2.風景画の構図について研究させ,美的構成力を養う。
3.省略について指導し,要点をとらえる力と描写力とを養う。
4.自然美を観察し,理解させる。
5.創造力と美的情操とを養う。
色紙・布・色彩の鮮明な単色の器物・など。
建築物を主とした風景。
並木・線路などのある風景,遠景・中景・近景の見える風景,樹木その他。
(三) 描写材料
水絵具及び鉛筆を主とする。
(四) 指導方法──生徒の活動
(2) 色紙を折り曲げて平面の屈折を作り,または,曲げて曲面を作って,色の変化を観察し,それを写生する。
(3) つぼ・箱などの器物や樹木などの色の変化を観察し,それを写生する。
(2) 以上の写生や,参考品などによって,遠近によって形が変化する法則を究明し,遠近法を研究する。
(4) 色の変化は,遠近や天候の関係だけでなく,朝・昼・夕などによっても変化することを観察する。
静物画の構図は,多くの場合自分で実物を適当に組み合わせて構成するのであるが,風景画の構図は,多くの場合,自然に構成されている自然美を発見し,その一部分を区切って構成するものである。
(2) 同一の景色でも,その区切り方如何によって,よい構図ともなり,わるい構図ともなるから,スケッチによって種々の構図を作り,構図の工夫や研究をする。
4.省略についての指導。
どういう点を省略し,どういう点は微妙な変化までかくかの理解を,実例により,また,実際に写生した結果について,批評し合ったり,反省したりして研究する。
「一対比較法」または「記述尺度法」による。
例 陰影による色の変化の描写結果の考査「記述尺度」
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大いに興味がある |
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あまり興味がない |
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非常によく観察する |
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あまり観察しない |
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2.色彩に対する感覚を鋭敏にする。
3.配色の練習をさせる。
(2) 無彩色には,明度差だけがあって,色相や彩度はないこと。
(3) 無彩色は,明度差の順に直線的に配列することができること。
(4) 有彩色には,色相・明度・彩度の三つの属性があること。
(5) 有彩色は,「あか」「だいだい」「きだいだい」というように順にならべて行くと,終りが「あかむらさき」となり,はじめの「あか」に接近した色相となる。故にこれをその性質にしたがって配列すると,環状になること。
(6) 或る一つの色相については,その明度差と彩度差によって,平面的に配列することができることなど。
3.配色については,前学年の研究を基礎として,二色の配色において,次のような場合,どんな効果の差,感じの差があるかを討論によったりして研究する。
(2) 二色の面積が二対一,または三対一のとき。
(3) 低彩度色の面積大,高彩度色の面積小の場合と,その反対の場合。
(4) 寒色系の色の面積大,暖色系の色の面積小の場合と,その反対の場合。
(5) 高明度色の面積大,低明度色の面積小の場合と,その反対の場合。
次のような「記述尺度」による。
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目立ってよく理解する |
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2.器物・器具類の用と美との関係について考察させる。
3.形に対する感覚を鋭敏にする。
例1
火ばちにはどんな形のものがあるか。(九形・四角形のものが多く,まれに六角形・八角形のものがある。側面形は円柱・角柱のものと,中央のふくらんだ胴張り形のものとがある。)
火ばちはどんな材料で作ってあるか。(木製・陶磁器製・金属製などがある。)
火ばちの形と材料との間にはどんな関係があるか。(四角形のものは多く木製で,丸形のものには,各種の材料のものがある。)
三角形の火ばちや,側面形がすりばち形をしたもの及びそれを倒にしたような形のものを作ったとしたら,火ばちの目的の上からみて,どうであろうか。
現在ある火ばちは,その形や大きさ,材料の上からみて,不便な点はないか。
いすは,その使用目的の異なるにしたがって,その形・大きさ・用材にどんな相違があるか。
現在あるいすには,その使用目的の上から,形や用材に改良を加える余地はないか。
3.器物・器具類は,実用が主目的であるが,用の点から,改良に改良を加えてでき上がった形体は,美の点から見たら,どんな結果になるかについて考察する。
4.以上のような研究考察ができ上がったならば,それを報告しあい,討論して訂正すべき箇所は訂正する。できれば一小冊子にまとめて,回覧したり,次の研究者の参考にする。
注意 ここで研究させた結果は,器物・器具類の図案や木工・金工等の設計・製作に応用させる。また,理科・家庭科などと関連する点もあるから,その点も十分注意して指導する。
2.異なった材料で作った,同じ目的を持つ器物または器具数種について,どれが最も材料と構造とが適合して,目的にかなっているかどうかを考えて順位をつけさせる「順位比較法」による。
3.橋のようなもの(他のものでもよい)数種の形を図示し,そのおのおのが,木材・鉄・コンクリート・石などのいずれの材科で作るに適しているかを考えさせる「組み合わせ法」による。
2.創造力を養う。
3.美的情操を養う。
教材は,前教材「形」と関連を保って,次のようなものからとる。
2.火ばち・鏡台・飾りだな・書だな・いす・机・テーブルなどの家具類。
