第十二章 第七学年の図画工作指導
(一) 指導目標
2.静物画の構図について研究させ,美的構成力を養う。
3.細写によって,精密正確な観察力と描写力とを養う。
4.略写によって,要点をつかむ力と,簡単な描写力とを養う。
5.創造力と美的情操とを養う。
(二) 教材例
幾何形体・紙片・布・学用品(書籍・絵具箱など)・食器類及び炊事用品(茶わん・土びん・やかん・なべ・など)・遊具類・びん及びつぼの類・果物類・野菜類・草花・こん虫・魚貝の類・はく製の鳥・その他。
(三) 描写材料
鉛筆・水絵具を主とする。
(四) 指導方法──生徒の活動
(2) 幾何形体,紙で作った多面体的のもの及び曲面からなるもの,布のしわ等を鉛筆で写生して,明暗・陰影の表現練習をする。このとき,前に作った鉛筆による明度段階と,実物の明るさ暗さとを比較対照して,明暗を観察する助けとすることもある。
(3) 以上の基礎練習をしてから,各種の対象について,描写練習をする。
2.構図の指導。
(2) 前項のことは,単に絵をかくために注意しなければならないばかりでなく,机の上に物を置くにも,室内を装飾するにも,商店で商品を陳列するにも,その他生活のあらゆる面に適用されることを,なるべく実際について観察する。
(3) かかる美的構成の要素となるものには,形・色・明暗・質感・量感等のあることをたしかめる。
(4) 物自身による美的構成は,画面を構成する構図の基礎となるものではあるが,構図となると,またそこに特別の注意のいることを,多くの実例についてたしかめる。
(5) 構図を研究するには,ある構図法の原則を知って,それを応用するような態度を捨て,どこまでも鉛筆スケッチその他によって,たくさん,いろいろな構図で描写練習をしたり,また,他人のかいたものを見たりして,その間に,自然にある法則を悟り,原理を体得する。いいかえれば,理くつで構図を作るのではなく,感覚で構図を選ぶように練習を積む。
(6) 構図の練習をするためには,色の組み合わせ,形の組み合わせ,明暗の組み合わせ,質の組み合わせ等を主とする分解的な練習もし,二乃至四の要素を適当に組み合わせた総合的な練習もする。
3.細写・略写の指導。
(2) 要点を確実にとらえ,大胆率直な表現の練習をする。
(五) 結果の考査
「—対比較法」により,または「記述尺度法」によって考査する。
例 構図法指導結果の考査「記述尺度」
構図に対する興味 |
大いに興味がある |
興味がある |
普 通 |
興味がない |
さっぱり興味がない |
構図に対する理解 |
非常によく理解する |
よく理解する |
普 通 |
解らない |
さっぱり解らない |
構図の工夫 |
非常によく工夫する |
よく工夫する |
普 通 |
工夫しない |
さっぱり工夫しない |
描 写 |
目立ってたくみ |
た く み |
普 通 |
拙 い |
目立って拙い |
(一) 指導目標
2.補色について知らせる。
3.色彩に対する感覚を鋭敏にする。
4.配色の基本について知らせる。
(二) 指導方法──生徒の活動
混色の指導
染料・顔料等の如き色料を混合する場合。特殊の照明などに用いられる,色ガラスの透過光を混合する場合。原色板や織物のたて糸と横糸とをちがった色糸で織ったもののように,二極以上の色が併置されている結果が,混色されて見えるような場合。混色こまや,混色板による混合の場合。など
2.混色板によって,明度14の「あか」の純色と,明度20の「しろ」とをある割合に組み合わせて回転混合すると,両色の割合のとり方によって,明度15.16.17.18.19等の,明るい「あか」が得られることを実験する。
3.混色板によって,明度14り「あか」の純色と,明度10の「くろ」とをある割合に組み合わせて回転混合すると,両色の割合のとり方によって,明度11.12.13等の,暗い「あか」の得られることを実験する。
4.純色に「しろ」又は「くろ」を混合するとき,「しろ」又は「くろ」の分量が多くなるほど,色の鮮やかさが減ずることを実験し観察する。この鮮やかさの度合を彩度という。
5.明度14の「あか」の純色と,明度14の「はいいろ」とを回転混合すると,明度14の「あか」の濁色ができること,及び「はいいろ」の分量の多いほど彩度の低い濁色となることを実験する。
