この学年の児童の心理的特性,その生活や興味の中心等については,第五学年の所で一括して述べてあるから,これを参照してほしい。
第六学年の児童について特に注意すべきことは,凡そ次のようであろう。
二 みずから求めて新しい経験をしようとするのを助け,また児童各自のその学習方法を尊重してやることも,(一)と関連してたいせつである。
三 社会的な義務を理解させ,事実に正直に立ち向かう能力を発展させることは家庭及び学校の共同責任である。自分たちが加わって計画し,価値ありとみとめる仕事を遂行させることは,社会の一員たることを自覚させる上に,特に有効であり,共同作業もまた,民主的なやり方を味あわせる上にも重要である。
四 創造的な自己表現も,自己の独立性を打ち立てさせるために重要であり,且つ現在のような大量生産の時代に,個人的な良い趣味を発展させる上からもたいせつである。
五 健康や姿勢,容姿等についても注意の要がある。過食,ねこ背の傾向があらわれるし,皮膚の清潔も大きな問題であり,過労に陥らないように,休憩や気分転換を工夫してやることもたいせつである。
第六学年の社会科としては,次のような事項を理解せしめ,これと関連した能力や態度を得させることを目標としている。
二 大量生産の時代になって,人々の幸不幸は仕事の仕方の変化にうまく順応する能力の有無によって,決定されてしまうようになったこと。
三 自然を支配することが大きくなるにつれて,人間の労力は軽減したこと。
四 機械生産によって,人々は,ますます多くの原料を,衣食住に使うようになること。
五 機械生産の時代になって,社会問題にも科学的な方法が適用されなければならなくなったこと。
六 人は機械生産のおかげで,今までより多様のまた大量の物資を入手できるようになったこと。
七 発明や動力の使用によって,家庭生活が改造されること。
八 大量生産は,適正に統制されないと少数者の懐を肥やすこと。
九 人は,発明発見を上手に使いこなすことを知らなくてはならないこと。
十 資源は往々利得のために濫費されること。
十一 機械は,生命財産及び資源を保全するのにも役立つが,同時にこれを濫費させる傾向をもっていること。
十二 機械生産の現代においては,厚生娯楽の機会も増加して来ていること。
十三 機械を使用すれば,芸術的活動に向けられる各人の時間の余裕が生まれること。
十四 大量生産は,われわれの祖先の絶えまない念願と努力によって,生まれたものであること。
第六学年の問題としては,次のようなものを参考に挙げているが,その意味,これを中心とした単元の意味や取り扱い方,各単元に示された学習活動の意味や取り扱い方,学習指導計画との関係などは,すべて第一学年の場合と同じであるから,その部分を熟読対照していただきたい。
また巻末の作業単元の実例を参考にすることも必要である。
二 社会を発展させるものは何か。
三 どうすれば私たちは安全な生活ができるか。
四 私たちと私たちの子孫のために,天然資源を保存するには,私たちはどうすればよいか。
五 上手な物の買い方には私たちはどんな知識を必要とするか。
六 工場生産はどこにどのように発達するか。
七 時間の余裕を作るにはどんなふうに文明の施設を使えばよいか。またその時間を有効に使うには私たちはどうすればよいか。
八 世界中の人々が仲よくするには私たちはどうすればよいか。
一 指導の着眼
児童は諸種の経験を通じて,いろいろな人々の従事している仕事の価値に気づく。農村の児童は野菜や果物が栽培され,それが遠くの土地に運ばれて,そこで消費者に売られることを見聞しているし,都会の児童は自分たちの衣服が工場で生産されることや,食料が遠いいなかで作られることを知っている。大工や左官やかじ屋などの仕事は子供たちの日常眼にしている所であるし,その土地の医者や歯科医や看護婦の仕事についても十分な知識をもっている。そして子供たちはそれらの人々のおかげで生活しているということ,すなわち他人の恩恵ということをある程度まで理解している。こうした相互依存への理解を深めさせて行くことは教師の責任である。
指導上注意すべき事項としては次のようなものが考えられる。
○家業──ほかの職業との関連,その変遷。
○郷土における仕事──公共の仕事,職業の種類,生産物。
○国民の職業との関係──職業分布。
○児童の仕事──学習,手伝い。
この学習活動の成果は,他人の仕事の価値を理解するということが,いろいろな仕事を生かすようになることや,また仕事をしてくれる人に対する尊敬や礼儀となってあらわれて来ることによって知られよう。
三 学習活動の例
(一) 分業の方法といろいろな職業を知ること。
2.家の人たちの仕事の表を作り,その分担,時間,方法について改良案を作る。
