第6節 保 健 体 育
第1款 目 標
体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを継続するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 各種の運動の特性に応じた技能等及び社会生活における健康・安全について理解するとともに,技能を身に付けるようにする。
(2) 運動や健康についての自他や社会の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う。
(3) 生涯にわたって継続して運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,明るく豊かで活力ある生活を営む態度を養う。
第2款 各 科 目
第1 体 育
1 目 標
体育の見方・考え方を働かせ,課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続するとともに,自己の状況に応じて体力の向上を図るための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 運動の合理的,計画的な実践を通して,運動の楽しさや喜びを深く味わい,生涯にわたって運動を豊かに継続することができるようにするため,運動の多様性や体力の必要性について理解するとともに,それらの技能を身に付けるようにする。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて思考し判断するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝える力を養う。
(3) 運動における競争や協働の経験を通して,公正に取り組む,互いに協力する,自己の責任を果たす,参画する,一人一人の違いを大切にしようとするなどの意欲を育てるとともに,健康・安全を確保して,生涯にわたって継続して運動に親しむ態度を養う。
2 内 容
A 体つくり運動
体つくり運動について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動を通して,体を動かす楽しさや心地よさを味わい,体つくり運動の行い方,体力の構成要素,実生活への取り入れ方などを理解するとともに,自己の体力や生活に応じた継続的な運動の計画を立て,実生活に役立てること。
ア 体ほぐしの運動では,手軽な運動を行い,心と体は互いに影響し変化することや心身の状態に気付き,仲間と主体的に関わり合うこと。
イ 実生活に生かす運動の計画では,自己のねらいに応じて,健康の保持増進や調和のとれた体力の向上を図るための継続的な運動の計画を立て取り組むこと。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための自己や仲間の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
(3) 体つくり運動に主体的に取り組むとともに,互いに助け合い高め合おうとすること,一人一人の違いに応じた動きなどを大切にしようとすること,合意形成に貢献しようとすることなどや,健康・安全を確保すること。
B 器械運動
器械運動について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動について,技がよりよくできたり自己や仲間の課題を解決したりするなどの多様な楽しさや喜びを味わい,技の名称や行い方,体力の高め方,課題解決の方法,発表の仕方などを理解するとともに,自己に適した技で演技すること。
ア マット運動では,回転系や巧技系の基本的な技を滑らかに安定して行うこと,条件を変えた技や発展技を行うこと及びそれらを構成し演技すること。
イ 鉄棒運動では,支持系や懸垂系の基本的な技を滑らかに安定して行うこと,条件を変えた技や発展技を行うこと及びそれらを構成し演技すること。
ウ 平均台運動では,体操系やバランス系の基本的な技を滑らかに安定して行うこと,条件を変えた技や発展技を行うこと及びそれらを構成し演技すること。
エ 跳び箱運動では,切り返し系や回転系の基本的な技を滑らかに安定して行うこと,条件を変えた技や発展技を行うこと。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための自己や仲間の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
(3) 器械運動に主体的に取り組むとともに,よい演技を讃(たた)えようとすること,互いに助け合い高め合おうとすること,一人一人の違いに応じた課題や挑戦を大切にしようとすることなどや,健康・安全を確保すること。
C 陸上競技
陸上競技について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動について,記録の向上や競争及び自己や仲間の課題を解決するなどの多様な楽しさや喜びを味わい,技術の名称や行い方,体力の高め方,課題解決の方法,競技会の仕方などを理解するとともに,各種目特有の技能を身に付けること。
ア 短距離走・リレーでは,中間走の高いスピードを維持して速く走ることやバトンの受渡しで次走者と前走者の距離を長くすること,長距離走では,ペースの変化に対応して走ること,ハードル走では,スピードを維持した走りからハードルを低くリズミカルに越すこと。
