この学年の児童の心理的特性,その生活や興味の中心等については,第三学年の所で一括して述べてあるから,これを参照してほしい。
第四学年の児童について特に注意すべきことは,凡そ次のようであろう。
二 ちょう笑されたりすることは,打たれたりすることより,ずっときらいである。
三 健康的,活動的でやかましい。むしゃむしゃ食べるし,戸の開けたてなども乱暴であり,自分の外見などについても無関心である。
四 男の子と女の子との間に敵対関係があらわれることがある。
五 新しいことやおもしろいことを発見するのに興味を持ち,身辺にいろいろなものを集めたり,好んで冒険的なことをしたりする。
六 芸術的な自己表現が,低学年から上手に指導されていて,自由にできると,感情の圧迫を防ぎ,また高しょうなものを理解するのに有効である。
七 みずから計画したり,みずから説明したりすることができるようになり,道理にあわないことをしたり欺いたりすることができない。
八 外見とか行儀とかを構わなくなるから,低学年で養成して来た衛生の習慣やよいしつけが崩れないよう,気をつける必要がある。
第四学年の社会科としては,次のような事項を理解させ,これと関連した能力や態度をえさせることを目標としている。
二 郷土を拓いた人たちは,新しい環境にうまく適応した時に成功したこと。
三 困難な環境で生活する人々は,周囲の植物や動物の使用のし方を発見すること。
四 気候と自然資源とが,家の建て方や種頼を決定していること。
五 困難な自然環境に適応しようとする人々は,団体の福利のためなんらかの施設を設けること。
六 団体内の統制と秩序は,よい指導者が現われると,いっそうよくなること。
七 郷土を拓いた人々の,いろいろな経験は現在の人々の役にも立つこと。
八 郷土を拓いた人々は,あちこちと,よりよい生活の途を求めて移動して来たこと。
九 人々が所から所へと移って行く道すじは,気候や地勢,天然資源の如何によって左右されること。
十 困難な自然環境の中の生活では,物を賢明に生産し,消費し,上手に利用しようと計画を立てることが必要であること。
十一 人々は交通や運輸の障害となる自然の地形を克服しようとすること。
十二 困難な自然環境の生活は,厚生慰安や芸術的活動の形態に影響を与えること。
十三 困難な自然環境の生活では,健康保全の原理を守ることが特にたいせつであること。
十四 困難な自然環境の生活では,人々の宗教的感情の表現は素ぼくであるが強いこと。
十五 土地や社会が違うと宗教的情操の表現方法も異なること。
十六 郷土を拓いた人たちは,後世のものが働きよいように考えていろいろな仕事をしたこと。
第四学年の問題としては,次のようなものを参考に挙げているが,その意味,これを中心とした単元の意味や取り扱い方,各単元に示された学習活動の意味や取り扱い方,学習指導計画との関係などは,すべて第一学年の場合と同じであるから,その部分を熟読対照されたい。又巻末の作業単元の実例も参考にすることが必要である。
二 私たちの祖先は,どのようにしていろいろな危険を防いだか。
三 動植物,鉱物等の天然資源は,どのように利用することができるか。
四 困難な自然環境のもとで,いろいろなものを作ったり手に入れたりするには,私たちはどうすればよいか。
五 困難な環境のもとで,いろいろな物や施設を使うには,私たちはどうすればよいか。
六 交通運輸の道すじはどのようにしてきまるか。
七 ほかの土地の人と仲よくするにはどうすればよいか。
八 私たちの祖先に寺社はどのような役目を果たしたか。
九 社会生活を統制して行くにはどんな施設が必要か。
一 指導の着眼
わが国では,児童は必ずしもひとりひとりが自分の部屋を与えられてはいない。
家庭で気持よく勉強したり遊んだりしようと思えば,子供らは自分で家じゅうを片づけて美しくしなければならない。しかし児童は,こうした労力をいとわず,家や学校を清潔に美しくする計画をたてたり,いろいろなものを作ったりすることをよろこぶ。仕事場に使われる部屋を装飾したり,野営や野外炊事の準備をしたりすることは,児童の心に大きな興味を呼び起すであろう。こうした活動をとおして得た経験は,児童の心に祖先たちが住居を用意しようとして,ぶっつかった多種多様な問題の幾つかを生き生きと触れさせることになろう。
