第四章 第 二 学 年

 

 この学年の児童の心理的特性,その生活や興味の中心等については,第一学年のところで一括して述べてあるから,これを参照してほしい。第二学年の児童について特に注意すべきことは,だいたい次のようであろう。

 身体的に欠陥のある児童は,みんなといっしょに行動するのに不自由なことをよけい強く感ずるようになっているし,家庭のよくない児童は,学校外で,はゞのきかないことを感じはじめるから,教師は各児童に固有な問題に十分注意しなければならない。

 第二学年の社会科としては,次のような事項を理解させ,これと関連した能力や態度を得させることを目標としている。

 これらの理解は,いろいろな学習活動による社会的経験のおのずからなる帰結として,児童がみずから会得すべきもので,これを直接生のまゝ教えこんだり,あるいは無理にこじつけて教えてはいけないことは第一学年の場合と同じである。

 第二学年の問題としてはつい次のようなものを参考にあげているが,これを中心とした単元の意味や取り扱い方,各単元に示された学習活動の意味や取り扱い方,学習指導計画の関係などは,すべて第一学年の場合と同じであるから,その部分を熟続対照されたい。また巻末の作業単元の実例を考にすることが必要である。

 問題一 世の中になれるには私たちはどうすればよいか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童はよくお使いに行くようになる。たとえばちょっとした雑貨や切手などは一人で買いに行ける。そのほか友だちを訪ねるということもよくする。

 このようにして児童は世間一般というものに注意を払いはじめるのである。そして今まで自分の行ってみたことのない場所などに一人で行けた場合などは,ずいぶん得意に感ずるのである。

 教師はこうし児童の状態を活用して,社会に対する信頼感を助長し,よき理解を与えることができよう。それについて考えるべき点は次のとおりである。

 特に教室,校庭,室内,運動場,廊下等校内の一部に土,砂,石または木で郷土の生活舞台の情景を造り,これを次に提示する生徒の諸活動の土台として用いることを考えてもらいたい。かゝる方法を用いることによって生徒は他人と協同する方法を知り,社会生活の各成員,各機構,各施設の相互依存を最も具体的に理解することと思われる。更にこの模擬社会はこの問題だけではなく他の学年にも継続拡大して用いることができるのである。

二 指導結果の判定

 この学習の成果は児童が外来者に対した時自信をもって応対するようになったかどうか,お使いに快く行くかどうか,社会のために働いている人々に礼儀をもって対するかどうかをうかがうことによって知られるであろう。わが国では概して商人をいやしめる傾向があり,その人々が社会の発展のためにになう責任とその価値とを理解していないのであるが,教師はこの点に留意して,これらの人々が社会にどのような貢献をしているかを理解させるように指導することが望ましい。かくすることによって,人間相互の依存関係を早くから理解させることができると考えられる。

三 学習活動の例

 (一) 児童の使用する場所を見つける。

 (二) 世の中のためになっている人々とその仕事について知る。  (三) 他の人の手助けをする。  問題二 私たちはどうしたら健康で安全でいられるか。

一 指導の着眼

 社会生活では,たえず健康に気をつける必要がある。児童は保健婦や医師の来訪とか,種々の病気で欠席している級友のこととか,食事の用意とかいった日々の体験をもっているから,このようなことについて話しあいをさせたり,各人の体験知識を交換させたりすることによって,この問題についての更に広い考えをもつように指導することができる。

 それについて教師の考えなければならない事がらは次のとおりである。

二 指導結果の判定

 学習活動の効果は,健康に関する各人のよい習慣,医師・看護婦・歯科医に対する信頼,あるいは警察官に対する信頼の態度などの観察によっても見られよう。また郷土社会における各種の機関や人々が,生命の保護のためにどんなに働いているかを理解して来たことが,どの様に学習活動にあらわれて来るかということからも観察できよう。更に教師は,児童が道路や大通りを横断する際に注意を払うか,歯の悪い時いやがらずに歯医者に行くか,食物を選んだり扱ったりする時に注意深いか,ちょっとけがした時速かに応急の手当てを受けるか,迷い子になった時警察官の助けを求めるかを観察して効果を知ることができる。

三 学習活動の例

 (一) 食物を選んだり準備したりする。

 (二) 安全な衣服やはき物を選ぶ。  問題三 草木の世話をしたりそれを利用したりするには,私たちはどうすればよいか。

一 指導の着眼

 児童の生活は草や木に負うところが極めて大きい。子供らは教室に花を飾る。食卓では野菜や果物を見る。菜園や畑の手つだいをすることも珍しくない。児童はいろいろな話しあいによって次第にその経験を拡げて行くことができるであろう。

 教師は次のようなことを念頭におくとよい。

二 指導結果の判定

 学習活動の効果は,人間が草木のおかげをこうむっていると同時に草木もまた人間の保護を受けている相互依存の関係を理解し,草木に対する感謝と愛情とがあらわれて来ることによって判定されよう。話しあいの際の児童の態度,植物を世話する際の責任感,草木を世話する農民その他の人々の仕事を理解する程度等からもこれを知ることができると思われる。

