第六章 第 四 学 年

 

 この学年の児童の心理的特性,その生活や興味の中心等については,第三学年の所で一括して述べてあるから,これを参照してほしい。

 第四学年の児童について特に注意すべきことは,凡そ次のようであろう。

 この学年の児童は,卒直に且つまじめな態度で取り扱う教師を信頼する。身体的に欠点のある子,その他個人的に問題のある児童には特に注意する必要がある。

 第四学年の社会科としては,次のような事項を理解させ,これと関連した能力や態度をえさせることを目標としている。

 これらの理解は,いろいろな学習活動による社会的経験のおのずからな帰結として,児童がみずから会得すべきもので,これを直接教えこんだり,あるいは無理にこじつけて教えてはいけないことは,第一学年の場合と同じである。

 第四学年の問題としては,次のようなものを参考に挙げているが,その意味,これを中心とした単元の意味や取り扱い方,各単元に示された学習活動の意味や取り扱い方,学習指導計画との関係などは,すべて第一学年の場合と同じであるから,その部分を熟読対照されたい。又巻末の作業単元の実例も参考にすることが必要である。

 問題一 私たちの祖先は,どのようにして家の場所を定め,家を建て,家具を備えつけたか。

一 指導の着眼

 わが国では,児童は必ずしもひとりひとりが自分の部屋を与えられてはいない。

家庭で気持よく勉強したり遊んだりしようと思えば,子供らは自分で家じゅうを片づけて美しくしなければならない。しかし児童は,こうした労力をいとわず,家や学校を清潔に美しくする計画をたてたり,いろいろなものを作ったりすることをよろこぶ。仕事場に使われる部屋を装飾したり,野営や野外炊事の準備をしたりすることは,児童の心に大きな興味を呼び起すであろう。こうした活動をとおして得た経験は,児童の心に祖先たちが住居を用意しようとして,ぶっつかった多種多様な問題の幾つかを生き生きと触れさせることになろう。

 教師の注意すべき諸点をあげると

二 指導結果の判定

 教師はこの問題についての児童の活動の効果を,次のことから判断することができるであろう。

 児童は,人々が生活の方法をよくして行こうとして,常にいろいろな努力を試みていることを理解しているか。

 祖先が家を営もうとした時ぶつかった困難とそれを克服するための苦心とについて理解を持っているか。

 祖先が必要にせまられて,不便な道具を用いて自然の資材を利用したいろいろな工夫について理解を持っているか。

 色を芸術的に配合することができるか。

 家をもっとよいものにするために両親の手助けをすると,親たちは報告しているか。

三 学習活動の例

 (一) 地理的条件が家の場所に与える影響を知る。

 (二) 私たちの祖先がどういうふうにして郷土に住みついたかを明らかにする。  (三) 昔の家屋の形を調べる。  (四) 昔,光と熱とがどのようにして得られたかを知る。  (五) 家とその周囲を美しくする。  問題二 私たちの祖先は,どのようにしていろいろな危険を防いだか。

一 指導の着眼

 生命の保護保全を目的とするいろいろな社会的施設は,今日の児童にとって,もはや目新しいものではない。子供たちはかえって危に出あうことをおもしろがることがある。祖先がどんな生活をしたかを聞いたり,自分でそのころの生活をやっているように空想してみたりすることは,時々児童を夢中にすることさえある。現代人の生活についても児童は,それに関係のある各自の経験を話しあったり,実地に調べてみたりすることに興味を持っている。教師はこの興味を生かすことによって,私たちの祖先が味わった危険や苦心を考えることから児童の知識をひろめて行くことができるであろう。

 指導上教師の注意すべき点は

二 指導結果の判定

 この問題に関して適切に活動した結果,児童は,人々の相互依存や,状況が変化して行く時それに適応したり自然を統御するために工夫したりするということを,次第に広く理解するようになるであろう。もちろん,いろいろな危険が存在することを実際に知るばかりでなく,自分で身を護るようになるという積極的な活動もまた極めて重要である。開拓者や祖先が,たがいに依存し有無通じあったということや,どれだけかれらのまわりの材料を利用することができたかということが困難の除去に大きな役割を占めたということにも,話しあいや種々の注意から明らかにされると思われる。このほか,児童は薬草や応急手当や学校の衛生室に関しても理解を持つ必要がある。この問題についての児童の活動はこれらの点から判定しうるであろう。

