初等科第一学年及び第二学年の児童の心理的特性については,国民学校公民教師用二六頁及び,一般編「第二章 児童の生活」の中に説明があるから,ここでは具体的にあらわれて来る一般的な特性を列挙して参考に供しよう。
二、さわって見たり,味わったり,においをかいだり,五感に訴えることが多い。
三、することが各人別々で,一つのことをいっしよにしようとする傾向は弱い。
四、すわってやるよりは,動きまわる生活に興味を持っている。
五、指の細い筋肉は,大筋に比べて発達していないので,細字を書くことや,物を縫ったりすることには,困難を感ずる。
六、注意は持続せず,容易にくずれる。
七、活動の結果がすぐあらわれる場合に興味を感ずる。
八、身辺の事物について盛んに質問する。
九、現実のことと想像したこととをはっきり区別しない。
十、自分というものについて,いろいろ気に病んだり,反省したりしない。
十一、両親の愛情と教師の親切がないと,感情が著しく不安定になる。
十二、他の男の子・女の子に対してあまり差別をしない。
十三、親・兄弟・教師等,自分以外のもの,即ち周囲の社会から自分に与えらる注文を理解しはじめる。
十四、仕事を受け持ってやることがそろそろできる。
十五、長上の権威に対して従順である。
十六、家族の関係を理解しはじめる。
十七、周囲の世界がだんだんよくわかって来る。
十八、自分たちの生活に直接関係のない環境の事物については,理解が困難である。
十九、時間・空間及び距離については,ごく限られた程度しか,理解できない。
教師は児童がさまざまの家庭から学校へ来ていることを深く考えなければならない。ある家庭には本やおもちゃがあり,家族そろっていろいろな楽しみをし,児童は児童としての仕事を持っている。また,ある家庭は物持ちであるか,児童には受持の仕事といったものがない。ある家庭では,家じゅう朝から晩までただー生懸命働いていて,休息とか団らんというような機会がほとんどない。ある家庭では保健・衛生の注意が行き届いているのに,他の家庭では無関心である。これらの差別は,児童の経験ならびにその成長に大きな影響を与えている。
児童は,学校生活に非常な関心を持っている。新しい友だちができ,新しいことを学び新しい遊びや新しい活動が可能になるのであるから,学校がおもしろくなるのは当然である。しかし学校のふんいきが親切な協力的なものでなければ,児童は不安になるのである。児童は教師や衛生婦が親切であるかどうかに敏感であり,まだ自分の学校ではただ教師の命令を実行しさえすればよいのか,それとも自分から進んでいろいろな仕事をする方がよいのかを,直感的に理解する。児童生活における学校の位置は極めて重大であって,児童らの抱いている問題が,こゝで解決され得ると同時に,更に新しい問題を与えることができるのである。
近隣の社会もまた,自童の生活に反映して,大きな影響を与えている。その広範囲かつ複雑な問題が,児童の生活に反映して,児童の中にもいろいろの問題を生じさせている場合も多い。そうして身ぢかな社会におけるいろいろな人,例えば医者・警察官・商人・農民・労働者等から受けている恩恵は,児童が,社会生活を理解するための有力な手がかりとなるのである。
第一・二学年においては,かゝる家庭・学校近隣の社会の生活に慣れさせ,その生活を豊かにして行くところに重点をおくのが,児童の興味に即するゆえんであろう。
第一学年の児童について特に注意すべきことは,その入学の当初,一般に次のような傾向を生ずるということである。
二 友だちを作りたいと望むこと。
三 友だちに物を貸したり,友だちの物をたいせつにしたり,遊びなどの際,順番を待たなければならなくなること。
四 学校の規則に従う必要を感じはじめること。
五 新しい複雑な環境に入ったために,神経質になり,むやみに小便に行きたくなったり,もらしそうになったりすること。
第一学年の社会科としては,次のような事項を理解せしめ,これと関連した能力や態度を得させることを目標としている。
二 衣食住について自分たちが他人の世話になっていること。
三 菜園の作物や家畜は,人々によって世話され,保護されていること。
四 家庭や学校では,季節季節に,その用意をすること。
五 家庭の人たちは,いろいろな交通機関を使用すること。
六 人間は食糧や衣服を動物や植物から得ていること。
