第四節 書 き か た
書きかたは、鉛筆とペンと毛筆で、文字(ひらがな・かたかな・漢字・ローマ字)を書く技能を習得し、日常の生活で、文字表現をするばあいにことかかないようにする学習である。書く技能としては、文字を正しく書くことであり、読みやすく、美しく書くことである。しかも、これらの文字は、いたずらに時間を長くかけることではなく、できるだけはやく書きあげることが望ましい。したがって、書きかた学習は、読みかたや作文の学習といっしょになって行われるものである。
書きかた学習によって、次のようなことが理解されるとともに、児童の身についていくであろう。
(二) 視写し、聴写する能力が増していく。
(三) 実用文の書式・ていさいがわかる。
(四) 用具(鉛筆・ペン・毛筆)の正しいつかいかたがわかる。
(五) 文字を書くときの姿勢がととのってくる。
(六) 文字の美を感得してくる。
(七) 文字を書く興味と楽しみとがやしなわれていく。
二 書きかたの学習指導上の注意
従来、書きかたの学習指導は、一定の手本が与えられ、これを臨書して、できるだけもほうしていくことであった。しかし、これは児童の個性や独創性をおさえがちになるから、なるべく、児童の自発的な活動にまって、文字の書きかたを習得させるように導くべきである。したがって、手本は、その手がかりとなるのであり、一つの標準を示すものであることを考えねばならない。一点一画を書くことに腐心して、ただ技巧的専門的技能習得におちいることなく、国語学習において、その基礎ともなる表現能力を高めることに指導の重点をおかねばならない。
作文を書くときにあたり、豊かな想のでるままに、これを文字に書き写しうるような書写力をやしなっておきたい。
また、日常生活において、手紙・日記、その他の文字表現をするにあたり、なんの不自由もなく、その時、その場に応じた、文字が書き表わせるだけの技能も授けたい。ただし、書きかた学習は、絶えざる努力によって向上するものであることを思い、国語科学習時において、たとい短時間でも、つねにこれを行うことがたいせつである。したがって、意志力と忍耐力とが必要となるであろう。
三 小学校の一、二、三学年の段階
入学した児童は、まだ文字を読むことも知らず、書くこともわきまえていないものが多い、しかし、絵画や実物や話しあいなどを手がかりとして、だんだん文字を知り、これを求めて読むようになる。文字によって書くことに興味を感じてくる。教師はこの時機を待つことがたいせつであって、むりに文字を与えることはさけなければならない。文字は、むずかしいものであるという印象を与えずに、むしろ、おもしろいものであり、たいせつなものであり、また、便利なものであることを発見させ、自覚させるようにしむけていきたい。
そうして、主として、ひらがなをまちがいなく書けるようにし、進んでは、かたかなも書け、漢字もまじえて書けるようにしていく。この際、できるだけよくわかる文字であること、筆順を違えぬこと、鉛筆の持ちかたや姿勢などを正しくすることを忘れないようにする。
(二) 一、二、三学年学習指導要領。
(2) 掛図や絵画や、写真などにわかりやすく説明の文字を書いておく。
(3) 国語教科書に親しんでいく。
(4) 児童は、ことばを表わす文字の群を全体として見ることが多く、個々の文字に分けて考えることはむずかしい。それで、単音節のことば、二音節・三音節のことばなどを示して、次第に発音と文字との関係をわからせるようにする。
(5) 鉛筆を持って書くまえに、空書を数多くさせて、腕や手首の筋肉運動になれさせる。
(6) 人さし指で、机の上などに書く練習を何回もくり返して練習させる。
(7) ふとい鉛筆を持たせて大きく文字を書かせる。
(8) このような練習に、興味のわくようなしかたをくふうして、おもしろく学習させることが肝要である。
2 さらに発展した時期における学習指導。
この段階では、文字を書くための基礎ともなる技能を習得させるのがその目あてである。そのおもなるものを次にかかげてみよう。
イ 胸を机におしつけぬこと。
ロ あまり目を低くさげないこと。
ハ 左手を紙上にのせ、左ひじをまえにはらぬこと。
(2) 鉛筆のつかいかた
イ 鉛筆は軽く持ち、あまり下を持たせない。
ロ おちついて鉛筆を運ぶ。
ハ 鉛筆をなめない。
ニ 四五字書いては少しずつまわして、鉛筆のしんの新しいりょう角を利用して書く。
ホ えんぴつの持ちかたや運びかたを直すのは、児童が書いている時、個々の子どもについて正すがよい。
へ 持ちかたの不自然さがなおしにくい時には、気楽に曲線とか丸とか種々の形を書かせて自分でくふうさせてみる。
(3) 文字について。
イ ひらがなを主として、このほか、かたかなや漢字を書くことを練習する。
ロ 漢字は国語教科書にでるものにしたがって学習していく。
ハ 字形を正確にその筆順をよく会得させる。
ニ 字の大きさは、五分方形ぐらいから、四分方形ぐらいにするのが適当である。
ホ 漢字まじりの文を書くときには、かなは漢字よりもいくぶんちいさめに書く。
へ 句読点やかぎなどの書きかたについても学習する。
ト 漢字については、その字形に気づかせ、へん・つくり・かんむり・くつなどをおもしろく発見させ、記憶に訴えるように導く。
チ いろいろと文字を比べさせて、その正否や美醜などを見わける力をやしなっていく。
3 書きかた学習の行われるばあいは、次のような時である。
(2) 自分の持物に名を記入しておくようなとき。
(3) 絵日記などの文字を書くとき。
(4) かんたんな手紙などを書くとき。
(5) 黒板などにはくぼくで文字を書くとき。
(6) 国語教科書の文を、視写したり聴写したりするとき。
(7) プログラムや、ポスターや、かべ新聞などをつくるとき。
(8) 紙しばいや絵巻物を作るとき。
(9) 作文を書くとき。