五,体育の考査と測定
考査や測定は体育を科学的に計画し,運営してゆくためにも学徒の心身の現状や個人的欠陥や進歩の情況を知るためにもきわめて重要なことである。
またすぐれた計画に基づいた考査測定の結果は体育の目的やその効果を父兄や一般の人々に知らせ,その理解と協力を得るために有効な資料ともなるものである。
考査測定に当って重要なことは先ずその目的を明確にすることである。
またそれは有効で信頼のできるものでなければならないから,しらべようとする特性や成績が正確にしかも信ずべき方法で測定評価されることが必要である。
そこで適切な考査測定の計画を進める手順として重要なことは先ず第一に考査測定の目標を定めることであり,第二にこの目標の達成に有効で信頼のできる適切な方法を選ぶことである。
これらの目標は体育の目標の一切を包含するように選ばれなければならない。
このような考査測定の計画は細心の注意をもって,しかも科学的に立証された研究の結果に基づいて作成されなければならない。
したがって考査測定の基準は学徒及び一般人についての科学的研究から導き出された資料によって作り上げられるべきものである。
このために諸外国で発表されたこの種の科学的研究や考査測定によって得た知識や経験を活用することは有効なことではあるが,実施案はあくまで考査測定の対象である学徒自身の要求,能力,特質に応じて決定されなければならない。
このような計画をたて適切に実施することは体育の科学的研究を促進するとともに体育の目的や価値に対してより深い興味と理解を与えるに役立つであろう。
次に考査測定の計画をたて,これを進める上に参考になると思われる若干の目標を挙げる。
(一)学徒の現状を判断すること
(二)学徒を体力,才能に応じて組分けすること
(三)学徒の知識を検査すること
(四)学徒の進歩を測定すること
(五)計画の改善に役立つ科学的資料を得ること
(六)体育の目的やその結果について父兄及び一般の人々に知らせるための資料を得ること
上記の目標を達成するための具体的な考査測定の方法としては身体検査,健康診断・態度の検査等の一般的方法のほかに次のような特殊の方法が考えられるが,考査測定の目的に応じて必要ないくつかの方法を適時に選んで行うがよい。
(一)筋力の検査
(二)運動に対する適性の検査
(三)運動の力学的検査
(四)走,跳,投力の検査
(五)体力指数による検査
(六)特殊のスポーツ技術の検査
(七)性格順位決定の検査
(八)知識の筆記検査
(九)循環機能検査
(十)人体測定
(十一)栄養の検査
(十二)清潔の検査
(十三)習慣形成の検査
学 校 体 育 指 導 要 綱
APPROVED BY MINISTRY OF EDUCATION (DATE June 17,1947) |
昭和22年6月17日印刷同日翻劾印刷
昭和22年6月22日発行同日翻刻発行
〔昭和22年6月22日文部省検査済〕
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