3.学校その他の掃除を最も効果的に行う分業的方法を実行する。
4.一週間のうちでいろいろな職業の人から受けた世話について表を作る。
5.自分の一族や祖先や知人の職業を調べる。
6.土地の人々の職業調査を行い,分類して統計を作る。
7.自分たちの日々の生活に必要な職業を調べる。
8.土地の人々の職業を土地の特産品と対照検討する。
9.老人に聞いたり,本を読んだりして,昔と今の職業の変化を知る。
10.食料品,日用品の幾つかについてその生産から入手までの過程及びそれにだすさわる人々を表にし,実際に調べた結果を作文に書く。
11.新聞社や印刷所に行き,そこに働いている人たちの仕事を観察する。
12.学級で新聞を作るためいろいろな業務を分担しあう。
13.特に交通上の利便を与えられる職業を表にする。(たとえば医者,産婆,警察官)
14.自分の家の家業はどんな人たちのおかげを受け,またどんな人たちに利益を与えているか報告する。
15.家業の手伝いをする。
2.なぜ労働と労働する人とを尊敬しなければならないか話しあう。
3.仕事によって貴せんの差別をしていた昔のことを話しあう。
4.なるべくありふれた職業をとりあげ,それがなかった場合生ずる不便さを表に作る。
5.学級の行事その他の活動で,自分の分担した仕事を遂行した体験を作文にし,それをもとにして共同の方法や仕事の価値について話しあう。
6.母の一日の仕事を全部書きあげてみる。
7.子供たちが相談して,母の代りに一日の仕事を全部してみる。
一 指導の着眼
現在わが国民の社会生活は大きな変動に遭遇している。児童のうちには家族とともに転々と移り住んだ者も少なくない。子供たちの社会経験も決して単純とはいえない。土地を移る者は,それとともに新しい友達を作り,新しい土地の生活に順応して行かなければならない。一方,家や家族たちの職業も著しく変化し,家族のうちには新しい仕事を求めて家を出て行く者もある。とにかくどの家庭にでも,多かれ少なかれ生活苦の訴えが聞かれる。それだから,いっそう児童は明るい希望をもって,これに対処して行くように指導されなければならない。郷土の社会生活も大きな変化を受けた。住宅の状況,人口の移動,指導者の交替等経済の再建,民主日本建設の動きはあらゆる部面に発見される。児童の関心をひく政治的な出来事も次々とあらわれて来る。これらの関心事を手がかりとして新しい社会を建設して行くためには何が必要であるか。各自の広い,しかも統一のある関心と活動,並びにこれを可能ならしめる生活条件,変わり行く社会に対する各自の迅速且つ正当な適応というようなものが社会を進展させる上にどんなに必要であるかを理解させることができよう。しかし大量生産の基盤に立つ現代の社会では,これらの事がらは容易に認めにくいから,教師は特に慎重にして十分な理解をもっていなければならない。
指導上注意すべき点としては,
○社会の盛衰の理由──産業の振不振,交通の便不便,資源・ガス・石炭・木材・水・気候の活用状況,厚生施設の状況,学校・病院・医者・商店等の便不便,防火状況,住宅の状況,水害戦災等の状況。
○各個人の適応──団結,組織への加入,収入,福利施設の活用,家屋の種類,労働の種類,労働時間,厚生慰安の活動,教育の程度,自主性の尊重,自治の発達,社会政策の実施。
学習活動の効果は次の諸項から判定される。
人が相互に依存していることや自然資源が大いに活用されていることの理解。
おたがいの意見を交換したり,物資を手に入れたり,いろいろな便宜(医療とか通信とか厚生とか)を受けるのに都合のよい土地や社会は,発達するということの理解。
人の幸福は変化する状況への適応如何によるということの理解。
友人をつくる能力は発達したか。
郷土を研究する能力は発達したか。
地図やグラフや参考文献を使用する能力は発達したか。
三 学習活動の例
(一) 家庭及び学級の変化を発見する。
2.自分の学級のよくなって来た点とその理由とについて話しあう。
3.学級自治会の記録を調べ,今後の計画を立てる。(六年の学級として,また卒業後の連絡等のために。)
4.各自の家の記録(今までの歴史と今後の出来事が記入できるもの)を作る。
5.友だち,家,学校,町(村)をよくするために努力した自分の記録を作る。
2.郷土の生産物を示す標本を集め,その産額の変動を示すグラフを作る。
3.郷土の基本財産の増減とその使途について役場の人から話を聞く。
4.郷土の社会にどんな楽しみがあるか調べる。
5.郷土の音楽・美術・文学について話しあう。
6.榔土の生活を向上させるために作られた諸団体の幹部を招き,その事業について聞く。
7.郷土の発展に尽くした先覚者や指導者の業績について話を聞く。