七 植物が育つためには,日光と温度が必要であること。
八 家庭や学校には,児童たちの安全を保つために,いろいろな設備がしてあること。
九 注意したり整とんしたりすることによって,家庭や学校が,より美しくなること。
十 他の人たちに親切にすれば,家庭や学校の生活は,もっと楽しくなること。
十一 家庭や学校に楽しい時間を作るためには,いろいろの方法があること。
十二 家庭の人たちは楽しい時間を作るために,お互に助けあっていること。
十三 健康法を守ることによって,児童は強く且つ健康になれること。
十四 健康ならば,仕事も遊びも楽しくやれること。
十五 すべての生きものは,親のおかげを受けていること。
教師はこれを目標としつゝ,適当な問題を取り上げ,学習活動を選択し,社会関係の理解と社会的責任感とを発展さすべきである。
こゝに掲げる問題は,教師及び児童が関心を有するすべての問題を尽くしているわけではない。問題は,児童及び児童の生活している問題を,教師が発見し,これを学習指導計画の基礎として使用する一助とし,また児童の学習活動を組織立てる中心として役立たせるために参考として,選定したものである。
以下に問題を列挙する。
二 私たちはどうすれば丈夫でいられるか。
三 自分のものや人のものを使うには私たちはどうすればよいか。
四 私たちは食物や衣服住居をどんなふうにして手に入れるか。
五 私たちは旅行のときにどんなことを心得,どんなことをする心要があるか。
六 私たちはどうすればみんなといっしょに楽しい時間が持てるか。
例えば問題一,二,三,六のごときはその傾向が強い。
問題の中に示された学習活動もまた,この順序通りやるべきものでもなく,またその全部をやるべきものでもない。教師がいろいろな学習活動を見のがさないように参考として,できるだけ多数挙げておいたのである。したがって,自分の定めた目標の事項とよく照合し,また児童の生活,学校及び地方の特性によくあうように,適宜に選択及び加減をして,学習指導計画に取り入れるべきである。この際,先に述べた指導方法の項を十分参考していただきたい。
なお多数の学習活動を浅くやるよりは,前もって学習活動を比較的に少数にして,よく吟味し研究し,これを深く広く展開して行くことが望ましいということもまた留意してほしいことである。
学習指導計画は,選定された学習活動,技能の修練,各児童の興味の進展,児童の個人的問題の解決,両親その他との協力のつごうなどを,十分考慮に入れて作らなければならない。
巻末に附した作業単元の実例は,学習指導計画作製のため,大いに参考となるであろう。
問題一 家庭や学校でよい子と思われるには私たちはどうすればよいか。
一 指導の着眼
この年ごろの児童は,両親や特に教師に従順である。そして家庭や学校で自分の役目として何か仕事を言いつけられ,それをうまくやったとほめられれば,非常に誇りを感ずる傾向がある。こういう点を利用すれば,みんなに喜ばれるお手伝をしようとする意欲を増進させ,それにはどうすればよいかという理解を深めることができると考えられる。
一面,わか国では児童が自分のことは自分でするという習慣が十分につけられていない。朝起きて着物を着ることからはじめ,学校に行く支度も,はき物の整理も,運動場での遊びも,便所に行くことも,かばんその他の整とんも,夜寝床を敷くことも,ことごとく両親や教師の手をわずらわしている。したがって児童の入学を機に,教師及び両親は,児童がその日常生活で一歩一歩,自主的になるようにし向けなければならない。更に,わが国では児童が学校にはいるまでは,よい行儀をしつけるということには,あまり注意を払わない傾向がある。それ故に教師及び両親は,児童の正しいしつけを確立するよう努めなければならない。しかし,いわゆる型にはまったよい子を作ろうとすることは,十分警戒しなければならない。児童自体の自主的な性格を確立し,しかも年長者,年少者ならびに仲間の児童と調和して行くように指導しなければならない。
指導に当たって留意すべき諸点は次のとおりである。
○家庭──所持品の整理,家の仕事,危険防止の活動。
○学校──教室の清掃・装飾,遊び道具・学習用具,作業用具の整頓,草木の手入れ・競技・防火訓練。
この問題に関する学習活動の効果は,次のようなことから判断できよう。
児童が自分の周囲によく注意するようになったかどうか。
どれほど自分のことを自分でやれるようになったか。
