会に入ってそれぞれの職業について職業生活を営むものである。これらの二つの方向に進むものについて,さらに経済・商業及び事務的職業に基準を置いてこまかに分けてみると,だいたい次の四つの型に分類することができる。

 A 上級の学校に進学するもの。

(a)上級の学校において商業あるいは経済の学科を修めるもの。

(b)上級の学校において商業あるいは経済の学科を修めないもの。

 B 直ちに実社会に入って職業生活を営むもの。 (a)実社会において商業あるいは事務的職業に従事するもの。

(b)実社会において商業あるいは事務的職業に従事しないもの。

 中学校における商業教育は,将来の進む方向が異なるこれらの生徒を対象とするのであって,上級への進学または職業選択に当たって,その方向を判断するために必要な資料をかれらに与えて,職業指導としての役目を果たすと同時に,社会・経済関係の学理と実際とを理解させ,かれらが将来当面するであろういろいろな経済的・社会的の問題を適切に処理し,経済生活を合理的にくふう・改善することができるような,創造的・発展的な教育でなければならない。すなわち,かれらの将来の生活において商業の学習が,なにかしら役にたったと感じさせるようなものがなければならない。

 われわれは社会の一構成員として,一つの国民経済のしくみのなかにおいて,他の人々と有機的な関係を維持しながら,おのおの個人的経済生活を営んでいるのであって,この有機的な関係に依存しなければ,とうてい満足な経済生活を営むことはむずかしい。したがって,その社会生活においても,個人生活においても,たえず経済的な観察と判断とを必要とする,いろいろな問題があらわれ,その合理的な解決が必要とされることが多いのである。

 すなわち,かれらが将来,商業や事務的職業以外の他の職業,たとえば,農業・水産業または工業,その他いろいろの職業を選択して,かれらの生計をたてていく場合にも,かれらの収入や支出の場面において,どうすれば収入を増し,また,どうすれば支出を合理的にすることができるかということについて,大きな関心をいだくようになるものであって,収入と支出との合理的な調和は,かれらの生活を安定させ,文化の恵沢によくせしめる根源である。このことは,ひいては,わが日本が将来,平和的文化国家としてたちなおるための基礎条件として,重要な意味をもつものである。

 このような意味において,文化国家・平和国家の国民たるものは,社会人として経済生活を営むうえに,ぜひとも必要であると思われる経済及び商業に関する一般的・基礎的な知識・技能を,中学の課程において修得することは,まことに肝要なことであると思う。

 特に,商業その他事務的職業に従事し,商人や商業事務担当者として活動する場合には,経営法を改善したり,また,事務の能率的処理ができるような知識・技能をもつことが必要である。これに対しては,商業経済及び商業事務に関する一般的・基礎的の知識・技能を会得させるばかりでなく,さらに進んで,生きた実社会から教材を選んで研究・実践させたり,または,いろいろの実際家の経験談を聞かせるのもまた必要なことである。

 また,学校における校友会などで開設する共同店舗などで,これが実地運営をさせたり,学校の会計事務または庶務事務などに,交互輪番で補助員として事務を見習わせるのもよい。

 以上のべた知識・技能のほかに本商業教育の全般を通じて,学習上たえず注意しなければならないことに,商業に従事するについての心構え・態度などの問題がある。従来わが国においては,ともすると「士農工商」といわれ,商人は職業人の最下位にいるものとみなされ,百姓・町人と見さげられ,かれらもまたそれにあまんじていたかのようであった。ここに,わが国の社会階級の中に封建性が強く残っていたのである。したがって,かれらは社会人としての商人たるのきんじを失い,ややもすれば,自己の利益追求だけをこととして,社会全体の健全な発展に貢献し,人々の生活を充実し,これを豊かにしようとするような熱意にもえるものが少なかった。

 現在,わが国の国民経済は,みぞうのインフレのこう進によって,産業はいび沈滞し,生産はあがらず,国民はとたんの苦しみの中にその日その日を送っている状態である。このような窮状を救い,経済生活を改善するためには,企業の復興と生産の増大とが,まず第一に要請されるところである。そのためには,全国民が勤労意欲をこう揚し,産業の発展,国家の再建の担当者であるという自覚と熱意にもえ,生産の増大に努力することがたいせつであることはいうまでもない。

 なかでも,商人としては,この少ない物資を,どうすれば多くの需要者に,公平にかつ迅速に,しかも廉価に配給することができるかをくふうし,親切ていねいにしかも愛きょうをもち,そのうえ謙そんな態度で,良心的に配給の業務に従事するよう心がけることが望ましい。