教師の注意すべき諸点をあげると
○建物──材料,建築
○光と熱──光熱施設のいろいろな型
○美化──家の内部を美しくする,色彩・絵画・庭園
教師はこの問題についての児童の活動の効果を,次のことから判断することができるであろう。
児童は,人々が生活の方法をよくして行こうとして,常にいろいろな努力を試みていることを理解しているか。
祖先が家を営もうとした時ぶつかった困難とそれを克服するための苦心とについて理解を持っているか。
祖先が必要にせまられて,不便な道具を用いて自然の資材を利用したいろいろな工夫について理解を持っているか。
色を芸術的に配合することができるか。
家をもっとよいものにするために両親の手助けをすると,親たちは報告しているか。
三 学習活動の例
(一) 地理的条件が家の場所に与える影響を知る。
2.渡り鳥の旅を話に作ったり歌に作ったりする。
3.遊牧民の話を聞いたり読んだりする。
4.遊牧民が定住するようになった理由を調べる。
5.水の近くに家を定める必要について話を聞いたり話しあったりする。
6.自然の環境が家を保護するのに役立っている有様を見たり話しあったりする。
7.いろいろな形をした家を見て,おのおのそのわけを考える。
8.パルプか砂で大きな箱庭を作り土地の建物の模型を作る。
2.祖先はいつどんな理由でこの土地に住みついたかを明らかにするため話を聞いたり読んだりする。
3.郷土の歴史を読む。
4.老人をよんで郷土の昔の有様を聞く。
5.人々が土地に住みつこうとする時の有様を示す劇を計画し準備し実際にやる。
6.児童の多くがこの土地に住み続けて来た理由を明らかにするため調査する。
7.人々がこの土地に旅して来たり通り過ぎて行ったりする理由を報告する。
8.昔,定住した頃の人名を調べるために,役場やお宮の記録を調べてみる。
9.親たちがその生地を去って移って来た理由を聞き報告する。
1O.家のまわりの地図を書き,自分の家の位置がもたらす便宜について説明する。
11.物語を読み,郷土の発展の有様を知る。
12.地勢の特徴をあらわした模型図を使って,家を建てたり部落を作ったりする場所について話しあう。
13.昔の城のあとに行き,その周囲を観察する。
14.城下町の話を読み,その絵を見る。
15.その土地の地名の由来を調べる。
16.祖先が移住して来た道すじを地図で示す。
2.郷土のお宮やお寺の絵や見取り図を書く。
3.日本の昔の家屋を見て,それに関する話を聞く。
4.貝塚や昔の住居のあとを見て,それに関する話を聞く。
5.日本の家屋をあらわした絵巻物を作る。
6.自分の住みたいと思う理想的な家の設計をしたり模型を作ったりする。
7.自分の家の建てられたのはいつか,またどんなところに便不便があるかを調べる。
8.郷土で歴史的に重要な建物の絵を集め,どういう点がたいせつか説明してもらう。
9.建具の歴史について話を聞く。
2.教室のいろいろな場所で明かるさを測定する工夫をする。
3.戸外に炊事用のかまどを作る。
4.なべ,かま,つぼ,やかん等の材料及び使用法について昔と今とを比較してみる。
2.家とその周囲を美しくするために自分のした事がらを表に作る。
3.自分たちで「清潔週間」を計画する。
4.花園や運動場の手入れをする。
一 指導の着眼
生命の保護保全を目的とするいろいろな社会的施設は,今日の児童にとって,もはや目新しいものではない。子供たちはかえって危険に出あうことをおもしろがることがある。祖先がどんな生活をしたかを聞いたり,自分でそのころの生活をやっているように空想してみたりすることは,時々児童を夢中にすることさえある。現代人の生活についても児童は,それに関係のある各自の経験を話しあったり,実地に調べてみたりすることに興味を持っている。教師はこの興味を生かすことによって,私たちの祖先が味わった危険や苦心を考えることから児童の知識をひろめて行くことができるであろう。
指導上教師の注意すべき点は
○自然の障害──山・海・川・森・砂ばく
○天災──地震・噴火・大水・落雷・暴風雨・津波
○疾病──家庭での治療・医師・種痘・血清・衛生室