両親や教師の言いつけに積極的に従うか,またどれほど役に立つようになったか。
家や学枚で危険防止に気をつけるようになったかどうか。
食事・登校下校並びに家族の送り迎えなどに,ちゃんとあいさつができるようになったか。その作法をだんだんとのみこんだか。
年下の者に物を分けたりするようになったか。
家庭内での児童の態度は,児童や父兄と何回も親しく話しあうことによって推察することができるであろう。
三 学習活動の例
(一) 家庭や学校をきれいにする。
2.教室に花を持って来て飾る。
3.学級文庫を作る。
4.学級文庫の簡単な飾りつけをする。
5.写真や絵,作文,新聞・雑誌の切り抜きを壁に掲示する。
6.教室に飾る絵を書く。
7.簡単な植木ばちを作って草花を植える。
8.家や学校の水そうや菜園の手入れをする。
9.記念樹を植える。
2.家庭や学校で気をつけなればらないものごとを話しあったり,書き取ったりする。(ランプ・電気装置・ガラス片・さびくぎ,有害な動植物,七輪の残り火等)
3.廊下・階段の通行,運動場での活動,運動用具の使用その他で危険防止をするために必要なきまりを話しあい,その理由を発見する。
4.飲用水を正しく使う。
5.対火訓練をし,非常口を覚える。
6.けがをした時の経験を話しあう。
7.有害な植物を見分ける。
2.自分だけでやっている事がらについて話をする。
3.自分のことを自分でやろうとしても,うまくできなかったり,自分だけでさせてもらえないことを話しあう。
4.自主的にふるまうのにつごうの悪いことをどう処置したらよいかについて話しあう。
5.学級の者がみな自分だけでやるようにしようと話しあった事がらの表を作り,これと対照して各人の進歩を報告する。
6.右のうち,うまく進歩しない事についてその事情を教師に説明する。
7.「勇気のある子というものの正しい意味について話しあう。
8.「勇気のある子」といった簡単な劇を作る。
2.ふだん教師から言いつけられている事がらの表を作る。
3.目上の者の言いつけに従わなかったために生じた,まずい結果について話しあう。
4.両親の言いつけに従いにくい事について,その事情を話す。
5.右の事情を解決する方法を話しあう。
6.両親から言いつけられている事の中で,一番たいせつと思うことを絵に書き示す。
7.両親の言いつけを守ったときは○印をつけて記録しておく。
8.両親その他の人にほめられたときの事を話す。
2.食事のときの行儀について話しあう。
3.教室での行儀について話しあう。
4.友だちの名まえを正しく呼び,あだ名を言わない。
5.家の人の外出や帰宅のときにあいさつをしているかどうかを報告する。
6.つい行儀が悪くなってしまう場合について話す。
7.お客様ごっこをする。
8.来客の際お茶を運ぶかどうかを報告し,その時の作法について話しあう。
2.幼い者の絵を書く。
3.幼い者に親切にしてやると,どんなに喜ぶかを観察して話しあう。
4.幼い者のかわいらしさについて報告する。
5.教室で兄弟ごっこ,親子ごっこをする。
6.幼い子を遊ばせるときの注意を話しあう。
7.遊ぶときに,幼い子におもちゃをあてがってやったことがあるかどうかを報告する。
一 指導の着眼
児童は自分自身の成長に大きな興味を持っている。体重や身長をはかって,おたがいに比べあったりする。こうした点を有効に使えば,その健康に対する関心を増させることができるであろう。歯医者に行くこと,近所の家が消毒されたりすること等々,児童の日々の生活には,不思議な体験が数多くある。こういう点も健康に関する習慣養成のよいいとぐちとなると思われる。一年生では,正しい食事のとり方,日々の衛生,衣服に関する習慣に重点がおかれる。教師はこういうものに関する正しい習慣がどんなものであり,どの程度家庭で実行されているかを知らなければならない。
指導に当たっては次のようなことを念頭におくべきである。
○歯──食物との関係,定期的検査,清潔。
○活動と休息──短時間の作業,短時間の坐業,休息の方策,律動。
○通風──教室の通風,温度。
○伝染病──消毒,教室内での隔離,個人別の湯のみ,ハンカチ,手ぬぐいの使用,やたらに物を口に入れないこと。
○姿勢──立った姿勢,すわった姿勢,服装,はき物。
○排せつ──規律,清潔。
○食事の時刻──定時,間食。
