第七学年は,指導の重点を「食糧作物はどんなにしたら増産できるか。」におき,第六学年までの理科の基礎の上に立って,科学的に作物の栽培を行うのである。しかし,実際の栽培にはいる前に,まず,「私たちは何を学ぶか」の単元において,この農業の学習が,将来農業に従事するものにとってたいせつであることはいうまでもないが,農業にしたがわないものにとっても極めてたいせつであることを学び、これに対する興味と希望とをよび起して,自発的に学習するきっかけを作ることが望ましい。次に,「作物の栽培にはいる前にどんなことを知らなければならないか」の単元において,作物と気候・土地というような栽培環境との関係のあらましを学び,また,作物と栽培環境との間に立って作物を育てる人の働きを自覚し,気象の継続観察,及び第七単元を冬になって指導する準備としての果樹の若枝の継続観察にとりかかるのである。こうしているうちに,苗代の季節が近づくので「稲作」の単元にはいり,稲は,わが国で最もたいせつな食糧であることを学び,苗代の種まきにはいることになるのであろう。この苗代の仕事が一切れになるころは,なす・かぼちゃのような夏の野菜を植えつける時期がくるから,「野菜の栽培」という単元で,人は米や麦だけでなく、ビタミンや無機塩類の給源として,一年じゅう新鮮な野菜をたべなければならないことを学んで,野菜の栽培にとりかかることになろう。夏の野菜の植え付けがすみ,すっかり根づくころは,秋だいずの種まきの時期になる。そこで「豆と雑穀」という単元を取り上げ,米・麦や野菜のほかに,なお,たんぱく質の給源としてだいずが極めてたいせつな食糧であることを学び,だいずの栽培にはいることになる。そうして,栽培上だいずとよく似た性質をもっている雑穀も,土地により,時によってはたいへんよい食糧作物であることを知って,郷土に適する雑穀の栽培にとりかかる。
このようにして始めたそれぞれの単元の後の仕事,即ち田植えや田の草取り,その他の手入れ,菜・だいこんの栽培,秋まき野菜の種まき,稲のとり入れなどの仕事を次から次へと行っているうちに,麦まきの季節になる。そこで「麦作」の単元を取り上げ,裏作として麦がたいせつであることを学び,麦まきをすることになろう。そうして,冬が近づいてくると,夏から栽培してとり入れた野菜の貯蔵について学び,なまのまま貯えたり,干して貯えたり,つけて貯えたりすることを実際に行うことになろう。
ま冬になったら,単元「果樹の栽培」を取り上げ,野菜と同様にビタミンや無機塩類を多量に含んでおり,しかも,なまのままでたべることができることや,傾斜地利用の点から果樹栽培の必要を学び,春から継続観察してきたことをもととして整枝せん定を行い,その他の手入れをすることになる。
春が近づいてくると,前に夏の野莱を栽培した経験にもとづいてよい苗を育てるため,苗床を作る。また,今までいろいろな角度から,それぞれの食糧作物のたいせつなことを学んだのであるが,更に,単位面積当たりの熱量生産量が最も多いものという点から,単元「さつまいも と じゃがいも」の学習にはいり,苗床で学んだところをもととして,さつまいもの苗床を作ったり,じゃがいもの植え付けをしたりすることになる。
第七学年の学習は,このように,季節を追って,幾つかの単元が次から次へと現われてくるのであるが,秋まきの野菜・麦・果樹(第八学年一箇年を通じて栽培する)・さつまいも・じゃがいもなどの栽培の仕事は,なお第八学年にもちこすことになる。中でも,秋まきの野菜の一つであるねぎや,さつまいもは,第八学年にはいってから植えつけて,本格的な栽培を始めるわけであるし,麦刈りもまた,いろいろな問題を含んでいるから,これらは第八学年で「経営と栽培技術はどんな関係があるか。」という単元の指導に当たって,その素材として取り上げることになろう。
第七学年における単元に対する時間数割当の数例を示せば次のとおりである。
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1.私たちは何を学ぶか
2.作物の栽培にとりかかる前にどん
3.稲 作 4.野菜の栽培 5.豆と雑穀 6.麦 作 7.果 樹 8.さつまいもとじゃがいも |
4
20 35 12 10 8 7 |
4
30 25 12 10 8 7 |
4
15 40 12 10 8 7 |
5
10 45 10 10 8 7 |
単元 1 私たちは何を学ぶか
1.目 標
(2) わが国の農業はどんな特徴をもっているかを理解する。
(3) わが国の農業はどんなところを改良しなければならないかを理解する。
(4) 今日は農業改良の機会であることを理解する。
(5) 農業を改良し,再建日本の基礎を固めるのは自分たちの務めであることを自覚する。
(6) 科学的・能率的・集約的な新しい明かるい農業・農村を築き上げることに希望をもつようになる。
(7) 新しい明かるい農業・農村を築き上げるには,農業を科学的に学ぶ必要があることを理解する。
(8) 作物・家畜はどんなにしてできたか,野生のものとどこが違うかを理解する。
(9) 農業の学習によって,いろいろな産業・職業や仕事を体験し,理解するようになることに気づく。
(10) 農業で学習することの中には,日常生活に役立つ技能や知識が少なくないことを知る。
(11) 農業の学習によって,生命を愛育する態度を身につけることは,どんな職業に向かうものにとっても,極めてたいせつであることを理解する。
2.指 導 法
ロ.わが国及び郷土の農業の発達史を調べる。
ハ.わが国及び郷土の農業が今後どのように変わらなければならないかを新聞・ラジオ・書物・討議・聴講によって研究する。
ニ.郷土の職業の変遷及び相互依存の関係を調べる。
ホ.郷土で発見された石器・土器や,開発の歴史を示す掛図などを準備する。
へ.予備調査 生徒の家庭の職業,田畑の有無・多少,生徒の農業に関する経験・知識,生徒の近所や知人の職業などを調べておく。
生徒は将来の職業としてどんなものを希望しているか,またはどんな職業にどの程度きまりかけているかを調べる。
ト.この単元は教科書その他の読み物を中心に進められるものであるから,教師は,地方の事情や生徒の将来を考えて,この単元の目標のどれが強調されなければならないかをきめ,むだのない能率的な学習かできるようにする。
目標(1)から(8)までについて
(ロ) 郷土で発見された石器・土器などを調べ,近くにこれらの出るところがあったら見つけに行く。先人がいつごろどんな生活をしていただろうかを話し合う。
(ハ) 昔の農業について,書物を読んだり,話を聞いたりする。どんな機会に発達したかを話し合う。
(ニ) 郷土の古い農具を見たり,昔の農業の話を聞いたりして,どんな動機で改良されたかを研究し,話し合う。
(ホ) 農業改良の結果,農産物の生産や人々の生活はどんなに変わったかを研究する。
(へ) わが国の農業と外国の農業とを比べ,どんなところが違うか。なぜ違うかについて,読む,聞く,話し合う。
