初等科第五学年及び第六学年の児童の心理学的特性については,国民学校公民教師用書二六頁及び一般編〔第二章 児童の生活〕の中に説明があるから,こゝでは具体的にあらわれて来る一般的な特性を列挙して参考に供しておく。
二 からだの発達が余りに急激であるため却って不安を感ずる。
三 からだの発達に関し,色々と気を病む。
四 食欲が非常におう盛である。
五 自分自身及び周囲の自然環境に関する,好奇心が強い。
六 自分たちの関与している事がらの関係について具体的に考える。
七 好んで自分自身の考えを簡単な形式で発表する。
八 簡単な関係を理解し,かなり正確な結論を出すことができる。
九 しゅう集物を整理することを好む。
十 新しい経験をしたがる。
十一 自分のことばづかいが,周囲の社会に適合しているかどうかに,気を配る。
十二 ものを秘密にするような傾向があらわれる。
十三 じきに憂うつになったり元気になったりする。
十四 理想家はだの所がある。
十五 自分たちのなかまを作ることに強い要求を持っていろ。
十六 自分たちのなかまを作るために,友達を選びはじめる。
十七 自分たちのなかまのものの意見に,容易に従う。
十八 ユーモアを解するがまだ未熟である。
十九 成人が権威をふるうことに対し反抗的となる。
二十 自分に都合よくするために,人をおどしたり,ひどいことばを使ったり,勝手にどこかへ行ってしまったりするようなことがある。
廿一 組織的な勝負事や競技に参加することを好む。
第五学年の児童について特に注意すべきことは,次のような事であろう。
二 創造的な自己表現は,よほど注意しないと止まってしまう。なかまのものと違うことを恐れるし,ちょっとしたことでくじけてしまうからである。しかし自分自身に適した方法で感情の表出をさせるよう鼓舞し,助けることは,感情の緊張を解き,気持を安定させる上に,必要である。
三 身体的の発達が,非常にまちまちである。大人びた子と,子供らしい気分のぬけない子,身長のむやみに高い子と低い子などができて,それぞれひけ目を感じ,からだのことを心配したり秘密にしたりする。
四 女の子は男の子に比し,著しく成熟が速い。
五 身体的な欠陥のある児童や,学習速度のおそい児童等については,特に考慮を払って自信をなくさせないようにする必要がある。
第五学年の社会科としては,次のような事項を理解させ,これと関連した能力や態度を得させることを目標としている。
二 発明,発見は社会生活の形を変えたこと。
三 発明,発見は絶えず考え方や生活の仕方を変化させていること。
四 科学的な知識は迷信を減少させること。
五 医学上の発見は人間の平均寿命を長くしたこと。
六 発明発見は環境を統御する手段となること。
七 科学は自己保存や自然征服の新しい方法を与えること。
八 人間は生命や財産及び資源を保護するために,発明発見を利用すること。
九 科学の発達のおかげで,せまい地域にたくさんの人間が住むことが可能になること。
十 物資や利便は,どんなふうに分配されるかによって,その消費され利用される量がちがうこと。
十一 発明,発見の最良の利用は,すべての人の幸福をはかろうとすることによってのみ実現されること。
十二 美術,音楽,文学等の作品も,発明発見のおかげで,いっそう広く普及されること。
十三 発明,発見には,祖先の人たちの苦心が払われていること。
第五学年の問題としては,次のようなものを参考に挙げているが,その意味,これを中心とした単元の意味や取り扱い方,各単元に示された学習活動の意味や取り扱い方,学習指導計画との関係は,すべて第一学年の場合と同じであるから,その部分を熟読対照していただきたい。また巻末の作業単元の実例を参考にする必要がある。
二 どうすれば私たちは自分を安全に且つ健康にすることができるか。
三 自分・家・学校・町村・国の財産にはどんなものがあり,どのように保護保全されているか。
四 現代の産業は,いかにして発達して来たか。
五 発見,発明はどのくらい,私たちの生活を豊かにしたか。
六 どのようにして私たちは通信したり,意見を交換したり,旅行したりできるか。
七 外国人との交際はどのようにして行われるか。
八 私たちの生活を楽しくするためには私たちはどうすればよいか。
九 国家統治にはどんな施設が必要か。
一 指導の着眼
児童はまだ家庭や郷土に行われている迷信にとらわれているかも知れない。例えば食い合せとか,治療法などについてかなり多くの例を見出すことができよう。また偏見について見るならば,子供自信抱いているものはもちろん,世の中一般に通用している偏見が数多くある。電気は危険なものであるとか,流行病は防止できないとか,挙げれば限りがない。しかしながら,今や児童は事物を研究することに興味をいだきはじめている。また観察し,分類し,検討し,意見を立てることに興味と自信とを見出だすようになって来ている。新聞や雑誌その他の書籍の読み方も非常に変わって来,その量も著しく多くなる。時には子供らは,読書や勉強に熱中し,家事の手伝いや保健上の注意などを忘れてしまうことさえある。教帥は児童のこのような傾向を活用して,勉強の仕方,読書の仕方,物の考え方などに正しい方向を与えることができるであろう。
この際教師の注目すべき点としては,次のようなものである。
○学問──有用性,その発達,学問の方法,迷信と科学。
○読書──心がまえ,時間,場所,姿勢,結果の整理,購入。
○意見──資料,判断,他人の意見の尊重,意思の主張,検討,実験。
この問題に関する学習活動の効果は次のようなことから判定することができよう。
児童は順序よく学習するようになったか。実証されない意見には,軽々しく同意しなくなったか。実験をしようとする態度を示すか。日々の生活から問題を発見し,これに対する意見を立てようとするか。読書は無計画でなく,選択をして行うか。他人の意見をよく聞くとともに,自分の意見を理解させようとするか。新聞・雑誌・ラジオ等の報導を活用するか。友人と協力して学習するか。教師の助言を積極的に求め,これに従うか。
三 学習活動の例
(一) 科学的実証的に知識を獲得する方法を発見する。
2.能率をあげる勉強の方法や時刻について読んだり話しあったりする。
3.勉強する時の姿勢について,話しあい,最善の方法を実施する,(すわる場合,腰掛ける場合,書く場合,読む場合,話を聞く場合など)
4.ラジオをかけながら勉強する際,能率があがらないことについて話しあう。
5.勉強するにはどんな場所がよいか,おたがいの意見をまとめる。
6.どんな疑問でも,すぐ書きつけることのできる小さなノートを作る。そこに書きつけた疑問は整理して,必ずその解決が書き入れられるようにする。