8.郷土の振興方策を示す図表を作る。
9.榔土の振興した姿を絵に書いて示す。
10.学級の友だちが生活したことのあるよその社会の状況を思い出して文に書いてもらい,なぜそこで生活したか,その生活は気に入ったかどうかについて聞き,話しあう。
11.新しく土地に来た人を招いて,他の土地でのおもしろい経験について話してもらう。
12.最近急速に発達した付近の町や市を地図で調べ,その理由を話しあう。
13.土地の振興に役立つ事業を選んで,自分の得た金を寄付し,その効果について聞く。
2.戦災者,引揚者,失業者の数を調べ,その人々の生活建設への努力と社会の人々の援護の仕方について話しあう。
3.わが国の再建計画と国土計画について読み,それを表にする。
4.いろいろな社会事業団体や組合などの仕事を調べる。
5.わが国の見返り物資の展覧会を計画する。
6.わが国の観光施設を示す地図を作り,写真や絵を集める。
7.わが国の音楽,美術,工芸,文学について調べる
一 指導の着眼
この年齢の児童は機械の使用による事故の経験を持っている,自動車や電車の事故はいうまでもないが,農村でも,発動機その他の農業機械による事故があり,都市などでは工場や鉱山の事故を見聞している。ことに現在のわが国では,交通機関をはじめ,あらゆる機関や施設が酷使されているので,これから生ずる危険が非常に多い。児童は,また両親その他が今日の騒がしい生活のために疲れ頭痛などを訴えている状態を見たり聞いたりしている。この年齢の児童は,すでに安全に関する法則を知り,健康に注意し,応急処置を施し,救急施設の世話をしたりしている。こゝから出発して,自分並びに他人のために安全な環境を作り出すことに努めさせることは必然的なことである。
教師は次のような点を参照しながら,考えて行くのがよいと思われる。
○事故──工場その他における機械の使用から生ずるもの,同じく薬品の使用から生ずるもの,やけど,火災,交通事故,混雑のために生ずる事故,過労や過度の緊張から生ずる事故,毒薬。
○防止──工場における危害防止の方策,防火施設の作製と使用,道路の改善と標識,自動車・汽車・電車の安全設備,鉄道・汽船・航空路についての安全施設。
この問題に関する学習活動の効果は,次の諸項の理解の状況から見られる。
機械が生命の保全と同時にその損亡に影響すること。
人間の生命をむだにしないような方策と注意とが必要であること。
事故の際の応急処置。
過労や過度の緊張を防ぐには睡眠と休息とが必要なこと。
三 学習活動の例
(一) 事故や病気を来たす原因を知る。
2.都会と郊外,山野,海辺の相異を見つける。
3.各種の工場の工員や職人を呼んで,それぞれの健康保持法の話を聞く。
4.できるだけたびたび郊外,山野,海辺に出かける。
5.各種の工場を見学し,事故が起るおそれのある機械に注意し,事故を防ぐ工夫を話しあう。
6.工場特有の病気について話を聞き,それを防ぐ方法を話しあう。
7.家,学校,地域の社会について,火の危険,不適当にはられている針金その他の危険物,危険な化学薬品,あぶない曲がり角や交さ点などの所在に注意する。
8.家や学校の毒薬物に張り紙をする。
9.水泳場として安全な場所の境界を示す標識を設備する。
10.近眼の大人を招いて,なぜ近眼になったか,どんなに不自由かを聞く。
11.交通事故や機械事故の統計をとる。
2.高架線,地下道,ガード,道路標識などのように,事故防止のための,進歩した方法を見,報告をする。
3.航路標識,救命具,うき,救命艇,ブレーキ,ヘッドライトなど旅行を安全にする設備を読んだり,報告をする。
4.燈台と燈台守の話を聞いたり,読んだりする。
5.踏切番を招いて話を聞く。
6.電気会社の人を招いて,家で電機器具を使う際の注意を聞く。
7.禁煙の場所についてその理由を話しあう。
8.色盲の人の従事できない仕事を発見し,その理由を話しあう。
9.望楼勤務の消防署員や夜警の人などを招いて,その人たちの仕事について聞く。
10.映画館,劇場,百貨店,公会堂その他について非常口,防火用具,火災報知機等を見て,火事の際の行動について話しあう。
11.防火訓練をする。
12.鉱山その他でなされている危険予防の施設を絵図に作る。
13.交通訓練のポスターを書く。
14.半鐘,サイレン,ベル,信号等の意味を話しあい,それに対してどうするかという自分たちのきまりを作る。
15.毒きのこを見分ける。
16.いろいろな応急手当の実習をする。
17.登校下校にあたって下級生の指導をする。
18.働きに出ている家族の人たちの健康状態についてたずねる。
一 指導の着眼