 商業精神,すなわち商人道徳のこう揚が強くさけばれるとき,内外のぎきょう的商人の実例をあげて,この点を指導することを忘れてはならない。管理貿易が開かれて,「メード・イン・ジャパン」の商標が世界市場に進出するとき,かつての「安かろう悪かろう」の批評がまた世界市場をふうびするようでは,日本商人道も,もはやふたたび海外に名をあげることはむずかしいことで,したがって,日本再建の困難は商人道徳のたいはいに基因するといわれても,かえすことばがないわけである。これがすなわち,商人道徳の一項をもうけず,随所・随時にとらえられた教材の底に,つねに商人の徳義があることを,指導にあたって注意されたいところである。

 現在の国民困窮の原因が,過少生産や社会道徳のたいはいにあって,これが対策としては生産の増大,配給の公正などがたいせつであることは,すでにのべたが,消費者の立場からこれをみると,全国民が戦争によってひきおこされた,多くの経済的困難をよく認識して,国法を守り,統制にしたがい,生活水準を切り下げ,耐乏生活を覚悟するとともに,消費を節約し,生活を経済的に合理化し,物資の効用を100%に発揮するような消費生活を行い,ものごとを能率的に処理し,時間をたいせつにし,余剰時間を有効に利用する習慣をつけるようにすることが望ましい。特に配給の任にあたるものは,「少なきを憂えず,等しからざるを憂う」といったようなことのないようにすることが望ましい。ここにも商人道徳の一こまがある。

 以上のべたように,商業教育に対するいろいろな要求と,教育の根本目的とをあわせ考えて,本商業育の目標はたてられたのであって,学習指導要領の方法・内容について具体的な計画を立案する場合に,たえずこの目標が実現できるようくふうしてもらいたい。

 これを要するに,中学校における商業の教育は,わが国が建設しようとする新興国家の国民の知的水準を,社会経済並に産業に関する理解程度において規定するものであって,たとえ商業以外のいかなる職業に従事するものでも,その人が社会人として経済生活を営む以上,おのおのが現在おかれている社会経済状態がどんなであるかを,理解し,会得することができるような知識・技能を与えるものである。特に,商業が生産者と消費者との間に立って,物資の配給に任じ,国民生活上必要な原料・材料及び商品の需要と供給とを調節して,国民経済を円滑ならしめ,産業を発展せしめる業務であるという,特殊性を認識させなければならない。商業があればこそ,われわれは国内はいうまでもなく,世界のあらゆる方面から,あまたの必需物資を手に入れることができ,充実した文化の香りの高い生活を営むことができるのである。

 商業が全くなくなった社会を考えてみるがよい。われわれの生活がどんなに困るかは想像するだも恐ろしいくらいであろう。たとえば,たった一つの交通・通信機関が全滅した,大正年間の関東の大震災のときでもほぼ想像がつくであろう。

 以前,商業の取引範囲がまだせまかった時代にあっては,ある地方にききんがあれば,その地方の人々は食物の欠乏に苦しみ,なかには財布を首にかけながら餓死していった人さえあるといわれている。そこに商業があったなら,物資はこれらの地方に流れて,このようなみじめなことは起らずにすんだであろう。実に商業は単に国内ばかりでなく,外国貿易によって国際間にも有無あい通ずる取引が行われ,国富を増進し,国民経済を発展させ,国民生活の向上に貢献するものである。それゆえ,商業によって身をたてようとするものは,単に自己の利益だけにとらわれることなく,商業の本質的任務をよく自覚し,社会的見地にたって,その業務に精励し,もってこれが堅実な発達をはかり,国家の繁栄と社会の福祉とに貢献するよう心がけなければならない。

 

第二章 商業の教育目標

 

 商業の教育目標は,これを学ぶものに社会的・経済的自覚にもとづいた,良心的な生活を営ませ,経営の改善や能率的に事務を処理するために必要な知識・技能を修得させ,さらに社会及び産業の健全な発展につくす態度をかん養するために,他の教科で学んだ基礎の上に商業を通じて,次のことを発達させるにある。

(1)ものごとを科学的・能率的に処理する能力

(2)経済生活及び商業活動に必要な技能

(3)経済及び商業に関する一般的知識

(4)わが国の経済・産業の特色,商業と他の産業との相互関係についての理解

(5)良心的な経済生活・商業活動をなし,社会一般の福祉に貢献し,国民生活の向上に努力する態度

(6)勤労を尊び,産業の発展に努力する態度

 

第三章 商業の学習と生徒の発達

 

