2.計画的に表現する態度を養う。
3.表現意欲を高める。
前学年にあげた教材例は,いずれも児童生活に関係の深いものであったが,本学年では,更にその内容を広くする。
2.童 話
児童の知っている童話,新しく話してきかせた童話などで,児童が興味を持ち,また話の内容が表現に適するものをとり,共同作にして,紙しばいまたは絵巻風にかかせる。
3.社会事象
社会事象中,児童が興味を持ち,表現に適しているもの。
4.動 物
クレヨンを主とし,鉛筆を併わせ用いる。
(四) 指導方法──児童の活動
2.個人で描くこともあり,共同で描くこともある。
3.クレヨンの重色によって,色を豊富にする工夫をする。
注意 1.児童は記憶・想像による描画の最も得意な時代にはいるから,着想が多方的で豊富になり,表現意欲が高まるよう環境を整備する。
注意 2.この単元の指導に使う時間は,全教授時数の10%ないし20%が適当であろう。
2.要所要所の教材については,下記の「記述尺度」による。
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独創的ですばらしい | 独創的でよい |
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目立って貧弱 |
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こまかくて手落ちがない | 相当にこまかい |
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あまり計画的でない |
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目立って乏しい |
共同態度(共同作の場合) | 進んで共同し,指導的立場に立つ |
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あまり共同しない | 共同をきらう |
2.自然物や人工物の美しさを味わわせる。
3.漸次正確な表現力を養う。
4.写生の興味を深める。
器物・おもちゃ・文房具・花・果物・野菜・その他。
2.風 景
樹木を主とする風景,校庭・花壇・その他学校の中または近くの景色。
3.人 物
お友だちその他身ぢかにいる人物の半身・全身を,速写風またはていねいな描写で。
クレヨンを主とし,鉛筆を併わせ用いる。
(四) 指導方法──児童の活動
2.モデルの位置と,写生する場所との関係を自分できめて教師に相談する。すなわち観察に無理のない位置をとる。
観察力が発達して来たこの学年では上の二項が,これまで以上に重要になる。モデルの配置,組み合わせは,題材を児童が選んだ場合でも,教師が選んだ場合でも,ことに静物写生などでは十分に意見を述べさせて指導する。これは図画工作教育上相当重要な部面である。
3.色の変化に気をつけ,その色を出すようにクレヨンの重色を工夫する。
児童の観察力が発達して来ると,草原の緑も,一様でないこと,地面の色でも,乾いているとき,しめっているとき,日の当たっている時,かげになっている時でちがうことなどを発見して,緑といえばどんな緑でもいつも同じ一本の緑のクレヨンで描くようなことが,徐々に訂正されることが必要である。
4.できた結果に就いて反省し,またおたがいの作品を批評しあう。
注意 1.このころの児童の描写には一つの固定した型のできることがある。もし好ましくない型のできた児童があったら,適当な参考品を見せるなり,注意を与えるなりして訂正させる。
注意 2.この単元の指導には,全教授時数の15%ないし20%を当てるのが適当であろう。
「一対比較法」または,次の「記述尺度」による。
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非常によく要点をつかんだ観察をする | 観察が行き届いている |
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あまり観察しない | ほとんど観察しない |
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非常に力強い表現をする | 力強い表現をする |
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非常に貧弱で縮んでいる |
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たいへん興味を持つ |
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写生のできる器物や植物はなるべく写生により,写生のできない動物のようなものは,記憶・想像により,器物のあるものは自己の構想による。(この場合は図案と同じ意味のものになる。)また,器物や値物・動物でも,自分の創意で,ある組み合わせによって,新しい一つの構成をするならば,それは構想による表現になる。
2.観察力を養う。
3.粘土による立体,ことに曲面から成り立っている立体の表現練習をする。
4.眼と手を練らせる。
曲面からできている簡単な形のもの。
2.植 物
果物・野菜・花などで,レリーフ風の作り方もさせる。
3.動 物
犬・うさぎ・象・くま・などの獣類。
はと・からす・鶏・すずめ・などの鳥類。
その他