7.いろいろな事がらについてのよい参考書の表を作って本のあり場所を示す。
8.図書館の利用の仕方を研究する。
9.学級文庫の規定を話しあい,決定する。
10.学芸会における研究発表を計画し,実行する。
11.共同学習を実施し,その成果を報告する。
12.学者や先生からその勉強法を聞く。
13.学級の人たちの学習態度を観察し,自分のと比較してみる。
14.おたがいのノートを見て参考にしあう。
15.しんぼう強く努力して問題を解決した経験や解決のよろこびについて話す。
16.各人の毎週の学習予定表を作製し,その実行について記入する。
17.まちがいをくり返さないためにカードを作ったり,帳面に記入したりして工夫する。
18.グループを作って本を読み,報告しあう。
19.読書ノートを作る。
20.同じ本を読んだもの同志が集まって,その本について話しあう。
21.学級文庫の予算や自分の小づかいで,本を購入する計画を立てる。
22.読書の際に眼を保護するための注意を表にする。
23.本をたいせつに読むための注意を表にする。
24.本や文章の大要について報告を作る。
25.学級文庫の図書の索引や目録を作る。
26.読んで得た知識を実際に試してみる。
27.学級の児童の読物の種類や量を示す統計を作る。
28.先生や父兄に良書を選んでもらい,共同で続む。
29.ラジオや新聞雑誌を勉強に利用する方法について話しあう。
2.資料を集めるため,人に会ったり,手紙を書いたりする。
3.資料の出所を確かにし,すぐわかるように準備をしておく。
4.選ばれた問題について,いろいろな人の意見を集めてみる。
5.一人が作った作文をみんなで検討し,どれだけ作者の気持をあらわしているか,また,作者の意見が正しいかどうかを話しあう。
6.同じ資料をもとにして意見をつくり,ほかの人たちのものと比べる。
7.真理及び正義を愛するということについて適当な物語を読む。
8.学者の伝記を読んだり話を聞いたりする。
9.自然科学の発達の歴史を聞く。
10.自分の一番興味を持っている学問の歴史について研究し,その進歩を示す年表を作る。
11.自分の日常生活から迷信と考えられるものを表にしてみる,更にそれらの由来について老人に話してもらう。
12.迷信が昔の人の生活にいろいろの影響を与えた話を読み,今日排除すべきものと再検討すべきものとに分類する。
一 指導の着眼
児童は自分のからだの発達に大きな関心を持っている。しかもそれは各人各様であり,且つその速度が急なので,時には内心の不安の原因となっており,時には乱暴な行為や冒険的なことをする原因となっている。子供たちの食欲はおう盛であり,活動もおう盛である。それと同時に子供たちは食物の価値を知り,またその行動が一定の規則に従わないと,自分や他人に危険や迷惑を及ぼすということを理解できるようになっている。子供たちは事故や種痘や予防接種,有効な消毒剤,蚊,はい等の駆除について経験を持っている。かような経験から出発して,教師は児童の注意を,食物の生産,加工,保存,分配に関する発見発明,医学の進歩や事故防止,並びにこれに関する器具や装置の発明などに向けることができる。
教師は,科学がいかに事故の防止・病気の予防及び治療に役立って来たか,また人の死亡率を減少させたかなどに関する広い知識を持たなければならない。
教師は次の諸点に注意すべきである。
予防法(こん虫の駆除,消毒,免疫,血清,衛生,検疫)
治療法(×光線,紫外線,麻酔剤,ビタミン,抗毒素,運動,太陽,温泉,食事,輸血)
○安全──輸送の際の危険防止(信号や掲示,警察,踏み切り,列車の自動ブレーキ,自動車・バス・電車・飛行機等のブレーキと前燈,交通事故防止のための法令)
競技の際の危険防止(運動場の施設,運動器具,規則)
水泳の際の危険防止(水泳場,監視者,注意事項,予備体操)
学習効果は次の観察から反省することができよう。
学校や家庭でガラスかけなどを拾って片づけるか,せきをする時口を被うか,運動をするか,十分な睡眠と休養をとるか,交通の規則を守るか,上手に食物を買うか。
三 学習活動の例
(一) 病気の予防法を発見する。
2.伝染病予防の接種法,ワクチン法の経験を話しあい,その種類をあげる。
3.ワクチン法・接種法・消毒法・殺菌法等・病気の抑制や予防の方法の発見についての話を読み,話しあい,報告を書く。
4.ジェンナー・キューリー・パスツール・ゴーガス・コッホ・野口英世・北里柴三郎等医学的発見に尽くした人々の話を読み,話しあい,感想文を書く。
5.はい,蚊その他病気を媒介する虫類の話を聞いたり,読んだり,話しあう。
6.はい,蚊等の繁殖場所とその絶滅法を話しあい,実行する。
7.はい,蚊等を滅ぼす動物類(くも・とんぼ・つばめなど)について話しあう。
8.寄生虫による病気の話を聞きその予防法を実施する。
9.飲料水をたいせつにしなければならない理由を考え,その方法を話しあう。
10.医学未発達時代の迷信の話を聞く,(病気の原因・療法・死亡率等)
11.西洋医術伝来の話を聞き,当時の先覚者の話を劇化する。
12.漢方医術と西洋医術の相異を調べ,話しあう。
13.大掃除の必要について体験を話しあう。
14.たんつぼを備えつけなければならないわけを話しあう。
15.内科・眼科・歯科等の医師を招いて,医学各科の発達と保健上の注意を聞く。
16.内科・眼科・歯科等の医師を訪ねて,機械設備や,薬品,用具を見せてもらい,昔のものと比べる。
17.金銭のかゝらぬ病気予防法を話しあい,実行する。
18.容姿と健康及び清潔との関係を話しあう。
19.寝具を陽に干すことの効用について話しあい,実行する。
20.視力を測定する。
21.視力を守る方法を話しあう。
2.電車,自動車の運転手を招いて,事故の原因と自分たちに対する希望を聞く。
3.電気機具使用の際の事故を話しあい,予防法を考え実行する。
4.水泳をする時の事故予防法を話しあい,実行する。
5.火を使う際の注意を話しあい,実行する。
6.防火訓練をする。
7.うるし・とげ・毒を持つ虫・へび・ガラスかけ・くぎ等事故のもとになる動植物その他のことを話しあう。
8.7.による事故や陽やけ,切り傷,鼻血,まめ等の応急手当法を学び,実行する。
9.応急手当法のポスターを作る。
10.血液型を調べ,記憶しておく。
11.輸血法について話を聞く。
12.外科医を訪ね,その機械,機具,薬品を見せてもらい,昔のものと比べる。
13.義手や義足を見学し,その発達を調べる。
一 指導の着眼
