第5節 理 科
第1款 目 標
自然の事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 自然の事物・現象についての理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 自然の事物・現象に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度を養う。
第2款 各 科 目
第1 科学と人間生活
1 目 標
自然の事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 自然と人間生活との関わり及び科学技術と人間生活との関わりについての理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,人間生活と関連付けて科学的に探究する力を養う。
(3) 自然の事物・現象に進んで関わり,科学的に探究しようとする態度を養うとともに,科学に対する興味・関心を高める。
2 内 容
(1) 科学技術の発展
科学技術の発展について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 科学技術の発展が今日の人間生活に対してどのように貢献してきたかについて理解すること。
イ 科学技術の発展と人間生活との関わりについて科学的に考察し表現すること。
(2) 人間生活の中の科学
身近な自然の事物・現象及び日常生活や社会の中で利用されている科学技術を取り上げ,それらについての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 光や熱の科学,物質の科学,生命の科学,宇宙や地球の科学と人間生活との関わりについて認識を深めるとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 光や熱の科学
㋐ 光の性質とその利用
光に関する観察,実験などを行い,光を中心とした電磁波の性質とその利用について,日常生活と関連付けて理解すること。
㋑ 熱の性質とその利用
熱に関する観察,実験などを行い,熱の性質,エネルギーの変換と保存及び有効利用について,日常生活と関連付けて理解すること。
(イ) 物質の科学
㋐ 材料とその再利用
身近な材料に関する観察,実験などを行い,金属やプラスチックの種類,性質及び用途と資源の再利用について,日常生活と関連付けて理解すること。
㋑ 衣料と食品
衣料と食品に関する観察,実験などを行い,身近な衣料材料の性質や用途,食品中の主な成分の性質について,日常生活と関連付けて理解すること。
(ウ) 生命の科学
㋐ ヒトの生命現象
ヒトの生命現象に関する観察,実験などを行い,ヒトの生命現象を人間生活と関連付けて理解すること。
㋑ 微生物とその利用
微生物に関する観察,実験などを行い,微生物の働きを人間生活と関連付けて理解すること。
(エ) 宇宙や地球の科学
㋐ 太陽と地球
天体に関する観察,実験などを行い,太陽などの身近に見られる天体の運動や太陽の放射エネルギーについて,人間生活と関連付けて理解すること。
㋑ 自然景観と自然災害
自然景観と自然災害に関する観察,実験などを行い,身近な自然景観の成り立ちと自然災害について,人間生活と関連付けて理解すること。
イ 光や熱の科学,物質の科学,生命の科学,宇宙や地球の科学について,問題を見いだし見通しをもって観察,実験などを行い,人間生活と関連付けて,科学的に考察し表現すること。
(3) これからの科学と人間生活
自然と人間生活との関わり及び科学技術と人間生活との関わりについての学習を踏まえて,課題を設定し探究することで,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア これからの科学と人間生活との関わり方について認識を深めること。
イ これからの科学と人間生活との関わり方について科学的に考察し表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校理科との関連を十分考慮するとともに,科学と人間生活との関わりについて理解させ,観察,実験などを中心に扱い,自然や科学技術に対する興味・関心を高めるようにすること。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,観察,実験などを行い,探究の過程を踏まえた学習活動を行うようにすること。その際,学習内容の特質に応じて,課題の把握,課題の追究,課題の解決などの探究の方法を習得させるようにすること。
ウ 内容の(1)については,この科目の導入として位置付け,身近な事例を基に科学技術に対する興味・関心を高めるよう展開すること。
エ 内容の(2)のアの(ア)から(エ)までについては,生徒の実態等を考慮し,それぞれ㋐又は㋑のいずれかを選択して扱うこと。