○適切な食物の選択──学校給食,給食の準備,弁当。
○清潔──食物の取り扱い,道具や設備の使用。
○適当な衣服──健康,日光と防寒防暑,趣味及び経済。
学習活動の判定は次のような点からすることができるであろう。
正常な発達を阻害するような保健上の欠点がなくなされたか。よい姿勢を保つようになったか。休息時間には十分休むか。排せつの時間に規律があるか。防疫のきまりを守るか。戸内ではがいとうを脱ぐか。適切な衣服をつけて登校するか。間食を適時にとるか。どんな野菜でも好ききらいがないか。清潔・衛生の習慣を守っているか。以上のことが教師に要求されるからでなく,自分自身から進んで行われているか。健康法の改善に満足を感じているか。
三 学習活動の例
(一) 適切な食物をとる。
2.右について好きな食物,きらいな食物をあげ,なぜ好きか,なぜ嫌いかを話しあう。
3.家で作っている野菜の種類を報告する。
4.学校給食の材料を家から持って来る。
5.食事の時間と間食の時間及び量をきめる。
6.買い食いについて話しあう。
7.体重を記録し,増減の理由を考える。
8.身長を測る。
2.果物やなま野菜はよく洗ってたべる。
3.食前と用便後に手を洗う。
4.家や学校ではどのようにして飲用水をきれいにしておくか,報告する。
2.いろいろな着物の材料が,季節やいろいろな場合に適しているかどうかを検討する。
3.各季節で日が長くなったり,短くなったりすることを観察する。
4.冬の着物について,各自が何枚着ているか比べあう。
5.夏と冬との適当な衣服を示す絵本を作ったり,人形を作ったりする。
6.衣服の色について観察し,季節・場合,着る人などに合うかどうかを話しあう。
7.天候の変化を記録する天候表を作る。
8.暦を作って,衣がえその他衣服の変化を記入する。
2.学校ではやった病気(百日ぜき・はしか・感冒等)を両親に報告する。
3.用便のよい習慣を話しあい,実行する。
4.校医や養護と健康の習慣について話しあう。
5.せきをするとき,手で口をおゝい,またはハンカチか紙をあてる。
6.歯科医をよんで,歯の清潔を維持することがどんなにたいせつかを話しあう。
7.日々守るべき健康の習慣を絵に書く。
8.睡眠時間を記録する。
9.学校で行われている保健施設を見て,両親に説明する。
10.個人別の湯のみを使う。
11.鉛筆・貨幣・玉・指などを口に入れることの危険について話しあう。
12.すわるとき,歩くとき,立っているときのよい姿勢を明らかにし,これを実行する。
13.室内の通風をよくし,温度を適当に保たせる。
14.大きな筋肉を使うような遊戯をする。
15.物をたべるにふさわしい時間について話しあう。
16.学校で,休み時間にはできるだけ戸外で遊び,十分日光をあびる。
17.学校での窓の開閉について話しあう。
18.日の当たる所や,暗い所で本を読むことについて話しあう。
19.入浴(特に銭湯での)の際注意すべきことについて話しあい実行する。
一 指導の着眼
この年齢の児童は,自分の所持品に大きな関心を感ずるようになっている。新しい上衣・筆箱,自分の飼い犬などは,これを宝物のようにだいじにする。こういう点を活用して指導して行けば,自分や他人の所有物の扱い方を向上させることができるであろう。
指導に当たって留意すべき点は次のとおりである。
○学用品その他──おもちゃ・遊び道具・運動具・置時計その他の小道具・植木・弁当・書物・帳面・紙・鉛筆・クレヨン・消しゴム・小刀・定木等。
○家庭の動物──その巣,食物,子の世話,清潔。
学習活動の結果は次のような点から知られるであろう。
室内でがいとうやえりまきを脱ぐかどうか。
衣服等を汚さないように工夫をしたり,気をつけたりするかどうか。
書籍やおもちゃ・道具等をきまった場所にしまうかどうか。
室をきれいにするため,何か役目を積極的に引き受けるかどうか。
三 学習活動の例
(一) 家に飼ってある小動物の世話をする。
2.家で飼っている小動物の飼育法を表に作ったり,読んだりする。
3.小動物に関する物語を読む。
4.動物がその子をかわいがり,世話するようすを話しあう。
5.小動物の絵を書き,飼い主の名まえをつけて展覧する。
6.学校や家にいる小鳥にえさをやる。
7.学校や家の庭や近くに来る小鳥の種類を書きとめる。
2.校内をまわって,小使や上級生その他が学校を清潔な気持のよいものにするため,どんなことをしているか,見たり聞いたりする。