イ 走り幅跳びでは,スピードに乗った助走と力強い踏み切りから着地までの動きを滑らかにして跳ぶこと,走り高跳びでは,スピードのあるリズミカルな助走から力強く踏み切り,滑らかな空間動作で跳ぶこと,三段跳びでは,短い助走からリズミカルに連続して跳ぶこと。
ウ 砲丸投げでは,立ち投げなどから砲丸を突き出して投げること,やり投げでは,短い助走からやりを前方にまっすぐ投げること。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための自己や仲間の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
(3) 陸上競技に主体的に取り組むとともに,勝敗などを冷静に受け止め,ルールやマナーを大切にしようとすること,役割を積極的に引き受け自己の責任を果たそうとすること,一人一人の違いに応じた課題や挑戦を大切にしようとすることなどや,健康・安全を確保すること。
D 水 泳
水泳について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動について,記録の向上や競争及び自己や仲間の課題を解決するなどの多様な楽しさや喜びを味わい,技術の名称や行い方,体力の高め方,課題解決の方法,競技会の仕方などを理解するとともに,自己に適した泳法の効率を高めて泳ぐこと。
ア クロールでは,手と足の動き,呼吸のバランスを保ち,伸びのある動作と安定したペースで長く泳いだり速く泳いだりすること。
イ 平泳ぎでは,手と足の動き,呼吸のバランスを保ち,伸びのある動作と安定したペースで長く泳いだり速く泳いだりすること。
ウ 背泳ぎでは,手と足の動き,呼吸のバランスを保ち,安定したペースで長く泳いだり速く泳いだりすること。
エ バタフライでは,手と足の動き,呼吸のバランスを保ち,安定したペースで長く泳いだり速く泳いだりすること。
オ 複数の泳法で長く泳ぐこと又はリレーをすること。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための自己や仲間の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
(3) 水泳に主体的に取り組むとともに,勝敗などを冷静に受け止め,ルールやマナーを大切にしようとすること,役割を積極的に引き受け自己の責任を果たそうとすること,一人一人の違いに応じた課題や挑戦を大切にしようとすることなどや,水泳の事故防止に関する心得を遵守するなど健康・安全を確保すること。
E 球 技
球技について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動について,勝敗を競ったりチームや自己の課題を解決したりするなどの多様な楽しさや喜びを味わい,技術などの名称や行い方,体力の高め方,課題解決の方法,競技会の仕方などを理解するとともに,作戦や状況に応じた技能で仲間と連携しゲームを展開すること。
ア ゴール型では,状況に応じたボール操作と空間を埋めるなどの動きによって空間への侵入などから攻防をすること。
イ ネット型では,状況に応じたボール操作や安定した用具の操作と連携した動きによって空間を作り出すなどの攻防をすること。
ウ ベースボール型では,状況に応じたバット操作と走塁での攻撃,安定したボール操作と状況に応じた守備などによって攻防をすること。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するためのチームや自己の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己やチームの考えたことを他者に伝えること。
(3) 球技に主体的に取り組むとともに,フェアなプレイを大切にしようとすること,合意形成に貢献しようとすること,一人一人の違いに応じたプレイなどを大切にしようとすること,互いに助け合い高め合おうとすることなどや,健康・安全を確保すること。
F 武 道
武道について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動について,勝敗を競ったり自己や仲間の課題を解決したりするなどの多様な楽しさや喜びを味わい,伝統的な考え方,技の名称や見取り稽古の仕方,体力の高め方,課題解決の方法,試合の仕方などを理解するとともに,得意技などを用いた攻防を展開すること。
ア 柔道では,相手の動きの変化に応じた基本動作から,得意技や連絡技・変化技を用いて,素早く相手を崩して投げたり,抑えたり,返したりするなどの攻防をすること。
イ 剣道では,相手の動きの変化に応じた基本動作から,得意技を用いて,相手の構えを崩し,素早くしかけたり応じたりするなどの攻防をすること。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための自己や仲間の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
(3) 武道に主体的に取り組むとともに,相手を尊重し,礼法などの伝統的な行動の仕方を大切にしようとすること,役割を積極的に引き受け自己の責任を果たそうとすること,一人一人の違いに応じた課題や挑戦を大切にしようとすることなどや,健康・安全を確保すること。