この問題に関して適切に活動した結果,児童は,人々の相互依存や,状況が変化して行く時それに適応したり自然を統御するために工夫したりするということを,次第に広く理解するようになるであろう。もちろん,いろいろな危険が存在することを実際に知るばかりでなく,自分で身を護るようになるという積極的な活動もまた極めて重要である。開拓者や祖先が,たがいに依存し有無通じあったということや,どれだけかれらのまわりの材料を利用することができたかということが困難の除去に大きな役割を占めたということにも,話しあいや種々の注意から明らかにされると思われる。このほか,児童は薬草や応急手当や学校の衛生室に関しても理解を持つ必要がある。この問題についての児童の活動はこれらの点から判定しうるであろう。
三 学習活動の例
(一) 祖先が危険を防いで来た方法を知る。
2.人間がほかの動物と異なる点を挙げ,それについて話しあう。
3.いろいろな天災とそれによる被害とについて報告する。
4.自然に関する昔の迷信について簡単な話を聞く。
5.防風林を見る。
6.水害の話を聞いて話しあう。
7.堤防やダムや水門など水害を防ぐ施設を見て,その絵を書く。
8.水害を受けた時,人々がどんなに助けあうか話しあい,またその話を聞く。
9.その土地の治水に尽くした人の話を聞いたり読んだりする。
10.昔から現在に至るまでの衣服の絵を書き,その長短について話しあう。
11.火の使用の歴史について簡単な話を聞いたり読んだりする。
12.大昔の人の方法をまねて火をおこしてみる。
13.原始人の生活を劇化する。
14.火事の怖しさについて話しあったり書いたりする。
15.消防発達の話を読んだり聞いたりする。
16.昔の防火具の話を聞き,それを集める。
17.防火ポスターを作る。
18.防火演習を実施する。
2.危険を予告するためにラジオや電話を使う場合について聞く。
3.天気予報の放送をまねる。
4.危険を避けるため登山者の準備すべきことがらについて報告する。
2.医者も医薬もないのに健康を維持しようとすればどうしたらよいか話しあう。
3.薬草を集め,絵を書く。
4.遠足や登山の準備をする。
5.外地で開拓に従事した人々の健康法について聞く。
6.友だちに応急処置を施してみる。
7.昔の医者の話を聞く。
8.現在存在する医療上の迷信を列挙してみんなで研究する。
2.健康を維持するために土地の人たちが協力していることについて話しあう。
3.保険の利用について話しあう。
4.杉田玄白やその他の先覚者が西洋医術を学んだ話を聞く。
一 指導の着眼
この年齢の児童は新奇なものを集めることが大好きである。それは,たとえば木,果実,石,鉱石,鉄,郵便切手,ガラス製品等である。子供たちは魚やこん虫を捕るためにずいぶん遠くまで出かけて行く。しかし,また一方では,このころの児童が漸く自分の町や村の財産ということに関心を持ちはじめて来ることも注目しなければならない。教師はこん虫などを例に使って,その土地の人が,ひいてはすべての人々が自然の資源に依存して生活しているという事実を児童にわからせることができよう。たゞこゝで教師が心すべきことは,わが国の資源があまりに乏しいということで児童を落胆させたりすることのないように,もっと新しい資源を見つけようとする児童の積極的な気持を更に引き立てて行くということである。このことに関連して教師が,たとえば鈴木梅太郎博士の業績(味の素,ヴィタミンBなどの発明)について話をすることは,自然のなかに活用すべきものを発見しようとする児童の素ぼくな抱負に少なからず資するところがあるだろう。
指導上教師の考慮すべきことがらは
○植物 米・大麦・小麦・豆・野菜・果樹・竹・木材・海草・観賞用植物・パルプ。
○鉱物 鉄・銅・石炭・石油。
この問題についての活動の成果は,次の諸点によって観察することができよう。
児童はその土地の動植物の有用性を理解しているか。
わが国の主要産物の産額について関心を持っているか。(たとえば米・魚・木材・鉄・石油・石炭・生糸等)。
自分のまわりで,見つけることのできる自然資源を積極的に利用し,郷土を富ませようと努めているか。
自然資源の利用に貢献した人々を理解し尊敬しているか。
三 学習活動の例
(一) 郷土における天然資源を調べる。
2.魚つりに行ってりょう師やつり師を見る。
3.炭焼きの有様を観察し,校庭で実地にやってみる。