(ロ) 熱心な人の新しい経営の話を聞く,見に行く。
(ハ) わが国の農業はどう改良されなければならないかについて話し合う。
(ニ) 郷土の農業や農村の生活はどうなったらよいか,その理想や可能性について話し合う。
(ロ) 将来の農業や農村はどうあったらよいか,そうするために自分たちはどんな役割を果たさなければならないかについて話し合う,論文を書く。
(ロ) これらの産業・職業がどんなにして,またなぜ分化発達しただろかについて読む,聞く,話し合う。
(ロ) 農業の学習と日常生活との関係について話し合う。
(ハ) それぞれの産業はどんなに社会のためになっているかを話し合う。
(ニ) 職業は個人のため,社会のためにどんな意義をもっているかを話し合う。
(ロ) 農業以外の職業に向かっている人について,若い時に農業をやったため,よかったこと,悪かったことを聞いて,その結果をもち寄って話し合う。
3.学習結果の考査
(2) 将来の農業・農村に対する理想はどう変わってきたか。
(3) 農業学習の意欲はどう変わってきたか。
単元 2 作物の栽培にとりかかる前にどんなことを知らなければならないか
1.目 標
(2) 土地土地の気候は,どんな条件によって特徴づけられるかを理解する。
(3) 気象観測の仕方や,これを図表に表わすことになれる。
(4) 土の中の湿りけや空気の量は,作物の育ち方にどんな影響を与えるかがはっきりする。
(5) 土の中の湿りけや空気は,どんな条件によって違うかを理解する。
(6) 耕すことの意義を理解する。
(7) くわ・肥おけその他の農具の正しい使い方が身につく。
(8) 肥料として三要素を補ってやる必要があることを理解する。
(9) 土の働きについて理解する。
(10) おもな肥料には,肥料成分がどんな割合で含まれているかを知る。
(11) 下肥やたい肥の使い方がじょうずになる。
(12) 農業技術の第一歩は,慈愛の目をもって作物家畜を見守るにあることを理解する。
(13) 果樹の枝の伸び方を知る。
(14) 根気よく継続観察をするようになる。
(15) 道具や作業場を常に整とんしておくようになる。
(16) 作物・家畜を愛育する態度が身につくようになる。
ロ.これらの気候の違いによる作物栽培の違いを数字的に研究しておく。
ハ.できるだけ気象観測の設備(百葉箱など)を設けておく。
ニ.気象観測の仕方を研究しておく。
ホ.郷土の土や地下水について下調べをしておく。
へ.郷土のいろいろなくわを集め,使いみちの違い,他地方との違いを調べておく。
ト.くわや肥おけ・肥ひしゃくなどの正しい使い方をいろいろな人について研究し,熟練しておく。
チ.よく腐った下肥,腐りはじめの下肥を準備しておく。
リ.昔からの熱心な栽培家の事績や逸話を調べておく。
ヌ.くわの使い方の基本練習をするため,平起しをするのに都合のよい場所を予定しておく。
ル.予備調査
(ロ) くわや肥おけなどの農具は今までどんな使い方をしていたか。これを正しく使うようにするには,どれくらいの努力がいるか。たとえば,体力のできないころはくわを使ったり,物をかついだりするのに,とかく,きき腕・きき肩だけを使っている場合が多いが,もうこのころになると正しく使うことができるし,このころになおさないと悪い習慣が,身についてしまう。したがって,農業学習の最初に当たって予備調査をして出発するのである。
ワ.継続観察など,生徒が忘れたり,なまけたりするようなときも,その機を失うと,あとで取り返しがつかなくなる。気象観測のようなものはともかく,その他のものは教師がこれに代わってやるよりも,むしろ生徒が気づいたり,自発的にやるように仕向けることの方かたいせつである。
カ.生命の愛育は,教師が率先してその範を示すべきであるが,それが常に生徒の愛育の念を盛んにするかどうかを考えてゆくことがたいせつである。教師だけが熱心で,生徒がこれについてこないようになっては,本末を誤ることになるであう。
目標(1)から(3)までについて
寒い地方の特産物,暖かい地方の特産物,冬に作られる作物,夏に作られる作物などについて話し合う。
ロ.理解のために
(ロ) 他の地方のものと比べて,どんなところが違うか。またその違いが作物の栽培の上にどんなに現われているか話し合う。たとえば,この村の積雪期間はどれくらいであって,湿田でなくても田の裏作として麦を作ることはむずかしいが,あの村は積雪期間が短いから,裏作麦の面積は田の面土の何割に及んでいるというようなことを話し合う。
(ハ) 郷土の気候の特徴はどうして起るかを,緯度・標高・傾斜,山や海のある方角などについて話し合う。これらの要素と気候との関係について書物を読む,話を聞く。
(ニ) 気象観測の仕方を研究する。
(ホ) 観測の結果の記入法を研究する。
(ヘ) 当番をきめ,一年間観測を続ける。
(ロ) もっと暖かい土地,寒い土地では,郷土の今ごろのような気温になるのはいつごろか,平均気温の図や表をみて調べる。
イ.端緒として
(ロ) 土はその中の水分や空気を調節するためにどんな働きをしているか,どんな所が湿りやすく,どんな所が乾きやすいか。
(ロ) 郷土の所々の地下水の水位について,掘ってみたり,井戸水で判断したり,その附近の人々に聞いたりする。
(ハ) 土の湿りぐあいと,そこによく育つ作物の種類について話し合う。
(ニ) 水分や空気が土の中に適度に含まれるようにするには,どうしたらよいか話し合う。
(ホ) 一度耕した土地も,長くたてば土粒の結合はどんなになるかを話し合う。
(へ) 田畑を耕すには,土の湿りぐあいのどんなときがよいかについて経験を話し合う。実際に耕して結果をみる。
(ト) 郷土にあるいろいろなくわを調べる。種類と用途,昔と今,他地方との違いなどについて見る,聞く,話し合う。
(チ) 同じ用途のくわについて,柄の長さ,さきの長さ,柄とさきのなす角度,全体の目方などと,仕事の難易,仕事のできばえ,使う人の疲労などとは,どんな関係があるか,聞く,話し合う,ためしてみる。
(リ) 台の有無やさきの形と仕事との関係などについても見る,聞く,話し合う。実際に使ってみる。
(ヌ) くわの柄の材料,形,柄の入れ方,くさびの打ち方について見る,聞く,ためしてみる。
(ル) どんな仕事にはどんなくわがよいか話し合う。
(ヲ) 更に,他地方のものを取り入れた方がよいか。または新しく改良した方がよいかを話し合う。
(ワ) くわの持ち方・打ちこみ方・姿勢などについて教師の模範を見る,研究する。
(カ) くわを使う前の準備や使ったあとのしまつ,置き場所・置き方について話し合う。約束する。
(ヨ) 肥料を土に与えるのは,なんのためかを話し合う,話を聞く,書物を読む。
(タ) それぞれの肥料は,おもにどんな成分を土に与える上に役立つか話し合う。
(レ) 肥料成分表を参考にしながらどんな肥料をどんなに組み合わせたら,三要素を適度に与えることができるかを話し合う。