この年齢の児童は浪費とその防止に関し,若干の理解を持っている。子供たちは大水の経験をしている。また山火事を知り,キャンプやハイキングの時,たき火の始末に気をつけたこともある。森林の濫伐による電力不足のにがい経験もあり,心ない人によって美しい風景が破損されたりするのを見ている。教師はこのような経験を出発点として選ぶことができよう。
教師にはこの資源保存に関する多くの材料を知ることが必要になるであろう。
次の事項が参考になると思われる。
○賢明な使用──石炭,石油,森林,土地,魚類の保護保全,水力電気の開発,木材及び金属の代用品の使用,水流と森林の保護,鉱物採掘の能率向上。
学習活動の効果は,自然資源の所在地及びその使用と保護に関する知識,石炭・木材その他の財産の顧慮に示された資源の重要性の理解とその保護に対する責任感等に,あらわれるであろう。その発展の度は,資源保護に関する現在の計画及びその発展を取り扱う際に示された生徒の質問や叙述や興味等を記録しておいたり考査したりすればわかるであろう。
三 学習活動の例
(一) 天然資源の種類に関する知識を集める。
2.土地によって土壌のちがうことを観察させる。
3.郷土の森林地帯の今昔を比較する地図を作る。
4.原始林を見るため,遠足したり旅行したりする。
5.はげ山を見,はげ山になったわけ及びそれによって人々の生活上困ることについて話しあう。
6.水力の重要な源となるもの(湖,川,沼)を示す絵図を作る。
7.わが国の河川の分布図を書き,それに水力発電所を記入する。
8.わが国の鉱山及び油田の所在地を示す地図を作る。
9.わが国の必要とする外国の自然資源を知るため読書する。
10.わが国のおもな漁場を示す地図を見て,魚類の分布状態を判断する。
11.かつお漁場が季節によって移動する状況を地図で見る。
12.わが国における植物の北限または南限を示す地図を作る。
13.わが国の動物の分布を示す地図を作る。
14.毛皮獣の種類とその住んでいる地方に関して読む。
15.郷土における天然資源の展覧会を計画し,その材料を集める。
16.天気図を書いたり読んだりする。
17.その土地の雨量,気温,風向き等の月別グラフを作る。
18.日本及び世界各地の気候図を読む。
2.山火事の原因と被害及びその防止法について話しあう。
3.山火事によって消失した地域を地図に示す。
4.森林の濫伐と土地の侵蝕との関係について読み且つ話しあう。
5.土地の崩壊(がけ崩れ,山崩れ)の防止について話しあう。
6.校庭の侵蝕された土地,崩れた土地に,草木を植えたり,コンクリートや石のかきを築いたりする。
7.その地方における治水及び防火の事業とその効果について読んだり話しあったりする。
8.苗木を作っているところを見学し,植林の種類やその栽培法,接ぎ木の仕方などを見る。
9.植木屋に行って盆栽の作り方,世話の仕方などを見る。
10.その土地の木の葉を使い,模様を作る。
11.乾燥した土地に木を生えさせるためのかんがいの方法を調べる。
12.植林(造林)計画に関する新聞,雑誌の記事を集める。
13.野外遠足をして樹木を調べる。
14.森林保護の映画を見る。
15.天然資源の代用品の使用の増加したことについて,読んだり話しあったりする。(例えば,木材や鉄の代りに,セメントや陶器などを使う。)
16.工業試験場や農事試験場に行って,資源の保存と利用に関する研究を見たり,話を聞いたりする。
17.その地方における各種の土地の使用種別を示すグラフを作る。
18.川や湖水などが発電に使用されている状況を調べる。
19.電気の起源とその利用について,読んだり,報告したり,話しあったりする。
20.電気の安全な使用及びその価値の理解のため,磁右,静電気,電流の実験をする。
21.電気器具や電気装置の修理の仕方を調べる。
22.電気のショートを防ぐために,線を絶縁しなければならないことを話しあう。
23.大きなダムの所在地を地図によって調べ,その社会上,産業上の利便について話しあう。
24.地方(関東地方,中部地方等)の発電所の所在地と送電路を示す地図を作る。
25.発電所に行って,発電の状況を見たり,発電力について聞く。
26.乾電池を調べ,化学薬品が力を起すのに使われることを学ぶ。
27.電気の安全装置の修理について話しあう。(ヒューズを取りかえる前に,ヒューズの切れた原因を調べる)。
28.魚類の価値と利用について研究する。
29.魚のふ育所を見たり,その映画を見たりする。
30.さけ,ます,たらその他の魚類の一生について学び,その商品としての価値を話しあう。
31.真珠の養殖の話を聞いたり,絵を見たりして,その産業上の価値を話しあう。
32.野生の動物,魚,鳥類の保護に関する話を関係者から聞くために,計画したり,これを実行したりする。