4.植林の有様を観察し,学校の植樹を伝う。
5.森の樹を伐採する有様を観察する。
6.森林をいっせいに伐採するのと間引くのとの長短を話しあう。
7.附近の森林や原野について観察し,その有用性を話しあう。
8.森林と川の水量との関係について,話を読んだり聞いたりする。
9.近くの海,川,湖沼等にいる魚貝類を集め,標本を作る。
10.貝塚で見つけた貝を分類する。
11.家庭にある毛皮を挙げ,その産他を調べる。
12.近くの鉱山を見学し鉱物の標本を集める。
13.近くの石切り場を見学する。
14.すゞめのような野鳥の持つ利害を話しあう。
15.益鳥や魚類その他の保護について話を聞く。
2.各季節にとれる魚貝類の名を挙げ,その産地を地図に示す。
3.わが国における魚貝の産額を示す絵地図を作る。
4.食用に供せられる海草類の名を挙げ,その産地を地図に書きこむ。
5.わが国における食用になる海草の産額を示す絵地図を作る。
6.世界の三大漁場について物語を読む。
7.りょう師の生活について話を読む。
8.捕鯨船の話を読んだり聞いたりする。
9.建築に用いられる材木を表にする。
10.材木屋に行っていろいろな材木を見,その産地を調べる。
11.松林の風景の特色をあらわした絵を書く。
12.日本地図を作って松,すぎ,ひのき等のおもな産地を示す。
13.家庭や学校で用いられている鉄製品の表を作る。
14.かじ屋や鋳物屋へ行って,その仕事を見る。
15.日本地図を作って鉄の産地を示す。
16.世界のおもな国々の鉄の産額をグラフに作る。
17.自分の土地ではどこでどういうふうに石炭を使っているかを調べ,地図でその産地を示す。
18.貯炭所へ行き,石炭はどういうふうにして運ばれるかを知る。
19.炭鉱のいろいろな労働者の絵を見たり,かれらの苦心について読んだりする。
20.石炭の産地と産額とを示す日本地図を作る。
21.世界のおもな国の石炭の産額をグラフに作る。
22.石油機関を観察する。
23.家から石油ランプを持って来て,老人にその話を聞く。
24.油田の絵や写真を見る。
25.石油が地層のどの辺にあるかを示す絵を見る。
26.わが国における石油の発見について物語を読む。
27.日本地図を作って石油の産地を示す。
28.世界のおもな国の石油の産額をグラフに作る。
29.資源の利用を妨げる偏見や特殊な習慣(特に食物の)について話しあう。
一 指導の着眼
いなかの子供は,わなを作って動物を捕えたり,魚つりに出かけたりする。この年齢の児童は,昔行われたような簡単な方法でいろいろな品物が作り出されて来る有様に大きな興味を持つものである。
この問題に関する活動を展開させて行くために,教師は次の諸項に心を用いる必要があろう。
その対象として──塩・みそ・しよう油等
○衣服の材料──資源・種類・使用法
○衣服を作る方法──染め物・織物・縫い物
○家具──家庭用品の作成・茶わん・さら・つぼ・ろうそく・石けん,草の編み細工,時計。
○農耕──苦心,方法,耕作する人。
○植林──苦心,方法,樹を植える人。
この問題に関する活動の効果は,仕事の習慣がどんなに改善されたかということ,また自分たちの祖先がその土地で適当な食物や衣服・家具・家庭用品を手に入れるためにした工夫の価値を十分理解するようになったかということから知ることができよう。このような成果によって,児童は現在の日本のごとき自然環境の悪条件にも,十分対処して行く力を持つことが期待される。
三 学習活動の例
(一) 今日の困難な環境で工夫する。
2.いろいろなもののくずを持ち寄って,おもちゃや道具を作る工夫をしたり実際に作ったりする。
3.ローソクのくずを集めて再生の工夫をする。
4.貝がらを拾い集めて,おもちゃや小道具やいろいろな飾りを作る。
5.草や竹切れで簡単な編み細工をする。
6.みそやしよう油の製品を見たり聞いたりする。
7.潮干狩りをして,浅い海にいる動植物の生態を観察する。
2.先史時代の人になったつもりで石や木で道具を作ってみる。
3.粘土で茶わんや食器を作る。
4.土器の話を聞き,土器を見る。
5.水車小屋を見学する。
6.水車を作って小川にしかける。
7.浜で,なわやむしろに塩水をかけて,濃い塩水を作ったり,小さな塩田を作ってみたりする。
