第六章 第一学年の算数科指導
一、具体的に即して,1から100まで数えること。
数と物とを対応させる能力を養い,数える技能の向上をはかること。
(二) 予備調査
2.実物に指をあてて数える能力とその程度。
3.実物を移動させて数える能力とその程度。
4.実物に手をふれないで視覚によって数える能力とその程度。
5.時間的に続いて起ることを数える能力とその程度。
6.集合の個数を直観的に数える能力とその程度。
7.集合の個数の大小を直観的に判断する能力とその程度。
(三) 指導方法──児童の活動
2.時間的に続いて起こることがらを数える。(指を折りながら,あるいは○印などを書きながら,代りのものを移動させながら,または,ことがらをみたりきいたりした印象によって)
3.動いているものを数える。
4.集合の中の指定されたものを数える。
5.数詞の暗しよう(1から5までを順に,あるいは逆に)
6.集合に一つつけ加えたり,あるいは一つへらしたりした数をいう。(集合数の意識をはっきさせると共に,数系列の観念をとらえさせるため。)
7.きまった数だけの動作をする。
8.要素の個数が5個以下の集合について,その個数を直観的につかむ練習をする。
9.日常生活に起こることがらを数で表わしてみる。(グラフに表わしたり,所持品を整理したりなどして)
10.次第に声を小さくし,また声をたてずに数える。(音によって数えることなどにより)
11.物音をきいて数える。
12.空間的に,あるいは時間的に不規則に並んでいるものを適当に整理して数える。(簡単な加法へ発展する)
13.集合の大小を比較する。(まず,直観によって要素と数とを1対1に対応させ,余った部分を数える)
14.集合の要素の個数の大体を見当つける。
15.大きな集合の要素の個数を数える。(10を一区切りにして指を折るとか,物をおくとかして)
(四) 指導結果の考査
(2) 単位名をそえて数えられるか。
(3) 集合数の意味がわかっているか。
(4) 集合の要素の個数の大略を見当つけることができるか。
(5) 大きな集合を数えるとき,10を一区切りにして数える能力。
(6) 数え方を工夫する能力の程度。
(7) 生活を数的に処理する態度ができているか。
2.テストによって
(2) ある数からある数まで順に,あるいは逆に唱える能力。
(3) ある数の前の数,あるいは後の数を唱える能力。
(4) 前後の数からその間にある数を知る能力。
二、100までの整数を読んだり,書いたりすること。
数字を読み,かつ正しく書く能力を表い,数の単位の観念を明らかにすること。
(二) 予備調査
2.数と集合数との結びつきを理解する能力とをの程度。
3.数と順序数と,の結びつきを理解する能力とその程度。
4.漢数字を読む能力とその程度。
(三) 指導方法──児童の活動
2.数と集合数とを対応させる。(示された数だけ物を取り出すこと,色をぬること,○印をつけること)
3.数と順序数とを対応させる。
4.数字を正しくていねいに書く。
5.数字によっていろいろなことがらを書き表わしたり,書いてあるものを読む。
6.11から20までの個数を数える。(1から10までのように,実物に即して,数えたり,幾つかの集合を加え合わせたりなどして)
7.100までの数を,10を群とする数の構成と結びつけて考えたり,数えたり,書いたりする。(二位数において10の位の数字は10を一つの群とみたときの群の個数であり,1の位の数字は,そのときの余の個数を表わすものであることを考える。)
8.一から百までの漢数字を書く。
(四) 指導結果の考査
(2) 日常生活に数字を用いる能力。
2.テストによって
(2) 100までの数字を読むこと。
(3) 数系列との結びつきで,数字を書くこと。
(4) 時計の文字盤を読むこと。
三、順序数と集合数との関係及び数の大きさ,順序,それらの関係を明らかにすること
数の大小と順序の観念及びその相互関係を明らかにして,集合数と順序数との関係を明らかにすること。
(二) 予備調査