(ソ) 郷土ではどんな肥料をどんなに組み合わせて使っているかを調べる。
(ツ) つみ肥はどんな肥料かを聞く,話し合う。
(ネ) 下肥は色・におい・塊の溶けぐあいがどんなになったのを使ったらよいか聞く,見る,話し合う。そうして,幾日ぐらいでその程度になるか,それが気温とどんな関係があるか聞く,ためしてみる。
(ナ) 下肥は何倍ぐらいにうすめて使ったらよいか,教師や村の人に聞く,農家の実際を調べる。
(ラ) 肥おけのかつぎ方,くみ入れ・くみ出しや,肥ひしゃくの使い方について農家の方法を調べ,どんなにしたらよいかを話し合う。
熱心な栽培家はどんなに作物を愛していたかについて,書物を読んだり,教師の話を聞いたりする。
ロ.理解のために
(ロ) 果樹の芽について,次のようなことを,一人一人が学校の果樹か自分の家の果樹の一,二種類について,毎週または毎月調べ,写生したり,記録したりする。
《イ》 どんなところから出た枝がよくのびるか。
《ロ》 幾技おきに,同じ方向にのびる枝が出るか。
《ハ》 どんなところに出た枝に花が多くつくか。
《ニ》 来年の花はどこにつくだろか。
《ホ》 枝をきりつめたら,芽ののび方はどんなに変わるか。
《ヘ》 枝を曲げたら,芽ののび方はどなるか。
(ロ) 熱心な農家はどんな動機で,農業に興味をもつようになったか調べる。
(ハ) いろいろな果樹について,芽ののび方や花のつき方を調べて報告を書く。
3.学習結果の考査
(2) 気象観測は往々粗雑になりやすく,時として,あとから適当な数字を記入するというようなこともある。したがって,幾組かに独立して別々に観測させたり,教師自身も観測して生徒のものと比べ,誤差ができたときは直ちに原因をつきとめるようにする必要がある。
(3) 作業の習慣・技能については,作業ぶりを常に見ていて,一人一人が学級でどんな順位にあるか,一人一人がどんなに変わってきたか,学級全体はどんなに変わってきたか,他の学級や大人に比べてどうであるかというようなことを,一箇月または半年ごとに,記述尺度法や比較法によって調べる。
単元 3 稲 作
この単元は,次の四つの小単元に分けて学習すると都合がよいであろう。この単元を学習するきっかけとして「小単元1.わが国の稲作」,苗代を中心として「小単元2.丈夫な苗」,田植えとその後の手入れを中心として「小単元3.米の増産」,取り入れやその後の調査・考察を中心として「小単元4.取り入れ」に分けると都合がよい。
実際の学習に当たっては,このおのおのを更に,端緒の段階,理解の段階,発展・応用・練習の段階を備えた数箇ずつの小単元に分けて考えることができるであろう。
1.目 標
(2) 東部アジアの気候と稲作との関係を理解する。
(3) わが国の稲作と世界各地の稲作とは,どんな点が違うかを理解する。
(4) わが国の稲作が品種の改良と栽培法の改良によって,だんだん北の方まで拡がっていったことを通して,よい品種,よい栽培法は土地によって違うこと,品種改良には選択による方法や交雑する方法があることを理解する。
(5) 郷土でよいといわれている品種はどういう品種かを知る。
(6) 種を選ぶこと,種の消毒をすること,種を侵すことの意義及びその方法を理解し,技能を会得する。
(7) 種もみの量の計算の仕方を理解し,その方法を会得する。
(8) 苗代の作り方や水のかけ引きによって,苗を保護する方法を理解し,その技能を身につける。
(9) 本田の打ち起しの時期と,労力,土の性質,肥料の分解などの関係を理解し,田の打ち起しがじょうずになる。
(10) 水田の上層の観察を通して,作り土の深さと収量,すき床のできる理由,すき床の働き,冷害地帯における床じめの必要などを理解する。
(11) 田の作り土を乾かすと窒素のききめが現われてくること,湿田では特にその効果が著しいことを理解する。
(12) 硫安や下肥などは、田の土の浅いところに入れておいたのでは窒素分が逃げてしまうおそれがあること,田の荒起しのすぐあとでこれらの肥料を入れると,作り土全体によくまざるから,損失は少ないことなどを理解する。
(13) 稲作には用水設備がたいせつであって,昔から苦心して行われているが,今後もこれに努力する必要があることを理解する。
(14) そろった稲を育てることは増産の第一歩であって,田の肥えた所,やせた所のむらをなくすること,深植えにしないこと,整条植えにすることなどは,いずれもそのよい方法であることを理解し,代かきや田植えがじょうずにできるよになる。
(15) 田植えにちなんで,仕事に熱練することの必要を理解し,そのくふうをするようになる。
(16) 田の草取りの効果を理解し,じょうずに草取りをするようになる。
(17) 株張り(分げつ)について,穂を出す茎を多くすること,穂を出さない茎を少なくすることの方法を理解し,その技能を身につける。
(18) 穂のできる時期の考察をもととして,穂肥の必要の有無,冷水のかかる田の手入れなどを理解し,その手入れの技能を身につける。
(19) 穂ばらみから穂の傾くころまでは,田の水は十分いることを知る。
(20) うんかについて,田の中央部に発生しやすいことと,早いうちに退治すべきことを理解し,田面に油を注いで防ぐ方法をおぼえる。
(21) ずいむしについて,天敵との関係,誘蛾灯(ゆうがとう)や幼虫捕殺の時期・方法,三化ずいむしを遅まき・遅植えで防ぐことができることなどを理解する。
(22) いもち病発生の危険があるときは,あらかじめ察知してボルドー液をかければ防げることを理解し,ボルドー液を作ること,かけることになれる。
(23) 稲穂の数,もみ粒のつきぐあいによる収穫予想の方法を理解する。
(24) 坪刈りによる収穫予想を理解し,実際にできるようになる。
(25) 稲刈りの時期はいつがよいかを見きわめることができるようになる。
(26) 稲こきが,こきばし・千歯・足踏み稲こき・動力稲こきから更に能率的な自働式のものに,だんだん発達したことを通して,著しく能率が高まったこと,改良は一歩一歩行われたこと,必要が改良を生んだことなどを理解する。
(27) 稲こき機械のそうじを通して,油をさす理由,歯車の考察,直線運動を回転運動に変えるしかけ,加速度などについて理解する。
(28) もみすり歩合を知る。
(29) 作がらの良否の比較によって,栽培法の巧拙,天候と栽培品種,栽培法の関係を理解する。
2. 指 導 法
(2) 土地の事情によっても違うが,多くの場合,第七学年から水田をこまかく分けて少人数の生徒が分担するということは困難であるから,分けても学級単位ぐらいまでであろう。しかし,生徒がみんな自分で作るつもりになって,稲作全体のあらましをのみこんでいて,たとえば,いねがどんなに育つだろうと思って見に行ったら水が乾いていたような場合,水がかれて田にはいらなくなったのだとわかったら,すぐ水を導きに行く。また特に,水をほしているらしく思えたら,なぜほしているのかを教師にたずねに行くくらいに指導することが望ましい。