6.明度の等しい・清色調の色と「はいいろ」とを回転混合すると,その明度の濁色ができ,しかも「はいいろ」の分量の多いほど,彩度のひくい濁色のできることの実験をする。
7.以上のような実験を,他の色相についても行う。この実験は,それぞれの色相について,生徒が分担して行う。
8.以上の実験結果を整理して,同一色相の濁色,清色を,明度段階・彩度段階にしたがって排列して表にまとめる。
9.回転板による異色相の色の混合実験をして,何色と何色とを混合すると,どんな色になるかをたしかめる。
10.回転板による混色によって,補色の現象をたしかめる。
11.標準色に示したのと同様の色の「きいろ」と「あお」との分量の調節をして,回転板で混色すると,両者の明度の中間明度の「はいいろ」となるが,「きいろ」と「あお」の水絵具を混ぜると,彩度のひくい「みどり系」の色ができることの実験をする。
12.他の異色相の色について,それを回転板によって混合する場合と,絵具によって混合する場合とを比較し,できた色の色相の相違,明度の相違,彩度の相違について研究する。
配色の指導
(B) 低明度色の配合は,どんな感じがするか。
(C) 明度差の大きい配合は,どんな感じがするか。
(2) 色相を基調とする配色において
(B) 寒色系に属する配合は,どんな感じがするか。
(C) 色相距離の近い配合は,どんな感じがするか。
(D) 色相距離の遠い配合は,どんな感じがするか。
(3) 彩度を基調とする配色において
(B) 彩度の低い色の配合は,どんな感じがするか。
(C) 彩度差の大きい色の配合は,どんな感じがするか。
2.上の判断に基づいて,図案教材と関連を保って,配色の実習をする。
(三) 結果の考査
次のような「記述尺度」によって考査する。
色彩に対する感覚 |
色相・明度・彩度を極めて確実に判断できる |
色相・明度・彩度を確実に判断できる |
普 通 |
色相・明度・彩度の判断が不確実 |
色相・明度・彩度の判断が極めて不確実 |
混 色 |
極めて確実に所要の色がだせる |
確実に所要の色が出せる |
普 通 |
所要の色がなかなか出せない |
所要の色が出せない |
配色に対する判断 |
配色の良否,その配色の性質が極めて的確にわかる |
配色の良否,配色の性質が的確にわかる |
普 通 |
良否の判断がよくできず配色の性質もよくわからない |
良否の判断ができず,配色の性質もわからない |
配色の技術 |
たいへんたくみ |
た く み |
普 通 |
拙 い |
たいへん拙い |
色彩感覚の考査は各種の色について別々にも行う。
(一) 指導目標
2.自然物と人工物との形の類似について考察させる。
3.自然物と人工物との機能の類似について考察させる。
4.形に対する感覚を鋭敏にする。
(二) 指導方法──生徒の活動
例えば,魚は水を泳ぐに適した形体をしていることや,鳥は空を飛ぶに適した形体をしていること,植物は根から養分を吸収し,枝葉は太陽光線を受けるに都合のよい形体をしていることなど。
2.人工物について,茶わん・さら・かなづち,くわ・その他あらゆるものが,現在あるような形をしている理由について調べ,人工物を,もし現在ある形のものとちがった形のものにしたなら,価値の上にどういう変化が起るかについて考察する。
3.人工物の中には,自然物の形をまねて作ったり,自然物の形から暗示を得て作ったものが少なくない。その具体例を調べる。
4.自然物と人工物との間には,ただその形だけが似ていても,働き(機能)は必ずしも似ていないものもあり,形は似ていなくても,働きの似ているものもあり,形も働きも似ているものもあることを調べる。
5.以上の調べを通して,物の形の合理性や神秘性について話し合う。
(三) 結果の考査
調べさせた一つ一つの結果の考査は,考え方の考査をする各種の方法を採用すればよいか,指導結果の全体の考査としては,次のような「記述尺度」を用いる。
形体考察の興味 |
非常に興味を持つ |
興味を持つ |
普 通 |
あまり興味がない |
興味がない |
考 察 力 |
極めて独創的で研究的な見方をする |
独創的で研究的な見方をする |
普 通 |
表面的なことだけを見る |
考察力がはなはだ乏しい |
(一) 指導目標