33.毛皮獣の保護の方法について,物語を読んだり,聞いたりする。
34.鉱山を見学し,濫掘について話を聞く。
35.わが国の鉄の産額,使用量の変化を示す図表を作る。
36.貧鉱処理についての物語を読む。
37.能率の高い石油採取法を示す絵図を作る。
38.石油のむだのない使用方法を発見する。
39.石油や天然ガス採取に関する映画を見る。
40.石油の精製法及び副産物について読む。
一 指導の着眼
児童は色々な点で大量生産の影響を受けている。工場が閉鎖されたり,その生産物が減少したり,変わったりすれば,たちまちに商店にある品物に変化があらわれる。生産から配給に至る過程になんらかの変化(障害や統制)が現われると,自分たちの入手できる品物の値段や種類に変化があらわれることをよく知っている。また児童は食料を買いに行き,衣服やはき物を選び,新聞や雑誌の広告を読み,時には,一家の経済には手のあわない品物とか,入手のはなはだ困難な品物(例えば自転車とか望遠鏡とかグラブやミットのような運動具)を買いたいと思う。このような経験は上手な買い物に導く手がかりとなるであろう。
教師の調査すべき事がらとしては,
自分にとってにつかわしいか否か,利用される程度と範囲,収入に対しての支出額,買う量,レッテルや商標から判断できる品質,使用される期間(耐久性),芸術的な価値,買わないで作られる品物。
○広告される場所──新聞,雑誌,掲示。
○その品物の作られる場所,売られる場所。
○人手したものの保護保全。
学習の効果は,陳列されたり広告されたりしている品物を評価する力,
買えるもの,必要なもの,価値のあるものに自己の欲望を制限する力。
所持品の取り扱いが上手になること。
自分たちで使うものを次第に自分で作り出す力が出て来ること。
等によって知られるであろう。
三 学習活動の例。
(一) 商業について調べる。
2.商品の値段にはどんな要素が含まれているかを発見する(原料費,製作費,労賃,運搬費,広告費,利益等)。
3.なぜ今日の人々は自給自足をしないで,交易による生活をしているかを発見して話しあう。
4.商業の発達についての話を聞く。
5.手製のものよりも,機械で大量に生産されるものの方が安いわけをしらべ報告する。
6.雑誌,新聞,ポスターその他から広告を集めてどれがより宣伝的かを話しあう。
7.学芸会その他の催し物及び家の家業のため広告ポスターを書く。
8.店の主人や支配人をよんで広告の効果を聞く。
2.土地の産物と遠方の土地の産物との値段を比べて話しあう。
3.季節による果物,野菜,魚の値段を調べて話しあう。
4.高価で入手しにくい食料品の代用品を見つけて話しあう。
5.家で作った野菜の費用と売っているものとの値段を比べる。
6.料理を家で作る費用と,できたのを買うのとその値段を比べる。
7.少しずつ買うのと,一度にたくさん買うのと,どっちが経済的かを話しあう。
8.毛織物・綿製品・くつ・くつした等を買う時に注意すべきことをお母さんから聞いて話しあう。
9.正しい洗たく法,乾燥法,アイロンかけを実行する。
10.のりをつける効用を話しあい,のりの種類を挙げる。
11.着物類を長持ちさせるための日々の注意について話しあう。
2.百貨店,家具部,家具商に行って,いろいろな家具とその値段を調べ,便利で安いものを発見する。
3.障子やふすまのこわれた箇所を美術的につくろう。
4.べニヤ板と普通の木の家具とを区別して,おのおのの効用を話しあう。
5.家具製作工場を見学する。
6.椅子のこわれたクッションを直す。
7.簡単なテーブルかけや花びん敷きを作る。
8.カーテンを作って模様を工夫する。
9.額ぶち,ブックエンド,紙くずかご,たな,本箱等を作って,家や学校に備えつける。
10.かざりつけ用の彩色画をかく。
11.昔の絵と今の絵(その写真)を並べて鑑賞する。
12.複製の絵画を選んで飾りつける。
13.絵をどんな所にどんなふうにかけたらよいかを話しあい,実施する。
14.畳の歴史を聞き,その手入れ法を話しあう。
15.床の間など木造の所をふいたり,つやを出したりする。
16.本を読む時,遊ぶ時,ねる時の適当な場所と照明とを話しあう。
17.ラムプシェードを作る。
18.いろいろな品物について方々を歩いて,どこが安くてよいか調べる。
19.家の人たちが,ほめている店について,しらべて報告する。
2.お正月,お祭,遠足等の時の小遣い銭の使い方について話しあう。
3.学年や学期のはじめに入用な金額を調べて予算表を作る。
4.学級の催し物に必要な品物を調べ,それを買う金の出し方,その使い方を話しあったり,実施したりする。
一 指導の着眼