児童はすでに身のまわりや社会の財産,資源について,その大要を知っているし,これを保護しなければならないことも知っている。しかも,もはやかなり大きくなったので,衣服やはき物,家具や住居,また家庭や学校の菜園,校具,校舎の管理をまかされていることが多いし,またまかすこともできる。時には飼育動物の世話をするであろう。つりとか,猟に伴われて行くこともあり,植林の手伝いをすることもあろう。教師はこれら児童の経験から出発し,財産や資源の保護保全が発明発見とともにいよいよ重要となり,またこれによって,その方法が能率的かつ大規模になって来たことを理解させ,社会生活における相互依存と各人の責任とを認識させることができるようになる。
教師の指導上,着眼すべき事項としては次のようなものが考えられる。
○衣服──たんす,トランク,防虫剤,虫干し,せんたくと通風,地質による使用法並びに手入れ法保存法のちがい,被服類の値段と用途。
○家具──こっとう品,美術品,時計,ラジオ,楽器,台所用品,ふとん,たゝみ,しき物,工作道具類の保護保全。
○校具──教室備品・学校備品等の破損個所・破損原因と修理。
○家屋・住居と学校・校舎──壁,建具,床板,踏み板,屋根。
○菜園──作物,栽培計画,害虫,災害,作物の用途,土壌の性質。
○鳥獣・魚類──せいそく場所,禁猟期,禁漁区,保護方法。
学習活動の効果は,文字や文章で明確な報告ができるか,実験的態度で物を取り扱うか,いろいろなものゝ原因を追求するか,自己の管理に属するものの扱い方が向上したかなどから判定できよう。
三 学習活動の例
(一) 自分・家・学校・町村・国の財産にはどんなものがあるかを発見する。
2.所持品には,一々自分で名まえをきれいにつける。
3.わが家の家具の種類をあげ,そのおもなものが,いつごろから備えつけられたかを,父母や祖父母から聞いて記録する。
4.家で耕作している反別や生産額,管理している山林・原野の面積を記録する。
5.宅地の利用の状況が季節で違うことを地図にあらわす。
6.わが家の果樹の種類と本数,また植えられた年代やそのいわれを聞いて記録する。
7.わが家の美術品や,こっとう品がどうして手に入ったかを聞いて記録する。
8.わが家の時計・ラジオ・蓄音機などを買い入れた年代や,そのいわれを聞いて記録する。
9.教室の備品表を作り,責任者を自分たちで定め保管に当たる。
10.学校の敷地や建坪を調べ,正確な地図を作る。
11.学校林や学校園などの広さや沿革を調べ,表を作る。
12.町村の財産にはどんなものがあるかを,町村役場へ行って聞き,報告をする。
13.自町村以外のところに,その町村民所有の田地や山林があるかどうか,またその反対の場合があるかどうかを調べる。
14.国家の財産にはどんなものがあるかを読み,また聞いて表を作る。
15.賠償として外国へ渡す工場やその製品を調べて表を作る。
2.くつの手入れ法を発見し,それを続ける。
3.書籍や衣類の虫ぼしを計画し,実施する。
4.万年筆について読み,使用法を研究する。
5.インキや墨汁を作る。
6.しょうのうや防虫剤の作り方について読む。
7.衣服の保護及び手入れ法をみつけ,実施する。(洗たく・ブラシかけ・うわおおい・つくろい等)
8.衣類の更生をする。
9.家具の取扱方及び壁や家具についたしみを取る方法について話しあう。
10.古くなった家具を更生させる。
11.障子やふすまの切りばりをする。
12.道具類を手入れし整理する。
13.時計・ラジオ等の故障のみつけ方を研究し,簡単なものはなおす。
14.電気を経済的に使用する。
15.家庭及び学校の薪炭を節約する。
16.自転車のタイヤに空気を入れる。自転車の手入れ及び修繕をする。
17.空気の圧力の利用について調べたり,これを活用したりする。(ポンプ・サイフォンなど)
18.摩擦を増減する方法について学んだり説明したりする。(油をさす,さびをとる,車の利用,すべり止めなど)
19.水,石けん,鉛筆,紙,絵の具その他をむだなく使う。
20.石けんの切れはしを溶かして,学校で使う石けん液を作る。
21.茶わんや皿を気をつけて使う。
22.公園や道路の草木や菜園の野菜を保護する工夫を話しあい,実行する。
23.ボール・バット・ネットなどのような運動具のしまっておき方,手入れの仕方を話しあい,実行する。
2.豆を吸い取り紙でふやかし切り開いて,養分貯蔵とはい芽の成長の状況を見る。(育つ植物に貯えられた養分の効用を話しあう)
3.学校園や家庭の土を調べ,植物の成育にいろいろな肥料が必要なことを発見する。
4.花や果物その他の作物の成長ぶりを比較して,肥料がどんなにそれらの作物に作用しているかを発見する。
5.その地方の野花がどんなに美しいものであるかを発見するため,実地踏査をする。
6.法律で保護されている高山植物や天然記念物についての知識を得るため,専門家にたずねる。
7.沼のひしや水れんのような特別のところに生えている植物を見るため遠足をする。
8.種,ほう,切り枝,球根,地下茎から生える値物を示す図表を作る。
9.コクゾウ虫のような虫害を防ぐには,発見発明が必要であることを読み,話しあう。
10.接ぎ木のできる木とその価値を読み,話しあう。
11.適当に枝を切ったり,薬をふりかけたりして,木を保護することについて,話を聞く。
12.学校林を理想的に育てるための方法を研究し,実行する。
13.その土地の土や季節に適した種を植えるように,家の庭に花だんや植え込みをつくることを計画する。
14.その土地の菜園にはどんな害虫,害鳥がいるか,またどうすればそれを絶滅できるかを研究する。
15.菜園にはどんな益虫,益鳥がいるかを調べる。
16.植物につくアブラ虫を薬で殺し,薬をふりかけないものと比べる。
17.花や野菜の標識を作る。
18.植物性食料を分類するため読書する。
2.わが国の国立公園の分布図を書き,各地の特色を調べて報告しあう。
3.わが国の景色のよいところの絵葉書や写真を都府,県別に集めて,切り抜き帖にはる。
4.わが国の三公園,三景,三急流の絵や写真を見たり,話を聞く。
5.各地の県立公園や国立公園の絵や写真を集めて展覧会を開く。
6.京都や奈良の話を聞いたり,読んだりする。
7.外国の国立公園に関する資料を集め,読書したり,話しあったりする。
8.公園や風致区の清掃を継続的に行うため計画し,それを実行する。
9.遠足や旅行に行った場所をよごさないようにする。(紙くずなどは拾って帰る)
10.郷土の見にくい場所を美化する工夫を話しあい,できるものは実行する。
11.土地のかん木を選んで移植する。
12.校庭改良の長期計画を作り,実行する。
13.国宝や重要美術品について,説明を聞いたり,読んだりする。
14.国宝や重要美術品について鑑賞する。
15.博物館や美術展覧会を見学する。
16.保護林や禁漁区のあるわけを専門家から聞く。
