第一章 英語科教育の目標

 

一.英語で考える習慣を作ること。

 英語を学ぶということは,できるだけ多くの英語の単語を暗記することではなくて,われわれの心を,生まれてこのかた英語を話す人々の心と同じように働かせることである。この習慣(habit)を作ることが英語を学ぶ上の最初にして最後の段階である。

 英語で考えることと翻訳することとを比較してみよう。前者は英語をいかに用いるかということを目的としているが,後者は古語を学ぶときのように,言語材料を覚えることに重点をおいている。前者は聴き方にも,話し方にも,読み方にも,書き方にも注意しながら英語を生きたことばとして学ぶのに反して,後者は書かれた英語の意味をとることにのみとらわれている。ここにおいて,英語で考えることが,英語を学ぶ最も自然な最も効果的な方法であることは明らかである。

二.英語の聴き方と話し方とを学ぶこと。

 英語で考える習慣を作るためには,だれでも,まず他人の話すことの聴き方と,自分の言おうをすることの話し方とを学ばなければならない。聴き方と話し方とは英語の第一次の技能(primary skill)である。

三.英語の読み方と書き方とを学ぶこと。

 われわれは,聴いたり話したりすることを,読んだり書いたりすることができるようにならなければならない。読み方と書き方とは英語の第二次の技能(secondary skill)である。そして,この技能の上に作文と解釈との技能が築かれるのである。

四.英語を話す国民について知ること,特に,その風俗習慣および日常生活について知ること。

 聴いたり話したり読んだり書いたりする英語を通じて,われわれは英語を話す国民のことを自然に知ること(information)になるとともに,国際親善を増すことにもなる。