8.果汁やなべずみや川原の色石などを使って木や石や木の葉に絵や模様を書く。
9.簡単な弓矢を作って友だちと的にあてる。
10.染料を作って簡単な染め物をする。
11.老人をよんで織機の使い方を習う。
12.昔の親たちが子供のために作ったおもちゃを作ってみる。
13.ロビンソン クルーソーの話を聞いたり読んだりする。
14.ロビンソン クルーソーの話を紙芝居にする。
15.時計を使わないで時間を知る方法を工夫してやってみる(たとえば日時計・水時計・砂時計・ローソク時計等)
2.明治時代の北海道開拓の歴史を聞く。
3.知っている人で,北海道その他の開拓地に行っている人を挙げ,その人たちからの便りを学級で読む。
4.郷土の耕されていない荒地を観察し,田畑にならないわけを聞く。
5.いろいろな土を集めてその土質を調べ,土質と作物との関係を知る。
6.その土地の切り通し,堀割り,貯水池等を観察し,その由来を聞く。
7.古代人や未開人の耕作法について,話を聞いたり読んだりする。
8.焼畑農業を観察してそのわけを聞く。
9.自分の家で開墾をした時のことを作文に書く。
10.その土地の樹の年齢について,古くから住んでいる人々に聞く。
11.木の切り株を見て,その年齢を知る方法を発見する。
12.郷土の植林を見て,いつ植えられたか,役に立つまでにはあと何年かゝるかを知り,話しあいをする。
2.探険隊や漂流者の話を読んだり聞いたりする。
3.不便な土地に郵便物を運ぶ方法を郵便業務に関係している人から聞く。
一 指導の着眼
たいていの子供は,食物を乾物にしたり塩づけにしたりくん製にしたりするのを手伝った経験を持つ。長持ちさせようとする工夫は,衣服の場合にもいろいろ考えられるであろう。児童は現在食物・衣服・燃料・家具等の主要な必需品が,国家の統制をうけていることを熟知している。どの児童も品物の売買されるのを見ているであろうし,みずから売買することさえ決して珍しいとはいえない。いなかの子供は作物や家畜を育てて市場に出すし,町の子供は商店や市場へ出かけてみたり,荷を満載した貨車やトラックがとおりすぎるのを見たりする。このような経験を,学習発展のよい機会として生かして行くことこそ教師の任務である。
教師の考慮すべき点を挙げてみると
○配給──いろいろな品物・方法・理由
○商業──交換の仲介,通商の中心
○通信──各種の方法とその苦心
学習活動の効果を調べるには次の諸項を尋ねればよい。
家庭で作られる品物で食事に役立つものの利用価値を十分認識しているか。家庭で貯えられたり食べられたりする食品の種類や量に興味を持つようになったか。昔と今とでは取り引きされる品物がどう違って来ているかを知っているか,商業のおもな中心地とそこが中心になったわけとを理解しているか。
三 学習活動の例
(一) 困難な環境のもとで物を取り扱う方法を見つける。
2.鉛筆・紙その他学用品の不足を補うために工夫をし実行する。
3.家庭で使う燃料の種類と量とを調べる。
4.掃除道具を作る。
5.家や学校の垣根を作る。
6.昔からききんの時に使われた食物を調べ,今でもそれが用いられるかどうか明らかにする。
7.まだ一般には用いられていない自然の資源たとえば野草・海草・こん虫・魚・枯れ葉・枯れ枝などを集める。
8.自分たちの育てた野菜や採集した食物で昼飯を作り,いっしょに食べる。
9.廃物利用のよい例を集めて展覧会をする。
10.教科書を保護する方法を工夫し実行する。
11.現在家庭で計画的に配給されているものを調べて表にする。
12.着物を長持ちさせて母を助ける。
13.くつ下やその他の簡単な衣類を洗う。
14.キャンプ旅行の計画をし,準備をとゝのえ実行する。
15.ガラスのない窓をなおす方法を話しあい実行する。
2.家庭で行われている食料貯蔵法を報告する(乾燥・漬物・冷凍・土むろその他)
3.アラスカ,アフリカ,スカンヂナビヤ等他国で使われる食料貯蔵法について読み,報告する。
4.貯蔵された食料が児童や家族たちの役に立った時のことを話す。
5.食用になる野草を採集して乾したりする。
6.魚肉,野菜,果実を保存するいろいろな方法,すなわち冷凍,くん製,乾燥,かん詰,塩づけ等を示す図を作る。
7.乳製品の種類を挙げ,その保存に必要な事がらを話しあう。