三 学習活動の例

 (一) 祖先が危険を防いで来た方法を知る。

 (二) 危険を注意する手段を知る。  (三) 健康を維持する方法を発見する。  (四) 現在ある施設の働きを知る。  問題三 動植物,鉱物等の天然資源はどのように利用することができるか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童は新奇なものを集めることが大好きである。それは,たとえば木,果実,石,鉱石,鉄,郵便切手,ガラス製品等である。子供たちは魚やこん虫を捕るためにずいん遠くまで出かけて行く。しかし,また一方では,このころの児童が漸く自分町や村の財産ということに関心を持ちはじめて来ることも注目しなければならない。教師はこん虫などを例に使って,その土地の人が,ひいてはすべての人々が自然の資源に依存して生活しているという事実を児童にわからせることができよう。たゞこゝで教師が心すべきことは,わが国の資源があまりに乏しいということで児童を落胆させたりすることのないように,もっと新しい資源を見つけようとする児童の積極的な気持を更に引き立てて行くということである。このことに関連して教師が,たとえば鈴木梅太郎博士の業績(味の素,ヴィタミンBなどの発明)について話をすることは,自然のなかに活用すべきものを発見しようとする児童の素ぼくな抱負に少なからず資するところがあるだろう。

 指導上教師の考慮すべきことがらは

二 指導結果の判定

 この問題についての活動の成果は,次の諸点によって観察することができよう。

 児童はその土地の動植物の有用性を理解しているか。

 わが国の主要産物の産額について関心を持っているか。(たとえば米・魚・木材・鉄・石油・石炭・生糸等)。

 自分のまわりで,見つけることのできる自然資源を積極的に利用し,郷土を富ませようと努めているか。

 自然資源の利用に貢献した人々を理解し尊敬しているか。

三 学習活動の例

 (一) 郷土における天然資源を調べる。

 (二) わが国における天然資源を調べる。  問題四 困難な自然環境のもとで,いろいろなものを作ったり手に入れたりするには,私たちはどうすればよいか。

一 指導の着眼

 いなかの子供は,わなを作って動物を捕えたり,魚つりに出かけたりする。この年齢の児童は,昔行われたような簡単な方法でいろいろな品物が作り出されて来る有様に大きな興味を持つものである。

 この問題に関する活動を展開させて行くために,教師は次の諸項に心を用いる必要があろう。

二 指導結果の判定

 この問題に関する活動の効果は,仕事の習慣がどんなに改善されたかということ,また自分たちの祖先がその土地で適当な食物や衣服・家具・家庭用品を手に入れるためにした工夫の価値を十分理解するようになったかということから知ることができよう。このような成果によって,児童は現在の日本のごとき自然環境の悪条件にも,十分対処して行く力を持つことが期待される。

三 学習活動の例

 (一) 今日の困難な環境で工夫する。

 (二) 近代的な利便の発達とその歴史について考える。  (三) 開墾についての人々の努力を知る。  (四) 不便な土地の有様を知る。  問題五 困難な環境のもとでいろいろな物や施設を使うには,私たちはどうすればよいか。

一 指導の着眼

 たいていの子供は,食物を乾物にしたり塩づけにしたりくん製にしたりするのを手伝った経験を持つ長持ちさせようとする工夫は,衣服の場合にもいろいろ考えられるであろう。児童は現在食物・衣服・燃料・家具等の主要な必需品が,国家の統制をうけていることを熟知している。どの児童も品物の売買されるのを見ているであろうし,みずから売買することさえ決して珍しいとはいえない。いなかの子供は作物や家畜を育てて市場に出すし,町の子供は商店や市場へ出かけてみたり,荷を満載した貨車やトラックがとおりすぎるのを見たりする。このような経験を,学習発展のよい機会として生かして行くことこそ教師の任務である。

 教師の考慮すべき点を挙げてみると

二 指導結果の判定

 学習活動の効果を調べるには次の諸項を尋ねればよい。

 家庭で作られる品物で食事に役立つものの利用価値を十分認識しているか。家庭で貯えられたり食べられたりする食品の種類や量に興味を持つようになったか。昔と今とでは取り引きされる品物がどう違って来ているかを知っているか,商業のおもな中心地とそこが中心になったわけとを理解しているか。

三 学習活動の例

 (一) 困難な環境のもとで物を取り扱う方法を見つける。

 (二) 資材保存の方法を見つける。  (三) 商業の発達について知る。  問題六 交通運輸の道すじはどのようにしてきまるか。

一 指導の着眼

 今日の交通のために用いられている方法は,子供たちにとっても極めて親しみ深いものになっている。児童はそれらを極くあたりまえのものとして受けとっている。しかし年上の人たちの議論を聞いたり,絵を見たり,本を読んだりして,昔使われたやり方を知ることができたならば,児童は必ず深い興味を覚えるに違いない。道路や鉄道や運河はどういうわけで今日の道すじにきまったのであろうか。昔の交通と今の交通とでは,危険という点でどんな違いがあるだろうか。日常の経験を通じて,これらの問題を考えて行くことは,学習を発展させて行くための重要な手助けとなるであろう。