オ 内容の(3)については,(2)の学習を踏まえ,課題を設定し考察させ,報告書を作成させたり発表を行う機会を設けたりすること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,身近な科学技術の例を取り上げ,その変遷と人間生活の変化との関わりを扱うこと。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,光の波としての分類や性質を扱うこと。「電磁波の利用」については,電波やX線にも触れること。㋑については,熱量の保存,仕事や電流による熱の発生,エネルギーの変換を扱うこと。「エネルギーの変換と保存」については,熱機関に関する歴史的な事項や熱が仕事に変わる際の不可逆性にも触れること。
(イ)の㋐については,代表的な金属やプラスチックを扱うこと。「金属」については,製錬や腐食とその防止にも触れること。「プラスチック」については,その成分の違い,化学構造及び燃焼に関わる安全性にも触れること。「資源の再利用」については,ガラスにも触れること。㋑については,衣料材料として用いられる代表的な天然繊維及び合成繊維,食品中の主な成分である炭水化物,タンパク質及び脂質を扱うこと。「身近な衣料材料の性質」や「食品中の主な成分の性質」については,化学構造との関連にも触れること。
(ウ)の㋐については,遺伝子の働き,視覚,血糖濃度の調節,免疫についての基本的な仕組みを扱うこと。その際,遺伝子の働きについては,DNAとタンパク質との関係に触れること。視覚については,体内時計との関連についても触れること。血糖濃度の調節については,糖尿病にも触れること。免疫については,アレルギーにも触れること。㋑については,生態系での物質循環における微生物の働き,発酵食品や医薬品への微生物の利用を扱うこと。その際,様々な微生物の存在や微生物の発見の経緯にも触れること。
(エ)の㋐については,太陽や月が地球の大気や海洋,人間生活に及ぼす影響を扱うこと。「天体の運動」については,太陽と地球,月の運動を潮汐(せき)と定性的に関連付けて扱うこと。「太陽の放射エネルギー」については,太陽放射の受熱量の違いを大気の運動と関連付けて扱うこと。また,その利用についても触れること。㋑については,地域の自然景観とその変化,自然災害を地域の地質や地形,気候などの特性や地球内部のエネルギーによる変動と関連付けて扱うこと。「身近な自然景観の成り立ち」については,身近な地域の自然景観が長い時間の中で変化してできたことを扱うこと。「自然災害」については,流水の作用や土石流などの作用,地震や火山活動によって発生する災害を扱うこと。また,防災にも触れること。
ウ 内容の(3)については,(2)で学習した内容を踏まえ,生徒の興味・関心等に応じて,自然や科学技術に関連した課題を設定し考察させること。
第2 物理基礎
1 目 標
物体の 運動と様々なエネルギーに関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,物体の運動と様々なエネルギーを科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 日常生活や社会との関連を図りながら,物体の運動と様々なエネルギーについて理解するとともに,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 物体の運動と様々なエネルギーに主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度を養う。
2 内 容
(1) 物体の運動とエネルギー
日常に起こる物体の運動についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 物体の運動とエネルギーを日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 運動の表し方
㋐ 物理量の測定と扱い方
身近な物理現象について,物理量の測定と表し方,分析の手法を理解すること。
㋑ 運動の表し方
物体の運動の表し方について,直線運動を中心に理解すること。
㋒ 直線運動の加速度
速度が変化する物体の直線運動に関する実験などを行い,速度と時間との関係を見いだして理解するとともに,物体が直線運動する場合の加速度を理解すること。
(イ) 様々な力とその働き
㋐ 様々な力
物体に様々な力が働くことを理解すること。
㋑ 力のつり合い
物体に働く力のつり合いを理解すること。
㋒ 運動の法則
物体に一定の力を加え続けたときの運動に関する実験などを行い,物体の質量,物体に働く力,物体に生じる加速度の関係を見いだして理解するとともに,運動の三法則を理解すること。
㋓ 物体の落下運動
物体が落下する際の運動の特徴及び物体に働く力と運動との関係について理解すること。
(ウ) 力学的エネルギー
㋐ 運動エネルギーと位置エネルギー
運動エネルギーと位置エネルギーについて,仕事と関連付けて理解すること。
㋑ 力学的エネルギーの保存
力学的エネルギーに関する実験などを行い,力学的エネルギー保存の法則を仕事と関連付けて理解すること。
イ 物体の運動とエネルギーについて,観察,実験などを通して探究し,運動の表し方,様々な力とその働き,力学的エネルギーにおける規則性や関係性を見いだして表現すること。
(2) 様々な物理現象とエネルギーの利用