 商業教育の目標の達成に努力するに当たって,注意しなければならないことは,学習の主体は生徒自身であって,その出発点となるものは生徒の現実の生活であるということである。このような意味から,われわれは生徒の現実の生活を知りまたその動き方や伸び方を知って,そこから学習指導の出発点の発見や,その内容その方法をくふうしなくてはならない。次にのべることは,一般的なものだけを概説したのにすぎないから,地域差・環境差や個人差については,直接生徒の指導にあたる教師が,十分に研究して,科学的な方法で学習指導計画を立案するがよい。

 

一 学習意欲の発展

 

 幼い児童の活動は,かれらの生れつきもっている興味によるものが多い。中学校に通う年ごろになると興味による活動とともに,かれらの生活における必要性による活動がだんだん顕著になってくる。

 最近ものの値段が著しく高くなり,かれらの欲するものを自由に手に入れることができなくなったので,ものを買うにも,良質でかつ値段のやすい品物を買うには,どんなにしたらよいかをくふうするようになった。また,いろいろな事がらに関して分析的・論理的な解答を得ようとして,たとえば,じぶんの学用品や生活必需物資が,どこで作られ,どんなふうにして手に入るのか知りたいという気持ちから,いろいろと人にたずねたり,また調べたりする。また,新聞や雑誌または書物を見たり,他人の話やラジオに耳をかたむけてきき,近ごろの物価の変動の問題,インフレーションの問題,おかねの値うち,労働問題などに疑問をいだき,その研究に対して強い意欲を感じてくる。このように,その活動はかれらの生活における必要性,またはこれを分祈的・論理的に究明しようとする心理にもとづいてくることが多い。こうした学習意欲も個人個人によって,おのおの程度に差があるものである。卒業後直ちに実杜会に入る生徒は商業に対して相当な関心をもっているであろうが,上級の学校に進学しようとするものの中には,大した関心をもたないものもあるであろう。したがって,学習の指導に当たって,どんな活動をとり入れるかについて考える場合には,かれらの学習意欲がどんなところにあるか,また,それは何にもとづいて,そして個人的にどんな差をもっているかを,十分考慮してやらなければならない。

 

二.知識・経験と心身の発達

 

 幼い児童の学習は,行動的な学習が大部分であって,論理的・抽象的な知識活動はほとんどみられない。すなわち,行動することによって,はじめてものごとをよく理解し,会得するのであって,その活動の最も代表的なものとして考えられるものは,すなわち遊びの生活である。児童はかれらの遊びの生活のうちに,自然と興味を感じつつ学習をし,いろいろな知識・経験を獲得しているのである。たとえば,ままごとあそび・配給ごっこ・売りやさん・お客さんごっこ・花屋さんごっこ・汽車ごっこなどのあそびをすることにおいて,また日常見たり聞いたりする,おとなの会話や活動のもようをまねしたりなどして,いろいろなくふうをこらして,商業に関する知識・経験を,他の職業や社会活動のそれといっしょに獲得していくのである。もう少し成長してくると,家業の手伝い,家計の手伝いとして配給物をとりにいったり,買物やお使いにいったり,店番や一日売上げの集計に当たってそろばんの手伝いをしたりするものなどもあり,さらに新聞配達によって小遣いまたは学費をかせいだり,郵便局や銀行などへ使いばしりをしたりして,じぶんの活動を通していろいろと社会的機関や事務処理に関する知識・技能の経験を得る。あるいは,家の預金や保険について両親に聞いてそのわけをあきらかにし,また,ラジオ・新聞などを通じて,商業における配給・交通・通信・金融・保険・家計・所得・消費・国民経済・財政などの全般にわたって,極めて粗雑な,まとまりのないものではあるが,商業・経済に関する知識・経験を獲得しているのである。

 学校においても,また往復の途中においても,見たり聞いたりすることによって,いろいろと知識・経験を獲得している。〔孟母三遷〕の訓えのように,子供はその生活環境から影響をうけることが大きい。中学校の生徒ともなれば,論理的・抽象的な傾向が強くなり,読書・調査・討議・思索などの知的な活動が活ぱつになってきて,児童ほどに生活場面の影響を強く受けることはないが,やはり,かれらの知識・経験を調べるには,地域差・生活差などを考えることが必要である。また,この生活場面からの影響を受けることも個人的に差があるから,これが指導計画の立案に当たって,特にそのことを見落としてはならない。たとえば,生活の場所的環境として,商店を観察する場合でも,能力の低い子供は物を売るという商店の活動の一つの場面しか見ないけれども,能力の優れた子供は物を売ったり買ったりする二つの場面について観察する。このように,能力に優劣のある生徒を同時に扱うのであるから,そのいずれを標準にして学習指導を進めるかは,十分検討されなければならない。