17.その土地の保護林や禁猟区,禁漁区を地図で見,保護されている植物や動物及びその期間を書き入れる。
18.箱庭を計画し,各自または共同で作って見せあう。
一 指導の着眼
敗戦後における産業復興の問題は,郷土の社会に,また家庭にいろいろな問題を提供している。生計の維持,衣食住の最低の必要の充足,賠償責務の遂行等,国民経済の問題は,直接的な形をもって,老若男女を問わず,すべて国民の肩にかゝっている。生活必需品の欠乏,主要食糧の不足,物価の値上りなどについても,児童は十分に経験し,且ついろいろな疑問をいだいている。いかにしてわれわれは生きるか,このような児童の関心を誘導して,現在に至るまでのわが国の産業並びに他の産業との相互依存の事情を理解させることができよう。発明発見による産業の進歩と,これに対するわが国民の適応の状況とは,児童の興味をひき起すばかりでなく,国家の将来に対する責任を痛感せしめるであろう。
指導上教師の注目すべき点としては,次のようなものが挙げられる。
○水産業──種類,生産物,産額,生産漁獲の方法とその進歩,遠洋漁業とその将来,科学的探索法(飛行機,ラジオ,探索船)
○鉱業,林業──天然資源の利用法,植林,工業の基礎。
○工業──家内工業,小工場,大工場,部門,原料,機械,製品の販路,労働者。
○商業──国内の商業,貿易,商業発達の歴史,商業道徳。
○交通運輸──国内の交通運輸,国外との交通運輸,水路。
○産業相互の依存関係──国内における問題,対外的の問題。
○わが国民の将来の生計と発明発見及びその利用との関係。
(一) 現代の農業(養蚕,畜産,副業を含む)はいかにして発達して来たか。
2.わが家の農機具がいつごろ買い入れられたかを聞いて報告する。
3.石器時代の農具や農業について読む。
4.焼畑農業のことを調べて発表する。
5.脱穀機発達の物語を読む。
6.動力利用の農機具を見学する。(水車,風車利用のもの,ガソリン利用のもの)
7.畜力利用の農機具を見学する。
8.その地方で栽培している米,麦,芋類の品種を調べて表にする。
9.農事試験場を見学し,品種の改良や薬剤使用の知識を得る。
10.東北地方や北海道の米の品種改良や栽培上の苦心談を読む。
11.米の原産地のこと,栽培地域の拡大したことなどについて読む。
12.わが国及び世界における米の生産地を示す地図を作る。
13.小麦,大麦,えん麦等のわが国及び世界における分布図を作る。
14.わが国におけるさつま芋とじゃが芋の都道府県別産額分布図を作る。
15.わが国におけるみかんとりんごの都道府県別産額分布図を作る。
16.芋類の貯蔵の方法を発見する。
17.果樹類の長期貯蔵法を発見する。
18.蚕業試験場を見学し,獲蚕業の進歩の状況について学ぶ。
19.蚕種改良の苦心談を読む。
20.わが国の生糸の都道府県別産額分布図を作る。
21.世界における生糸産地を調べて,地図やグラフにあらわす。
22.畜産試験場を見学し,家畜改良,飼料等について学ぶ。
23.牛,馬,豚,うさぎ,鶏等の品種改良の物語を読む。
24.わが国の牛,乳牛,馬,豚,鶏等の都道府県別分布図を作る。
25.郷土における農家の副業を調べて報告する。
26.多角形農業の話を聞いたり,本を読んだりする。
27.機械によるわら加工品の製造をし,機械を使わない場合と比較する。
28.季節的な出かせぎについて話を聞き地図を見る。
29.大農式の農機具(トラクターなど)を見学する。
30.見返り物資としての農畜産物を調べて表を作る。
2.手こぎの舟と機械般のちがいについて,見たり,話しあったりする。
3.つり具や網具を展覧する。
4.水産試験場や水産講習所を訪い,近代水産業の発達ぶりを聞く。
5.漁業会を訪い,その地方の水産業の変遷を聞く。
6.網具(さし網,まき網,地びき網,きんちゃく,あくり網,大謀網等)について話を聞いたり読んだりする。
7.漁獲物の種類について調べたり,見聞したりする。
8.網具や舟を保護する方法を発見する。
9.漁港の諸施設を見学する,冷凍装置について見聞する。
10.わが国におけるいわしの都道府県別産額分布図を作る。
11.地びき網を手伝う。
12.漁獲物の加工状況を見学する。
13.かつおぶしの製造場や貯蔵場を見学する。
14.わが国のかつおぶしの都道府県別産額分布図を作る。
15.遠洋漁船(トロール船,かに工船,かつおまぐろ漁船等)や捕鯨船の物語を読む。
16.漁群発見の科学的探索法を読む。
17.潮干狩りやのり取りに行く。
18.貝類や海草類の養殖状況を見学する。
19.あゆの放流について聞く。
20.さけ,ます,こい,金魚等の養殖場を見学する。
21.いろいろな製塩法を調べ,絵や写真を見る。
22.魚貝類を加工した食料品の一覧表を作る。
2.砂金採取の絵や写真を見る。
3.貴重な鉱物資源を求めて,人々が新しい土地を探検開拓した物語を読む。(新大陸の発見,西洋人の日本への渡来,オーストラリアやアメリカ西部の開拓など)
4.わが国の鉱業発達の物語を読み,年表で示す。
5.炭鉱の諸施設を見学する。
6.製油場を見学する。
7.わが国の石油,石炭の都道府県別産額分布図を作る。
8.世界各国の石油,石炭の産額分布図を作る。
9.鉱山関係の役所を見学し,進歩した鉱山業の状況を説明してもらい,資料を見る。
10.こびきと動力利用の製材との能率(生産量,労力等)を調べる。
11.動力を使用する製材所を見学し,そこに製材所の置かれたわけを考察する。
12.林業試験場を見学し,特に優良林育成の状況について話を聞き,資料を見る。
13.世界の森林地帯の分布図を見て,パルプや製紙業の発達する国を判断する。
2.古い時代の家内工業の話を読んだり聞いたりする。
3.西陣織や友禅染の標本を見,発達の話を聞く。
4.手工業と機械工業,軽工業と重工業の区別を読んだり聞いたりする。
5.現在の工場で使われている動力の種類を発見するため,読んだり,見学したりする。
6.郷土の工業製品の見本を集めて展覧する。
7.工業試験場を訪い,工業発達に関する資料を見聞する。
8.労働者の数の多少を示した工場の分布図を作る。
9.わが国の大工業地帯を地図に示し,それらの工業地帯と海陸交通図とを重ねあわせる。
10.世界の大工業地帯を地図にあらわす。
11.イギリスの紡績発達の物語を読む。(産業革命について学ぶ)。
12.わが国の紡績工業の盛んな地域を地図に示す。
13.わが国の綿糸の累年産額比較を棒グラフに示す。
14.わが国の紡績業の発達についての物語を読む。
15.岡谷が盛んな製糸業地になったことにつき話を聞き,地図で研究する。
16.郷土の工場を建設した人々の話を読んだり聞いたりする。