三 学習活動の例

 (一) 郷土に成育する植物の名をあげる。(たとえば米,麦,野菜,竹,松,桜,杉,梅,その他野生の植物を含み児童の目につくもの)

 (二) 植物の世話の仕方を知る。  問題四 私たちは日常生活に必要ないろいろなものを,どういうふうに作り,どんなにして分配しているか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童はいろいろなものの作られる状況を見るのに非常に興味をもっている。かじ屋とか指物屋の前に立って,子供らはいつまでもいつまでもその仕事を見ていて飽きない。もちろん児童はまだ物の作られて行く過程を理論的に知ろうとしているのではないが,その著しい変化にひきつけられているのである。従ってここではむしろ比較的単純な事物について,その生産の過程を理解させることが望ましい。

 物の分配に関しては物の値段とその消費者に分配されるしかたに,児童の注意を向けることができるであろう。

二 指導結果の判定

 学習活動の効果は,日常身のまわりにある品物や食物等に対してその生産地・生産者・値段等について知りたがるか,またいろいろな生産者に対して,感謝の念を持ち,それらの品物をたいせつにするか,郷土におけるいろいろな生産者や商人たちの仕事を理解するか等によって知ることができよう。

三 学習活動の例

 (一) 日常必要な品物について考える。

 (二) 茶と果物について調べる。  (三) 日用家具の歴史を発見する。  問題五 日常生活に必要な品物を有効に使うには,私たちはどうすればよいか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童の活動は極めて活ぱつである。そしていろいろな品物をはげしく使う一方,その使い方にもいろいろな工夫を示す。しかしそれはまだ自分勝手の程度を出ていない。また子供らははき物をはなはだ乱暴に取り扱い,衣服を損じたりよごしたりすることを意としない。鉛筆のしんをむやみに長く削ったり大人の道具を持ち出してこわしてみたりもする。しかしその反面,児童は自分の持ち物についてはなかなか執着を示し,他人に貸したり与えたりするのを好まない。教師は児童に物を貸したり与えたりするのも物の使い方であることを納得させなければならない。

二 指導結果の判定

 学習活動の効果は次の諸点を観察することから判定されるであろう。

 自分の所持品や衣服等の保存に注意し,名まえを記入したり整とんしたりするか。他人のものを使う時に,それを返却することに気をつけるか。道具などの正しい使用について注意するか。

三 学習活動の例

 (一) 物を長持ちさせるために工夫する。

 (二) 家庭における光と熱の供給について調べる。  問題六 手紙を送ったり受け取ったりするには,私たちはどうするか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童は手紙を出したり受け取ったりするのに興味をもっている。郵便屋の姿を見ると一番先にかけ出して行く。教師はこの興味を利用して社会において通信事業がどんなにして行われているかを理解させることができよう。またどんな種類の人たちやどんな運輸機関が通信のために働いているかをも理解させることができよう。

二 指導結果の判定

 学習の効果は,通信が人々の協力にどんなに役立っているか,どんなに通信のために人々が協力し,忙しく働いているかを理解することによって知られる。それはたとえば郵便集配人に対する感謝のことばとか,消し印に対する注意とかによって判定することができよう。

三 学習活動の例

 (一) 手紙を出したり受け取ったりする。

 (二) 電話と放送のことについて学ぶ。  (三) その他の方法を実施する。  問題七 私たちはどうしたら楽しい時間が過せるか。

一 指導の着眼

 二年生の興味は,もはや家庭や学校の範囲にとどまらず校外,社会一般にひろがっている。遊びなかまの範囲も広くなり,周囲の社会における娯楽機関たとえば映画とか見世物とかに非常な好奇心を覚えるようになる。この興味から出発して児童は各種の組織的会合やその他いろいろな私的のつどいがどんなに価値があるかを理解するようになる。児童にかたよらない楽しい時間を過ごさせるにはどうすればよいかを考えるためには,次のようなことが参考になるであろう。

二 指導結果の判定

 二年生ともなれば,一般的にいって団体的遊戯にうまく適合できることが必要である。かたよらない自然なおもしろさを生み出すことに,積極的,独創的な態度を示すことがなくてはならない。このような児童の遊びについては,あまり干渉してはいけない。教師がだいたいを指示し,児童が十分各自の工夫を生かすというようでなくてはならない。この問題についての学習活動の効果はこれらの諸点から観察しうるであろう。

三 学習活動の例

 (一) 戸外で楽しむ。

 (二) 室内で楽しむ。  (三) お祭や年中行事を楽しむ。  (四) クラブをつくって楽しむ。  問題八 どうすれば,私たちは身のまわりのものを美しく,また清潔にすることができるか。

一 指導の着眼

 この年齢の児童は自分のものをしまっておく場所を持ちたがる傾きがある。児童は家や学校でいろいろな品物を美しくきちんと整えておく責任を持つことも少なくない。一方公園や運動場やいろいろな建物を使うことも次第に増して来る。このような点で教師は子供たちが自分の遊んだり勉強したりする場所をきれいにしておくことについての責任感を助長する適当な機会を持っているといえよう。

二 学習活動の例

 (一) よごれた場所を美しくする。

 (二) 身のまわりを整とんする。