3.すずり箱・料紙箱などの文房具類。
2.立体図案は,頭の中で構想ができても,その表現が困難なために,それを発表して検討を加えることができない場合が少なくないのであるから,その表現方法の研究をする。
注意 立体図案の表現方法としては,茶わん・壺のようなものは,紙上表現をするよりも,直接に粘土で作って,形の検討修正をする方が容易な場合が多い。
家具類のように直方体の組み合わせから成るものは,小さな立方体や直方体を用意しておき,積み木式にそれを積み重ねてだいたいの形の検討をしてから,細部構成をするほうが便利な場合が少なくない。第六学年「形」で試みたような,基本形を積み木式に組み合わせて,器物・器具のだいたいの形を得る方法などもその一方法である。
なお,紙で模型を作るようなことも場合によってはよいであろう。
図示による方法としては,投影図法,軸測投影図法及びその特殊の場合である等角投影図法,斜投影図法,その他普通の写生のときの描法のようなものを,物に応じて適当に採用する。
3.器物や器具の図案は,それがどんな材料で,どんな工作法によって作られるかの予想がなくては,それがはたして実材で作ることのできるものかどうか,また,作ったものが実際の役に立つかどうかなどがわからないから,材料や工作法について研究し,更にそれは,だれが,どんな場合に用いるものかの予想をして立案計画する。
4.できた作品については,十分に反省し,その適否,良否について,討議し,また共同研究をする。
「一対比較法」または次のような「記述尺度」による。
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非常に独創的で,極めてよくそのものの目的をとらえて立案する | 独創的で,よく目的にかなっている |
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模倣・類型的で,そのものの目的が明確を欠く | 立案計画がでたらめである |
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非常によく目的にかなった表現方法を選び極めてたくみである | 目的にかなった表現方法を選び,たくみである |
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表現方法が拙く,その意図がよく現われていない | 表現方法が甚だ拙く,その意図がわからない |
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非常に興味を持ち進んで学習する | 興味を持って学習する |
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興味がなく学習をきらう |
2.正確に作図する習慣を養う。
3.読図力を養う。
簡単な回転体・キー及びキーみぞ・ハンドル・ボルト及びナット・つば軸接手・調べ車・など。
簡単な機械の製図。
木工製図及び金工製図など。
(三) 指導方法──生徒の活動
(2) 学校に,機械の適当な部品や,簡単な機械の実物があれば,それを実測しながら製図して,製図の初歩や読図の学習をする。
(3) 木工や金工で製作するものの製図や,有り合わせの器物・器具・工具などの実測製図をして,製図になれてから,機械製図にはいる。
(4) その他実際にどの方法によって練習するかは学校の設備・社会の要求・生徒の希望等からきまる。
3.線の用法・文字のかき方・用具の扱い方等についても各自が十分研究する。
次のような「記述尺度」によって考査する。
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非常によく理解し適当な図法をとる | よく理解し適当な図法をとる |
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適正な用法により,非常にうまい | 用法よろしくうまい |
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線の用法を時々誤り,線は粗雑 | 線の用法でたらめで,線ははなはだ粗雑 |
2.普通の木工具を使いこなす力を養う。
3.木製品に対する関心を高め,その賢明な使用者となる力を養う。
4.創造力を養う。
2.簡単な椅子・テーブル・小形書だな・本立・額縁などの設計・製作・塗装。
3.彫刻盆・小形の箱などの設計・製作・装飾・塗装。
4.家具・建具・運動器具などの修理。
前学年に準ずる。
(四) 指導方法──生徒の活動
設計を主にする場合,設計・製作・塗装を主にする場合,装飾を主にする場合,修理を主にする場合,特別に工作技法の練習を主にする場合,工具の用法の練習を主にする場合など。
2.工作技法,工具の使用法は全級がある一定のものを作って練習することもあり,生徒が各自任意なものを作って練習することもある。どれによるかは技法の種類や性質,工具の種類や使用方法の性質その他の事情によってきまる。
3.設計だけを練習する場合,設計・製作・塗装・装飾等を練習する場合は,参考図書・生徒用の製作手びき・標本・掛け図等が十分あるかどうか,またその他の事情によって,各自自由に選んだ題目について練習することもあり,分団できめた題目について練習することもある。
4.修理をする場合には,塗料についてはもと塗ってあった塗料の性質を研究してから塗りかえ,破損の修理はよくもとの構造を研究してから修理にかかる。
5.一般木製品について用材の良否や,誠実に作られているかどうかの見分け方を研究し,木製品を買う場合などの着眼点を研究する。
6.自分の労作によってできた作品を愛し,他人の作品を尊重し,一般製作品を長く保つ使用法や保存法を研究する。
7.工具をていねいに使用する。
「一対比較法」または「記述尺度法」によって考査する。