第八,第九学年で,選択的に,自由研究的に稲作を行う場合は,生徒が組を作って,なるべく少人数で受け持って行えるようにしたいものである。
(3) 畑作地帯とか都市などでは水田を得ることがむずかしいから,この単元の学習は,説明や問題を中心として,これに必要に応じて,栽培試験・見本栽培,見学や農家への手伝いなどの活動をとり入れて進めることができるであろう。
(4) 教師の準備と活動
ロ.新しい稲作技術や,特殊な栽培技術を研究し,それが郷土に入れられるかどうか,郷土に取り入れるには,特にどんな点に注意しなければならないかを研究する。
ハ.郷土の稲作の実情を調べ,改良すべき点はどこにあるか,理にかなっていると思われる点はどこにあるかを研究する。
ニ.実際の仕事に熟達する。
ホ.一年間にわたる実習の計画,種もみ・肥料・薬剤などの準備の計画を,他の単元,他の実習と組み合わせて図表に表わし,実習や観察の時期を失ったり,手違いをしたりしないようにするとともに,生徒もはじめからその全体をのみこんで自発的な活動をするきっかけにするがよい。なお,この中に,学習計画まで織りこむことができればいっそう便利である。
ヘ.実験はできるだけ発見的に行うことが望ましいが,常にこの方法で学習を進められるとは限らない。たとえば,田の土を一度乾かすと,土の中の窒素分が作物の吸収できる形に変わることを実験する場合,このころの生徒は化学的に定量実験をするわけにはいかないから,栽培によって理解するよりほかに道がない。したがって,数箇月の後でなければ結果が出ない。この結果を待って,田の土を乾かして稲を作るというようなことはできないから,はじめにこのことを教え,あとで植木ばちなり,水田なりを使って,証明的な実験をするような計画を立てなければならない。
目標(1)から(4)までと(13)や(26)などは,単元1の活動に準ずればよいであろうから,その他の目標の学習における活動の一例として,目標(5)から(7)までの学習の活動と,(27)の学習の活動とを次にあげる。
目標(5)から(7)までについて
(ロ) 去年の第七学年生の稲作は,ある学級は非常に成績がよかったとか失敗したとかいう話を教師や上級生から聞く。
(ロ) 県のすすめている品種はどんな品種か,村の人々に聞く,話し合う。教師に聞く。
(ハ) 県のすすめている品種のうち,郷土ではどんな品種を,どんな割合に作っているか。また,それはなぜであろうか。家の人,村の人から聞いた話を持ち寄って話し合う。教師に聞く。
(ニ) 自分たちはことしどんな品種を作ったらよいかきめる。
(ホ) 「苗半作」とはどういうことかを研究する。
(ヘ) どこの田でできたものを種もみにしたらよいか,郷土の人はどんな種もみを使っているか,採種田とはどんなところか聞いてきて話し合う。
(ト) 採種田でとれた種もみを持って来て,違う品種がまざっていたり,雑草の種やごみなどがはいっていたら,どうなるかを話し合って,種もみを調べる。
(チ) ふとったもみと,しなびたもみを選び出して,どちらが芽を育てる養分が多いか,もみがらをはいで比べたり,話し合ったりする。(第四学年,理科参照)
(リ) どちらが丈夫な苗になるかを話し合う。
(ヌ) 丈夫な苗になりそうな種もみだけを選ぶには,どうしたらよいか話し合い,水の中に入れてかきまわしてみる。
(ル) 種もみをもっとたくさん浮かすにはどうしたらよいか話し合う。(第六学年,理科参照)
(ヲ) 液の比重を大きくするには何を使ったらよいか,比重の程度は何で計るか,話し合う。
(ワ) いねやむぎの塩水選の比重の標準を知る。
(カ) 種もみの表面に茶色のまだらのついているのは,いもち病やごま葉枯病にかかったものであること,まだらがなくても,ばか苗病のもとになるかびがついていることがあることや,これらの病気のあらましの性質を聞いて種もみを調べてみる。
(ヨ) 種もみを消毒するには,ホルマリン消毒法・水銀製剤消毒法があることを学び,郷土の方法を調べる。
(タ) 種もみひたしは,何のためにするかを話し合う。
(レ) 何日ぐらい水にひたしておくか,水の温度と関係がないだろうかを話し合う。
(ソ) ひたしておく方法について話し合う。
(ツ) 種もみの量はどれくらいか研究する。
○郷土では本田1㎡に幾株植えるか,一株に何本植えるかを調べ,自分たちはどんなにするかきめて,本田1㎡に何本苗がいるか調べる。
○まいたもみの何割が育つか,聞く,話し合う。
○もみ1lまたは1㎏の粒数はどれくらいか,調べる,方法を話し合う。
(ナ) みんなで手順をきめて塩水選を行う。途中で,比重が変わりはしないか調べる。
(ラ) 種もみの消毒をする。
(ム) 種もみひたしをする。
(ロ) いねの病菌はわらや刈り株にも残っていることを学んで郷土ではその対策をどうしているかを調べ,病気を防ぐ方法をくふうする。
(ハ) 調べたこと,聞いたこと,実習したこと,思いついたことのだいじなことは書きとめておく。
(ニ) 特に立ち入って調べたことなどの報告をかく。
(ロ) 稲こき機械のそうじをする。
(ロ) すりへっている所はどこかを調べ,いっそうすりへったらどうなるか話し合う。
(ハ) すりへりを防ぐにはどうしたらよいか話し合う。
(ニ) 胴の歯がこわれていたらなおす。
(ホ) まわしてみて,踏み板を上下に動かすときは,胴がまわるのは,どんなしかけによるか調べる。
(ヘ) まわりはじめと,勢がついてからとではどちらが楽に速くまわるか,代わり合ってやってみる。
(ト) どんな時に足に力を入れたら,一番ききめがあるか話し合う。
(ロ) 回転軸のすべりをよくするために,特にくふうしてある機械はないか,話し合う。
3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)
単元 4 野 菜 の 栽 培
この単元は各種の野菜のそれぞれの栽培法を含むので一応「小単元1.夏の野菜」「小単元2.菜とだいこん」「小単元3.秋まきの野菜」「小単元4.野菜の貯蔵」「小単元5.苗床」の五つの小単元に分けて指導するのが都合よいであろう。
なお,このそれぞれの小単元がいっそう小さな幾つかの単元に分けて考えられることはいうまでもない。
1.目 標
(2) 野菜の種類と郷土における需給状況を理解する。
(3) 植え付けの距離と,したて方や品種との関係を理解する。
(4) 栽培する土地・季節・目的や病虫害と品種との関係を理解する。
(5) 一代雑種の利用を理解する。
(6) 苗の成長や気温,草木の伸びぐあいと植え付けの時期との関係を理解する。
(7) じょうずな植え付け方を会得する。
(8) なす・きゅうりとかぼちゃ・トマトとは肥料のやり方を違えなければならないことを理解する。
(9) トマトまたはかぼちゃについて,作物の伸び方,苗の植え付け距離,支柱のやり方としたて方の関係を理解する。