8.いろいろな地方や季節で食料を冷凍する方法の違いを知る。
9.夏の昼食時に飲む清涼飲料水を準備する。
10.冬,弁当を温かくしておく方法を工夫し,そのための施設を作る。
11.いろいろな漬け物を調べ,試食する。
12.ききんに備えて貯えられている特別の食料を集めて展覧する。この際外国ではどんなものがあるかも聞く。
13.郷土のごうくら(郷倉)を観察しその由来を聞く。
14.倉や長持ちや唐びつの見取図を書く。
15.みそやしょう油が食物を保存することのできるわけについて話しあう。
2.未開人や古代人の物々交換の話を,聞いたり読んだりして,物々交換や交易と探検や発見との関係について考える。
3.貨幣や紙幣の発達についての話を,読んだり聞いたりして,その実物あるいは絵を集める。
4.郷土における見返り物資となる品物の生産法を調べる。
5.自分の都道府県の移出品と移入品を調べ,製品と原料とに分けて図表に作る。
6.その土地で,運輸が発達した結果食料の種類がどのようにふえたか調べる。
7.商業を中心として発達した部落や町を調べて地図に書きこむ。
8.昔の職業を図表に作る。
9.昔の(例えば武蔵国)の話を読んだり聞いたりする。
一 指導の着眼
今日の交通のために用いられている方法は,子供たちにとっても極めて親しみ深いものになっている。児童はそれらを極くあたりまえのものとして受けとっている。しかし年上の人たちの議論を聞いたり,絵を見たり,本を読んだりして,昔使われたやり方を知ることができたならば,児童は必ず深い興味を覚えるに違いない。道路や鉄道や運河はどういうわけで今日の道すじにきまったのであろうか。昔の交通と今の交通とでは,危険という点でどんな違いがあるだろうか。日常の経験を通じて,これらの問題を考えて行くことは,学習を発展させて行くための重要な手助けとなるであろう。
教師は次の諸点に注意すべきである。
○運送する理由──通商,移住,分配。
○運輸通信の方法──陸路,水路。
○その困難について──自然の障害,道路やトンネルの建設,道にあらわれる敵,地図の使用,方向を教える星。
これらの活動の結果,児童は地図で,ある場所を見つけたり,道すじをたどったりすることが今までよりたくみにできるようになる。また運輸の方法をもっと有効なものに変えて行くことが,いかに重要であるかを理解するようにもなる。そして更に,われわれの祖先が生活の仕方を改良することにどんなに寄与して来たかということをも認織できるようになるのであろう。
三 学習活動の例
(一) 地理的条件が交通運輸の道すじに及ぼす影響を知る。
2.町(村)の道路を示す地図を作り,自動車が通行できるものを特に区別する。
3.附近の水路を地図に示し,どんな舟が通れるか調べる。
4.パルプ地図か砂地図で,郷土の地勢と道路や鉄道をあらわし,地理的条件が交通運輸に及ぼす影響を観察する。(地図は大きいほどよい。)
5.昔の親しらず,子しらずの話を聞く。
6.昔の街道について話を聞き地図に書きこむ。
7.宿駅や一里塚の話を聞き地図に示す。近くにあればその跡に行って見る。
8.郷土から江戸や大阪へ行く旅の話を聞いたり,読んだり,それに関する絵を集めたりする。
9.「昔の旅」を劇にする。
10.関所の話を読んだり聞いたりして劇化する。
11.山の道のない場所と道のある場所とを比べて,道はどんなところに発達するかということを話しあう。
12.郷土に塩が運びこまれて来た道すじを発見する。
13.汽車や電車がなかったころの陸運や水運について話しあう。
14.大和やその他のある地方が早く開けた原因について話を聞く。
15.鉄道の開通によって,その都市町村や昔の宿駅がどのように変わったかという話を聞き,それについて話しあう。
16.道路や水路の発達に貢献した人(行基,川村瑞軒,伊能忠敬など)の話を読んだり聞いたりする。
2.トンネルのある所を旅行した話をする。
3.(できれば技師を呼んで)トンネルを作る話を聞いたり,あるいは本を読んだりする。
4.日本や世界の有名なトンネルを調べその長さを表にする。
5.海底(あるいは川底の)トンネルの話を聞き絵を集める。
6.トンネルの附近の地勢を見て,トンネルがどのように交通路を短縮したかを発見する。(地図または実地の調査による。)