例 設計・製作・塗装を主とする場合の「記述尺度」
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形状・構造・用材・工作法の選び方が極めて独創的で周到 | 形状・構造・用材・工作法の選び方が独創的で周到 |
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すべての計画がずさん | すべての計画がはなはだずさん |
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はなはだ正確でたくみ |
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はなはだ不正確で拙い |
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色がよく仕上げがはなはだ美しい | 色がよく仕上げが美しい |
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色もあまりよくなく,むらがある | 色もわるくむらもひどい |
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非常に研究的で熱心 |
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他人のあとばかり追って熱心でない |
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2.普通金工具の使用練習をさせる。
3.金属製品に対する関心を高め,その賢明な使用者となる能力を養う。
4.創造力を養う。
漏斗・ペンざら・灰ざら・さじ・おろしがね・がん具・など。
2.火造り及び仕上げを主とするもの。
ねじまわし・紙ナイフ・果物ナイフ・火ばし・小刀・など。
板金用具・打ち出し用具・火造り用具・やすり仕上げ用具・製図用具・など。
2.材 料
針金・板金(ブリキ板・とたん仮・銅版・黄銅板)軟ろう・硬ろう・ほう砂・など。刃物鋼・軟鋼・など。
2.調査した品目のうち,家庭や学校で必要なもので,作って見たいと思うもの,作り方を学びたいと思ふもの,自分で作れそうに思えるものなどについて調査する。
3.以上の調査と,学校の設備,手に入れることのできる材料,などを考え合わせて,針金工にするか,ハンダ接合の板金工にするか,打ち出し細工にするか,火造り,やすり仕上げのものにするかなどを決定する。
4.個々の製作する題目は合議によってきめる。なるべく単一なものにしないで,自由活動の範囲を広くする。
5.基本工作法・主要工具の使用法などは,生徒の能力その他の事情に応じて個別にまたはいっせいに研究する。
6.実際に作ることとは別に,一般金属製品について,その製作法の一般や,使用法・保存法などを研究し,金属製品の価値を判定する力を練る。
7.工具・材料をたいせつに使う。
「一対比較法」または「記述尺度法」による。
例 板金打ち出しの場合の「記述尺度」
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独創的で極めてたくみ |
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創意に乏しく拙い | 創意なく極めて拙い |
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つちの扱い方極めてたくみで図案どおりの形に美しくできる | つちの扱い方がたくみで形も図案どおりできる |
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つちの扱い方が粗維で,形も粗雑 | ほとんど形をなさない |
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非常に美しくていねいに仕上げる | 美しくていねいに仕上げる |
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ていねいでたいせつにする |
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はなはだ粗雑に扱う |
第七学年に準じ程度を高める。
(二) 教材例
本学年では主として,ししゅうを課す。教材は次のようなものから,土地の状況に応じて適当なものをとる。
手提げ袋・ハンドバック・かびん敷き・テーブルセンター・ぞうりの表・クッション・半えり・など。
(三) 指導方法──生徒の活動
2.縫い方には,日本ししゅうの縫い方,フランスししゅうといわれる縫い方,及び両方を折衷した縫い方とがあるが,学校では,最も簡便で,早く縫える縫い方,他の方法では出せないししゅう特有の味わいの出せる縫い方,応用のきく縫い方を選んで練習する。
3.図がらによって,縫いやすいものと,縫いにくいものとがあるが,縫いやすいということだけを目標として,古臭い図がらのものを縫うことはせず,生徒がみずから考え出した,清新な図案によって縫う。
4.きまった縫い方だけにこだわらず,図がらに応じた新しい縫い方を,工夫する。
5.縫い方の技法を生かす新しい意匠を考え,またその意匠を生かす技法を工夫する。
「一対比較法,」または次のような「記述尺度」による。
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極めて創意に富みたくみ | 創意に富みたくみ |
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極めて創意に乏しく拙い |
