職業科には,毎年,必修として140時間(毎週4時間平均),選択として140時間(毎週4時間平均)が配当されていて,それ自身が相当の幅をもっている。その上,この時間の中で,工業・商業・水産・家庭などの諸教科との関係もあるので,運営の方法は,地方の事情,生徒の個性や進路,学校の設備及び指導者の有無によって違ってくる。しかし,教材の選び方は,一般教育の立場,いろいろな仕事を体験させ理解させる立場,農業教育の立場から考えた必要の程度と,どの程度まで教育的な効果をあげることができるかという可能性とをもとにしてきめられるのであって,だいたい次の三つの場合が考えられる。
そうして,後に掲げる教材一覧表(10−27ページ)は,次の三つの場合における教材の取り上げ方の一例を示したもので,各学校が職業科農業運営の方法を考える上の参考になるであろう。教科書は,だいたい1の場合を標準として編集してあるが,2の場合にも,3の場合にも活用できるように仕組んである。
2.これは毎年175−280時間(毎週5−8時間平均)ぐらい職業科農業の学習にあてられている場合で,農村の男子などにこの行き方が採用されるであろう。この場合は,1の場合よりも問題を深く研究したり,実習を多く取り入れたりする。また,いろいろの疑問や興味をもって,一度学習してもまだ解決されないで残る問題が多いし,一度学習することによって,更に深い新しい疑問や興味もわいてくる。したがって,この疑問や興味にもとづいて前の学年からの問題をくり返して学ぶとともに,一方において,新しい材料について新しい見方を学ぶのである。このとき,前からのくり返しの材料についても,新しい見方が反映することはいうまでもない。この行き方において,前からのくり返しの部分は,できるだけ自発的・選択的となることが望ましい。数人ずつ組を作るか,または一人一人独立して,自由に問題を選んで研究を進めるというようになったら,有意義な学習が行われるであろう。
3.これは毎年105時間(毎週3時間平均)以下のもので,標準の中から特に必要なものだけを選んで学ぶことになる。この場合,農村の女子,都市の男子,都市の女子などによって,教材の選び方におのずから違いがある。
これらの三つの行き方を図解すると次のようになる。
各行き方における各学年の教材の利用のしかた
1.教材一覧表
中学校における職業科農業の教材として適当と思われる,実際の仕事及び目標となる技能や理解のだいたいを示すと次のとおりである。土地の状況,学校の事情,生徒の個性に応じて,この中から適当に選択し,あるいは他の適当な教材を補って,学習に最も都合のよい単元を組み立てることが望ましい。この書では一例として次の項,即ち2教材配当表(27ページ参照)のように単元を組み立てた。
この表の各項における階段は,前のページのそれぞれの行き方,甲・乙・丙や各学年における強調の程度の一例を示すものである。そうして,黒色の部分は全生徒がほぼいっせいに学習し,斜線の部分は,自由研究的に学習することを表わしたものである。
1.実際の仕事
2.目標となる技能
3.目標となる理解
2.教 材 配 当 表
前の項の教材,即ち実際の仕事(10−13ページ),目標となる技能(13−19ページ),目標となる理解(19−27ページ)を組み合わせて作った単元の一例を示すと次のとおりである。
1.第七学年
指導の重点 食糧作物はどんなにして増産するか
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1.私たちは何を学ぶか | 1-4,120,138,139,143,144,153 | ||
2.作物の栽培にとりかかる前に,どんなことを知らなければならないか | 10,63,66 | 1,11,12,122 | 13,15,24-29 |
3.稲 作 | 1,57,66,70 | 1,5,11,16-18,22,27,31,32,34-37,39 | 5,7,22-24,32-44,76,127 |
4.野菜の栽培 | 6-9,41-43,66,70,71 | 1,11,14,16,18-23,25,28,34-40,69-71 | 5-8,10,13-17,19-24,30,35-38,
52,53,54 |
5.豆と雑穀 | 3,4,13,66,70 | 1,11,16 | 5,6,8,10,24,31,45-49,61,62,
97 |
6.麦 作 | 2,66,70 | 1,11,16-18,25,26,31,34,38 | 5,7,8,14,19,23,36-38,116 |
7.果 樹 | 10,66,70,71 | 1,11,29,30,38,41 | 5,7,11,13,15-17,21,54-56 |
8.さつまいもとじゃがいも | 5,66,70 | 1,11,16-18,20 | 5,20,21,23,36-38 |
2.第八学年
指導の重点 土地・資本・労力はどんなにしたら合理的に使えるか
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1.土地をよく利用するにはどうしたらよいか | 11,12,61,64-67,70,71,73 | 1,9,10,127,129 | 1,3,5-7,18,24,25,37,50,51,52,
57-62,115,138,140,144,155 |
2.農業の繁閑を調節するにはどうしたらよいか | 66,67,70,71 | 24 | 79,80,120-124 |
3.肥料をむだなく使うにはどうしたらよいか | 15,66,67,70-72 | 12-15 | 12,14,28-34,127-130,157 |
4.経営と栽培技術とはどんな関係があるか | 2,5,9,66,67,70,71 | 1,11,31,33,35,36 | 12,133 |
5.養 蚕 | 14,23,53-55,67,70-72 | 1,11,38,56-61,101,102 | 1,2,23,63-69,79,156 |
6.養 畜 | 16-24,67,70-72 | 1,3,4,42-55 | 1,62,63,79,80,117,119,120,124,
125,130,157 |
7.森 林 | 15,25-29,72 | 1,62-68 | 1,2,8,9,70-75,126,156 |
8.農業工作 | 34,56,58-60,62,72 | 1,2,6,20,103-121 | 2,3,77,78 |
3.第九学年
指導の重点 農業の経営はどんなにしたら竪実になるか
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1.農家経済の実際はどうなっているか | 67,68,73 | 127-130 | 2,41,85,114,131,132,134,135,
137,144,155,158,159 |
2.農耕地を拡げるにはどうしたらよいか | 30-33,68 | 3,123-126 | 1,26,27,115,116,118,119,132,
140,142,143,145,147,158,159 |
3.どんな仕組みの経営をしたらよいか | 69,70 | 1,24,26,27,114,115,117,133,
136,138,139,141,152,158,159 |
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4.農産加工 | 35-52,72 | 72-100 | 1,2,85-113,121,144,156 |
5.機械・電気の利用 | 56,57,72 | 7,8 | 1,2,77-84,119,120,144,153,
157-159 |
6.豊作と凶作 | 66-68,70,71 | 1,2,35,120,132,144,148-154,
156 |
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7.農村の生活 | 69,74 | 1,2,23,120,136,138,139,
152-154,157-160 |
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8.私たちの将来 | 1,2,138,139 |