7.アジアやアメリカへの新しい交通路を発見する物語を読む。
8.大井川やその他の川について橋のできたことがもたらした交通上の変化に関する話を聞く。
9.大井川やその他の川の渡し場の話を読んで劇化する。
10.いろいろな橋の絵や写真を集めて展覧する。
11.世界の有名な橋の絵を集め,それについて話を聞く。
12.運河を見学する。
13.オランダやヴェニスや中国の運河の話を聞く。
14.雪崩の話を聞いたり読んだりしてそれについて話しあう。
15.雪崩を防ぐ防雪林や雪よけトンネルを見学したり,その話を聞いたりする。
16.砂で雪崩の実験をしその対策を話しあう。
17.昔の街道と現在の鉄道とを地図に書きこんで比べる。
18.人力車の発明と改良について話を聞く。
19.道しるべになる星や月や太陽の話を読んだり実地に調べたりする。
20.航海や探険でコンパスが役立つ話を聞いたり読んだりする。
一 指導の着眼
この年齢の児童は,信頼に値する団体の—員としての責任を自覚することができるようになるとともに,人々がどんな関係を持っているか,ほかの人々や団体に貢献するにはどうすればよいかということもわかるようになる。友だちのなかにはその土地を去って行くものもあるし,新たにやって来たものもある。児童はいろいろな便宜を提供することによって新しい友だちと親しくなるとともに,手紙をやりとりすることによって遠くはなれた人たちとも交わりをあたゝめることができるだろう。児童は身ぢかにいない人々でもおたがいにいろいろと助けあえるということを理解する。教師は,児童のこのような傾向を適当に発展させて,人々の相互依存ということ,特にからだは離れていても精神的に結びついて生活することができるということを児童にわからせることができる。
注意すべき事がらは
○交際の方法 手紙・贈り物・旅行。
この問題に関する活動の効果を調べるために次の事がらを見るのがよい。
ほかの土地の子供とつきあうのに礼儀を失いはしないか。
勉強したり遊んだりする場合,ほかの土地から来た子供に不快をいだかせないように留意するか。
引揚者に対して積極的に援助するか。
その土地を去った人たちと,なお交わりを続けたいと望んでいるか。
ほかの土地にいる友だちの有様に興味を持って考えているか。
三 学習活動の例
(一) 日常接触するほかの土地の人々を挙げてみる。
2.部落の間に行われている競争とそのわけについて話しあう。
3.ほかの町村から通学している者はその理由を話す。
4.級友や現在町(村)に住んでいる人の中でほかの土地の出身者を挙げる。
5.それらの人たちが,なぜ現在の場所に住むようになったか話しあう。
6.その土地に通勤その他で毎日やって来る人々を表に作る。
2.今まで交際しているほかの土地の人々の話をする。
3.別の土地に移られた先生方の様子を聞く。
4.用水池や用水ほりの水をいくつかの部落や村の人々が協力してたいせつにしている有様を作文に書く。
2.都市の人といなかの人のよい点をおのおの挙げてみる。
3.都市に住む人の生活といなかで農,漁,鉱業などの仕事にたずさわる人の生活とを比較する。
4.ほかの土地に住んでいる人たちからの手紙や葉書を掲示する。
5.ほかの土地に住んでいる人たちからの贈り物について話す。
6.ほかの土地に住んでいる人たちに通信したり贈り物をしたりする。
7.新しくその土地に来た人の不便とその人たちが居心地よくなるための手段とについて話しあう。
8.戦災地に行き親類や友人知己の消息をたずねる。
9.外国の児童に手紙を書く。
一 指導の着眼
児童は日々楽しそうに,近代的なよく設備の行きとどいた学校で勉強している。子供たちの胸には,遠い昔の児童がどんな学校に通っていたか。寺子屋とはどんなところだったろうかという疑念がきざすこともある。お宮やお寺の境内は子供たちにとって欠くことのできない遊ひ場である。お宮の祭は大きな楽しみであるし,お寺の年中行事も忘れることのできない重大な関心事である。いなかではお寺の鐘だけが時間を知るよすがであるということもある。由来わが国では寺社は一つの文化施設であったし,限られた土地に住み,助けあって働いて来た祖先たちを常に慰めはげましてくれたものであった。教師はこれらの興味を手がかりにしてもっと大きく問題を発展させて行くことができる。以下の諸点は活動の計画を進めて行く一助となるだろう。