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非常によく工夫してきれい | よく工夫してきれい |
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図がらと縫い方とが合わずはなはだきたない |
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第七学年に準じ程度を高める。
(二) 教材例
第七学年に準ずる。
(三) 指導方法──生徒の活動
2.題目の数の多いことを追わず,相当徹底的に研究し,設備や備品の構造・機能・用途等を理解する。基礎を十分練習し,それによって得た力を,新たに接した備品や設備に対して適用する。
3.こういう仕事を通して,諸設備や備品の必要の程度や,諸種の生活条件から見て,それが最も適当な備品や設備であるかどうかの判定や,その設備や備品は,誠実に製作され施工されているかどうかの判断ができるように研究を積む。
注意 どの教材を指導するにも,つねに他の教材,他の教科との関連に注意しなければならないが,特にこのような教材は,同じ図画工作内の他の教材との関連に注意するとともに,家庭科・社会科・理科その他の教科との関連を密接にして指導しなければならない。
第七学年に準じて行う。
2.表現目的を異にするにしたがって,それに適する表現法をとらなければならないことを理解させる。
3.各種表現方法の得失を研究させる。
4.絵画や説明図に対する常識を養う。
注意 1.どんな表現方法が今までに工夫されているかについては,いろいろな面から検討しなければならないから,簡単に述べるわけには行かないが,そのおもな事項を拾ってみると,次のようなものがある。
(2) 軸測投影図の特殊の場合である等角投影図及びそれに類似した描法による絵画も絵巻物その他に多くの例を見る。説明図には,その例がいっそう多い。
(3) 軸測投影図と少し趣きを異にして,上の面を矩形にかき,鉛直なりょうは鉛直に,平行なりょうは平行に描いたものもある。これは図法上からいえば平画面上に斜投影したものと同様の図形となるが,この種の描法によった絵画には平家納経の装飾その他があり,説明図にもその例が少なくない。
(4) 物の正面を,原形どおりのく形にかき,奥行きを示すためにななめの線をかき,やはり平行なりょうは平行にかく表現法がある。これは普通の斜投影図と同様な図形となるものであるが,この種の描法によるものは,春日権現験記絵巻,その他わが国各時代の絵画に,その例がすこぶる多い。また説明図にもその例は非常に多い。
(5) 以上のような描法は,われわれの眼に見える形とはよほど違ったものとなるが,眼に見える形に近い描法として,透視図法がある。透視図法的の表現法による絵画は,西洋画に非常に多いことは,だれもが知っていることであり,近代の東洋画にもこの例は少なくない。説明図にも透視図法的の描法によるものが少なくない。しかし,現在の透視図法は,眼で見る形どおりの図形が得られるものではなく,多少の相違のあるものであることには,注意しなくてはならない。
注意 2.物の奥行きとか立体観とかを出す方法として次のような方法がある。
(2) 色の濃淡で奥行きや立体観を出す方法。
(3) 物の表面の線によって丸みを出す方法。
(4) 物の位置によって遠近を出す方法。これは,普通に画面の下にかいたものは近く見え,上にかいたものは遠く見えるのを利用した方法である。
(5) 遠小・近大によって遠近を出す方法。
注意 3.線を主要な表現方法に用いているかどうか,また線を用いるにしても,その線はただ物の境界を示すだけの意味に用いられているか,線に特別の意味を持たせているかの相違。
光と光とによって生じる陰影というようなものとを,どの程度に表現上重視しているか。
等の観点から表現法を研究させるのも,一方法である。
注意 4.以上のほか,物の内部構造を示すために,物の一部分を切り去った表現法,すなわち,機械製図などで用いられている断面図や,大和絵などに多く見る吹き抜き屋台の描法のようなもの。
写実的な表現法と非写実的な表現法。
等の観点からの研究をさせるのも,一方法である。
注意 5.こういういろいろな観点からの絵画や説明図の見方の指導をして,広い観点から美術を見る眼を養い,美術に対する常識を養うように指導する。
次のような「記述尺度」によって考査する。
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極めて適当な観点から研究する | 適当な観点から研究する |
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観点が適当でない | どう見てよいかわからない |
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非常に的確である |
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2.美術を愛好する精神を養う。
3.美的情操を養う。
注意 美術史の研究には,日本美術史・日本以外の東洋美術史・西洋美術史というように分けて研究する場合と,同時代の世界の美術を同時に研究する場合とがあるが,学ぶ者が世界史に関するひととおりの知識を持っている場合は横断的のやり方に利点があり,そうでない場合は縦断的のやり方に利点があるであろう。
2.時代によって,美術の背景となる時代思潮がちがい,社会情勢に相違があり,美術を奨励し,保護し,愛好する層が異なっていることに注意し,それが,その時代の美術にどう影響しているかを研究する。
注意 あまり詳細な理論はさけて,鑑賞を主とし,鑑賞を通じて美術を理解し愛好するよう指導する。
美術史に関する知識の考査には,いろいろな知識の有無を考査する方法を適用する。
鑑賞力の考査は「並立比較法」「順位比較法」などによって考査する。