 論理的・抽象的な傾向が強くなるにつれて,ものごとを批判的に見るようになり,理論の研究を好むとともに,どこまでも問題を追求して,納得のいく解答を得るまではやめないようになることがたいせつである。興味や芸術的鑑賞力にも変化をきたしてくるし,道徳的意識も非常に変わってくる時代であって,商業道徳の問題についても,正しい商人のあり方,国民としての正しい生き方をしっかりとつかませることがたいせつである。自我の意識もはっきりとしてきて,ときに反抗的になり,自己閉鎖的傾向が強くなる。そうして,自己を見つめる傾向の濃化によって,手紙を書いたり,日記をつけたりすることを好むようになる。また,名誉心や感激性も強くなり,あこがれに満ち,いろいろの悩みをいだくようになってくる。これに対する指導法も発達心理・児童心理との連関において指導するみちをたどられたい。

 身長や体重の増加も著しく,内臓諸器官も急に発達し,性的な成熟も著しい。したがって,はちきれるような体力の充実を感じるようになるもので,これらの肉体的・生理的要求についても,十分考慮を払わなければならない。

 運動機能も発達が著しいが,特に手先の運動機能の発達が著しいので,この発達に即した実習計画がたてられるべきである。

 

三.社会的な活動の発展

 

 幼い児童では団体的行動は顕著ではないが,だんだん成長して12〜13歳ごろには,団体の成員となることを欲し,団体的な行動をすることを喜ぶようになる。

 小学校の児童の社会生活は,低学年ではさほど顕著ではないが,高学年では共同体的であり,積極的になる。そして交友関係も深くなり,親友ができてくる。したがって,友達のために自己犠牲を忍ぶという心持がでてくる。

 中学校に学ぶころの生徒は,この小学校の高学年の児童にあらわれはじめた,ものを深く考える傾向が強くなるのであって,だんだん社会生活の有機的関係がわかってきて,社会生活の一員としての個人生活のあり方,社会現象としての商業・経済現象について,心を傾けるようになり,共同作業,学校売店の共同経営・管理,重い物の共同運搬,共同計算,講演会の開設・運営,共同調査の施行,討論会などを喜ぶようになる。そして道徳的意識も社会性の発達にともない発達するので,責任感や義理人情を重んずるようになり,いろいろの仕事の社会的意義を理解してじぶんの仕事に熱意を傾けるようになる。したがって,この時期には共同精神や商業精神について,はっきりとした理解をもたせるとともに,商業・経済現象の社会的意義,個人の経済生活のあり方,いろいろな社会現象の有機的な相互関係を認識させる。また商店・会社・組合・銀行などを見学させたり,実際家の話を聞かせて,職業指導としての効果をあげることも考えられるが,さきにのべた学校や校友会などの共同組合店の経営,会計・経理などの実務の処理実習,商品の鑑定,取引先の選定などは実践を通じて,この期に習熟させるがよい。

 なお,いままでのところ高等科(旧制度)の児童は,特に女子において,中学校や女学校(旧制度)の生徒に比べて,社会的に眼が開けていたようである。それは,両者の生活環境の相違からくるものであろう。中学校(新制度)では,こうした二つのものが一団となって学習活動をするものであるから,一般的理解の程度も一段と低くなることを考慮して指導されることが望ましい。

 

第四章 商業の教材一覧表

 

 ここに示すものは,ただ標準となるほどのものに過ぎないのであって,教科書も大体これにもとづいて編修されているが,商業の学習時間,生徒の生活環境や心身の発達程度,また,これまでに生徒が獲得したであろう知識・経験,学校の設備,校友会の更生店舗,附近の商店・会社・組合などの状況を考慮に入れて指導することが望ましい。教材は便宜上,知識・技能に分けたが,知識と技能とは相融合して学習されてこそ,その効果を一層発揮することができるのであるからいずれの一方にも偏することのないように,指導の内容・方法を考えることが望ましい。

 増加時間に示す知識・技能は各単元において,特に商業の学習を選択して,必修課程の教材よりさらに進んで,深く学びたいと希望する生徒に課せられたものである。

 
第七学年
単 元
知   識
技   能
増 加 時 間
単元一.  

われわれの日常生活と経済  

 

(1)欲望の種類と生活に必要な物資  

(2)働くことのたいせつなわけ  

(3)消費を合理化するためのくふう  

(4)経済ということはどういう意義があるか  

(5)わが国経済の現状とわれわれの覚悟 

  

 

  

  

  

  

  

  

 

単元二.  

ものをつくるには(生産) 

 

(1)産業の活動はどうあるか  

(2)商業と他の産業との関係はどうか  

(3)郷土の産業の特色を国の産業に比較してみる  

(4)生産とはどんな意義があるか  

(5)生産事業はどう経営するか  

(6)国家が行う生産統制について

  

 

(1)主要な物資の生産過程(知識)  

(2)主要な物資の生産状況(知識)  

(3)わが国の資源(知識) 

 

単元三.  