2.模様の構成とそれを実際のものに適用する練習をさせる。
3.創造力を養う。
4.美的情操を養う。
(二) 教材例
2.こん虫・魚・貝・鳥・獣その他の動物の図案化。
3.雪の結晶・雲・流水・波・その他の自然現象の図案化。
4.風景の図案化。
5.食器・箱の類・文房具・学用品・壁掛その他の室内装飾品・織物その他の服飾品などの装飾図案。
(三) 指導方法──生徒の活動
2.図案化はただ無意味に自然を変化するのではなく,よく自然の美しさを看取して,それを生かすよう工夫する。
3.模様の構成を練習するには,二方続き模様・当てはめ模様・四方続き模様等の骨組みの基本とか,構成の方法とかを研究し,それを実際の図案に適用することもあり,(これはあまりに形式に流れ,生気のないものになるとの反対もある。)図案構成の骨組みとか形式とかにとらわれず,自由に構成することもある。
4.図案をかく場合,ある面積を適当に区画し,それからだんだん細部に進んでいくやり方,即ち,全体から部分へとかいていく方法もとり,まず中心になるものをかき,それに調和するように周囲のものを組み立てていく方法もとる。
人により,前者の方法を得意とする者と,後者の方法を得意とする者とがある。また,図案する物により,前者の方法がやり易いものと,後者の方法がやり易いものとがある。
注意 1.題材は,教材例にあげたようなものから,なるべく生徒が実際生活上にその図案を生かして使えるもので,生徒に興味あるものから,選ばせて指導する。
注意 2.参考品をなるべく多く集めて,生徒の図案表現の意欲を刺げきし,表現の参考を提出する。
注意 3.図案の指導は,木工教材・手芸教材などの指導と連絡を保ち,また,家庭科その他の教科との関連に留意する。
(四) 結果の考査
「一対比較法」により,また次のような「記述尺度」による。
図 案 化 |
目立ってたくみ |
た く み |
普 通 |
拙 い |
目立って拙い |
模様の構成 |
極めて独創的でたくみ |
独創的でたくみ |
普 通 |
類型的で拙い |
極めて拙い |
図案表現の技術 |
巧みで表現材料の選び方も表現方法も極めてたくみ |
表現材料の選び方も表現方法もたくみ |
普 通 |
表現材料の選び方も表現方法も拙い |
極めて拙い |
(一) 指導目標
2.第一角法と第三角法とについて理解させる。
3.作図力及び読図力を養う。
(二) 教材例
2.製図用文字。
3.第一角法と第三角法の相違及びその長所短所。
4.木工教材と関連ある簡単なものの製図。
(三) 指導方法──生徒の活動
2.鉛筆で,太線・半線・毛線の別を明瞭にかきわけるには,どうすればよいかを研究し,もの描写練習をする。
3.できるだけ細い線で,できをだけ小さい円をかく方法を研究し,その描写練習をする。また,太線・半線・毛線の別を明りょうに区別した円をかく方法を研究し,その描写練習をする。
4.上記の研究や練習と同時に,三角定木・T定木・コンパス等の正しい用い方を練習する。
5.製図用文字の書き方を練習する。
6.第一角法における平面図・立面図・側面図と,実体との関係を復習し,第三角法における平面図・立面図・側面図と,実体との関係とを比べ,どちらが,実際,製図をする上に便利で,かつわかりよいかについて研究する。
7.第一角法でかいた製図と,第三角法でかいた製図とを読む棟習をする。
8.製図用のいろいろの線の用法について研究する。
9.実際に製図の練習をするには,初めによい模範を見て,コッピーし,線や文字のかき方の練習をすると共に,作図の順序方法を理解し,読図の力をつける。そして相当の写図力がついたところで,簡単な実物の実測製図の練習をする。
(四) 結果の考査
製図用の線や文字の練習結果の考査は,一定の作業をさせて,その速度・正確さを考査し場合によっては,巧みさの考査もする。
第一角法・第三角法の理解については,完成法や訂正法を用い,不備な図や,誤りのある図を示して,その不備の点を補わせ,また誤りを訂正させる。
(一) 指導目標
2.木工具の正しい使い方の練習をさせる。
3.簡易な木製品の設計・製作・装飾をする力を養う。
4.創造力を養う。
5.木製品の賢明な使用者となる能力を養う。
(二) 教材例
かんなの使い方・のこぎりの使い方・のみの使い方・つちの使い方・定木類の使い方・など。