 教師は次の諸点に注意すべきである。

二 指導結果の判定

 これらの活動の結果,児童は地図で,ある場所を見つけたり,道すじをたどったりすることが今までよりたくみにできるようになる。また運輸の方法をもっと有効なものに変えて行くことが,いかに重要であるかを理解するようにもなる。そして更に,われわれの祖先が生活の仕方を改良することにどんなに寄与して来たかということをも認織できるようになるのであろう。

三 学習活動の例

 (一) 地理的条件が交通運輸の道すじに及ぼす影響を知る。

 (二) 交通の自然条件克服について調べる。  問題七 ほかの土地の人と仲よくするには私たちはどうすればよいか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童は,信頼に値する団体の—員としての責任を自覚することができるようになるとともに,人々がどんな関係を持っているか,ほかの人々や団体に貢献するにはどうすればよいかということもわかるようになる。友だちのなかにはその土地を去って行くものもあるし,新たにやって来たものもある。児童はいろいろな便宜を提供することによって新しい友だちと親しくなるとともに,手紙をやりとりすることによって遠くはなれた人たちとも交わりをあたゝめることができるだろう。児童は身ぢかにいない人々でもおたがいにいろいろと助けあえるということを理解する。教師は,児童のこのような傾向を適当に発展させて,人々の相互依存ということ,特にからだは離れていても精神的に結びついて生活することができるということを児童にわからせることができる。

 注意すべき事がらは

二 指導結果の判定

 この問題に関する活動の効果を調べるために次の事がらを見るのがよい。

 ほかの土地の子供とつきあうのに礼儀を失いはしないか。

 勉強したり遊んだりする場合,ほかの土地から来た子供に不快をいだかせないように留意するか。

 引揚者に対して積極的に援助するか。

 その土地を去った人たちと,なお交わりを続けたいと望んでいるか。

 ほかの土地にいる友だちの有様に興味を持って考えているか。

三 学習活動の例

 (一) 日常接触するほかの土地の人々を挙げてみる。

 (二) 親しい関係にある他の土地の人々を挙げてみる。  (三) ほかの土地の人との間に親しい関係を作る。  問題八 私たちの祖先に寺社はどのような役目を果たしたか。

一 指導の着眼

 児童は日々楽しそうに,近代的なよく設備の行きとどいた学校で勉強している。子供たちの胸には,遠い昔の児童がどんな学校に通っていたか。寺子屋とはどんなところだったろうかとい疑念がきざすこともある。お宮やお寺の境内は子供たちにとって欠くことのできない遊ひ場である。お宮の祭は大きな楽しみであるし,お寺の年中行事も忘れることのできない重大な関心事である。いなかではお寺の鐘だけが時間を知るよすがであるということもある。由来わが国では寺社は一つの文化施設であったし,限られた土地に住み,助けあって働いて来た祖先たちを常に慰めはげましてくれたものであった。教師はこれらの興味を手がかりにしてもっと大きく問題を発展させて行くことができる。以下の諸点は活動の計画を進めて行く一助となるだろう。

二 指導結果の判定

 子供の教育の今昔を比較対照する能力ということがこの問題に関する活動の成果の一端を示すと思われろ。もちろん信教ということと関連して宗教的な慣習というものに一応の理解と知識とを与えることは重要である。

三 学習活動の例

 (一) 寺社が有用だということを知る。

 (二) 古代の信仰と原始信仰について知る。  問題九 社会生活を統制して行くには,どんな施設が必要か。

一 指導の着眼

 児童は選挙して委員を作り,委員の決定したことには進んで従うようになって来る。雨の日に室内でどんな遊びをするか,教室を美しくするにはどうすればよいかといったような問題は,子供たちにとって興味深い話しあいの種となるだろう。食糧生産,商品配給,生活保護,健康増進に関して,児童は社会生活における相互依存ということを会得するようになり,自分の町や村の生活を他町村のそれと比べることもできるようになる。教師はこれらの興味を手がかりとして,児童が町村役場やその吏員の仕事を理解するように導いて行くことができる。

 教師の注意すべき諸点は

二 指導結果の判定

 適切な活動のもたらす効果は次の諸項に見られよう。

 児童の判定自治が発展してきたか。

 児童は土地の人たちのもっているいろいろな役割を理解しているか。

 指導する者としても,またされる者としても,りっぱにふるまうことができるか。

 多数決による決定には快く従うか。

 委員会の話しあいに積極的に加わって行くか。

三 学習活動の例

 (一) 家庭におけるいろいろな役割の分担について知る。

 (二) 学校におけるいろいろな役割の分担と統制とについて知る。  (三) 町村における統制について知る。  (四) 社会生活を維持するために必要な諸施設について知る。