2.鉄道による輸送量の過去と現在とを比較し,図表に示す。
3.帆船時代と蒸気船時代との海運を比較した物語を読む。
4.鉄道開通以前の河海の交通について,老人の話を聞き,記録して報告する。
5.自動車による運搬の状況を馬車や牛車の場合と比較して話しあう。
6.自動車の発達に伴い道路が改良されて来たことについて調べて話しあう。
7.鉄道や汽船の貨物運賃について資料を集め表を作る。
2.郷土に見られる行商について調べて報告する。
3.わが国の古い時代の貨幣を展覧し,説明を聞く。
4.郷土の商店街や商業中心地を観察し,写生をする。
5.古くからの商店と新式の商店とを比較して話しあう。
6.村の雑貨店や都市のデパートを地図に書き入れ,どんな場所にできているかを話しあう。校内に売り場を設け,学用品その他を生徒の手で売り,商業の実際を体験する。
7.新聞を生徒の手で配達することを計画し実施する。
8.貿易品が時代でちがうことにつき話を聞き,表に比較してあらわす。
9.終戦後アメリカから放出せられた物資の種類と数量の表を作る。
10.農家が各季節に必要とする肥料を調べ,それを購入入手する場所を示して,一覧表を作る。
11.肥料が生産地から農家まで運ばれる経路について調べて報告する。
12.農家に必要ないろいろな物資(農機具,作業衣,地下たび等)が,どこからどんな経路ではいって来るかを調べて報告する。
13.その土地の産物が,どんなふうにどこへ送られて行くかを調べて報告する。
14.都会の家々で必要な農産物や水産物が,どんな経路で送られて来るかを調べて報告する。
一 指導の着眼
われわれの日常生活はあらゆる点において文明の恩恵を受けている。食にしても,住にしても,また衣にしても皆文明の恩恵をうけている。(食については問題二において取り扱われているが,住と衣との問題をこゝで取り扱おうとする。)
児童は家庭や学校の生活において,いろいろな文明の利器やその効用に接している,(電灯・電話・ラジオやガラス・セメントなど)。またその所持品や身のまわりのものには,昔の人の思いも及ばないものがたくさんあることを知っている。
紙といい,鉛筆といい,更には通学用のはき物の数に至るまで,ことごとくそうでないものはない。色刷りの本なども余りに見慣れているとはいいながら,その製作の過程を考えたなら,大きな驚異を感ずるであろう。
児童の所持品からはじめて,その服装並びに,家庭や学校における文明の利器を観察し,発明発見の賜物と,これに対する感謝の気持を起させ,併わせてその活用の必要を理解させることは,容易なことと考える。
教師の着眼すべき点として次のようなものが挙げられる。
○衣服──簡素な外見,材料,色彩,製作機械,工場。
○家庭及び学校──設備,備品,消耗品。
○保健,厚生のための改善──水道,採暖,空気,照明,部屋,便所,建具,建築,音楽や競技。
○材料──金属,木料,しっくいその他セメント,石,れんが,ガラス,絶縁,ペンキ。
○家屋の種類──アパートメント,別そう,その他の建築様式。
○家具と装飾──芸術的要素,値段,実用性,個性と趣味らの歴史及び使用法。
学習活動の効果は,物の使用に当たって,これを惜しまず,時と場合に応じて,十分その効用を発揮するよう心がけるか。所持品がよく整とんされ,必要にして十分な最小量にとどめられているか。服装が人に好感を与えるようなものになって来たか。多くの生活必要品が,いかに発明,発見の恩恵によるものであるかを理解して来たか,豊かな生活はいかに多くの人の努力や協力によるかを理解して来たかなどを観察することによって判定される。
三 学習活動の例
(一) 食物の種類の多いことを発見する。
2.精米所,水車小屋,米つきうすなどを見て,精米脱穀法の変化を発見する。
3.精白米,三分つき,七分つき,玄米等のたき方,味などを話しあう。
4.米の食べ方についての歴史を聞く(ほしいい,かゆ,こわめしその他)。
5.麦やそばがいつごろから日本で作られたか,どんなふうに使われたかを聞いたり読んだりする。
6.米,麦,豆等からどんな食料品が作られるかを話しあい,絵図を作る。
7.大陸,南洋,欧米諸国から伝わって来た食用植物を調べ,絵巻物を作る。
8.外国から伝えられた,食物調理法を調べて発表しあう(とうふ,カステラ,天ぷらその他)。
9.わが国で牛肉,豚肉が食べられ,牛乳が飲まれるようになったのはいつごろからかを調べ,そのはじめのころの有様を聞いたり読んだりする。
10.食用油脂の原料を挙げ,表に作る。
11.食用油脂の製作過程を見学し,古い方法と比較する。
12.砂糖の歴史(日本と世界)を聞き,砂糖の効用を話しあう。
13.いろいろな甘味料を比較して,その効果を話しあう。
14.こうぼを作り,あめや,廿酒を作る。
15.かき・いちじく・りんご・くわの実などでヂャムを作る。
16.日本,東洋,西洋の菓子類を調べて,絵図に書く。
17.香料の話と,香料についての歴史を調べる。
18.ありあわせの材料で,簡単な菓子を作る。
19.たばこ,茶,コーヒー等の生産地を示す地図を書く。
20.てん菜と甘しょの産地を比較し,分布図を作る。
21.いろいろな肥料の話を聞き,その用法を調べる。
22.かんがいと耕作道具の発産によって,耕地がどんなに変ったかを読んだり,聞いたりする。
2.くさった食物の見分け方を話しあい,発見する。
3.冷凍法の今昔について聞いたり読んだりする。
4.製氷工場,かん詰工場その他の食料品工場を見学する。
5.有用バクテリヤと有害バクテリヤの食料に及ぼす影響を,読んだり,聞いたり,話しあったりする。
6.台所の位置や広さについて,絵を見ながら話しあう。
7.わが国で昔から使われている台所用具と,欧米から来たものとを区別する。
8.いろいろな種類や型の七輪を使って,どんな型のが一番早くて経済であるかを調べる。
9.いろいろな質や型のなべやかまを使って,湯をわかすにはどちらが早いか調べる。
10.ほうちょうその他調理用具の種類と変遷を調べる。
2.殼類・野菜・果物・魚肉・茶等カロリー,栄養素を調べて表を作る。
3.簡単に手に入る食料で合理的と思われる食事の献立表を作る。
4.医者や歯科医を招いて,食物と身体との関係を聞く。
5.米の精白度やいろいろの配給主食物の栄養価とその長短を話しあう。
6.原始人と近代人との調理法を比較する。
7.肝油やビタミンの効用を聞く。
8.病気の時にはどんな食物をとるか話しあう。
9.一年生から今までの身重体重を調べて表に作る。
10.明治以降の学童の平均体重を調べて表を作る。
11.生野菜の食べ方を調べて,なるべく多く食べる。
12.魚粉や海草粉を作って食べる。