2.製作教材
簡単な文房具・家庭用具・運動用具・遊具・装飾用品・など。
3.木工機械の使用
帯鋸機・円鋸機・ポールバン・角のみ機・木工旋盤・など。
(三) 用具・材料
2.木材・くぎその他の緊結材料・こう着材料・塗装材料・など。
(四) 指導方法──生徒の活動
2.木製品を作るにはどんな技術か必要かを研究する。
板を平に削ること。柱を正しく削ること。板を同じ平面に接合して面積を広くすること。板を直角その他の角度に接合すること。柱を直角その他の角度に接合すること。柱を直線的に接合することなど。
3.主要な基本技法の練習をする。
4.適当な題目を選び,その設計・製作・装飾をする。
製作は数の多いことよりも,手がたく,確実に作る。
注意 1.設計・製作・装飾の実習にあたっては創意工夫の力を十分に発揮すること。研究的態度で仕事をすること。誠実に仕事をすること。等について十分指導する。
注意 2.一般の木製品に対する理解を深め,自分の作品を尊重するとともに,他人の作品を尊重し,一般の製作品に対しても,それを愛して使用するように導びく。
(五) 結果の考査
「一対比較法」または「記述尺度法」による。
例 基本技術としての板削り練習結果の考査「記述尺度」
刃物の切れ味 |
非常によく切れる |
よく切れる |
普 通 |
あまり切れない |
切れない |
削り方の順序方法 |
極めて適正な順序により正しく削る |
削り方の順序方法共に正しい |
普 通 |
削り方の順序方法がやや乱雑 |
削り方がでたらめである |
速 さ |
非常に早い |
早 い |
普 通 |
お そ い |
非常におそい |
正 確 さ |
非常に正確 |
正 確 |
普 通 |
不 正 確 |
非常に不正確 |
作業態度 |
非常に研究的で熱心 |
研究的で熱心 |
普 通 |
他人のあとばかり追って,熱心でない |
なまけている |
(一) 指導目標
2.装飾の才能と美的趣味性を養う。
3.創造力を養う。
(二) 教材例
本学年は主として編み物を課す。教材としては,次のようなものから,土地の状況によって適当なものを採用する。
2.マフラー・子供の靴下・靴下・帽子・手袋・スウェター・など。
(三) 指導方法──生徒の活動
2.製作の方法を研究し 材料・配色等について案を立てて製作する。
注意 1.編み物の指導において,従来欠点とされていたことは,きまった形に,きまった方法で編むことばかりやらせて,意匠創案の力,工夫して作る習慣を養うことをしないということであった。十分意を用いて改める要がある。
注意 2.美的趣味牲を養うには,多くの優秀な作品を見せたり,作品に対して,形はよいか,実用上不便な点はないか,配色は適当かなどと,常に批判的に見,また他人の意見を聞いたりして,美に対する感覚を練らなければならない。
(四) 結果の考査
「一対比較法」または次のような「記述尺度」による。
材料の利用 |
はなはだうまい |
う ま い |
普 通 |
拙 い |
はなはだ拙い |
創意工夫 |
はなはだ創意工夫に富む |
創意工夫に富む |
普 通 |
創意工夫に乏い |
ほとんど創意工夫がない |
配 色 |
極めてよい |
よ い |
普 通 |
拙 い |
極めて拙い |
手 ぎ わ |
たいへんよい |
よ い |
普 通 |
拙 い |
たいへん拙い |
(一) 指導目標
2.諸設備・備品の正しい使用法及び手入れ法・保存法を理解させ,その使用になれさせる。
3.諸設備・備品の簡易な修理をする能力を養う。
4.諸設備・備品の賢明な使用者となる能力を養う。
(二) 教材例
2.家庭や学校にある普通の工具類。
3.時計・ラジオ・自動車・電気設備・ガス水道の設備・製粉機・その他家庭や学校にある普通の諸設備及び簡単な機械類。
4.農機具・農機械の類。
5.学校にある工作用の機械類。
(三) 指導方法──生徒の活動
2.研究する物により個人研究とし,または共同研究とする。なるべく数名の共同研究にする。
教師は生徒に研究させ,その研究の指導をする態度でありたい。そのためには,生徒が研究するための図書・標本・掛け図・写真・参考図等を,なるべく豊富に備えておかなければならない。これらの参考資料は,現に各学校に豊富に備えつけてはないであろうし現在入手も困難であろうが,せいぜい心掛けて集める必要がある。