○社会奉仕──神社・仏閣・僧。
○学校──種類,施設と学習材料,書物,学習用具,生徒。
子供の教育の今昔を比較対照する能力ということがこの問題に関する活動の成果の一端を示すと思われろ。もちろん信教ということと関連して宗教的な慣習というものに一応の理解と知識とを与えることは重要である。
三 学習活動の例
(一) 寺社が有用だということを知る。
2.自分の町(村)のお寺やお宮やほこらなどの由来と伝説を聞く。
3.お祭の時子供だけの余興を計画し実行する。
4.お祭に集まって来る商人を観察しその人たちについて話しあう。
5.お寺やお宮のそばにはどんな商店があるかを観察し絵や略図を書く。
6.年の市,とりの市,豊年祭を見てその話を聞く。
7.門前の話を読んだり聞いたりする。
8.お祭の時の儀式にはどんな人が集って何をするかを話しあいその有様を絵に書く。
9.(できたら老人を呼んで)寺子屋の話を聞く。
10.寺子屋の歴史を聞いたり絵を見たりする。
11.自分の学校の歴史を調べる(いろいろな種類の学校の話を聞く。)
12.老人を呼んで,昔お寺の鐘の音がどんなに人々の役に立っていたかを聞く。
13.除夜の鐘を聞いてそれに関する伝説を調べる。
14.お寺の和尚さんを呼んで,昔お寺と土地の人々との関係がどんなふうであったか話してもらう。
15.仏教渡来の話を聞いてそれを劇にする。
16.すぐれた坊さんの話や世の中のためになった坊さんの話を聞く。
2.かまどの神,火の神その他の神について伝説を聞く。
3.日本各地の伝説を聞いたり読んだり劇にしたりする。
4.いろいろな伝説を歌に作ったり紙芝居にしたりする。
一 指導の着眼
児童は選挙して委員を作り,委員の決定したことには進んで従うようになって来る。雨の日に室内でどんな遊びをするか,教室を美しくするにはどうすればよいかといったような問題は,子供たちにとって興味深い話しあいの種となるだろう。食糧生産,商品配給,生活保護,健康増進に関して,児童は社会生活における相互依存ということを会得するようになり,自分の町や村の生活を他町村のそれと比べることもできるようになる。教師はこれらの興味を手がかりとして,児童が町村役場やその吏員の仕事を理解するように導いて行くことができる。
教師の注意すべき諸点は
○官公吏──長・吏員・その職責。
○選挙法──選挙・採用。
適切な活動のもたらす効果は次の諸項に見られよう。
児童の判定自治が発展してきたか。
児童は土地の人たちのもっているいろいろな役割を理解しているか。
指導する者としても,またされる者としても,りっぱにふるまうことができるか。
多数決による決定には快く従うか。
委員会の話しあいに積極的に加わって行くか。
三 学習活動の例
(一) 家庭におけるいろいろな役割の分担について知る。
2.子供たちやそのほかの家族の家庭における役目について話しあう。
3.家庭を楽しく気持よいものにするのに必要な,そとからの援助について話しあう。(たとえば物資調達・危険防止・衛生・教育・厚生等)
2.委員や当番などの仕事について話しあい,家庭ではだれがその役目をしているか考えてみる。
3.学級自治会の仕事について話しあう。
4.受持の先生の仕事について報告しどうすれば手伝えるかを話しあう。
5.学級新聞を作る。
2.その地図に役場・警察・組合事務所・郵便局・消防署等の符合を記入する。
3.役場に行っていろいろな係りのあることを知りその仕事を見学する。
4.市長村長の名を挙げる。
5.町(村)の役員の種類を表にする。
6.昔の村や市町村制の沿革について読んだり聞いたりする。
7.役場に行って市町村に尽くした人の話を聞き写真を見る。
8.学校に記念室を設けてその土地に功労のあった人を記念する。
2.日本の府県別地図を作る。
3.府県や市町村の役人および議員を訪問してその職責をたずねて,学級に報告する。
4.消防署,警察署,配給所その他の施設を訪問してその仕事に関する知識を集める。
5.交通巡査を招いて交通の安全に役立つような子供たちの仕事について聞く。
6.消防署の人を招いてどうしたら火事が防げるか,家庭や学校などで火を使う時にはどんな注意がいるか話しあう。
7.電話局があれば見学する。