(10) 虫退治にはたいせつな時期のあることを理解する。
(11) 害虫の形態・習性によって,それぞれ退治や予防の方法が違うことを理解する。
(12) 害虫を薬剤で殺す方法,捕えて殺す方法,作物によりつかないようにする方法などを理解する。
(13) きゅうりについて,病原によって病徴の違うことを理解する。
(14) きゅうりのべと病の発生と品種や環境との関係を理解する。
(15) ボルドー液の作り方・かけ方を会得する。
(16) トマトについて,ビールスによる病気及びその防ぎ方を理解する。
(17) なすの一代雑種を作りながら,正しく交雑させるくふう,花粉の寿命や,純粋保存の方法を知る。
(18) かぼちゃの純粋種を保存する方法を通して,雑種の第二代以後は分離すること,めしべ・おしべが違う花にあることを理解する。
(19) かぼちゃ・きゅうり・なす・トマトの栽培に習熟する。
(20) 菜やだいこんがたいせつな野菜であることを理解する。
(21) 菜の栽培品種の移り変わりを理解する。
(22) はくさいのよい品種がどうしてできたかを理解する。
(23) だいこんの栽培季節や,用途と品種との関係を理解する。
(24) 菜やだいこんの品種は固定種ではないことと,その保存法や間引きのたいせつなことについて理解する。
(25) 菜やだいこんのまき時は短いことを理解する。
(26) はくさいの練り床利用の必要や方法を会得する。
(27) 菜やだいこんの種まきとかんばつの対策を理解する。
(28) 肥あたりはどうして起るか,また養分はどんなにして吸収されるかを理解する。
(29) だいこんやはくさいの苗の形や色とだいこんの形,はくさいの結球の難易の関係を理解する。
(30) 菜・だいこんの虫退治を通して,虫の種類と被害状況,作物の成長時期と被害状況の関係を理解する。
(31) 菜・だいこんの病気と栽培品種,まき時,肥料のやり方との関係を理解する。
(32) 菜やだいこんの作り方に習熟する。
(33) ねぎ・玉ねぎ・ほうれんそうのような涼しい季節に作る作物のまき時を理解する。
(34) 秋まき・春まきの品種の関係を理解する。
(35) ねぎ・玉ねぎ・ほうれんそうが,それぞれ有用な野菜であることを理解する。
(36) 種の貯蔵期間と,発芽歩合や発芽勢の関係を理解する。
(37) 玉ねぎ作りを通して,霜柱の害の防ぎ方をくふうする。
(38) 栽培距離の意義を理解する。
(39) 玉ねぎの苗の大きさと収量やとうだちの関係を理解する。
(40) ほうれんそうの栽培を通して,酸性の土とその由来及び改良の方法を理解する。
(41) 日の長さととうだちの関係及びその反応が品種によって鋭敏なものとにぶいものとがあることを理解する。
(42) ねぎ・玉ねぎ・ほうれんそうの栽培に熟達する。
(43) 貯蔵の必要なわけを理解する。
(44) 貯蔵中の気温と野菜・果物の呼吸,生活力及び微生物の繁殖との関係を理解する。
(45) 貯蔵中の湿気と野菜・果物の生活力及び微生物の繁殖との関係を理解する。
(46) さつまいもの貯蔵の適温・適湿を知り,これが維持のくふうをする。
(47) 加工することによって貯蔵力を高めることを理解する。
(48) 干燥野菜の栄養価値及び貯蔵力について理解し,その方法に習熟する。
(49) つけ物の栄養価値及び貯蔵力について理解する。
(50) 菜の塩づけについて,塩の多少と熟成,腐敗の関係,おもしの軽重と熟成との関係,つけ物の風味について理解し,その方法に習熟する。
(51) たくあんづけについて,塩の多少と熟成・腐敗の関係,材料と風味の関係や酵素の働きについて理解する。
(52) 苗床の必要を理解する。
(53) 温床はいつごろから作ったらよいかを理解する。
(54) 温床の踏みこみ材料の種類によって熱の出方はどんなに違うかを理解する。
(55) 熱が均一に出るようにするには,どうしたらよいかを理解する。
(56) 踏みこみの固さや,かける水の量によって熱の出る様子がどう違うかを理解する。
(57) 踏みこみの仕方を会得する。
(58) 床土はどんなものがよいかを理解する。
(59) 床土の入れ方を会得する。
(60) 種まきの仕方を会得する。
(61) 種まき後の温床の管理の仕方を会得する。
(62) 床がえの要領を会得する。
(63) つぼみは苗のどれくらいの時にできはじめるかを知る。
2.指 導 法
(2) 野菜の栽培は,たいていの学校は実際に行うことができるであろう。都市などでもわずかの空地を利用して興味ある栽培が行われるに違いない。しかし,往々その収穫物を得ることのみが目的となっている場合があるが,これは今後改められなければならない。収穫物を得ようとすることは,栽培に対する熱意や愛育の念を強く感じるきっかけとなるのであるから,大いに助長すべきであるが,収穫物のみを目的とするのではなく,この上に更に教育的な配慮がめぐらされ,生命の愛育,創意くふう,真理の探求へと発展するようにならなければならない。
(3) 数多い野菜の中で,どんな種類を選ぶかは土地の事情によって違うが,だいたいどこの地方でも栽培することができ,重要であり,しかも,目標とするところを学習するのに都合のよいものは,目標に掲げたような種類の野菜であろう。しかし,このほかのものも大いに取り入れることが望ましい。ただ,その場合は,それによって,どんなことを学習するか,その学習と,他の学習との関係はどうかに注意すべきである。
(4) 教師の準備と活動(単元3稲作の項参照)
(5) 生徒の活動
野菜栽培の端緒としての,目標(1)(2)の学習における活動と,実物に即して研究する目標(11)から(13)までの学習における活動を一例として次にあげる。その他の目標の学習には,これらの例や,稲作の項における例を参考にして計画することができるであろう。また,その場合,教科書も生徒の活動を計画したり,助長したりする上に役立つであろう。
目標(1)(2)について
(ロ) 米や麦だけたべれば生きていられるかどうかを話し合う。
(ハ) 野菜や果物を幾日もたべないでいたことがあるか,野菜や果物を全くたべないでいる人があるかどうかを話し合う。
(ロ) 野菜の中には,でんぷんや,糖分を多量に含んでいて穀物の代用になるものがあることを読む,聞く。
(ハ) でんぷんや糖分はどんな野菜に多いか話し合う。(第四学年,理科参照)
(ニ) ビタミンは新鮮な野菜に多いことを読む,聞く。
(ホ) 一年じゅう新鮮な野菜や果物をたべるためにどんなくふうがされているかを話し合う。
(ヘ) 郷土では,いつごろどんな野菜をたべているか,調べて表にする。話し合って自分で作った表を修正する。
(ト) 郷土では,いつごろどんな野菜がとれるか。調べて表にする。話し合って,自分の作った表を修正する。
(チ) 郷土の山野に食用になる野草としては,どんなものがあるか,調べて表にする。話し合って自分で作った表を修正する。