3.校舎に入るとき,がいとう類やげた・くつ・かさなどをぬいで,きまった場所に整とんする。
4.がいとうなどを,きちんと伸ばしてかけたり,たゝんだりする。
5.勉強した後で,いろいろな品物をもとの場所に片づける。
6.おもちや・道具・薬品等の正しい置き場と使用法を話しあったり,示したりする。
7.衣類やおもちゃ・道具等を入れる箱や袋を作って,使う。
8.手ぬぐい・ハンカチ・タオル等を水洗いする。
9.書物・筆箱・かばん・ぼうし・はき物・ハンカチ・手ぬぐい・おもちゃ・道具その他に自分の名まえをつける。
10.夜,床につく前に学習用具をそろえておく。
2.紙・帳面・鉛筆・クレヨン等を残さず,きれいに使う方法を話しあう。
3.これらの物を一週間・一箇月・一箇年ではどのくらい使うかを記録する。
一 指導の着眼
この年齢の児童は,台所に行って母親が料理を作るのを見るのが大好きである。もちろん普通の母親は子供が台所に入って来るのを好まないが,子供は料理に手を出したり,自分で料理をしたがったりする。戸外では植物の成育して行く有様を見るのを喜び,時には大人のまねをして,妙な所に種子をまいたり,草花を植えたりする。一方衣料品が不足しているわが国の現状にもかゝわらず,子供たちは一向むとんじゃくに衣服を汚したり損じたりし,そのため多くの親たちは,子供たちの衣服について,特に季節の変わりめには頭を悩ましている。しかし生活条件の困難さが加われば加わるほど,両親の衣服・食糧調達の苦心・努力は非常なものなので,このことは児童に自然,父母の努力を理解させ,また食物や衣服の材料が,どこで,どんなふうにして生産されるかを知ろうとする興味を高めている。したがって以上のような諸点を利用すれば,衣食住に必要なものの生産・分配に関する理解を深めさせることも,比較的容易だと思われる。
二 指導結果の判定
学習活動の効果は,米とか綿布とかが,どんなに多くの人たちの努力や協力によって生産され,分配されているかということに対する理解の深度,その他のいろいろな必需品の生産・分配などに対する関心の程度,商店の人たちに対する理解と感謝の気持の発現の状態,食糧・衣服への注意といった点から考察することができるであろう。
三 学習活動の例
(一) 日々の食物について調べる。
2.食物の材料になるいろいろの品物を列挙する。
3.食糧品を,その産する場所,動物性,植物性の違い,作る人,その他の点からいろいろ分類してみる。
4.季節季節のおもな食糧品を示す図表を作る。
5.食物ができあがるまで,どんなに多くの人の手がかゝっているか,できるだけたくさん勘定させる。
6.米・魚・野菜の旅行といった話を作る。
7.米を作る農夫の作業について聞いたり読んだりする。
8.田畑・農場などを見学に行く。
9.米の配給所を見学する。
10.八百屋・魚屋に行って,どこから,品物を仕入れて来るかを聞く。
11.米が作られ,配給される過程を示す絵を書く。
2.母親がどんなにして子供の衣服を手に入れたかを話す。
3.自分の衣服の表を作り,修繕されせんたくされた度数を記録する。
4.洋品店に行き,いろいろな衣料を見,その材料について話しあう。
5.木綿・絹・人絹・スフの話を聞いたり読んだりする。
6.衣服の材料となる布のはしを集めて見る。
2.お母さんの食事の準備をじょうずに手伝ったことについて話をする。
3.まゝごと遊びをする。
4.農繁休業にやったお手伝いについて報告する。
2.家にはどんなものが備えられているか報告する。
3.今の家にいつから住んでいるか,聞いて話をする。
4.学校と家の違う点同じ点を話しあう。
一 指導の着眼
子供たちは乗り物が大好きである。汽車に乗りたい,自動車に乗りたいというのは,この年ごろの児童の最大の願望である。かれらは自動車や汽車や電車の絵を書く。それ自体がかれらにとってはすでに大旅行なのである。また,かれらは日々学校に来たり,家に帰ったりするし,学校からは遠足にも行く。中には父兄と共に本当の旅行をしたものもあろう。こういう活動に,より深い意味を与えるために,教師は次の点に留意することが望ましい。旅行における安全,道すじや慣習,行儀,適切な服装,道案内に関する知識。
二 指導結果の判定
この単元の学習活動の効果は,次のような点から判定できるであろう。