ものが手にはいるまで(配給) 

 

(1)商業活動はどうあるか  

(2)商業のはじまりとその発達の歴史 

(3)配給の意義について 

(4)配給のしくみはどうあるか 

(5)商店の種類とその働き 

(6)商店の経営はどうするか 

(7)配給の統制はなぜ必要か 

(8)外国貿易のたいせつなこと

(1)度量衡器の取り扱い方 

(2)商品の荷造り・包装の仕方 

(3)広告・宣伝の仕方 

(4)諸計算の仕方 

(5)速記の仕方 

(6)字を清く早く書くこと 

(7)タイプライチング・謄写印刷術 

(8)事務用具の使い方

(1)商店の開設・運営(知識及び技能) 

(2)市場の分析研究(知識及び技能) 

(3)仕入販売の分析(知識及び技能) 

(4)主要な物資の配給過程(知識) 

(5)商業取引のしくみ(技能) 

(6)諸計算の仕方(技能) 

(7)そろばんの練習(技能) 

  

 

単元四. 

ものを運ぶには(交通・通信) 

 

(1)交通はどんな意義をもつか 

(2)貨物やお客の輸送方法の種類とその得失について 

(3)交通機関の種類・機能及びその得失について 

(4)料金とその取扱規定はどうか 

(5)倉庫にはどんな種類があってどんな機能をもっているか 

(6)通信方法の種類とその特徴について 

(7)通信料金とその取扱規定 

(8)交通・通信の統制はどんなとき行われるか

(1)輸送料金の計算の仕方 

(2)通信料金の計算の方法 

(3)商業通信文の書き方 

(4)電報の打ち方,電文の書き方 

(5)電話機の取り扱い方と電話の掛け方・受け方 

(6)新聞記事の見方 

(7)スクラップブックの作り方・利用法 

(8)雑誌や新聞の編修はどうするか

(1)わが国における交通機関の発達の歴史 (知識) 

(2)わが国における通信機関の発達の歴史 (知識) 

(3)交通・通信機関に用いられる機械の変遷(知識) 

 

第八学年
単元一. 

おかね(貨幣)と小切手 

 

(1)おかねの働きはどんなか 


(2)貨幣のはじまりとその変遷 

(3)貨幣の種類とその特徴 

(4)わが国の通貨はどんなか 

(5)わが国の貨幣制度はどうか 

(6)外国の貨幣の種類と単位などについて

(1)小切手の振り出し方 

(2)おかねの計算の仕方 

(3)統計の見方・作り方 

 

(1)貨幣制度の種類とその特色(知識) 

(2)わが国の貨幣制度(知識) 

(3)貨幣価値の理論(知識) 

(4)わが国のだ換券制度(知識) 

 

単元二. 

ものの値段(価格・物価)はどうしてきまるか 

  

(1)価格及び物価について 

(2)物価の決定方法とその上がり下がりのあるわけ 

(3)物価指数とはどんなものか 

(4)インフレの原因とその影響 

(5)インフレを防止するにはどうすればよいか 

(6)物価の統制はなぜ必要か

(1)物価指数の見方・作り方 

(2)相場の見方・立て方 

 

(1)物価と需要・供給の関係(知識) 

(2)価値論(知識) 

(3)独占価格とはどんなことか(知識) 

(4)農産物の価格はどうきまるか(知識) 

(5)工業製造品の価格について(知識) 

(6)物価指数のいろいろ(知識)

単元三. 

おかねの融通(金融) 

 

(1)金融の意義と重要性について 

(2)銀行の種類とその活動分野について 

(3)郵便局の金融に関する働き 

(4)庶民金融機関の種類とその働き 

(5)そのうちどんな金融機関があるか 

(6)金融統制はなぜ必要か 

(7)取引所の働き

(1)手形の振り出し方 

(2)手形割引の仕方 

(3)利息計算の仕方 

 

(1)為替相場の知識(知識) 

(2)金融恐慌とはどんなことか(知識) 

(3)為替レートとはどんなことか(知識) 

 

単元四. 

保険はどんなにたいせつか 

 

(1)保険がわれらの生活に必要なわけ 

(2)保険の種類にはどんなものがあるか 

(3)保険の働きと社会的影響 

(4)保険事業の公益性について 

(5)保険事業の経営はどうあるべきか

  

 

(1)保険のはじまりとその発達(知識) 

(2)保険事業の組織・経営・種類について(知識) 

(3)保険上の用語について(知識) 

(4)保険に関する法規(知識) 

 

第九学年
単元一. 

