英語学級の編制
英語で考える習慣を作るためには,忠実にまねることと,何度もくり返すこととたくさんの応用とが必要である。このために,一学級の生徒数が30名以上になることは望ましくない。
聴き方と話し方とが英語の第一次の技能であるから(第一章参照),生徒は,特に初期の課程においては,教師の話し方になれなければならない。こう考えて来ると,中学校においては,一人の教師が一学級に少なくとも一年間専属することが望ましい。
教授時数の配当
英語の学習においては,一時に多くを学ぶよりも,少しずつ規則正しく学ぶ方が効果がある。それで毎日一時間一週六時間が英語学習の理想的な時数であり,一週四時間以下では効果が極めて減る。
特に中学校においては,聴き方・話し方・読み方・書き方は別々の時間でなく同じ授業の中で総合的に学習されることが望ましい。
高等学校においては,生徒の興味と土地の情況とによって教授時数を聴き方・話し方・読み方・書き方に分けるのがよい。教授時数の2/3を聴き方,話し方と読み方に当て,あとの1/3を書き方に当てるのも一つの行き方である。
各単元の学習指導法
英語の学習においては,聴き方と話し方とは,読み方と書き方とにさきだつ第一の段階である。
英語の話し方を学ぶことは,英語の音(English sounds)を聞いて,みずからもその音を出してみ,そしてそれをくり返すことである。そのために英語を用いての作文やあいさつや問答などが効果のある指導法であろう。
どんな場合でも,忠実にまねることと,何度もくり返し応用し復習することが望ましい。教師ができるたけ英語で話すばかりでなく,生徒もまたできるだけ英語を話すベきである。
身振り単語絵・実物および模型は,生徒にとってことばと事物とを結びつけるのに役立つ。
二.読み方。
聴き方と話し方とをある程度習得してから読み方にはいるのがよい。すなわち,教科書は,生徒が聴き方と話し方とにかなりなれてから取りあげるべきである。実験によれば,最初の六週間に聴き方と話し方とを学習してから教科書に入るのが最も効果があるという。
以下は指導法の一つの行き方である。
1.原文を短いやさしい文に分ける。
2.それを生徒のすでに知っている単語や連語を用いて話してやる。
3.むずかしそうな部分は何度もくり返してやる。
(二)新しい教材について問答をする。
1.話した教材について多くの問を出す。
2.同じ問をいろいろ形を変えて多くの生徒に問う。
(質問の形式については第七章 単元一(三)を参照すること)
3.生徒は,一人一人答えたり全員いっしょに答えたりする。
(三)読み方。
1.教師が読み方の模範を示す。
2.新しい単語の発音を練習させる。
3.生徒が読み方を練習する。
4.教師のあとについて生徒が全員いっしょに読む。
5.生徒が一人一人読んだり,全員いっしょに読んだりする。
(四)整理。
1.むずかしい部分と形を説明する。
2.日本語になおしてみる。
3.応用の形や丈章を練習する。
4.家庭作業を課す。
三.書き方。
書き方の目的は,中学校では正しくはっきりと書くことであり,高等学校では効果的に書くことである。
生徒は小学校の国語科においてローマ字を学んだかもしれないが,書き方は,聴き方・話し方・読み方をひと通り学んでから始めるべきで,第7学年の終りごろがよいであろう。そして書き方の指導は口頭つづり方・習字・書取から始めて作文に移って行くのがよい。
英語で書くということが大切なので,いわゆる和文英訳はあまりとりあげなくてもよい。高等学校では作文と文法とを総合して扱い,しあげとして創作を課す。
2.教師はときどき集まって,教科目・教科書・教材・学習指導法・学習結果の考査およびこの「学習指導要領」その他の事項について討論することが望ましい。
3.英語の授業は平常から他の教師がいつ見に行ってもよいことにしておきたい。
4.また定期に公開授業を行い,率直にして建設的な批評会を開きたい。
5.教師は他の学校の授業を見るのがよい。
6.教師も自分の英語,特に発音をみがくべきである。教師の英語は生徒に対して模範とならなければならない。