(リ) 郷土から他の地方へ,いつどんな野菜を送り出しているか,どこへ行って調べたらわかるか話し合って調べ,表にする。
(ヌ) 郷土では,他の地方からいつどんな野菜を買い入れているか,どこで調べたらわかるか話し合って調べ,表にする。
(ル) (ヘ)から(ヌ)までの表をつき合わせて,買い入れている野菜を郷土で作ることはできないか,郷土で野菜の足りない時期にできるような野菜は作れないか,郷土で野菜は合理的に処分されているかどうかを話し合う。
(ロ) 郷土でできる野菜を種類分けしてみる。
(ロ) 苗の小さいうちの害と,大きくなってからの害とどちらが大きいか話し合う。
ころがり落ちる性質を利用して楽に集めるにはどうしたらよいか。
たちまちはい出して逃げるのをどんなにして防いだらよいか。
(ロ) てんとうむしだましを捕える道具をくふうする。持ち寄って批評し合う。
(ハ) 捕えて殺すよりも,もっと能率的な方法はないか話し合う。
(ニ) てんとうむしだましにはどんな薬剤がよいかを話し合う。虫めがねで,成虫や幼虫が葉をたべる様子,食い荒したあとかた,口の形などを調べる。
(ホ) 毒剤を作ってかけ,その結果を調べる。費用はどれくらいかかるか,ききめは幾日ぐらい続くか調べて,話し合う。
(ヘ) あぶらむしは繁殖力が盛んであることを読む,聞く。
(ト) 繁殖が季節や天候とどんな関係があるか,調べる,聞く,話し合う。
一般にどんなにして防いでいるか,それがどんな効果があるか話し合う。
(チ) あぶらむしが害をしたあとや,吸収の様子の拡大図などを見て,どんな毒剤がききめがあるか話し合う。
(リ) こんな虫にかける薬剤はないか話し合う。
(ヌ) 接触剤を作ってかけ,結果を調べる。ききめの持続程度や費用も調べる。
(ル) それぞれの虫に毒剤・接触剤をかけ,結果や費用を比べる。
(ヲ) うりばえがいるかどうか調べ,どんな害をするか話し合う,読む,聞く。
(ワ) うりばえを捕えに行ってどんなにして捕えたらよいかくふうする,話し合う。どんな時刻が捕らえやすいか聞く,ためす。
(カ) 一箇所に集めて捕える方法はないか,どんなものに集まるか,聞く,ためす,話し合う。
(ヨ) うりばえを殺すにはどんな薬剤がよいか,虫や食いあとを調べる,話し合う。
(タ) 毒剤を作ってかけ,その結果をみる。幾日ぐらいききめがあるか,新しく伸びた所は食われはしないか,調べて話し合う。
(レ) 接触剤のききめはどうかためしてみる,聞く,話し合う。
(ソ) うりばえがきらって寄りつかないような薬はないか,調べて話し合う。
(ツ) 郷土に紙テントを使っている人はないか,紙テントを使うと苗は弱くなりはしないか調べてみる,話し合う。
(ネ) 紙テントの上をあけて,あんどんのような形にし,苗に日があたるようにしたらどうだろうか,あんどんの太さや高さは,虫のはいりぐあいや,苗の日のあたりぐあいとどんな関係があるか,村の様子を調べたり,実験したり,聞いたり,話し合ったりする。
(ナ) うりばえの幼虫はどんな害をするか,聞く,調べる,話し合う。
(ラ) 幼虫はどんなにして防ぐか,根もとや実の近くに卵を産ませないようにする方法,産んでも食い入らないようにする方法などを調べる,話し合う。
(ロ) 殺虫剤はどこででき,どんな経路をたどって手にはいるか,郷士ではどれくらい使われているか調べる。
(ハ) 虫や病気を防ぐ上に,協同の力はどんなに役立つか話し合う。
3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)
(2) 生命を愛育する態度,事実に即して熱心にくふうする態度や,栽培の仕事の中にいろいろなくふうすべき問題の多いことに気づき,これに興味をもつことなどは,この単元において最も強調されるところであるから,このような角度から生徒を観察していて,どういう態度をもっているか,それがどのように変わってできたかというようなことについて,具体的な記述尺度を設けて,時々考査することが望ましい。
(3) 見方・考え方については,一般編第五章(44−45ページ),この編第五章(41ページ)参照。
単元 5 豆 と 雑 穀
1.目 標
(2) だいずの栽培には肥料が少なくてすみ,しかもその後地が肥えることを理解する。
(3) だいずはあき地・やせ地を利用したり,畑の周囲作や,間作としたりすることができることを理解する。
(4) だいずの品種と栽培季節・病虫害・収量との関係を理解する。
(5) 豆類の根には根粒菌がついていて,空気中の窒素を土の中に取り入れることを理解する。
(6) 土の中には農耕上有用な微生物や有害な微生物がいて,環境によってふえたりへったりすることを理解する。
(7) 根粒菌の種類によって,つく植物,窒素を固定する力が違うから,よい根粒薗を接種する必要のあることを理解する。
(8) だいずの栽培に習熟する。
(9) 緑肥栽培の必要なこと,だいずかすがよい肥料であることを理解する。
(10) 緑肥栽培に習熟する。
(11) 雑穀は食糧・飼料としてたいせつなものであることを理解する。
(12) 雑穀の栽培は明治以来へっていることを知る。
(13) 雑穀の中には,生育期間の短いもの,不順な天候の年でもよくできるもの,やせ地や乾き過ぎ,湿り過ぎの土地でもよくできるものがあることを知る。
(14) 郷土にある雑穀の栽培に習熟する。
2.指 導 法
(2) 教師の準備と活動(単元3稲作の項(54ページ)参照)
学校の内外を通じて,生徒が豆,ことにだいずや雑穀の栽培に利用できる土地を調査しておく。
(3) 生徒の活動
この単元の端緒としての働きをしている目標(1)から(3)までの学習における生徒の活動を一例として次に掲げる。他の目標については,単元3,4などの活動例を参考にしたり,教科書を活用することによって,生徒の適切な活動を誘発することができるであろう。
目標(1)から(3)までについて
(ロ) だいずは食物以外にはどんな用途に使われたか話し合う。
(ハ) だいずを作ると畑が肥えてくることを読む,聞く。
(ニ) 世界におけるだいずの産地について読む,聞く。
(ホ) わが国のだいずの生産は,昔からどんなに変わってきたか。いね・むぎなどの栽培に比べて,その変わり方がどんなに違うか,読み,また聞く。それはなぜだろか話し合う。
(ヘ) 今後わが国のだいずの栽培はどうならなければならないか話し合う。
(ロ) だいずは,普通のむぎや野菜のように畑一面に作るばかりでなく,どんなわずかなあき地でも,やせてかえりみられない土地でも利用して作ることができることを聞く。
(ハ) 学校の周囲,やせているためほうってある畑,道の土手など適当なところをさがし,そこを使ってよいかどうか,その筋の許しを得る。
(ニ) 田畑の周囲の利用できるところはないか調べる。
(ホ) さつまいもや,とうもろこしの間作として作った場合のいもの収量,だいずの収量を調べる。一平方メートルに何本ぐらいがよいか聞く,話し合う。