所得と消費について 

 

(1)所得の意義 

(2)所得の発生とその種類 

(3)消費ということの意義 

(4)消費の充実と生産との関係 

(5)消費の節約と貯蓄のたいせつなこと 

(6)家計はどう改善すべきか

  

 

(1)分配と所得について(知識) 

(2)地代がだんだんあがるわけ(知識) 

(3)賃銀の最低・最高の限度はどこできまるか(知識) 

(4)賃金支払制度について(知識) 

(5)利率とその作用について(知識) 

 

単元二. 

事業はどう経営するか 

 

(1)単独企業の特色はどこにあるか 

(2)合同企業(会社)の種類とその特色 

(3)組合の種類とその特徴について 

(4)国営事業の種類と経営について

  

 

(1)独占企業の種類とその利害(知識) 

(2)産業組合の種類とその特徴について(知識) 

(3)労働組合の働き(知識) 

(4)共同組合はどんなものか(知識)

単元三. 

国の財政はどうたてるか 

 

(1)財政の意義 

(2)わが国の歳入と歳出について 

(3)わが国の最近数年間の予算について 

(4)財政とインフレーションとの関係 

(5)財政と家計,会社会計との相違はどこにあるか 

 

  

 

(1)財政の意義 

(2)わが国の歳入と歳出について 

(3)わが国の最近数年間の予算について 

(4)財政とインフレーションとの関係 

(5)財政と家計,会社会計との相違はどこにあるか

単元四. 

国民経済について 

  

(1)国民経済の意義 

(2)国民経済と商業との関係 

(3)国民経済の発達 

(4)わが国の国民経済について 

(5)国民経済と世界経済との関係 

 

  

 

(1)失業問題と人口問題について(知識) 

(2)資本主義経済と社会主義経済について(知識) 

(3)私有財産制度について(知識) 

(4)わが国の農地制度について(知識)

 

第五章 商業の学習指導法
 

 商業の教育は,商業を通じて社会経済関係を理解するとともに,将来の生活において当面する経済的な問題を適切に処理し,経済生活を合理的に改善する能力を養うことを目的としている。そのためには,真に創造的・発展的であるとともに,事務を正確にしかも能率的に処理し,十分にしめくくりをつけるような教育がなされるべきであって,つとめて生徒の自発活動を刺激し,生徒みずからが学習の端緒を見いだし,それに対して計画や試みをたて,みずからそれを解決していくように導かれるべきである。ただし,社会・経済問題は重大かつ複雑なものであって,はじめからむずかしい問題をとらえさせて,失敗させるようなことがあっては,生徒の学習意欲をい縮させるおそれがあるから,やさしい問題から始めて,漸次むずかしい問題にはいっていくようにする。また商業の特殊性を商業の歴史的沿革から発見させるようにし,教師は生徒の能力を考えて,学習の筋道に沿って指導する程度にして,決して注入的な態度をとらないようにしてもらいたい。また,そのためには生徒の学習の自発性の根源として,かれらの興味の傾向や,生活における必要性などをあわせ考えるのがよいのであって,たとえば,所得と消費とについて学習する場合には,小遣帳の記入や,家計簿の調査などから端緒をとらえるようにし,漸次高度の所得・消費の理論に入るように指導するとともに,新聞で見たり,ラジオで聞いたりする日常の社会問題との連関を考えあわせて,生徒の学習意欲のこう揚,問題の理解に対するたすけとするように,くふうすることがたいせつである。また,歴史的な沿革や地理的な相違の説明などもとり入れて,理解や記憶のたすけとすることも,またたいせつなことである。たとえば,配給の問題についても,直ちに現代の高度に発達した配給形態をもってくるよりも,物々交換の時代からの発展を,歴史的な順序を追って学習させること,あるいは生産物の地域差から生ずる,交換意欲のこう揚などから学習させることは有効な方法である。特に,現在の日本の経済社会にあっては,高度の交換経済のしくみの中に歴史的に古い時代の物々交換が行われていることから,商業の歴史を理解するには便利な時代ともいえるわけである。

 なお,社会科や職業科の中の他の教科,及び職業指導などとも密接に連絡をとって,むだな重複をさけるとともに,また,それらとの相互関係を十分認識させるようにすべきである。

 中学校の生徒は論理的な推理や判断の能力もできてくる年ごろであり,共同の仕事を喜んでやることはすでに述べたが,そのためには行動的な学習とともに,知的な活動を豊富にとり入れ,また,講演会・討論会・バザー・共同調査・共同作業(共同経営・共同運搬・共同作製など)・共同討議などの共同的なものを生徒の活動の中にとりいれるべきである。