2.わが国における衣服材料の変化について,聞いたり,読んだり,調べたりして年表を作る。
3.紡績機・織機等衣料生産を増加させた発明の話を読んだり,聞いたりする。
4.紡績工場・織物工場を見学する。
5.人造繊維の発達についての話を聞き,その製作過程を見学する。
6.染料工場の人を招いて,染料の話を聞き,天然染料と人工染料とを比較する。
7.動植物繊維品及び合成繊維品を染色し,おのおのの効果を見る。
8.合成繊維と天然繊維の強度,洗たくに堪える度合い,手入れ法を実験的に比べる。
9.手工業的繊維品と機械工業製品のそれとの丈夫さを調べて話しあう。
10.着物の色やがらの見本を集め,あるいは模写して,どれが好きか,どれが似合うか話しあう。
11.わが国の衣服の歴史を聞いたり,読んだりして,外国のものとの関係を知る。
12.わが国の主要織物生産地を調べ,地図に書きこむ(久留米がすり,西陣織等)。
13.いろいろな雨具や防寒具を集めて,陳列する。
14.いろいろな形のかぶり物(かさ,帽子,ずきん等)やその絵を集める。
15.各種のはき物を集めて古い順に並べる。
16.はき物の歴史を聞いたり,絵を見たりして絵巻物を作る。
2.ガラス製品を挙げて,その絵図を作る。
3.わが国の昔のガラスについて読んだり,聞いたり,調べたり,見学したりする(正倉院,御物,ギャーマン,ビードロ等)。
4.壁の原料について話しあい,壁の修繕をする。
5.簡易住宅の材料や建設費を調べる。
6.鉄,銅,鋼,コンクリート,鉛,すゞ,トタン,材木等から,建築用材が作られるまでの話を絵図であらわす。
7.大建築にコンクリートが利用される理由を話しあう。
8.防火,耐震の建物を見て,その特徴を話しあう。
9.暖房装置,採光装置,通風装置等の発見発明が家屋の設計,構造を変えた有様を見たり話しあったりする。
10.近代建築機械の話を聞いたり,それを見た経験を話しあったりする。
11.電気が業務上,生活上どんなに役立っているかを話しあい,絵図で示す。
2.家事上の手伝いや仕事をする時間表を作る。
3.自分の家を便利で都合よく改良する方法を計画する。
4.家や学校で散らばっている道具類を整理する。
5.所持品の中で,ほんとうに必要なものとそれほど必要でないものとを分けて見る。
6.まだ使える品物の修繕と更生をはかる。
7.家や学校で必要な小道具を作り飾りつける。
8.家で事故(けが,やけど等)をなくすよい方法を,見ならったり考えたりして,実行する。
9.家や学校の通風をよくするようにいろいろな工夫をする。
10.気持のよい明かるさを保つため,光の調節を工夫する。
11.部屋の壁やふすまの模様や色合いを工夫して整える。
12.携帯用裁縫道具入れを作って使う。
13.着物のつくろいをする。
14.えりまきその他の簡単な編み物をする。
15.顔,歯,髪,手足の正しい手入れを話しあい,実行する。
16.簡単なエプロンや前掛を作って使う。
17.着物類のしみをうまく消す方法を話しあい,実行する。
18.木綿,絹,羊毛,人造繊維品の正しい手入れ法を話しあい,実行する。
19.いろいろな布地を種々の洗たく液で試し,よくおちて,しかもあまり伸び縮みしない方法を発見する。
20.くつ(特にぬれたくつ)の適当な手入れ法を話しあい実行する。
21.手ぶくろ,帽子,ソックス等の適当な手入れ法を話しあう。
一 指導の着眼
児童は日々ラジオのニュースをとおして,人々の意見を聞き,またしばしば友人や家族のものと手紙をやりとりしている。子供たちは,本や雑誌や,新聞によっても他人の意見を聞いている。また子供たちは,電信を送る簡単な実験を非常に悦ぶ。子供たちの生活領域はもはや相当に広くなっている。そうして通信とか旅行とか,運輸などに関係して,どうしたならば,早く確実に安くそれらの目的を達することができるかを比較することに興味を持っている。汽車や汽船の時間表を与えるならば,子供たちはいろいろな旅行の計画をすることができ,且つそれを楽しむ。教師はこれらの興味を手掛りとして,人と人と協力するためには,意見を交換しあうということがどんなにたいせつであるか,またその意見の交換・意志の疎通のために旅行をしたり通信をしたりすることが大変たいせつであることを理解させたり,またラジオや新聞や雑誌がいかに役立つか,更に前代並びに後代の人々との協力のために記録や書籍がいかに必要であるか,ということなどを理解させることができる。
教師の着眼すべき点としては次のものが挙げられる。
○通信──郵便(速達・書留・航空・小包,郵便の輸送路,料金・集金・集配,郵便局,郵便の歴史,切手・印紙)
電話(種類・料金・能率・長距離電話・歴史・簡単な原理の説明)。
電信・海底電信(種類・料金・歴史・国際通信)。
ラジオ(加入・学校放送・プログラムの選択・料金・歴史・簡単な原理)
○映画(種類・料金・発達の歴史・教育上の利用・簡単な原理)。
○刊行物──選択・種別・読書計画・歴史と発達。
学習の効果は,交通・通信の方法の理解と,この部門における発明家の苦心の理解度及び自己の意見を発表する能力の向上の状況によって知ることができよう。
三 学習活動の例
(一) 社会生活において通信を交換する有様を発見する。
2.いなかをまわる便利屋や行商人,またいなかから都会へ通う便利屋や行商人の価値を話しあう。
3.情報を正確に速く伝達するにはどの通信の手段がよいかを話しあう。
4.モールス・ベル・マルコニー・グーテンべルグ・エジソンなどが通信に貢献したことを読んだり,調べたり,報告書を書く。
5.電話交換局・電話局・放送局を訪ね,通信がどんなふうに送受されているか見る。
6.電話のかけ方を研究し,練習し,実施する。(当番をきめて学校の電話を受けつぐ)。
7.電文の書き方を研究し練習する。
8.模擬郵便局を作り,通信事務の練習をする。
9.郵便局のいそがしい時を見はからい,局長と相談して,配達その他の事務を手伝う。
10.専門家を招いて,通信事務について話を聞き,通信上注意すべき事がらにつき話しあう。
11.ラジオと映画の発達について読み,話を聞く。
12.放送局の分布図を作り,各放送圏を知る。
13.ラジオの出演を計画し実施する。
14.通信に関する参考用の絵図を集めつづり込む。
15.交通上使われている信号(船・ブイ・鉄道・道路)の意味と用途を話しあう。
16.天気予報の表示に使われている信号(旗,その他)の読み方を研究する。
17.ボーイ(ガール)スカウトで使われている信号を研究し,練習する。
18.教室にとり入れられている視覚に訴える教具(幻灯・映画・掛け図・紙芝居等)の発明や利用の物語を読み,それについて話しあう。
19.適当なるラジオプログラムを調べて聞く。
20.電信機を作る。