G ダンス
ダンスについて,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(1) 次の運動について,感じを込めて踊ったり仲間と自由に踊ったり,自己や仲間の課題を解決したりするなどの多様な楽しさや喜びを味わい,ダンスの名称や用語,文化的背景と表現の仕方,交流や発表の仕方,課題解決の方法,体力の高め方などを理解するとともに,それぞれ特有の表現や踊りを身に付けて交流や発表をすること。
ア 創作ダンスでは,表したいテーマにふさわしいイメージを捉え,個や群で,対極の動きや空間の使い方で変化を付けて即興的に表現したり,イメージを強調した作品にまとめたりして踊ること。
イ フォークダンスでは,日本の民踊(よう)や外国の踊りから,それらの踊り方の特徴を強調して,音楽に合わせて多様なステップや動きと組み方で仲間と対応して踊ること。
ウ 現代的なリズムのダンスでは,リズムの特徴を強調して全身で自由に踊ったり,変化とまとまりを付けて仲間と対応したりして踊ること。
(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための自己や仲間の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて取り組み方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝えること。
(3) ダンスに主体的に取り組むとともに,互いに共感し高め合おうとすること,合意形成に貢献しようとすること,一人一人の違いに応じた表現や役割を大切にしようとすることなどや,健康・安全を確保すること。
H 体育理論
(1) スポーツの文化的特性や現代のスポーツの発展について,課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア スポーツの文化的特性や現代のスポーツの発展について理解すること。
(ア) スポーツは,人類の歴史とともに始まり,その理念が時代に応じて多様に変容してきていること。また,我が国から世界に普及し,発展しているスポーツがあること。
(イ) 現代のスポーツは,オリンピックやパラリンピック等の国際大会を通して,国際親善や世界平和に大きな役割を果たし,共生社会の実現にも寄与していること。また,ドーピングは,フェアプレイの精神に反するなど,能力の限界に挑戦するスポーツの文化的価値を失わせること。
(ウ) 現代のスポーツは,経済的な波及効果があり,スポーツ産業が経済の中で大きな影響を及ぼしていること。また,スポーツの経済的な波及効果が高まるにつれ,スポーツの高潔さなどが一層求められること。
(エ) スポーツを行う際は,スポーツが環境や社会にもたらす影響を考慮し,多様性への理解や持続可能な社会の実現に寄与する責任ある行動が求められること。
イ スポーツの文化的特性や現代のスポーツの発展について,課題を発見し,よりよい解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝えること。
ウ スポーツの文化的特性や現代のスポーツの発展についての学習に自主的に取り組むこと。
(2) 運動やスポーツの効果的な学習の仕方について,課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 運動やスポーツの効果的な学習の仕方について理解すること。
(ア) 運動やスポーツの技能と体力は,相互に関連していること。また,期待する成果に応じた 技能や体力の高め方があること。さらに,過度な負荷や長期的な酷使は,けがや疾病の原因となる可能性があること。
(イ) 運動やスポーツの技術は,学習を通して技能として発揮されるようになること。また,技術の種類に応じた学習の仕方があること。現代のスポーツの技術や戦術,ルールは,用具の改良やメディアの発達に伴い変わり続けていること。
(ウ) 運動やスポーツの技能の上達過程にはいくつかの段階があり,その学習の段階に応じた練習方法や運動観察の方法,課題の設定方法などがあること。また,これらの獲得には,一定の期間がかかること。
(エ) 運動やスポーツを行う際は,気象条件の変化など様々な危険を予見し,回避することが求められること。
イ 運動やスポーツの効果的な学習の仕方について,課題を発見し,よりよい解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝えること。
ウ 運動やスポーツの効果的な学習の仕方についての学習に主体的に取り組むこと。
(3) 豊かなスポーツライフの設計の仕方について,課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 豊かなスポーツライフの設計の仕方について理解すること。
(ア) スポーツは,各ライフステージにおける身体的,心理的,社会的特徴に応じた多様な楽しみ方があること。また,その楽しみ方は,個人のスポーツに対する欲求などによっても変化すること。
(イ) 生涯にわたってスポーツを継続するためには,ライフスタイルに応じたスポーツとの関わり方を見付けること,仕事と生活の調和を図ること,運動の機会を生み出す工夫をすることなどが必要であること。