 参考書・教科書・新聞・雑誌などを読むときは,ただアンダーラインを引いて読むという方法よりは,そのアウトライン(梗概)をとらえさせるために文章を書かせるとともに,そのメインポイント(重要点)について討議しあうようにする。アウトラインの書き方に対して,教師は模範的なものを示してやり,生徒の提出したアウトラインや論文について批評を加えて,生徒に返して生徒の反省に資する。技術の指導に当たっては生徒の創意くふうを重んじて,教師はただ協力者としてかれらの実習を見守り,要点を指示する程度にとどめるがよい。

 

一.教師の活動

 学習指導要領一般篇第七章を参考にする。

(1)生徒の商業・経済に関する知識・経験を調査する。たとえば,家庭の職業,それに対する関心と理解の程度,学校や家庭の環境,他教科での既習教材,遊びなどを調べる。

(2)自発活動を刺激するような指導方法を考える。たとえば,学校における会計・計理の手伝いを申し出るとか,会社・商店の販売補助員としての交渉など生徒が直接にこのせっしょうにあたる。

(3)生徒の活動をまとめてゆくための協力の方法を考える。たとえば,時間配当や教材の配列をすること。

(4)商業・経済に関する理論を研究し,知識を十分に用意する(教科書・参考書・学習指導要領・新聞・雑誌・ラジオなどから)。

(5)わが国及び郷土の商業や産業の現状,その特色を調べておく。

(6)商業・経済に関するいろいろな技術に熟練しておくこともに,その科学的根拠を理解しておくこと。たとえば,そろばんの扱い方,計算機の取り扱い方,タイプライターの知識及びその扱い方,謄写印刷術,荷造こんぽう(梱包)の技術,度量衡器の正しい扱い方,簿記用文字,商用文の書き方,為替や小切手の切り方,商品の鑑定・規格などについて調べておく。

(7)商業・経済に関するいろいろな統計を集めたり,作製したり,整理したりしておく。たとえば,輸出入貿易統計,主要農産物(米・麦・さつまいも・じゃがいも・繭・生糸・家畜・畜産製品など)の生産統計,またはこれらの消費統計の類に及ぶ。

(8)参考図書・掛け図・実習用材料・実習用具など,その環境に応じた教具・設備をととのえる。また,近い所にある商店・会社その他の施設・機関などと連絡をとっておき,見学や実際家の意見を聞くことができるようにしておく。

 

二.生徒の活動

 次に示すようなことを端緒として,理解のために,練習・応用・発展の三段階にわける。

(1)銀行・会社・商店・工場その他博物館・陳列館・試験場などの公共施設を見学し,実際家の話を聞く。店の配置,陳列商品などに関しスケッチをとり写生などをしておく。

(2)見たり聞いたりしたことについて話しあう。

(3)わが国及び郷土の商業や産業の現状・特色を調べる(郷土研究や帝国統計要覧によって,銀行会社の数・資本額,農・工・鉱・水産などの産業についての現勢をしらべる)。

(4)商業・経済の理論を研究する(貨幣・取引・金融・交通などの理論について参考書・教科書・新聞・ラジオ・雑誌・講演などで調べる)。

(5)研究したことについて,講演会や討論会を開き,お互に話しあう。特に,貨幣問題・物価問題・インフレ問題・失業問題・レクリエーション問題などについて,問題を局限して討論会を開く。

(6)商業・経済に関する統計を調べたり,作ったり,整理したりする。商工統計・わが国統計年鑑,その他の年鑑などから生産なり,消費なり一題を選択してこれを行うがよい。

(7)商業・経済に関する略図や模型などを共同で作る。特産物地図や交通運輸図・外国航路図などのほか,郷土の地形図の模型を共同で作製するもよい。

(8)調査研究したり,または作製した統計図表・略図・模型などについて展覧会を開き,説明に当たったり,討論会で話しあったりする。

(9)読書した事項については,アウトラインを書き,重要な箇所をとらえる。それについて,先生に提出して問題のつかみ方について批評をしてもらったり,話しあったりする。

(10)商業・経済に関するいろいろな技術について模範的なものを調べたり,観察したりする。また,それについて報告会や討論会をひらいて話しあう。たとえば,そろばんや計算機の使用,計算の熟達度,または簿記用文字・数字を美しくかつ速く書いて正確なことなど。

(11)商業・経済のいろいろな技術の科学的根拠を研究する(参考書・討論・見学・実習実験など)。

(12)栽培した農作物や,製作した器具・図表・略図・模型などについて展覧会や品評会を開き,一般人の批評を聞くほか,バザーなどを開いて会の運営のほかに,生産品売上の記帳計算・利益計算などの実習をする。なお,後でいろいろの苦心や楽しみについて話しあう。