21.モールス信号の練習をする。
22.雑誌をおたがいに交換して読むため,組織を作り,実行する。
23.駅逓・駅馬・飛脚の物語を読んだり聞いたりする。
24.自分たちのニュースを知らせるための工夫をする(掲示板・壁新聞・学級新聞等)。
2.近年の国家領域と地名や国名の変化に注意しながら,記録保存手段としての地図を見たり話しあったりする。
3.古い時代から現代に至るまでの筆記具の展覧をする。
4.昔の本を見て新しい本と比べ,紙・インキ・さし絵等のちがいとその理由を発見する。
5.木版画を集めて見せあう。
6.木版を作り印刷する。
7.図書館に行き,利用の状況を見,利用者の職業別・年齢等の表を作る。
8.粘土・パピルス・石・皮・木・樹皮・骨等を使って,古代文明の記録がどのようにして保存されて来たかを話しあう。
9.印刷術発明の物語を読む。
10.現代の印刷術を見るため,新聞社や印刷所を見学する。
11.印刷技術の発達がどんなに新聞雑誌を安く公衆に提供したかについて読む。
12.美しいさし絵の印刷の仕方を調べる。
13.学級新聞や雑誌を作り,さし絵を書く。
14.本を作る過程を示す映画を見る。
15.印刷の発明が,どんなに宗教などを広めるのに役立っているかということを調べて報告する。
16.わが国の印刷のはじまりについての記緑を見たり,写真を集める。
17.同じ事がらについて,どんないいあらわし方があるかをいろいろ考え,いってみる。
18.作文を書いてみんなに見てもらい,自分の考えがどのくらいよく人にわかったかを調べる。
19.方言の便利な点と,不便な点とについて話しあう。
20.ことばの違いが人と人との交捗をどんなに困難にするかについて話しあう。
21.盲人教育の改良された方法を示すため,点字で書いた本を展覧する。
22.紙を作る過程を見るため,紙工場を見学する。
23.わが国の書道の発達について読んだり見たりする。
24.ペン字の展覧会を開く。
2.わが国に鉄道が取り入れられた当時の物語を読み,汽車や停車場の絵を見る。
3.スチブンソンの発明した蒸気機関車の物語を読む。
4.鉄道連絡線の絵や写真を見,古いものと新しいものとを比較する。
5.鉄道博物館を訪ね,わが国の交通の変遷について,資料を見,説明を聞く。
6.蒸気機関車や電気機関車の写真を見,速力の増大について,図表で比較する。
7.時代によって比較された鉄道網の図を見て,発達の状況について話しあう。
8.京浜・阪神・名古屋等の各地方の交通網の図(電車を含む)を見て,比較し,話しあう。
9.鉄道の電化区間及び電化工事区間を地図に示す。
10.わが国の急行列車の走っている線路を地図で示す。(回数もあらわす)
11.列車時間表の見方を研究し,旅行計画を作り,展覧する。
12.修学旅行の際,自分たちで資料を集め,旅行後,報告会をする。
13.わが国各地の絵・写真・パンフレット等を集め,国土めぐりを計画し,報告しあう。また一部は実行して作文をつくる。
14.交通公社や鉄道関係の人を招いて,旅行や鉄道事務・交通道徳などを聞く。
15.自動車旅行・キャンプ旅行について聞く。徒歩旅行等を計画し,実施する。
16.各都市が交通上どんなところに発達しているかを地図を見ながら話しあう。
17.わが国及び世界の航空図を作る。
18.各国のすぐれた旅客用・貨物用の汽船の物語を読み,写真を見る。
19.航空路の発達に関する文献を読む。
一 指導の着眼
進駐軍の将兵をはじめとし,外国人がわが国のあらゆる地方に来ている。児童は大きな興味を持って,それらの人たちに接している。どういう目的で,その人たちが来たのか,どんな事を希望し,またどんなことをよろこぶか,われわれはどんな態度でこれに接するのが正しいか,これらの疑問は,おのずから児童の胸中を往来している。進駐軍による食糧その他の放出,進駐軍の人たちの学校視察,外国人経営の商店,ジープやかまぼこ型兵舎等,児童の接する事物も少なくない。わが国民は従来外国人を十分理解しない傾向があり,また外国人からも誤解されていた面もあったが,平和を希求する人々の一員として,人間としての平等に目覚めさせる出発点は,以上のような諸点に求めることができよう。
教師の着眼すべき事項には,次のようなものが考えられよう。
○外国人の言語,風習──その由来,理解と尊敬。
○外国人の見た日本人──長所,短所。
○外国人との交際の機会──赤十字社,青少年赤十字,スポーツ,観光客。
○外国人との交際の方法──通信,事業の協力,スポーツ,案内。
学習活動の効果は,児童が外国人に対する偏見をすて,自由な気持で接するようになったか。外国人を親切に案内したり,これに悪い感じをいだかせないよう気をつけるようになったか。外国人との交際を,学級として,あるいは個人として計画するか。わが国民の外国人に負うている恩恵を理解するに至ったか,などから判断することができるだろう。
三 学習活動の例
(一) 外国及び外国人を理解する。
2.外国へ行った人を招き,外国の風習その他につき話してもらう。
3.外国の衣食住に関する風習を示した物語を読む。
4.外国の子供の生活の話を聞いたり,読んだりする。
5.外国の様子や風習をあらわす絵を集め,できれば映画を見る。
6.外国の子供の一日の生活を劇化する。
7.船員から外国に航海した時の話を聞く。
8.外国人や外国に行ったことのある人を招いて,外国の子供と日本の子供とを比較してもらう。
9.外国人が日本について書いたものを集めて読む。
10.諸国の旗を作り,または描き,その由来を調べる。
11.なぜ国旗を尊重しなければならないかについて話しあう。
12.わが国の国旗の制定についての話を聞く。
13.汽船などで用いる万国共通の信号を学ぶ。
14.簡単な世界地図を作り,おもな国々を書き入れる。
15.絵,写真その他いろいろの資料を集めて,世界めぐりの催しをする。
16.外国の切手を集める。
17.諸外国の国歌を聞く。
18.外国へ行った人を訪ね,外国の品物や絵葉書を見せてもらう。
2.外国人の礼儀や習慣について調べる。
3.外国人と交際するための注意事項を表にする。
4.外国人の特に好むこと,好まないことを表に示す。
5.外国に行った人に聞いたり,物語を読んだりして,外国へ行った時の不自由さや心細さ及びそこで受けた親切の有難さについて知る。
6.島国根性ということについて,自分たちの生活をもとにして反省し,話しあう。
7.わが国の文化が外国の影響を受けて発展して来たことについて本を読む。
8.青少年赤十字の話を聞く。
9.万国赤十字社の起源と歴史とについて学びナイチンゲールの話を聞く。
10.なぜ人種によって差別されてはいけないかを話しあい,リンカーンの伝記を読む。