時として教師が題材を選ぶ場合もあろうが,児童がみすから選び,みずから環境をととのえることができるようにならなければならない。
2.題材に応じて,写生によるか,記憶・想像によるか,構想によるかをきめる。
3.写生する場合ならば,要点(形の特徴とか,各部分の大きさの比率とか,面の感じとか)をとらえ,作り方を工夫して製作する。
4.記憶・想像による場合ならば,そのものの形態の要点を思い出し,順序方法を研究して作る。
5.構想による場合には,どんな形にするか,どんな組み立て方にするかの想を練り,順序方法を考えて作る。
6.できた結果についての反省・批評・鑑賞をし,次の製作の参考にする。
7.清潔整とんを励行する。
注意 この単元の指導には,全教授時数の10%ないし15%を当てるのが適当であろう。
「一対比較法」により,また次のような,「記述尺度」による。
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極めてよく要点をとらえる | よく要点をとらえる |
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要点がうまくとらえられない | ほとんど要点がとらえられない |
立体観の表現 | 極めてよく立体的に面の特徴をとらえる | 立体的に面の特徴をだいたいとらえる |
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目立ってうすっぺら |
用具・材料の扱い方 | たいへん手ぎわがよく周囲もよごさない | 手ぎわがよく周囲もあまりよごさない |
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拙くて,周囲もよごす | 拙くて,周囲をたいへんよごす |
2.無彩色11段階と,第一二学年で扱った有彩色11色との,明度を比較し,どの色は明度何番の無彩色と同じ明度であるかを識別させる。
3.標準色紙以外の色紙の明度に就いてもしらべさせる。
4.二色ないし三色の配色練習。
配色の練習は,図案教材と一体として扱う。
5.色彩感覚を練らせる。
2.一つずつ有彩色の標準色紙を,無彩色と比較し,同じ明かるさのところにならべる。あてっこ遊びをすることもある。
3.標準色以外の任意の色紙で,標準無彩色との,明度のあてっこをする。
4.二色か三色の色紙で三角,四角ならべをしたり,模様を作ったりして配色練習をする。
配色練習は,いろいろな配色をやって味わっている問に,配色に心が向くようになる程度でよい。
注意 この単元の指導には,全教授時数の約5%を当てるのが適当であろう。なお,短時間ずつ回数を多くし,幾度もくり返して指導する方が効果的である。
次のような「記述尺度」によって行う。
明度に関する感覚 |
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配色に対する興味 | 大いに興味を持つ |
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たいへん興味がない |
(四) 備 考
児童には,必ずしも明度番号を知らせる必要はないが,指導の便宜上,何か番号をつける必要を感じた場合には,規格に定められている番号にしたがう方が,後の色彩指導のためには利益である。
2.有彩色の純色と無彩色との明度の対照は,大体次表のようである。
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明度
番号 |
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|||||||||||
し ろ |
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いろ |
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きいろ | ||||||||||
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きだい
だい |
きみど
り |
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だいだ
い |
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|||||||||||||
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みどり | ||||||||||||
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みどり
あ お |
あお | |||||||||||
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あかむ
らさき |
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あおむ
らさき |
むらさ
き |
|||||||||||
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|||||||||||||
く ろ |
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2.集めたものは,形の類似にしたがい,また形の変化の順序にしたがって,整理し分類させる。