2.順序数の意味の理解とその程度。
(三) 指導方法─—児童の活動
2.実物に順序数を対応させてみる。
3.順序数を用いる。
4.上下・左右・前後・縦横・真中・端・むこう・こちらなど方向や位置に関係づけて順序数を使用する。
5.順序数を用いて,ことがらを整理する。
6.集合数を求めるには,物を一列に並べたと考える。
7.一列に並べたとき,要素が一つ増すごとに,その集合に対する集合数が一つずつ大きくなることを考える。
8.数に順序の意味のあることを考える。
9.数えることによって集合数を求める場合と,順序数を求める場合との二通あることを考える。
(四) 指導結果の考査
(2) 日常生活に順序数と集合数を区別して用いているかどうか。
2.テストによって
(2) 時間的に続いて起こることがらのうち,ある特別のものが始めから何番目にあったかなどとその位置をいい表わすこと。
四、5及び 10を単位にして100まで数えたり,2を単位にして20まで数えたりすること。
集合を整理して簡単に数える態度を作り,数的処理をしやすくすると同時に,数の構成を明らかにすること。
(二) 予備調査
2.集合の要素を適当に整理する能力。
(三) 指導方法──児童の活動
2.5ずつを一まとめにして数える。
3.10ずつを一まとめにして数える。
(四) 指導結果の考査
(2) 規則正しく進んでいるものを適当な数を単位にして数えるかどうか。
(3) ものを適当に整理して,2,5,10を単位にして数えるかどうか。
2.テストによって
(2) お金を,5銭,10銭,15銭,‥‥(5円,10円,15円,‥‥)などと数える能力。
(3) 10ずつ束になっているものを,10,20,30,‥‥と数える能力。
五、加法と減法の意味及びその相互関係を理解すること。
簡単な数範囲で,実際の物についてそれの増減を考えさせ,加減の意味を理解させること。
(二) 予備調査
2.数系列の観念が明らかになっているかどうか。
3.数詞を順に,あるいは逆に唱える能力。
4.個数が4以下の集合に対して,その個数を直観的に知る能力。
(二) 指導方法──児童の活動
2.10までの範囲で,増減の数が5以上の場合について数える。
3.個数がかわったとき,その結果を求める場合に,はじめの集合の個数を念頭において,数え足し,あるいは数え引くことをする。
4.数え足し,数え引くことを次第に実物からはなれ,抽象数で行ってみる。
5.10を越える範囲で,増減の数のあまり大きくない場合について数える。
6.増減が逆の関係にあることを考える。
7.増減の連続して起こる場合について数える。
8.基数から10以上に繰上る場合,および,10以上から基数に繰下る場合についても,数え足し,数え引く仕方で数える。
(四) 指導結果の考査
(2) 日常生活において,加法・減法を適用する能力。
2.テストによって
(2) ことがらの増減について,加法・減法を適用する能力。
六、数の構成を明らかにし,加法・減法の基本的な操作を理解すること。
数の構成を明らかにし,これを基礎にして加法・減法を暗算でする能力を養うこと。
(二) 予備調査
2.事物の増減によって,数のうつりかわりをとらえる能力。
3.数の増減について,数のうつりかわりを求める過程がどの段階にあるか。
(2) まず,はじめの要素の個数を数え,次に,増減した個数を数え足すか,あるいは数え引く。
(3) はじめの個数を念頭におき,これから数え足すか,あるいは数え引く。
(4) 暗算で結果を求める。
4.10を単位として数える能力。
(三) 指導方法──児童の活動
2.10以下の数を5と5以下の数に分解する。
3.抽象数の構成を考える。
4.個数がそれぞれ4個以下の二つの集合について,その合わせた集合の個数を直観的にいってみる。
5.10から20までの数を10と基数とに分解し,またそれによる合成をする。
6.加法・減法の問題を考える。
7.生活に即して,加法の二通りの意味を考える。(算数科の指導法参照)
8.生活に即して,減法の四通りの意味を考える。(算数科の指導法参照)