11.外国の子供たちと通信する。
12.オリンピック大会及びその記録について調べる。
13.いろいろなスポーツの世界選手権や世界記録を調べる。
14.極地探険やエベレスト登山の物語を読み,ナンセンの一生について聞く。
15.過去における外国人との交歓の物語を読む。
16.幕末維新のころ,日本人と外国人とが,おたがいにどんな感じをもって交際したかについて話を聞く。
一 指導の着眼
遠足を計画したり,ラジオを利用したり,避暑避寒を工夫したり,展覧会や学芸会を計画したりすることは,どの学級でも見られることである。このような児童の厚生慰安に対する興味は,厚生保健の意義,創造欲を充たすことの意義あるいは社交の意義を理解させるのに,よい機会を与える。教師は科学や発明発見が娯楽の種類を増し,またその形を変えたこと,個人の厚生活動に大きな影響を与えたことなどをよくわきまえていなければならない。
教師の注目すべき点は次のような事がらである。
○施設機関──映画・ラジオ・見せ物・自動車・汽車・飛行機・ボート・公園・キャンプ・運動場・プールなど。
学習活動の効果は,自分の幸福のために,厚生慰安の活動がたいせつであるという理解を深めたか,児童が厚生慰安の興味を押し進め,積極的に工夫するようになったかなどを見ることによって判定されよう。
三 学習活動の例
(一) 楽しい時間をもつよう個人的に工夫する。
2.自分たちに適した物語やゲームの表を作り,報告する。
3.簡単な遊び道具を作る。
4.お客をもてなす時は,どんなふうにすればよいかを話しあい,実行する。
5.いろいろな厚生慰安の方法と健康との関係を話しあう。
6.各自の厚生慰安の方法と他人のそれとを比較する。
7.ひまなとき畑いじりをすることの価値を話しあう。
8.畑の手入れを計画し,実行する。
9.物語・詩・歌・俳句・脚本を創作する。
10.物語を紙芝居に作りかえる。
11.ひまな時に読む物語や詩を集める。
12.竹や木で木琴を作る。
13.音楽を鑑賞したり,歌ったりし,また各時代の各他方のものをも鑑賞したりする。
14.ラジオ放送を選んで聞く。
15.発明によってかわった楽器のことを読み,話しあう。
16.各国のいろいろな楽器を調べたり,その音を聞いたりする。
17.額ぶちを作って,家や学校で使う。
18.美しい風景を写生し,絵の具でも描く。
2.土地の子供会その他に加わる。
3.小さな子供を集めて,お話をしてきかせる。
4.工作部屋を用意して使う。
5.演芸会を計画して実施する。
6.ハイキングクラブを作って,珍しい場所や物を見に行く。
7.自治会やクラブの歌を作る。
8.ハーモニカバンドを作って演奏する。
9.いろいろな楽器を持ち寄って,バンドを作る。
10.合唱団を作る。
11.紙芝居や影絵芝居の会を開く。
12.みんなで指人形を作り,人形芝居をする。
13.家や学校,その土地などの慰安施設を改良する計画をたて実行する。
2.昔の厚生慰安の施設を読んだり,聞いたり,話しあったりして,今のそれと比べる。
3.近代的機械の発明や交通・運輸・通信方法の改良などによって,時間の余裕のできたことについて調べ,報告する。
一 指導の着眼
児童は大人が政府を非難したり,政府に注文したりしている事がらについてもはや無関心ではいられない,配給のこと,供出のこと,引揚者のこと,労働運動のことなどについて子供たちもまた,異常な熱心さをもって聞き耳をたてているばかりでなく,これらに対する意見をさえ開陳する,またいろいろな官庁の名まえやその仕事についても,これを知ろうとして,しばしば質問する。議会でどんなことが行われているかということについてもまた,いろいろな想像をめぐらしている。国家の政治機構やその諸問題を理解させることは,まだむずかしいと思われるが,国民の声がどんなすじ道をとおって,いかに実際の生活に反映して来るかというようなことは,子供たちの学級,学校の生活,郷土社会の生活などと比較して,理解を深めることができるであろう。国の政治もまた,多くの試練を経て,次第にその形を整えて来たものであり,社会の法則及びこれに基づく秩序の上に立っていることを,教師は念頭におくべきである。都道府県及びいろいろな行政区画(警察,郵便,鉄道局,鉱山局等の)とその意味,その中心となる都道府県会,都道府県庁の業務等をも理解させ,全体としての日本の有機的なつながりを理解させることもよいと思われる。
二 学習活動の判定
学習活動の効果は,学級自治が積極的な明かるい活動を呼び起すか,学校の運営に積極的に協力するか,都道府県の自治の大要が理解でき,いろいろな役所からの文書を読み分けることができるか,選挙に関心を示すか,議会と政府との関係を理解したか,わが国の行政上の統一について興味を示すかなどから判断できよう。
三 学習活動の例
(一) 国家の政治機関に関する知識を獲得する。
2.議会政治の歴史を調べる。
3.国家及び他方の自治体の機構について大略の図表を作る。
4.官庁の種類を調べ,その仕事について簡単な説明を聞く。
5.都道府県会議員を招き,その仕事について話してもらう。
6.都道府県会の議場を見学する。
7.最寄りの裁判所を見学し,法廷で説明を受ける。
8.鉄道その他全国の行政区画を調べる〈鉄道局管区,裁判所管区,営林局管区等)
9.地図に都道府県庁所在地とおもな都市を書きこむこと。
10.昔の地図をかき,そのころの行政の中心だった都会を書きこむこと。
11.昔の政治形態を年代に分けて調べ,国民の声がどれだけ取上げられていたかを話しあう。
12.なぜ配給が必要か,どんな配給法があるかを話しあう。
13.警察官を招き,警察のおもな仕事について聞く。
14.税の話を読んだり聞いたりする。
2.団体の人たちにとって,一番よいと考えられることを決めるための手続きについて話しあう。
3.よい指導者と指導される者の特性を考え,人々がおのおの指導者になる場合も指導される者になる場合もあることについて話しあう。
4.指導者を選定したり,選挙したりするための基準を表にする。
5.指導者や委員を決定する最良の方法について話しあい,実行する。
6.指導者や委員の心得なければならないことを表に作る。
7.よい規則を決定したり,規則の変更をしたりする方法について話しあう。
8.不満や要求や争いが起った時の解決法を話しあう。
9.全員が責任を持つような活動を工夫する。
10.学級における自分の責任を報告する。
11.自分の行為に対して責任を明らかにするために,自分だけの反省録を作る。
12.「いかにすれば全員が学級の向上に積極的な協力をすることができるか」という題で,懸賞論文をつのる。
13.決議の実行を確認する手段について話しあう。