農林といわず,漁村といわず.今や全国にわたって,工場が設けられている。都市における工場はいうまでもなく,今後の日本経済再建のためには,農村漁村の工業化が叫ばれている。児童の接触している工場や工場の労働者がどんなふうにして発生して来たか,またどんなふうに社会生活に貢献しているかを理解させることは,決してむずかしいことではない。
わが国の工業がどんな形をとって行くべきかという切実な問題に対する教師の深い研究は,児童の社会生活特に今後の生産活動に対する理解を開いて行くであろう。もちろんこの学年の児童にとっては,経済機構の十分な説明は困難である。しかし,いかなる工業が,いかなるところに発達し,いかなる影響を与えているかを理解することは,人間生活の相互依存の認識と,社会の発展の契機とを認識させる上に重要である。
教師の着眼すべき点としては,次のようなものが挙げられる。
○発達の理由──農業,漁業との関係,国民生活の必要。
○発達の条件──資本,労力,動力,原料,及び資材,交通運輸,販路。
学習活動の効果は次の諸点から判定できるであろう。
工場の組織の理解。
わが国の工場分布の理解。
工場労働者の生活の理解。
三 学習活動の例
(一) 工業製品の種類を発見する。
○衣服類として使われているもの(綿織物,毛織物,絹織物,手ぬぐい,ハンケチ,洋服,帽子など)
○住居に使われているもの(木材,家具,ト夕ン,かわら,電気器具,時計,ラジオ,ミシン,食卓,机など)
○食事関係に使われているもの(陶磁器,漆器,ガラス,製粉機,電気コンロ,七輪,なべ,かまなど)
○交通に使われているもの(船舶,荷車,汽車,電車,自転車,自動車など)
3.生活上必要な金属製品を挙げて表を作る。(鉄,鋼製品,アルミニューム,アルマイト製品,銅製品,鋳物、くぎ類,ブリキ,しんちゅう等)
4.日常生活に必要な機械,器具を挙げて表を作る。(電球,ラジオ,時計,ポンプ,汽車,電車,自転車,自動車など)
5.日常生活に必要な化学製品を挙げて表を作る。(医薬,石けん,紙類,セルロイド,人絹,ゴム製品など。)
6.食料工場で作られている工業製品を挙げて表を作る。(しょう油,みそ,酒,ビール,たばこ,粉類,でん粉,砂糖,かん詰,乳製品,氷,菓子など)
7.わが国で自給できる工業製品を調べて表を作る。
8.工業原料のうち,外国から輸入しなければならないものを調べて表を作る。
9.わが国の工業製品のうち輸出品として重要なもの二三を挙げて,これまでの累年輸出量をグラフに示す。(生糸,絹織物,綿糸,綿織物,鉄製品など)
10.工場を見学して,その工場に使われている工業資材や機械類について,説明を聞き,表を作る。
11.工業製品の展覧会を開く。
2.港からはなれた土地にある製粉工場の位置が原料を集めるのに便利なのかどうかを検計する。
3.海港にできている製粉工場は,原料や製品の輸送上便利なことを発見する。
4.でん粉工場やアルコール工場と原料との関係をしらべる。
5.陶磁器生産地を調べ,原料や燃料の関係を考察する。
6.人絹工場の建てられている場所を地図に書き入れ,特に水との関係について話しあう。
7.和紙,洋紙,パルプの工場が原料や水との関係の深いことを発見する。
8.漆器生産地を地図に書き入れ,塗料,材料,工員,気候との関係などについて調べる。
9.富山地方の製薬業の発達について話を聞き,売りさばきの方法についても話しあう。
10.造船所を見学し,木造船と鉄船との場合で立地条件のちがうことを発見する。
11.北陸地方の絹織物工業地と気候・労力などとの関係について読んだり,聞いたりする。
12.製糸業地を地図に書き入れ,原料の産地や交通との関係を考察する。
13.機械工業の発達しているところを調べ,立地条件を読み且つ研究する。
14.製鉄所の所在地を地図に書き入れ,原料,燃料,交通関係を検討する。
15.肥料工業の所在地を調べ,原料,動力,交通などとの関係を発見する。
16.紡績業地について,わが国及び外国の場合を比較する。
17.わが国の四大工業地帯について読み,発達の原因について共通点や相異点を表にする。
2.食糧の不足分を海外から仰ぐことについて,資料を集めて話しあう。(理由,食糧の生産地,見返り物資等)
3.わが国へ食量を運ぶことのできる諸外国について調べ,地図に示す。
4.見返り物資となることのできる工業製品の表を作る。
5.賠償から残される工業の種類や工場を地図や図表に示す。
6.今後発電力をどのくらい増すことができるかについて,話を聞いたり,読んだりする。
7.石炭の産額増減を表にあらわす。
8.工業の動力として使われているもの及び将来のわが国の工業上最も必要な動力について話しあう。
9.わが国の工業の将来について,新聞記事や雑誌の記事を読みこれを切抜帳にはる。
10.男子の多く働く工業と女子の多く働く工業とを比較し話しあう。
