第六章 第七学年の農業指導

 

 第七学年は,指導の重点を「食糧作物はどんなにしたら増産できるか。」におき,第六学年までの理科の基礎の上に立って,科学的に作物の栽培を行うのである。しかし実際の栽培にはいる前に,まず,「私たちは何を学ぶか」の単元において,この農業の学習が,将来農業に従事するものにとってたいせつであることはいうまでもないが,農業にしたがわないものにとっても極めてたいせつであることを学び、これに対する興味と希望とをよび起して,自発的に学習するきっかけを作ることが望ましい。次に,「作物の栽培にはいる前にどんなことを知らなければならないか」の単元において,作物と気候・土地というような栽培環境との関係のあらましを学び,また,作物と栽培環境との間に立って作物を育てる人の働きを自覚し,気象の継続観察,及び第七単元を冬になって指導する準備としての果樹の若枝の継続観察にとりかかるのである。こうしているうちに,苗代の季節が近づくので「稲作」の単元にはいり,稲は,わが国で最もたいせつな食糧であることを学び,苗代の種まきにはいることになるのであろう。この苗代の仕事が一切れになるころは,なす・かぼちゃのような夏の野菜を植えつける時期がくるから,「野菜の栽培」という単元で,人は米や麦だけでなく、ビタミンや無機塩類の給源として,一年じゅう新鮮な野菜をたべなければならないことを学んで,野菜の栽培にとりかかることになろう。夏の野菜の植え付けがすみ,すっかり根づくころは,秋だいずの種まきの時期になる。そこで「豆と雑穀」という単元を取り上げ,米・麦や野菜のほかに,なお,たんぱく質の給源としてだいずが極めてたいせつな食糧であることを学び,だいずの栽培にはいることになる。そうして,栽培上だいずとよく似た性質をもっている雑穀も,土地により,時によってはたいへんよい食糧作物であることを知って,郷土に適する雑穀の栽培にとりかかる。

 このようにして始めたそれぞれの単元の後の仕事,即ち田植えや田の草取り,その他の手入れ,菜・だいこんの栽培,秋まき野菜の種まき,稲のとり入れなどの仕事を次から次へと行っているうちに,麦まきの季節になる。そこで「麦作」の単元を取り上げ,裏作として麦がたいせつであることを学び,麦まきをすることになろう。そうして,冬が近づいてくると,夏から栽培してとり入れた野菜の貯蔵について学び,なまのまま貯えたり,干して貯えたり,つけて貯えたりすることを実際に行うことになろう。

 ま冬になったら,単元「果樹の栽培」を取り上げ,野菜と同様にビタミンや無機塩類を多量に含んでおり,しかも,なまのままでたべることができることや,傾斜地利用の点から果樹栽培の必要を学び,春から継続観察してきたことをもととして整枝せん定を行い,その他の手入れをすることになる。

 春が近づいてくると,前に夏の野莱を栽培した経験にもとづいてよい苗を育てるため,苗床を作る。また,今までいろいろな角度から,それぞれの食糧作物のたいせつなことを学んだのであるが,更に,単位面積当たりの熱量生産量が最も多いものという点から,単元「さつまいも と じゃがいも」の学習にはいり,苗床で学んだところをもととして,さつまいもの苗床を作ったり,じゃがいもの植え付けをしたりすることになる。

 第七学年の学習は,このように,季節を追って,幾つかの単元が次から次へと現われてくるのであるが,秋まきの野菜・麦・果樹(第八学年一箇年を通じて栽培する)・さつまいも・じゃがいもなどの栽培の仕事は,なお第八学年にもちこすことになる。中でも,秋まきの野菜の一つであるねぎや,さつまいもは,第八学年にはいってから植えつけて,本格的な栽培を始めるわけであるし,麦刈りもまた,いろいろな問題を含んでいるから,これらは第八学年で「経営と栽培技術はどんな関係があるか。」という単元の指導に当たって,その素材として取り上げることになろう。

 第七学年における単元に対する時間数割当の数例を示せば次のとおりである。
 
単  元
標  準
水田地帯
畑作地帯
都  市
1.私たちは何を学ぶか

2.作物の栽培にとりかかる前にどん
  なことを知らなければならないか

3.稲  作

4.野菜の栽培

5.豆と雑穀

6.麦  作

7.果  樹

8.さつまいもとじゃがいも

4%


 

20

35

12

10

4%


 

30

25

12

10

4%


 

15

40

12

10

5%


 

10

45

10

10

 

単元 1 私たちは何を学ぶか

1.目  標

 

2.指 導 法

 

3.学習結果の考査

 

単元 2 作物の栽培にとりかかる前にどんなことを知らなければならないか

1.目  標

2.指 導 法  

3.学習結果の考査

 

単元 3 稲  作

 この単元は,次の四つの小単元に分けて学習すると都合がよいであろう。この単元を学習するきっかけとして「小単元1.わが国の稲作」苗代を中心として「小単元2.丈夫な苗」,田植えとその後の手入れを中心として「小単元3.米の増産」,取り入れやその後の調査・考察を中心として「小単元4.取り入れ」に分けると都合がよい。

 実際の学習に当たっては,このおのおのを更に,端緒の段階,理解の段階,発展・応用・練習の段階を備えた数箇ずつの小単元に分けて考えることができるであろう。

1.目  標

 

2. 指 導 法 

 

3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)

 

単元 4 野 菜 の 栽 培

 この単元は各種の野菜のそれぞれの栽培法を含むので一応「小単元1.夏の野菜」「小単元2.菜とだいこん」「小単元3.秋まきの野菜」「小単元4.野菜の貯蔵」「小単元5.苗床」の五つの小単元に分けて指導するのが都合よいであろう。

 なお,このそれぞれの小単元がいっそう小さな幾つかの単元に分けて考えられることはいうまでもない。

1.目  標

 

2.指 導 法

 

3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)

 

単元 5 豆 と 雑 穀

1.目  標

 

2.指 導 法

 

3. 学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)

 これについては,第五章や,この章の単元3,4を参考にするとよい。

 

単元 6 麦  作

1.目  標

 

2.指 導 法

 

3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)

 

単元 7 果  樹

1.目  標

 

2.指 導 法

 

3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)

 この単元においては,特に栽培理論とその応用のおもしろさを味わうことがたいせつであるから,そのおもしろさを果たして体験したかどうかを考査することが有意義であろう。たとえば,もものせん定において,どこでどう切るかを,教師が説明に使わなかった木についていわせてみる,なぜそこで切るかを答えさせる。またこの木の下で,実際の木を対象としてどこを切るか,なぜ切るかなどと話し合ってみることは,生徒の学習にはもちろん望ましいことであるが,結果を考査する上にも有意義なことである。

 

単元 8 さつまいもとじゃがいも

1.目  標

 

2.指 導 法

 

3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)