いっしよに旅行の計画をたてる。自分のことを自分でやる。簡単な道案内を読み,その意味を知る。小額の金の使用のしかたと,その価値を知る。事故を防止するため,不注意な行動をしなくなる。
三 学習活動の例
(一) 交通の安全につとめる。
2.横断歩道による横断,車に対する注意,信号を見ること,バスや電車に乗る時のきまりなどを話しあい実行する。
3.右(左)側通行と,道路上にひろがって歩くことの危険とについて話しあう。
4.旅行の際の安全に関する注意について話を作ったり,書きとめたり,読んだりする。
5.交通安全の規則を守っている子供の絵を集める。
6.安全に関する映画を見る。
7.家と学校との間にある注意すべき場所を地図に書き入れる。
8.お使いに行く道について話す。
9.学校や家までの道順をいう。
10.通学の往復で道草をすることの悪結果について話しあう。
11.いなかや町で迷い子になった時どうすればよいかを工夫し,話しあう。
12.学校や道路上のいろいろな地点で東西南北を見わける。
13.通学途上のいろいろな危険について話しあう。
14.家族のした旅行の絵を書き,話をする。
15.自分のした旅行の物語を作ったり,絵を書いたりする。
16.いろいろな人の旅行を書いた物語や詩を読む。
17.積み木や箱などで汽車,自動車,飛行機などを作る。
18.汽車ごっこ,自動車ごっこ,飛行機ごっこ,船ごっこをする。
19.いろいろな乗り物を使う旅行の計画をみんなといっしょに立てる。
20.運賃を計算したり,切符を買ったりする。
21.時間の見方を覚え,それが通学や旅行になぜたいせつかを話しあう。
22.車中でのよい行儀についての絵を書く。
23.旅行に必要な身のまわりのもの(服装)について話しあう。
24.旅行に関する唱歌を歌う。
25.手荷物がどんなにして運ばれるかを話しあう。
一 指導の着眼
この年ごろの児童は積極的活動的で楽しい自分たちの時間を持つことに熱心である。教師はこの点を利用して,かれらの活動をもっと豊かなものにして行くべきである。楽しい時間を持つことは,一年だけでなく,全学年を通じて強調されるべきである。
子供らの楽しい時間はだいたい次のようなものではあるまいか。
競技や遊戯や勝負事。レコードを聞く。ラジオを聞く。友だちを呼んだり,友だちに呼ばれたりする。小動物と遊ぶ。旅行に行く物語を聞いたり読んだりする。劇をする。絵本を見る。身や手足でリズムをとる。ピクニックに行く。物を書いたり作ったりする。
二 指導結果の判定
学習活動の効果は,次のような点から知ることができるであろう。
いろいろな競技や勝負事のしかたを知っているか。リズムや劇で気持を表わすか。歌ったり,よい音楽を聞いたりすることが好きか。面白いことをしようと提案するか。いっしょに遊ぶときに作法を心得ているかどうか。順番がおとなしく待てるか。おゝぜいのやりたいという遊びに気持よく加わるか。一番にされなくても,ひがんだりしないか。学校内外での遊び方の種類がふえたか。
三 学習活動の例
(一) 音楽を楽しむ。
2.適当なレコードを聞く。
3.音楽に合わせてリズムをとる。
4.音楽に合わせて身ぶりをする。
5.リズムバンドを作って,演ずる。
6.「もしもしかめよ」のような歌をうたい,そのリズムに合わせて劇をする。
7.「待ちぼうけ」のような音楽を物語りにする。
8.音楽を聞いて色や線で感じを出してみる。
2.得点を記録する。
3.競技の人員を数え,加えたり,引いたりする。
4.家で両親や兄弟姉妹とする競技を工夫する。
5.みんながおもしろくするには,どうすればよいか話しあう。
2.クラス会などを計画し,簡単なたべ物や飲み物を準備する。
3.集まりのときの作法について話しあい,またこれを観祭する。
4.お客様ごっこをする。
5.簡単な招待状を書く。
6.その返事を書く。
7.集まりの時の遊びを工夫する。
2.野外で見たものの表を作ったり絵を書いたりする。
3.野外での採集物に名札をつけて展覧する。
4.散歩で集めたおもしろい物を学校に持って来る。
5.野外での昼食の計画をたて,実行する。
2.両親や教師,他の子供の読んでくれる物語を聞く。
3.読み物を作る。
4.詩の朗読を聞く。
5.学級の文庫を作る。
2.簡単なおもちゃを作る。
3.古いおもちゃを修理する。
4.おもちゃ屋さんごっこをする。
5.物語を劇にする。