3.形に対する感覚を練る。
2.球を両側から押しつぶした形(平たい球)をした物を思い出して列挙する。
3.球を両方へ引きのばした形(長い球)をした物を思い出して列挙する。
4.球を一方へだけ少し引きのばした形(卵形)の物を考えて列挙する。
5.球の一部分の形を持った物を考えて列挙する。
6.集め方を,相談して上のような形をした物を集める。
7.相当集まったところで,整理・分類の方法を工夫して,整理する。
注意 この単元の指導には,全教授時数の約5%ぐらいをあてる。しかし短期間に一気に集めるのではない。
次のような「記述尺度」による。
形に対する理解力 | 非常によく理解する |
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よくはわからない |
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集める興味と根気 | たいへん興味と根気が持続する | 興味と根気が持続する |
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興味と根気が続かない | 興味と根気が目立って続かない |
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たいへんよく整理できる | よく整理できる |
|
あまり整理できない | 整理できない |
なお,形に対する理解力については,特に「選択法」「組み合わせ法」「排列法」などによるのがよい。
2.排列の美しさを味わわせる。
3.工夫考案の力を養う。
4.装飾の才能を養う。
2.大小の,正方形・直角二等辺三角形・円などに切った色紙を,二方または四方続きに模様風にならべる。
3.大小の,正方形・く形・正三角形・円などの印を作り,それを二方または四方続きに,模様風におさせる。
4.色紙を,二つまたは四つに折り,それを適当な形に切り,開いて対称形の模様を作る。
5.教材例2・4を作るときは,「いろ」の教材と結びつけて,二色ないし三色の,明度を主にした配色練習をさせる。
6.教材例2・4で作ったものは,帳面の表紙や箱などのような,身辺にあるものの装飾に利用させる。
この場合,適当な作例をなるべく多く見せる。
2.決定したやり方によって案を練る。
3.模様を作る。
4.作った模様を利用する。
模様の利用については,模様を作る前に,帳面の表紙にする模様であるとか,箱の装飾に使う模様であるとかをきめて,それに都合のよい模様を作らせることができれば,最もよい。
5.できた模様について,その反省や,おたがいの批判や,訂正などをする。
注意 1.この単元の指導には,全教授時数の5%ないし10%ぐらいをあてる。
注意 2.図案の指導では,参考品を与えずに,ただ考えて作れといったのでは,よい工夫も創案も生まれるものでない。それかといって,参考品を見せたために,児童が,ただそれをまねるだけになっては,図案を課す意味がなくなる。参考品を見せることは極めてたいせつであるが,それは,児童の表現欲と創意を引き出すかぎにするためであることを忘れてはならない。
「一対比較法」または,次の「記述尺度」による。
図案に対する興味 | 大いに興味を持つ |
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興味が少ない | 興味を持たない |
図案の組立 |
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装飾の適用 | 非常によく適用する | よく適用する |
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あまり適用できない | 適用できない |
2.正確な作図をする能力を養う。
3.図を見る力を養う。
4.三角定木・ものさしの使い方になれさせる。
教材は,次の中厚紙・厚紙を主とする製作教材と連絡を保ち,実際に製作するものの展開図をかかせる。
なお,「展開図」ということばは,児童にはわかりにくいから,「ひらいた図」という名で,指導するがよいであろう。
(三) 指導方法──児童の活動
展開図をかく初歩的な指導には,児童の図をかく能力や,理解力,製作能力に適する方法を選ばなければならないが,児童の活動は児童の状態により,だいたい次の三になる。
2.各分団で,すでに組み立ててある立体を切り開いて,平面上に展開するとどんな形になるか,平面上に展開できるように切り開くには,どこを切ればよいかを研究する。実際にそれを切り開き,それを再び組み立て,もとの立体と同じ形の立体ができるか否かをたしかめる。次に各自か展開図をかいて立体を組み立てる。
3.切断するところ,折り曲げるところなどを示した展開図(謄写刷りなど)を切断したり,折り曲げたり,のりではったりして幾度も立体を組み立てる。次に自分で展開図をかいて組み立てる。
注意 1.以上のどの方法によるにしても,三角定木や,ものさしの扱い方になれさせなければならない。
注意 2.この学年では,三角定木をよく使えるようには,なかなかならないから,方眼紙を使ってかかせることにしたのであるが,それにしても,三角定木の角度を利用しなければならないところもできて来るであろう。
注意 3.この単元の指導には,全教授時数の約5%を当てる。