(ヘ) 郷土では,今ごろ種をまくには,どんな品種を使っているか,あぜ豆にはどんな品種が使われているか,さつまいもや,とうもろこしの間作の場合はどんな品種が使われているか,もっとよい品種はないか,虫や病気の心配はないか調べ,よく話し合って栽培品種をきめる。
(ト) それぞれどんな作り方がよいか調べて栽培する。
(ロ) だいずやあずきには,夏みのるものと秋みのるものとがあることを聞き,郷土のそれぞれの品種を調べる。
(ハ) とり入れただいずの収量を調べる。
どこが一番成積がよかったか。どんな品種が一番よくとれたか調べる,話し合う,報告を書く。
(ニ) 郷土では,だいずをくふうして作ったら,他の作物のとり入れをあまりへらさないで,だいずがどれくらい多くとれるだろうかを研究する。
3. 学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)
これについては,第五章や,この章の単元3,4を参考にするとよい。
単元 6 麦 作
1.目 標
(2) むぎは何に使われるかを知る。
(3) 排水・前作・後作のくふう,労力の都合,雪害の対策などによってむぎを作る面積を拡げる方法を会得する。
(4) 冬作物として冬だけでなく,なたねやえんどう・そらまめ・れんげそうなどの必要を理解し,その栽培方法を会得する。
(5) 暖地では稲作と麦作の間にくふうして,もう一作行う方法を会得する。
(6) その土地,その田畑にはどんな品種のむぎが適しているかを知る。
(7) 病気の防ぎ方は,病気の性質にもとづいてくふうすべきことを理解する。
(8) 抵抗力の強い品種の栽培によって防げる病気があることを理解する。
(9) 病気にかかったむぎ粒を,より分けて使えば防ぐことのできる病気があることを理解し,その方法を会得する。
(10) むぎ粒の中にいる病菌を冷水温湯浸法・ふろ湯浸法で殺すことができることを理解し,その方法を会得する。
(11) 麦粒の表面についている病菌を,薬剤で殺すことができることを理解し,その方法を会得する。
(12) 病菌が土やわらに残っている病気の防ぎ方を理解する。
(13) むぎにはいねよりも多くの肥料の必要なことを理解する。
(14) 硫安・石灰窒素・過りん酸石灰や,たい肥などの使い方を会得する。
(15) むぎには,一度寒さにあわなければ穂のできないもの,寒さにあわなくても穂ができるものなどのあることを理解する。
(16) 春まくにはどんな品種がよいか,秋早くまくにはどんな品種がよいかを理解する。
(17) まき時とむぎの育ち,早まき・おそまきの場合の対策を理解する。
(18) むぎを苗床にまいておいて植えかえる方法を会得する。
(19) いろいろな地ごしらえの仕方を会得する。
(20) うね幅とまき幅の関係を会得する。
(21) いろいろなまき方を会得する。
(22) 種をまく面積を広くする必要のあることや,広くした場合の手入れについて理解する。
(23) むぎのいろいろな手入れについて,目的と時期を理解し,方法を会得する。
2.指 導 法
(2) 教師の準備と活動(単元3稲作の項(54ページ)参照)
(3) 生徒の活動
この単元の学習の端緒の働きをしている目標(1)から(5)までの学習における生徒の活動の一例を次に掲げる。他の目標の学習における活動は,この例や他の単元の例を参考にすることができる。また,教科書は生徒の適切な活動を促す役をつとめるであろう。目標(1)から(5)までについて,
(ロ) むぎは何に使われるか,それぞれのむぎについて話し合う。
(ハ) わが国では,いねや豆や,いも・野菜などの裏作としてむぎを作ることのできるということが,わが国の食糧生産にどんな影響を与えているかを読む,聞く,話し合う。
(ロ) もっとむぎをまく余裕はないか,話し合う。冬の間あけておく田畑があったら,それはなぜあけておかなければならないか,調べる,聞く,話し合う。
(ハ) 田の水はけが悪いためならこれをよくする。前作の都合ならむぎの苗床を考える。後作のためなら,わせの品種または丈の低い品種を考える。労力の都合なら,品種や田植え・養蚕との組み合わせを考え,それを調整するような方法をくふうする。雪の下でむぎが枯れてしまうなら,雪腐れに強い品種を選び,これを防ぐ方法を考える。これらの方法について読む,聞く,話し合う。
(ニ) これらのくふうで郷土の麦作の面積はどれくらいふえるか調べて話し合う。
(ロ) 裏作として麦が一番よいかどうか,なたね・えんどう・そらまめとどちらがよいか,一部分をこれらのものにしたらよいかなどを調べる,話し合う。
(ハ) 暖地では,いねとむぎとの間にもう一作入れるくふうはないか,調べる,話し合う。
(ニ) 冬の間にむぎを作ることができないような地方では,れんげそうなどは作れないか研究する。
(ホ) 調べたこと,話し合ったことのうち,大事なことは書きとっておく,報告を書く。
3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)
単元 7 果 樹
1.目 標
(2) わが国の果樹の分布のあらましを理解する。
(3) 傾斜地や宅地など,割合に利用価値の少ない土地を利用し得ることを理解する。
(4) 郷土の果樹栽培の歴史や,現在及び将来について理解する。
(5) 春から継続的に調べてきた,果樹の枝ののび方をまとめて理解する。
(6) 花芽と葉芽のでき方について理解する。
(7) ももについて,せん定の必要を理解する。
(8) ももについて,杯状仕立てや,それに準じる仕立て方を会得する。
(9) 葉の面積と果物の成長との関係を理解する。
(10) もものせん定の方法を会得する。
(11) 果樹園の肥料のやり方を会得する。
(12) 果樹の病気の防ぎ方を会得する。
(13) 石灰硫黄合剤の使い方を会得する。
(14) 果樹のいろいろな手入れを会得する。
(15) 果樹の繁殖法について理解する。
(16) つぎ木の台木の種類によって,果樹の性質はどんなに変わるかを理解する。
(17) さし木の時期,台木,つぎ穂の発育程度,傷口の処理について理解し,その方法を会得する。
(18) 果樹の中には,受精しなくても果物の大きくなるものがあることを理解する。
(19) 果樹の中には,他の品種の花粉を受けなければ,実を結ばないものがあることを理解する。
2.指 導 法
この単元の学習は,学校の果樹について,栽培のもとになる理論を学び,それを応用した栽培技術の基礎を会得し,生徒の家にある果樹について熟練するというような指導が普通であろう。
(2) 果樹の栽培は,理論とその応用のおもしろさを体験するのに都合のよいものである。この単元の指導によって,農業に対する生徒の興味を呼び起すように特に注意する必要がある。
(3) 教師の準備と活動(単元3 稲作の項(54ページ)参照)