(13)商業・経済に関するいろいろな技術について実習し,さらに練習をして,これに熟達する。いろいろの計算・商用文・諸取引手続きの仕事,またはいろいろの意見発表の形式などについて練習する。

(14)実習経験について,討論会や講演会をひらいて話しあう。

(15)実習経験について,報告書を作って教師の意見を聞く。たとえば,実習の仕事の段取りに特別なしくみはなかったか,それによって能率はもっとよくならなかったろうかというようなこと。

(16)商業・経済の総合的な問題について,論文を書く。たとえば,日用品登録配給制度と国民経済についてなど。

(17)論文について報告会を開き互に話しあうほか,教師に提出し意見を聞く。

(18)商業・経済の理論や技術について,教師に質問し,話しあう会をひらく。

(19)教師の指導のもとに,コオペラチブショップを開設し,共同してこれが運営にあたる。すなわち商品の仕入れ,仕入先の選択,商品の鑑定,販売価格の決定,販売,利益計算,利益配当などの事務をすべて生徒同志で行う。

(20)冬期休暇・夏期長期休暇を利用して,商店またはデパートの販売事務の補助員として,または経営事務について参加実習をする。また,時に行商班を組織し,商品を仕入れて販売しあるく。この運営も前項の商店の運営と同様にする。

 以上示した商業の学習指導法にもとづき,第七学年の単元二.「ものをつくるには(生産)」を例にとって具体的指導法の案を作製したから参考にしてほしい。なお,各単元を指導するに当たっては,生徒の活動として挙げられたものを全部やらなければならないということはないのであって,地方の事情,学校の施設などを考慮し生徒のつごうを考えあわせて,適当に取捨することができるほか,このほかにも多くの適当な活動例があるであろうから,これらも附け加えてもよい。

 要するに,教師が時間数,生徒の能力,地方の事情その他を勘案して,適当な学習活動を盛った指導例をたてるがよい。

 

第六章 商業の参考書

 

第七章 商業の学習結果の考査

 

 学習指導には,その目標とするところがあるから,それに対してどの程度まで到達することができたかを考査して,学習指導の内容・方法並に効果について反省する資料を得て,今後の指導をより効果的にするにはどうすればよいかをくふうする必要がある。生徒はこれによって,みずからの学習がどの程度まで目標に近づいたかを知り,今後の学習方法をくふうすることができる。この学習結果の考査は,一面において予備調査の意味をもっているが,また他面生徒のすでにもっている知識・経験を調べることにもなる。考査や予備調査の方法は,学習結果の考査の一般を参考にされるとよい。

(1)商業・経済に関する知識の修得状態の考査

商業・経済について,どの程度の知識を修得したか,また,一連の事務を首尾一貫して学びとったかどうか調べるために,選択法・真偽法・組みあわせ法・記録法及び論文,ノートの検閲,平生の学習状態の観察などで考査する。

(2)商業・経済に関して,その基礎理論の理解程度については完成法・判定法や論文などを書かせて考査する。

(3)応用のための論文については,記述尺度法などで考査する。

(4)商業に関する技術については,それを会得したかどうか,また一連の技術については,首尾一貫して会得したかどうかを記述尺度法で考査する。また,その習熟度を考査するには,その正確さや迅速度を調べる(たとえばそろばんの計算など)。

熟練の考査についても,美的な要素を含むものは質的判断を下す必要があるので,記述尺度法などで考査する。

(5)態度については,記述尺度法などを用いる。特に正直・誠実・親切・愛きょう・綿密・細心・協調・科学性・計画性・くふう創造力などに及ぶ。

 

第八章 商業の指導単元

 

第七学年
  単元 割当時間数 最低—最高
単元 一. 

単元 二. 

単元 三. 

単元 四.

われわれの日常生活と経済 

ものをつくるには(生産) 

ものが手に入るまで(配給) 

ものを運ぶには(交通・通信)

約 10% 7時−14時 

約 25% 7時−14時 

約 40% 7時−14時 

約 25% 7時−14時

第八学年
単元 一. 

単元 二. 

単元 三. 

単元 四.

おかね(貨幣)と小切手 

ものの値段(価格・物価)はどうしてきまるか 

おかねの融通(金融) 

保険はどんなにたいせつか

約 20% 

約 20% 

約 20% 

約 20%

第九学年
単元 一. 

単元 二. 

単元 三. 

単元 四.

所得と消費について 

事業はどう経営するか 

國の財政はどうたてるか 

國民経済について

約 30% 

約 30% 

約 20% 

約 20%