3.学校や家庭に,破損した器具類や簡単な機械類があれば分解して,その構造を研究し,更に修理し組立てることもする。
4.設備や備品の構造や機能の研究にも,使用・操作の練習にも,分解組み立てにも,常にその製品に対して,尊敬と愛とを持って接する。
注意 普通の器物・器具・工具などの取り扱いを主とするか,機械類の取り扱いを主とするかは,生徒の環境如何や土地の状況によって決すべきである。また,同じ学校においても,できれば,生徒各個の性能や傾向に応じて,教材の方面や,程度をきめるようにすることもよい。
(四) 結果の考査
次のような「記述尺度」による。
設備・備品に対する理解 |
構造・機能等を極めてよく理解する |
よく理解する |
普 通 |
理解が鈍い |
理解できない |
設備・備品の扱い方 |
極めてていねい |
ていねい |
普 通 |
そ ま つ |
乱 暴 |
設備・備品の手入れ及び修理 |
極めてよく手入れや修理をする |
よく手入れや修理をする |
普 通 |
あまり手入れや修理をしない |
手入れや修理をしない |
研究的態度 |
非常によく研究する |
よく研究する |
普 通 |
あまり研究しない |
目立って研究しない |
(一) 指導目標
2.描写材料の相違によって,題材のとり方や表現に,どんなちがいがあるかの考察をさせる。
3.絵画に対する常識を養う。
(二) 指導方法──生徒の活動
水彩画・油絵・テンペラ画・クレヨン画・鉛筆画・木炭画・コンテ画・ペン画・水墨画・顔彩画・木版画・銅版画・など。
2.それらの種類の絵画は,どんな材料で何にかいてあるかをつきこんで,参考品について研究する。
3.描く材料が,水絵具・油絵具・水墨・顔彩というように変わり,かかれる材料が,紙・絹・麻布・板というように変わるにしたがって,かくモチーフがちがって来ることや,表現の様式が変わって来ることを調べる。
支那や日本などに発達して来た東洋画と,西欧諸国に発達して来た西洋画との,いろいろなちがいは,その国民性や民族性のちがいから来ているものではあるが,東洋・西洋で採用された,描写材料の相違にもよる。
注意 1.表現しようとするモチーフの如何により,また,表現しようとする気持の如何によって,それを表現するに適した描写材料を選ばなければならないことに注意させる。
注意 2.この教材は,次の鑑賞と関連を保って一体のものとして指導する。
(三) 結果の考査
結果の考査には,知識の有無を考査する各種の方法が用いられるが,次のような「組み合わせ法」を用いるのも一方法である。
「次の左にあるかく材料では,主として,右にあるどの材料にかかれるか,関係のあるものを線で結べ。」
墨 画箋紙
テンペラ 絹布
岩絵具 半紙
顔彩 ワットマン紙
油絵具 鳥の子紙
板
ケント紙
(一) 指導目標
2.工芸品・美術工芸品については,その用と美との関係について関心を持たせる。
3.美的情操を養う。
(二) 指導方法──生徒の活動
低学年のとき,よいと思ったものでも,度々見ている中に,だんだんよいと思わなくなるものもあり,その反対に,初めの中は,別によいと思っていなかったものが,だんだんよく見えてくることもある。かような変化が来るたびに,鑑賞眼はだんだん発達して来るのであるから,年々新しい鑑賞材料を,提供すると共に,前に見たものと同じものをくりかえし見る要がある。
2.作品のできた時代のすがた,作者の略伝,名作物語なども調べる。
3.作品は単独に鑑賞すると共に,その作品を置く場所との関係,他の作品との組み合わせによる美しさなどを総合的にも鑑賞する。
例えば,掛物になっている絵画ならば,その表装との関係,床の間との関係,置物との関係など。油絵ならば,額縁との関係,それを掛けて置く壁紙の模様や色彩との関係,その他,室内の他の調度品との関係など。工芸品ならば,他の工芸品との関係など。
注意 1.作品を見る勘どころを知らせることは必要であるが,作品を理くつだけで批判して,作品を見る感覚を鋭敏にすることを忘れてはならない。
注意 2.鑑賞眼の発達は,表現力の発達により影響を与えるものであるから,描画・製作等の表現教材と関連を保って指導する。
(三) 結果の考査
「並立比較法」「順位比較法」などによって考査する。