次の「記述尺度」による。
図を理解する力 | 非常によく理解する | よく理解する |
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非常にわからない |
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2.紙製品の工作法を理解させる。
3.工夫考案の力を養う。
4.自分に必要なものは,なるべく自分で作り,処理する態度を養う。
器物・器具類の模型は一つ一つを個人作にするのもよいが,数名の児童が共同して,いろいろな家具を分担して作り,それを集めて一つの室を構成するなどはいっそうよい。
家屋や交通機関などの模型も,数名の児童が分担し,共同して,村や町,停車場などの模型を作ることができる。この場合,小さな砂箱を利用すると便利である。
2.こま・針孔写真機・七色めがねなどのおもちゃ。
こまは,厚紙をはり重ね,竹の心棒を通したもの,針孔写真機は,四角の細長い箱の内部を黒く塗り,小さな針孔から光を入れてうつす仕掛けのもの,七色めがねは,万華鏡とも称するもので,三角柱の内面に三板の鏡またはガラス板を入れ,一方の端にすりガラスを入れ,中に小さい色紙片を入れ,平面鏡の反射によって,いろいろな模様を現わすもの。
3.紙ばさみ・箱・帳面の表紙などのような実用品。これは表面に適当な装飾を施す。
児童の活動は,児童の状態や,教材の性質によつて異なるが,だいたい次のような活動が基本的なものである。
2.製作の計画を立てる。計画も各自で立てることもあり,合議によることもある。いずれの場合も,適当な参考品を見,また教師の助言を受ける。
3.製作する。
4.製作結果の反省・批評・訂正をする。
注意 1.児童の状態,教材の性質,展開図の指導などの関係を考えて,模作法・創作法・個人作・共同作を適当に採り合わせて指導する。
注意 2.個々の教材の決定は,児童の製作傾向の長所を伸ばし,短所を補う見地から,また,児童の興味や希望によってきまる。
注意 3.この単元の指導には,全教授時数の15%ないし20%を当てるのが適当であろう。
「一対比較法」により,また次のような「記述尺度」による。
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大いに興味を持つ |
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あまり興味を持たない | 興味を持たない |
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目立ってよく理解する |
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さっぱり理解しない |
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目立って創意工夫に富む | 創意工夫に富む |
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創意工夫に乏しい | 目立って創意工夫に乏しい |
2.環境の利用に,つねに注惹する習慣を養う。
3.工夫考案の力を養う。
注意 こういう教材のとり方は,第一学年から,第六学年まで,どの学年にも採用した。これは,従来の廃物利用教材,地方的教材などと,ある類似点を持っているが,その目標は,必ずしも同一ではなく,これは,資源あり,その利用法如何という命題に対し,児童が力相応に解決することを求めるものである。そして,その内容は,何か適当な資源はないかという注意を環境に対して向けることと,見つけた資源をいかに利用するかの工夫との,二つから成り立っている。
第一学年に準ずる。
注意 2.廃品で作る場合は,その性質上主として個人作となるが,新材料の場合は,材料を見つけることは共同でやり,製作は個人作または共同作とする。
注意 3.社会科・理科などとの連絡に注意する。
第一学年の考査に準ずる。
第二学年に準じ程度を高める。
(二) 指導方法──児童の活動
第二学年に準ずる。
第二学年に準じて行う。
2.美術工芸品・絵画その他の美術品の美しさを味わわせる。
3.美的情操を養う。
2.学用品や教室の花びん,その他について,どれが美しいかを批評しあう。また,家庭で使っている茶わん・盆・さら・などを集めて,どれが,どんなに美しいかを話しあう。
3.絵画や彫刻などの実物,または写真や複製品を見て,その美しさを話しあう。
注意 1.鑑賞眼を養うには相当美的価値の高い器物を日常使わせたり,扱わせたりするがよい。
注意 2.実用品は,児童には,実用価値と,美的価値とを分けて考えにくい場合が多いであろうが,むしろ用美を一体として考えてよいであろう。
注意 3.鑑賞材料は名作品のみに限る必要はない。むしろわかりやすくて,児童に興味のあるものを選んで常に掲げておくのがよい。
注意 4.児童は物そのもの,または教材に注意を奪われやすいから,注意して指導しなければならない。
注意 5.美術品に対して,立ち入った説明をしても,まだよくわからないであろうから,児童の興味をひく程度の,簡単な説明にとどめるがよい。
注意 6.鑑賞のために,特に時間を設けて指導することもよいが,多くの場合他の教材の指導に附帯して,工芸品や美術品を見せて鑑賞させる程度でもよいであろう。
「並立比較法」「順位評価法」などを,鑑賞する物に応じて,適当に採用する。