11.わが国の人口問題について資料を集め,図表に示して話しあう。
12.手先の器用なわが国の人たちに適する工業製品を表にあらわす。
13.スイスその他外国の工業発達の状況を読み,あるいは話を聞き,わが国の参考となる事がらについて話しあう。
14.農村の工業化について読み且つ話を聞いて研究する。
15.専門家を招いて,わが国の工業の将来についての話を聞き記録する。
16.工場を中心として発達した大都市を見学し,その都市の特徴や問題について話を聞く。
17.その地方の適当な工場へ行って,話を聞いたり,手伝ったりする。
一 指導の着眼
児童の生活にも,時間の問題はいろいろな形をとってあらわれている。起床,食事,就床の時間があるし,農村の児童は,家の仕事をしたり,市場に品物を運んだりしてから,大いそぎで学校に間に合わなければならない。都会の児童たちは,親たちがラッシュアワーにあわてて出かけて行き,夕方にならないと帰らないし,時には,夜になっても帰って来ないことを知っている。お手伝いや遊びや勉強に時間をわりふるのに当惑した経験もあろう。
時間とその割りふりの問題はわれわれの生活が複雑になったために生じたのである。教師は次のようなことを検討して,この問題に関する理解を深めなければならない。
○時間の使用──時間の予定表の作製,仕事や遊びの種類,時間の経済的価値,タイムレコーダーの使用,工場の細分作業。
○時間測定の器具──時計,砂時計,日時計。
○余暇の発見と利用──厚生への工夫,教養への工夫,個人的並びに団体的な余暇利用。
学習活動の効果は
時間割りふりの理解とその技術の進歩すること。
三 学習活動の例
(一) 時間と労力を節約する機械や設備を発見する。
2.近代的な農耕法,農産物の生産方法を見て,いかに労力と時間が節約されているかを知る。
3.ガスエンヂンと蒸気機関とをしらべて,その活動や機能を見つける。
4.てこの実験をし,てこの原理を利用している機械用具を見つける。(くぎぬき,はさみ,かなてこ,シーソー)
5.傾斜面の利用が,いかに労力を省くかを観察し,これを利用した設備を見つける。
6.くさびの原理を知る実験をし,くさびがどんな場合に使われているかを話しあう。
7.簡単なスクリューを作って見る。
8.ドアのとって,かぎ,車りょう等について車や軸がどんなに役立っているかを見つける。
9.滑車を使った道具を見,小滑車を作って実験してみる。
10.電気器具の手入れについて話しあう。
11.やぶれたコードをつくろう。
12.ミシンを使って簡単なものを作る。
13.いろいろな通信連絡の方法を調べてどれが最も確実か,どれが最も早いか見出だす。
14.電信電話,ラジオの発明を中心にその前後の通信連絡の方法を比べる。
15.世の中で使われている音や光の用途について読んだり,実験してみる。
16.海底電線の話を読む。
17.電送写真の話を聞き,これと普通の写真とを比べる。
18.自転車について,なぜ早く走れるかを見つける。
2.自分で自由に使える時間が毎日どのくらいあるかを調べ,どんなふうにそれを使っているかを記録する。
3.ひまな時をみんなといっしよにどんなことに使っているかを示す絵や図を書き,よりよい利用法がないか話しあう。
4.生活の時間割を作って実行し,これをみんなに見せて,もっとよい時間割にするよう相談する。
5.ある仕事を仕上げるについて,その進行計画をたてて実施する。
6.時間と労力とを少なくするお使いの計画をたてる。
7.着物を着たり,身なりをとゝのえたりするのに,手早くりっぱにする方法を考えて実行する。
8.言いつけをすぐ実行する。
9.仕事の前に道具をすっかり用意をし,仕事の後では,道具の後始末をきちんとして,次の仕事にすぐかゝれるようにしておく。
10.家から学校まで何分かゝるか調べて,起床や朝の手伝い,勉強などの時間の計画をたてる。
11.いろいろな厚生慰安の活動を挙げ,それぞれに参加する人員を示す絵図を作る。
12.工場の厚生慰安の施設を読み,それについて話しあう。
13.学校が土地の厚生慰安の中心として使われるわけを話しあう。
14.ラジオ出演を計画し実行する。
15.趣味をよりよいものにする工夫について話しあう。
16.自分の趣味についてどこがよいかを話しあう。
17.演芸会芸能会を開く。
18.自然の中にある厚生慰安の要素について話しあう。
19.和歌や俳句や詩や物語の抜すいや作品を集めて本を作る。
20.劇に使う衣しょうやかつらを工夫して作る。
21.両親が,毎日どんな仕事をして一日を過ごすか調べて報告をする。
22.家中そろって楽しい時間を過ごす計画をたてる。
23.会合の際時間不励行のために生じたいろいろなことの経験を話しあう。