様々な物理現象についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 様々な物理現象とエネルギーの利用を日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 波
㋐ 波の性質
波の性質について,直線状に伝わる場合を中心に理解すること。
㋑ 音と振動
気柱の共鳴に関する実験などを行い,気柱の共鳴と音源の振動数を関連付けて理解すること。また,弦の振動,音波の性質を理解すること。
(イ) 熱
㋐ 熱と温度
熱と温度について,原子や分子の熱運動の観点から理解すること。
㋑ 熱の利用
熱に関する実験などを行い,熱の移動及び熱と仕事の変換について理解すること。
(ウ) 電気
㋐ 物質と電気抵抗
電気抵抗に関する実験などを行い,同じ物質からなる導体でも長さや断面積によって電気抵抗が異なることを見いだして理解すること。また,物質によって抵抗率が異なることを理解すること。
㋑ 電気の利用
発電,送電及び電気の利用について,基本的な仕組みを理解すること。
(エ) エネルギーとその利用
㋐ エネルギーとその利用
人類が利用可能な水力,化石燃料,原子力,太陽光などを源とするエネルギーの特性や利用などについて,物理学的な観点から理解すること。
(オ) 物理学が拓(ひら)く世界
㋐ 物理学が拓(ひら)く世界
この科目で学んだ事柄が,日常生活や社会を支えている科学技術と結び付いていることを理解すること。
イ 様々な物理現象とエネルギーの利用について,観察,実験などを通して探究し,波,熱,電気,エネルギーとその利用における規則性や関係性を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)及び(2)については,中学校理科との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,観察,実験などを行い,探究の過程を踏まえた学習活動を行うようにすること。その際,学習内容の特質に応じて,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,実験による検証,実験データの分析・解釈,法則性の導出などの探究の方法を習得させるようにするとともに,報告書などを作成させたり,発表を行う機会を設けたりすること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,この科目の学習全体に通じる手法などを扱うこと。
(イ)の㋐については,摩擦力,弾性力,圧力及び浮力を扱うこと。また,空間を隔てて働く力にも定性的に触れること。㋑については,平面内で働く力のつり合いを中心に扱うこと。㋒については,直線運動を中心に扱うこと。㋓については,自由落下,鉛直投射を扱い,水平投射及び空気抵抗の存在にも定性的に触れること。
(ウ)の㋐の「位置エネルギー」については,重力による位置エネルギー,弾性力による位置エネルギーを扱うこと。㋑については,摩擦や空気抵抗がない場合は力学的エネルギーが保存されることを中心に扱うこと。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,作図を用いる方法を中心に扱うこと。また,定在波も扱い,縦波や横波にも触れること。㋑については,波の反射,共振,うなりなどを扱うこと。
(イ)の㋐については,熱現象を微視的に捉え,原子や分子の熱運動と温度との関係を定性的に扱うこと。また,内部エネルギーや物質の三態にも触れること。㋑については,熱現象における不可逆性にも触れること。
(ウ)の㋐については,金属中の電流が自由電子の流れによることも扱うこと。また,半導体や絶縁体があることにも触れること。㋑については,交流の直流への変換や電磁波の利用にも触れること。
(エ)の㋐については,電気エネルギーへの変換を中心に扱うこと。「原子力」については,核分裂によってエネルギーが発生していることに触れること。関連して放射線の種類と性質,放射性物質の基本的な性質及び原子力の利用とその課題にも触れること。
(オ)の㋐については,日常生活や社会で利用されている科学技術の具体的事例を取り上げること。
第3 物 理
1 目 標
物理的な事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,物理的な事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 物理学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 物理的な事物・現象に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度を養う。
2 内 容
(1) 様々な運動
物体の運動についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 様々な運動について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 平面内の運動と剛体のつり合い
㋐ 曲線運動の速度と加速度
平面内を運動する物体の運動について理解すること。
㋑ 放物運動