(ウ) スポーツの推進は,様々な施策や組織,人々の支援や参画によって支えられていること。
(エ) 人生に潤いをもたらす貴重な文化的資源として,スポーツを未来に継承するためには,スポーツの可能性と問題点を踏まえて適切な「する,みる,支える,知る」などの関わりが求められること。
イ 豊かなスポーツライフの設計の仕方について,課題を発見し,よりよい解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝えること。
ウ 豊かなスポーツライフの設計の仕方についての学習に主体的に取り組むこと。
3 内容の取扱い
(1) 内容の「A体つくり運動」から「H体育理論」までの領域については,次のとおり取り扱うものとする。
ア 「A体つくり運動」及び「H体育理論」については,各年次において全ての生徒に履修させること。
イ 入学年次においては,「B器械運動」,「C陸上競技」,「D水泳」及び「Gダンス」についてはこれらの中から一つ以上を,「E球技」及び「F武道」についてはこれらの中から一つ以上をそれぞれ選択して履修できるようにすること。その次の年次以降においては,「B器械運動」から「Gダンス」までの中から二つ以上を選択して履修できるようにすること。
(2) 内容の「A体つくり運動」から「H体育理論」までに示す事項については,各年次において次のとおり取り扱うものとする。
ア 「A体つくり運動」に示す事項については,全ての生徒に履修させること。なお,(1)のアの運動については,「B器械運動」から「Gダンス」までにおいても関連を図って指導することができるとともに,「保健」における精神疾患の予防と回復などの内容との関連を図ること。(1)のイの運動については,日常的に取り組める運動例を組み合わせることに重点を置くなど指導方法の工夫を図ること。
イ 「B器械運動」の(1)の運動については,アからエまでの中から選択して履修できるようにすること。
ウ 「C陸上競技」の(1)の運動については,アからウまでの中から選択して履修できるようにすること。
エ 「D水泳」の(1)の運動については,アからオまでの中から選択して履修できるようにすること。なお,「保健」における応急手当の内容との関連を図ること。
また,泳法との関連において水中からのスタート及びターンを取り上げること。なお,入学年次の次の年次以降は,安全を十分に確保した上で,学校や生徒の実態に応じて段階的な指導を行うことができること。
オ 「E球技」の(1)の運動については,入学年次においては,アからウまでの中から二つを,その次の年次以降においては,アからウまでの中から一つを選択して履修できるようにすること。また,アについては,バスケットボール,ハンドボール,サッカー,ラグビーの中から,イについては,バレーボール,卓球,テニス,バドミントンの中から,ウについては,ソフトボールを適宜取り上げることとし,学校や地域の実態に応じて,その他の運動についても履修させることができること。
カ 「F武道」については,柔道,剣道,相撲,空手道,なぎなた,弓道,合気道,少林寺拳法,銃剣道などを通して,我が国固有の伝統と文化により一層触れることができるようにすること。また,(1)の運動については,ア又はイのいずれかを選択して履修できるようにすること。なお,学校や地域の実態に応じて,相撲,空手道,なぎなた,弓道,合気道,少林寺拳法,銃剣道などについても履修させることができること。
キ 「Gダンス」の(1)の運動については,アからウまでの中から選択して履修できるようにすること。なお,学校や地域の実態に応じて,社交ダンスなどのその他のダンスについても履修させることができること。
ク 「H体育理論」については,(1)は入学年次,(2)はその次の年次,(3)はそれ以降の年次で取り上げること。その際,各年次で6単位時間以上を配当すること。
(3) 内容の「B器械運動」から「Gダンス」までの領域及び運動については,学校や地域の実態及び生徒の特性や選択履修の状況等を踏まえるとともに,安全を十分に確保した上で,生徒が自由に選択して履修することができるよう配慮するものとする。指導に当たっては,内容の「B器械運動」から「Gダンス」までの領域については,それぞれの運動の特性に触れるために必要な体力を生徒自ら高めるように留意するものとする。また,内容の「B器械運動」から「F武道」までの領域及び運動については,必要に応じて審判の仕方についても指導するものとする。また,「F武道」については,我が国固有の伝統と文化により一層触れさせるため,中学校の学習の基礎の上に,より深められる機会を確保するよう配慮するものとする。
(4) 自然との関わりの深いスキー,スケートや水辺活動などの指導については,学校や地域の実態に応じて積極的に行うことに留意するものとする。また,レスリングについても履修させることができるものとする。
(5) 集合,整頓,列の増減,方向変換などの行動の仕方を身に付け,能率的で安全な集団としての行動ができるようにするための指導については,内容の「A体つくり運動」から「Gダンス」までの領域において適切に行うものとする。
(6) 筋道を立てて練習や作戦について話し合う活動などを通して,コミュニケーション能力や論理的な思考力の育成を促し,主体的な学習活動が充実するよう配慮するものとする。