24.友だちや下級生を誘って通学する時むだな時間のないように工夫し実行する。
2.地球,太陽,月その他の惑星について読み且つ話しあう。
3.大きな板の上に天体の模型を作る。
4.明るくなる時間,暗くなる時間を記録する。
5.陽光がどんなに仕事の役に立っているかを話しあう。
6.くもりガラスやビン穴めがねを作って太陽を観察する。
7.日時計その他の原始的な時計を作る。
8.日本で使われて来たいろいろな暦を調べたり話しあったりする(太陰暦太陽暦その他及びうるう年)
9.各種の紀年法や月や日の呼び方について読んだり,聞いたり,報告したりする(世紀,時代,回教紀元,キリスト紀元)
10.年表用紙を作って,習ったこと調べたことを書き入れる。
11.カレンダーを作って教室や家にかざりつける。
12.世界各地の時間を示す地図を作る。
一 指導の着眼
わが国民が平和を愛好する真情を卒直に表明し,平和の破壊者という汚名をすすぎ,進んで世界平和の障害を除去しようとすることは,わが国の大人にとっても子供にとっても等しく課せられた重大な使命である。児童は自分の身のまわりに絶えず不和口論の起ることを見聞きしている。そしてそれらがなぜ起るかということについて幼い胸を悩まし,時にはこれを避け和解させるためにいじらしい努力を払うことさえある。子供たちは,遊びなかま,ほかの土地の人,外国人などと,どのようにつきあって行くべきかを理解し,交際することができる。人間性の理解尊重及びその主張を中心として,この課題をはたして行くその一歩一歩の意味を理解するようにならなければならない。
教師の留意考察すべき事項は,
○家・学級・学校間の親善──距離の近接,風習の共通,共同の目標,自治。
○国と国との親善──親善の歴史,親善の手段。
○相互理解の手段──教養(文化)の向上,国際的事業への参加。交通,通信。(観光,通商,芸術,書物,厚生)国旗や他国の儀式 行事の尊重。
○戦争とその放棄,わが国の歴史と憲法。
学習活動の効果判定のためには,
自国並びに他国の文化をよく理解評価し正当な敬意を払うか。
外国の旗に敬意をあらわすか。
三 学習活動の例
(一) 友だちとの交際の仕方を知る。
2.人に不快を与えない方法や態度について話しあう。
3.最近身ぢかで起った争いごとについてこれを説明する作文を書く。
4.病気の友だちの所へ見舞に行く。
5.誕生会を計画し実施する。
6.新入の友だち(引揚者,戦災者等)を学校や図書館に案内する。
7.年賀状を交換する。
8.学友やなかまで共有物を作り,その使用法を話しあう(運動具,学用品等)
2.他校と合同の討論会を開く。
3.対抗競技会を催すこと。
4.競技の応援者や観客として守るべき事項を話しあう。
5.スポーツマンシップや競技における正々堂々たる態度について報告する。
6.自分の家と親しい家の名を挙げ,どうして仲よくなったかを話しあう。
7.仲のよい学級や学校を挙げて,どうして仲よくなったか話しあう。
2.わが国と交際のあった国々との交通を示す地図を作り,交通に用いられた乗り物の絵を記入する。
3.発明発見が文化の交流を促進している状況について話を読む。
4.ラジオや新聞・雑誌等の分配される広さを調べる。
5.国際的平和事業についてのパンフレットを集める。
6.水難救済会の仕事について読んだり聞いたりする。
7.外国人あるいは外国へ行ったことのある人を招き,その国々の優れた所や興味のあることについて,またその国の人々の日本人観について聞く。
8.各国の国旗とその国の大きな行事や記念日を示す図表を作る。
9.世界一周の物語を読んだり,それに関する劇を作ったりする。
10.世界のおもな宗教を挙げ,信教の自由について説明してもらう。
11.世界の人々が協力した事業や研究の物語を読むこと。
12.国際競技(オリンピック大会・デヴィスカップ戦等)の話を聞いたり読んだりする。
13.ノーベル賞の話を読む。
14.世界文化に寄与した日本人の物語を読む。
15.外国で勉強して名を成した人の話を読む(たとえば野口英世・空海等)。
16.日本に名を知られた有名な外国人の表を作る。
17.日本に来朝した有名な外国人の話を聞く(たとえば,グラント将軍・アインシュタイン博士・小泉八雲等)
18.外客招致に用いるポスターや小冊子や写真を交通公社からもらって来る。
19.観光客招致のポスターを作る。
20.世界の観光国の話を読む。
21.世界地図におもな都市や航路・航空路を記入する。
2.国際連盟と国際連合について読んだり聞いたりする。
3.第一次世界大戦の話を読んだり聞いたりする。
4.第二次世界大戦の話を聞く。
5.第二次世界大戦の災害をわが国及び他の国々について調べる。