水平投射及び斜方投射された物体の運動を直線運動と関連付けて理解すること。
㋒ 剛体のつり合い
大きさのある物体のつり合いに関する実験などを行い,剛体のつり合う条件を見いだして理解すること。
(イ) 運動量
㋐ 運動量と力積
運動量と力積との関係について理解すること。
㋑ 運動量の保存
物体の衝突や分裂に関する実験などを行い,運動量保存の法則を理解すること。
㋒ 衝突と力学的エネルギー
衝突における力学的エネルギーの変化について理解すること。
(ウ) 円運動と単振動
㋐ 円運動
円運動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。
㋑ 単振動
振り子に関する実験などを行い,単振動の規則性を見いだして理解するとともに,単振動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。
(エ) 万有引力
㋐ 惑星の運動
惑星の観測資料に基づいて,惑星の運動に関する法則を理解すること。
㋑ 万有引力
万有引力の法則及び万有引力による物体の運動について理解すること。
(オ) 気体分子の運動
㋐ 気体分子の運動と圧力
気体分子の運動と圧力との関係について理解すること。
㋑ 気体の内部エネルギー
気体の内部エネルギーについて,気体分子の運動と関連付けて理解すること。
㋒ 気体の状態変化
気体の状態変化に関する実験などを行い,熱,仕事及び内部エネルギーの関係を理解すること。
イ 様々な物体の運動について,観察,実験などを通して探究し,平面内の運動と剛体のつり合い,運動量,円運動と単振動,万有引力,気体分子の運動における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(2) 波
水面波,音,光などの波動現象についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 波について,日常生活や社会と関連付けて,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 波の伝わり方
㋐ 波の伝わり方とその表し方
波の伝わり方とその表し方について理解すること。
㋑ 波の干渉と回折
波の干渉と回折について理解すること。
(イ) 音
㋐ 音の干渉と回折
音の干渉と回折について理解すること。
㋑ 音のドップラー効果
音のドップラー効果について理解すること。
(ウ) 光
㋐ 光の伝わり方
光の伝わり方について理解すること。
㋑ 光の回折と干渉
光の回折と干渉に関する実験などを行い,光の回折と干渉を光波の性質と関連付けて理解すること。
イ 波について,観察,実験などを通して探究し,波の伝わり方,音,光における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(3) 電気と磁気
電気や磁気に関する現象についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 電気や磁気について,日常生活や社会と関連付けて,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 電気と電流
㋐ 電荷と電界
電荷が相互に及ぼし合う力を理解すること。また,電界の表し方を理解すること。
㋑ 電界と電位
電界と電位との関係を静電気力による位置エネルギーと関連付けて理解すること。
㋒ 電気容量
コンデンサーの性質を理解するとともに,電気容量を電界や電位差と関連付けて理解すること。
㋓ 電気回路
電気回路に関する実験などを行い,電気回路における基本的な法則を理解すること。
(イ) 電流と磁界
㋐ 電流による磁界
電流がつくる磁界の様子を理解すること。
㋑ 電流が磁界から受ける力
電流が磁界から受ける力について理解すること。
㋒ 電磁誘導
電磁誘導に関する実験などを行い,磁束の変化と誘導起電力の向きや大きさとの関係を見いだして理解するとともに,電磁誘導の法則を理解すること。また,交流の発生について理解すること。
㋓ 電磁波
電磁波の性質とその利用を理解すること。
イ 電気や磁気について,観察,実験などを通して探究し,電気と電流,電流と磁界における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(4) 原子
電子,原子及び原子核に関する現象についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 原子について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 電子と光
㋐ 電子
電子の電荷と質量について理解すること。
㋑ 粒子性と波動性
電子や光の粒子性と波動性について理解すること。
(イ) 原子と原子核
㋐ 原子とスペクトル
原子の構造及びスペクトルと電子のエネルギー準位との関係について理解すること。
㋑ 原子核
原子核の構成,原子核の崩壊及び核反応について理解すること。
㋒ 素粒子
素粒子の存在について知ること。
(ウ) 物理学が築く未来
㋐ 物理学が築く未来