第2 保 健
1 目 標
保健の見方・考え方を働かせ,合理的,計画的な解決に向けた学習過程を通して,生涯を通じて人々が自らの健康や環境を適切に管理し,改善していくための資質・能力を次のとおり育成する。
(1) 個人及び社会生活における健康・安全について理解を深めるとともに,技能を身に付けるようにする。
(2) 健康についての自他や社会の課題を発見し,合理的,計画的な解決に向けて思考し判断するとともに,目的や状況に応じて他者に伝える力を養う。
(3) 生涯を通じて自他の健康の保持増進やそれを支える環境づくりを目指し,明るく豊かで活力ある生活を営む態度を養う。
2 内 容
(1) 現代社会と健康について,自他や社会の課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 現代社会と健康について理解を深めること。
(ア) 健康の考え方
国民の健康課題や健康の考え方は,国民の健康水準の向上や疾病構造の変化に伴って変わってきていること。また,健康は,様々な要因の影響を受けながら,主体と環境の相互作用の下に成り立っていること。
健康の保持増進には,ヘルスプロモーションの考え方を踏まえた個人の適切な意思決定や行動選択及び環境づくりが関わること。
(イ) 現代の感染症とその予防
感染症の発生や流行には,時代や地域によって違いがみられること。その予防には,個人の取組及び社会的な対策を行う必要があること。
(ウ) 生活習慣病などの予防と回復
健康の保持増進と生活習慣病などの予防と回復には,運動,食事,休養及び睡眠の調和のとれた生活の実践や疾病の早期発見,及び社会的な対策が必要であること。
(エ) 喫煙,飲酒,薬物乱用と健康
喫煙と飲酒は,生活習慣病などの要因になること。また,薬物乱用は,心身の健康や社会に深刻な影響を与えることから行ってはならないこと。それらの対策には,個人や社会環境への対策が必要であること。
(オ) 精神疾患の予防と回復
精神疾患の予防と回復には,運動,食事,休養及び睡眠の調和のとれた生活を実践するとともに,心身の不調に気付くことが重要であること。また,疾病の早期発見及び社会的な対策が必要であること。
イ 現代社会と健康について,課題を発見し,健康や安全に関する原則や概念に着目して解決の方法を思考し判断するとともに,それらを表現すること。
(2) 安全な社会生活について,自他や社会の課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 安全な社会生活について理解を深めるとともに,応急手当を適切にすること。
(ア) 安全な社会づくり
安全な社会づくりには,環境の整備とそれに応じた個人の取組が必要であること。また,交通事故を防止するには,車両の特性の理解,安全な運転や歩行など適切な行動,自他の生命を尊重する態度,交通環境の整備が関わること。交通事故には補償をはじめとした責任が生じること。
(イ) 応急手当
適切な応急手当は,傷害や疾病の悪化を軽減できること。応急手当には,正しい手順や方法があること。また,応急手当は,傷害や疾病によって身体が時間の経過とともに損なわれていく場合があることから,速やかに行う必要があること。
心肺蘇(そ)生法などの応急手当を適切に行うこと。
イ 安全な社会生活について,安全に関する原則や概念に着目して危険の予測やその回避の方法を考え,それらを表現すること。
(3) 生涯を通じる健康について,自他や社会の課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生涯を通じる健康について理解を深めること。
(ア) 生涯の各段階における健康
生涯を通じる健康の保持増進や回復には,生涯の各段階の健康課題に応じた自己の健康管理及び環境づくりが関わっていること。
(イ) 労働と健康
労働災害の防止には,労働環境の変化に起因する傷害や職業病などを踏まえた適切な健康管理及び安全管理をする必要があること。
イ 生涯を通じる健康に関する情報から課題を発見し,健康に関する原則や概念に着目して解決の方法を思考し判断するとともに,それらを表現すること。
(4) 健康を支える環境づくりについて,自他や社会の課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 健康を支える環境づくりについて理解を深めること。
(ア) 環境と健康
人間の生活や産業活動は,自然環境を汚染し健康に影響を及ぼすことがあること。それらを防ぐには,汚染の防止及び改善の対策をとる必要があること。また,環境衛生活動は,学校や地域の環境を健康に適したものとするよう基準が設定され,それに基づき行われていること。
(イ) 食品と健康
食品の安全性を確保することは健康を保持増進する上で重要であること。また,食品衛生活動は,食品の安全性を確保するよう基準が設定され,それに基づき行われていること。
(ウ) 保健・医療制度及び地域の保健・医療機関
生涯を通じて健康を保持増進するには,保健・医療制度や地域の保健所,保健センター,医療機関などを適切に活用することが必要であること。
また,医薬品は,有効性や安全性が審査されており,販売には制限があること。疾病からの回復や悪化の防止には,医薬品を正しく使用することが有効であること。
(エ) 様々な保健活動や社会的対策