9.加法・減法の相互関係を,経験にもとずいて考える。
10.数え足し,あるいは数え引くことから,加法・減法についての暗算に移る。
11.基数に基数を加えて,10以上となる暗算の方法を習う。
12.10以上の数から基数を引いて基数となる暗算の方法を習う。
13.加法九九,減法九九の表を作製し,それを活用してみる。
14.繰上り,繰下りの暗算をくりかえし練習する。
(四) 指導結果の考査
(2) 暗算の正確度及び速度。
(3) 日常生活に加法・減法を適用する能力。
2.テストによって
(2) 10の合成,分解が直覚的にできる能力。
(3) 10以下の数を5と5以下の数に分解できる能力。
(4) 基数に関する加法・減法を日常生活に適用する能力。
(5) 基数に関する加法・減法に帰着する問題を作る能力。
(6) 基数に関する加法・減法の暗算能力。
七、一つの集合とみなしたり,あるいは数個の集合に分けたりして,集合を分類整理しその概数をとらえること。
事物を適当に整理して,直観的に概数を知る能力を養うこと。
(二) 予備調査
2.集合を整理して数える能力。(前後・左右・上下などの方向によって分類したりすること。)
3.2・5あるいは10を一群として数える能力。
(三) 指導方法──児童の活動
2.概数を知るために,集合の分け方を工夫する。(方向・位置・配列・要素の持っている特殊な性質などを用いて)
3.いろいろな条件によって,幾つかの集合に分けてみて,もとの集合の大略の個数を考える。
4.個数の大きな集合に対し,その10個の大体の量を考えて,全体の個数の見当をつける。
5.二等分三等分してその一群の個数から全体の個数の見当をつける。
6.時間的に起こることがらを,時間的に分類し,その大略の個数を考える。
(四) 指導結果の考査
(2) 日常生活に起こることがらについて,その概数を知っているかどうか。また,それを用いて処理しているかどうか。
2.テストによって
(2) —つの点のまわりに並んでいるものを,一つの円周の上にあるとみる能力。
(3) 三角形の頂点の数を記憶しているかどうか。
(4) 四角形の頂点の数を記憶しているかどうか。
(5) 物の概略の大きさを知る能力。
八、絵や模型を使って,物の概略の形や物の概略の配列を表わすこと。
物の概略の形や,物の概略の配列を絵や模型を使って表わし,形や配列を整理して,全体を直覚的につかむ能力を養うこと。
(二) 予備調査
2.子供が対称形に美を感ずるかどうか。
3.子供の砂遊びや積み木などで,どんなものを作っているか。また,形が正しくつかまれているか。
(三) 指導方法──児童の活動
2.生活経験を絵日記などに表わす。
3.自然物を使って物の形を作ったり,いろいろな図形を工夫作製したりする。
4.幾何学的な簡単な形を作ってみる。
5.立体的なものを作製する。
6.物をその形や性質によって種類分けしてみる。
7.形の連続的な変化を観察し,これを図にかく。
8.形や構造を図や模型に作る。
9.形や構造を言葉によって表わす。
10.形を前後・左右・上下などによって幾つかの群に分けたり,また,分けたものから全体を構成する。
11.物の概略の形を,基礎的な形に分解したり,その分解した形を合わせたものとして,もとのものの形をみる。
12.数える場合に,そのものを略図にかいたり,○などにかき表わしたりして,整理し数えやすくする。
13.数の構成をわかやすく図にかく。
(四) 指導結果の考査
(2) ある程度の正確さで,形を図にかいたり,また,形を作ったりしているかどうか。
(3) 事物をどんな仕方で整理しているか。
A.事物を条件によって種類分けしているか。
B.代用物を使ったりして,整理しているか。
C.略図をかいて整理しているか。
D.○や×によって整理しているか。
E.グラフなどによって,整理しているか。
2.テストによって
(2) とらえたものを図に表わす能力。
(3) 物を整理して図や表にかき表わす能力。
(4) 表わされたものを読みとる能力。