物理学の成果が様々な分野で利用され,未来を築く新しい科学技術の基盤となっていることを理解すること。
イ 原子について,観察,実験などを通して探究し,電子と光,原子と原子核における規則性や関係性を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)から(4)までについては,「物理基礎」との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,「物理基礎」の3の(1) のイと同様に取り扱うとともに,この科目の学習を通して,探究の全ての学習過程を経験できるようにすること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,物体の平面内の運動を表す変位,速度及び加速度はベクトルで表されることを扱うこと。㋑については,物体の水平投射や斜方投射における速度,加速度,重力の働きなどを扱うこと。また,空気の抵抗がある場合の落下運動にも触れること。㋒については,力のモーメントのつり合いを扱うこと。また,物体の重心にも触れること。
(イ)の㋐については,運動量と力積がベクトルで表されること,運動量の変化が力積に等しいことを扱うこと。㋒については,はね返り係数も扱うこと。
(ウ)の㋐については,等速円運動の速度,周期,角速度,向心加速度及び向心力を扱うこと。また,遠心力にも触れること。㋑については,単振動をする物体の変位,速度,加速度及び復元力を扱うこと。「単振動」については,ばね振り子と単振り子を扱うこと。
(エ)の㋐については,ケプラーの法則を扱うこと。㋑については,万有引力による位置エネルギーも扱うこと。
(オ)の㋐については,理想気体の状態方程式,気体分子の速さ,平均の運動エネルギーなどを扱うこと。㋑については,理想気体を扱うこと。㋒については,熱力学第一法則を扱うこと。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,ホイヘンスの原理,水面波の反射や屈折及び波の式を扱うこと。㋑については,水面波を扱うこと。
(イ)の㋑については,観測者と音源が同一直線上を動く場合を中心に扱うこと。
(ウ)の㋐については,光の速さ,波長,反射,屈折,分散,偏光などを扱い,鏡やレンズの幾何光学的な性質については,基本的な扱いとすること。また,光は横波であることや光のスペクトルにも触れること。㋑については,ヤングの実験,回折格子及び薄膜の干渉を扱うこと。
ウ 内容の(3)のアの(ア)の㋐については,静電誘導も扱うこと。㋒については,コンデンサーの接続にも触れること。㋓については,抵抗率の温度変化,内部抵抗も扱うこと。また,半導体にも触れること。
(イ)の㋐については,直線電流と円電流がつくる磁界を中心に扱うこと。㋑については,ローレンツ力にも触れること。㋒については,電磁誘導の法則を中心に扱い,自己誘導,相互誘導を扱うこと。また,交流回路の基本的な性質にも触れること。㋓については,電気振動,電磁波の発生にも触れること。
エ 内容の(4)のアの(ア)の㋐については,電子に関する歴史的な実験にも触れること。㋑については,光電効果,電子線回折などを扱い,X線にも触れること。
(イ)の㋐については,水素原子の構造を中心にスペクトルと関連させて扱うこと。㋑については,質量とエネルギーの等価性にも触れること。
(ウ)の㋐については,物理学の発展と科学技術の進展に対する興味を喚起するような成果を取り上げること。
第4 化学基礎
1 目 標
物質とその変化に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,物質とその変化を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 日常生活や社会との関連を図りながら,物質とその変化について理解するとともに,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 物質とその変化に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度を養う。
2 内 容
(1) 化学と人間生活
化学と人間生活との関わりについての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 化学と人間生活について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 化学と物質
㋐ 化学の特徴
日常生活や社会を支える身近な物質の性質を調べる活動を通して,物質を対象とする科学である化学の特徴について理解すること。
㋑ 物質の分離・精製
物質の分離や精製の実験などを行い,実験における基本操作と物質を探究する方法を身に付けること。
㋒ 単体と化合物
元素を確認する実験などを行い,単体,化合物について理解すること。
㋓ 熱運動と物質の三態
粒子の熱運動と温度との関係,粒子の熱運動と物質の三態変化との関係について理解すること。
イ 身近な物質や元素について,観察,実験などを通して探究し,科学的に考察し,表現すること。
(2) 物質の構成