我が国や世界では,健康課題に対応して様々な保健活動や社会的対策などが行われていること。
(オ) 健康に関する環境づくりと社会参加
自他の健康を保持増進するには,ヘルスプロモーションの考え方を生かした健康に関する環境づくりが重要であり,それに積極的に参加していくことが必要であること。また,それらを実現するには,適切な健康情報の活用が有効であること。
イ 健康を支える環境づくりに関する情報から課題を発見し,健康に関する原則や概念に着目して解決の方法を思考し判断するとともに,それらを表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の(1)のアの(ウ)及び(4)のアの(イ)については,食育の観点を踏まえつつ,健康的な生活習慣の形成に結び付くよう配慮するものとする。また,(1)のアの(ウ)については,がんについても取り扱うものとする。
(2) 内容の(1)のアの(ウ)及び(4)のアの(ウ)については,健康とスポーツの関連について取り扱うものとする。
(3) 内容の(1)のアの(エ)については,疾病との関連,社会への影響などについて総合的に取り扱い,薬物については,麻薬,覚醒剤,大麻等を取り扱うものとする。
(4) 内容の(1)のアの(オ)については,大脳の機能,神経系及び内分泌系の機能について必要に応じ関連付けて扱う程度とする。また,「体育」の「A体つくり運動」における体ほぐしの運動との関連を図るよう配慮するものとする。
(5) 内容の(2)のアの(ア)については,犯罪や自然災害などによる傷害の防止についても,必要に応じ関連付けて扱うよう配慮するものとする。また,交通安全については,二輪車や自動車を中心に取り上げるものとする。
(6) 内容の(2)のアの(イ)については,実習を行うものとし,呼吸器系及び循環器系の機能については,必要に応じ関連付けて扱う程度とする。また,効果的な指導を行うため,「体育」の「D水泳」などとの関連を図るよう配慮するものとする。
(7) 内容の(3)のアの(ア)については,思春期と健康,結婚生活と健康及び加齢と健康を取り扱うものとする。また,生殖に関する機能については,必要に応じ関連付けて扱う程度とする。責任感を涵(かん)養することや異性を尊重する態度が必要であること,及び性に関する情報等への適切な対処についても扱うよう配慮するものとする。
(8) 内容の(4)のアの(ア)については,廃棄物の処理と健康についても触れるものとする。
(9) 指導に際しては,自他の健康やそれを支える環境づくりに関心をもてるようにし,健康に関する課題を解決する学習活動を取り入れるなどの指導方法の工夫を行うものとする。
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,体育や保健の見方・考え方を働かせながら,運動や健康についての自他や社会の課題を発見し,その合理的,計画的な解決のための活動の充実を図ること。また,運動の楽しさや喜びを深く味わったり,健康の大切さを実感したりすることができるよう留意すること。
(2) 第1章第1款の2の(3)に示す学校における体育・健康に関する指導の趣旨を生かし,特別活動,運動部の活動などとの関連を図り,日常生活における体育・健康に関する活動が適切かつ継続的に実践できるよう留意すること。なお,体力の測定については,計画的に実施し,運動の指導及び体力の向上に活用するようにすること。
(3) 「体育」は,各年次継続して履修できるようにし,各年次の単位数はなるべく均分して配当すること。なお,内容の「A体つくり運動」に対する授業時数については,各年次で7〜10単位時間程度を,内容の「H体育理論」に対する授業時数については,各年次で6単位時間以上を配当するとともに,内容の「B器械運動」から「Gダンス」までの領域に対する授業時数の配当については,その内容の習熟を図ることができるよう考慮すること。
(4) 「保健」は,原則として入学年次及びその次の年次の2か年にわたり履修させること。
(5) 義務教育段階との接続を重視し,中学校保健体育科との関連に留意すること。
(6) 障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。
2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 言語能力を育成する言語活動を重視し,筋道を立てて練習や作戦について話し合ったり身振りや身体を使って動きの修正を図ったりする活動や,個人及び社会生活における健康の保持増進や回復について話し合う活動などを通して,コミュニケーション能力や論理的な思考力の育成を促し,主体的な学習活動の充実を図ること。
(2) 各科目の指導に当たっては,その特質を踏まえ,必要に応じて,コンピュータや情報通信ネットワークなどを適切に活用し,学習の効果を高めるよう配慮すること。
(3) 体力や技能の程度,性別や障害の有無等にかかわらず,運動の多様な楽しみ方を社会で実践することができるよう留意すること。
(4) 「体育」におけるスポーツとの多様な関わり方や「保健」の指導については,具体的な体験を伴う学習の工夫を行うよう留意すること。
(5) 「体育」と「保健」で示された内容については,相互の関連が図られるよう,それぞれの内容を適切に指導した上で,学習成果の関連が実感できるよう留意すること。