ロ.どんな果樹を栽培して郷土の地域性を活かしたらよいか,宅地利用などとして,どんな果樹をとり入れたらよいか研究しておく。
ハ.果樹栽培の準備,作業及び第七学年の冬から第八学年の冬までの指導計画を立てておく。
ニ.生徒の家庭にどんな果樹がどれくらいあるか,なるかならないか,だれが受け持って世話しているか,生徒が受け持って栽培することができるかとか,あらかじめ調べておく。
この単元の学習の発展としての働きをしている目標(18)(19)の学習における生徒の活動の一例を次に掲げる。その他の目標の学習に当たっての活動は,他の単元の例を参考にすると便利であろう。教科書はこれらの活動を誘発するきっかけとなったり,資料となったりするであろう。
目標(18)(19)について,
(ロ) 五学年の理科で学んだきゅうりは,受粉しないとどんなふうになったか。曲がったりへこんだりしたきゅうりは,どんなきゅうりかなどについて話し合う。
(ロ) 種のあるものとないものとでは形はどんなに違うか,味はどんなに違うかをかきなどについて話し合う。
(ハ) 種のないものは,種のあるものより落ちやすいか,変わりがないか,話し合う。果樹の種類・品種によって違うことを読む,聞く,ためしてみる。
(ニ) どうして種がはいらないのだろうか,花粉を持っていないのかどうか,話し合う。
興味をもったものは,花の開いた時期に調べてみる。
(ホ) かきの多くの品種はおしべの発達が悪いこと,なしの長十郎,ももの上海・白桃などは花粉があっても,他の品種の花粉でなければ,種ができないので,落ちてしまうことを教師または実際家から聞く,ためしてみる。
(ロ) 普通の花が咲いてもみな落ちてしまうかき・なし・さくらんぼなどはないか調べる。他の品種の花粉がないからかどうかをためす方法を話し合う。花の時期に他の品種の花粉を入れるか,他の品種の花のついた枝をびんにさして,その品種の木のそばにおいてみる。
3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)
この単元においては,特に栽培理論とその応用のおもしろさを味わうことがたいせつであるから,そのおもしろさを果たして体験したかどうかを考査することが有意義であろう。たとえば,もものせん定において,どこでどう切るかを,教師が説明に使わなかった木についていわせてみる,なぜそこで切るかを答えさせる。またこの木の下で,実際の木を対象としてどこを切るか,なぜ切るかなどと話し合ってみることは,生徒の学習にはもちろん望ましいことであるが,結果を考査する上にも有意義なことである。
単元 8 さつまいもとじゃがいも
1.目 標
(2) さつまいもは,一定面積当たりのカロリー生産量がひじょうに多いことを理解する。
(3) いろいろな食用作物の10アール当たりのカロリー生産量の計算の仕方を会得し,そのあらましを理解する。
(4) 食糧としての優劣は,カロリー生産量だけでなく,更に含まれている養分の種類・分量・性質や,貯蔵・輸送の難易も考えなければならないことを理解する。
(5) さつまいもは食糧としてどんな欠点があるかを理解する。
(6) 農家はさつまいもを自給用としても,供出用としても,たくさん作らなければならないことを理解する。
(7) さつまいものどんな品種を作ったらよいかを理解する。
(8) さつまいもの伏せこみの時間のきめ方を会得する。
(9) さつまいもの発芽や,苗の発育の適温を学び,踏みこみの仕方を会得する。
(10) 温湯消毒法を会得する。
(11) どんな種いもがよいか学び,伏せこみ方を会得する。
(12) 苗床の手入れを会得する。
(13) じゃがいもは,どんな種いもを使ったらよいかを理解する。
(14) じゃがいものいしゅく病や疫病は,どんなにして防ぐかを理解する。
(15) じゃがいもの種いもの休眠期間と芽の出し方について理解する。
(16) じやがいもの休眠期間を長くしたり短くしたりすることを理解する。
(17) じゃがいもの品種を選ぶには,どんな点に注意したらよいかを理解する。
(18) じゃがいもの種いもの大きさや切り方を理解する。
(19) じゃがいもにはどんな土地が適しているかを理解する。
(20) じゃがいもの肥料のやり方を理解する。
(21) じゃがいもの植付け方や手入れの仕方を会得する。
(22) じゃがいもの取り入れや貯蔵の仕方について理解する。
2.指 導 法
(2) 近年じゃがいもやさつまいもの栽培の研究が著しく盛んになったから,どこの土地にも熱心な人,すぐれたくふうをしている人が少なくない。したがって,これらの人とよく連絡して,学習の効果をあげるようにすることが望ましい。
(3) 教師の準備と活動(単元3 稲作の項(54ページ)参照)
(ロ) 栽培の仕事に熟達する。
(ハ) 第七学年の他の単元及び第八学年の単元と組み合わせて,生徒のどんな活動を取り入れるか,どんな仕事をするかの計画を立て,その準備をととのえておく。
一例として,じゃがいもの栽培,すなわち,目標(13)から(22)までの学習における生徒の活動を次に掲げる。
(ロ) それらの種いもは,去年の夏にとり入れたものか,秋とり入れたものか,それとも他の地方から買い入れたものかを調べて来て話し合う。
(ハ) 家の人や村の人は,どんな種いもがよいといっているか話し合う。
(ロ) いしゅく病は最も恐ろしい病気であること,この病原は,ビールスであることや,この病気の伝染経路を学び,どんな種いもを使ったらよいかを話し合う。
(ハ) 去年の夏とれたいも,秋とれたいもなどを持ち寄って休眠期間と発芽との関係を学び,いつごろ植えるにはいつごろとれた種いもがよいか話し合う。
(ニ) いつごろ植えつけたらよいか,早すぎるとどうなるか,遅すぎるとどうなるか調べてきて,その時期をきめ,それにはどんな種いもを使ったらよいかをきめる。
(ホ) たべる時期や後作の関係,虫や病気の関係,土地の乾きぐあいなどを考えたり,聞いたりして来て話し合う。
(ヘ) じゃがいもはどんな環境によく育つかを学んで,どんな作り方をしたらよいかを話し合う。
(ト) じゃがいもには肥料分が多くいることを学んで,どんな肥料をどれくらいやったらよいかきめる。
(チ) 種いもをどんなふうに切ったらよいか話し合う。
(リ) 地ごしらえして,肥料を入れ,種いもを切って植える。
(ヌ) 間引き・追い肥・土寄せ・虫退治・草とりや病気の予防など,そのつど,第四学年の理科で学んだことを思い出したり,家や村の人のやるところを見たり,読んだり,聞いたり,話し合ったりして,じゃがいもを作る。
(ル) 掘りとりの日時や,掘りとり及びその後の手順を話し合ってきめ,掘りとって貯える。
(ロ) じゃがいもの疫病について研究する。
(ハ) じゃがいもの休眠期間を長くしたり,短くしたりすることを研究する。
(ニ) じゃがいもの一芽植えや,間引き苗の利用を研究する。
3.学習結果の考査(一般編第五章,この編第五章参照)