物質の構成について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 物質の構成粒子について,次のことを理解すること。また,物質と化学結合についての観察,実験などを通して,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 物質の構成粒子
㋐ 原子の構造
原子の構造及び陽子,中性子,電子の性質を理解すること。
㋑ 電子配置と周期表
元素の周期律及び原子の電子配置と周期表の族や周期との関係について理解すること。
(イ) 物質と化学結合
㋐ イオンとイオン結合
イオンの生成を電子配置と関連付けて理解すること。また,イオン結合及びイオン結合でできた物質の性質を理解すること。
㋑ 分子と共有結合
共有結合を電子配置と関連付けて理解すること。また,分子からなる物質の性質を理解すること。
㋒ 金属と金属結合
金属の性質及び金属結合を理解すること。
イ 物質の構成について,観察,実験などを通して探究し,物質の構成における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(3) 物質の変化とその利用
物質の変化とその利用についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 物質量と化学反応式,化学反応,化学が拓(ひら)く世界について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 物質量と化学反応式
㋐ 物質量
物質量と粒子数,質量,気体の体積との関係について理解すること。
㋑ 化学反応式
化学反応に関する実験などを行い,化学反応式が化学反応に関与する物質とその量的関係を表すことを見いだして理解すること。
(イ) 化学反応
㋐ 酸・塩基と中和
酸や塩基に関する実験などを行い,酸と塩基の性質及び中和反応に関与する物質の量的関係を理解すること。
㋑ 酸化と還元
酸化と還元が電子の授受によることを理解すること。
(ウ) 化学が拓(ひら)く世界
㋐ 化学が拓(ひら)く世界
この科目で学んだ事柄が,日常生活や社会を支えている科学技術と結び付いていることを理解すること。
イ 物質の変化とその利用について,観察,実験などを通して探究し,物質の変化における規則性や関係性を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)から(3)までについては,中学校理科との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,観察,実験などを行い,探究の過程を踏まえた学習活動を行うようにすること。その際,学習内容の特質に応じて,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,実験による検証,実験データの分析・解釈などの探究の方法を習得させるようにするとともに,報告書などを作成させたり,発表を行う機会を設けたりすること。
ウ 内容の(1)については,この科目の導入として位置付けること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋑については,ろ過,蒸留,抽出,再結晶及びクロマトグラフィーを扱うこと。㋒については,炎色反応や沈殿反応を扱うこと。㋓については,物理変化と化学変化の違いにも触れること。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,原子番号,質量数及び同位体を扱うこと。その際,放射性同位体とその利用にも触れること。㋑の「原子の電子配置」については,代表的な典型元素を扱うこと。「元素の周期律」については,イオン化エネルギーの変化にも触れること。
(イ)の㋐については,多原子イオンも扱うこと。「イオン結合でできた物質」については,代表的なものを扱い,その用途にも触れること。㋑については,代表的な無機物質及び有機化合物を扱い,それらの用途にも触れること。また,分子の極性や配位結合にも触れるとともに,共有結合の結晶及びプラスチックなどの高分子化合物の構造にも触れること。㋒については,代表的な金属を扱い,その用途にも触れること。
ウ 内容の(3)のアの(ア)の㋐については,モル質量や溶液のモル濃度も扱うこと。
(イ)の㋐については,酸や塩基の強弱と電離度の大小との関係も扱うこと。「酸と塩基」については,水素イオン濃度とpHとの関係にも触れること。「中和反応」については,生成する塩の性質にも触れること。㋑については,代表的な酸化剤,還元剤を扱うこと。また,金属のイオン化傾向やダニエル電池の反応にも触れること。
(ウ)の㋐については,日常生活や社会で利用されている科学技術の具体的事例を取り上げること。
第5 化 学
1 目 標
化学的な事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,化学的な事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 化学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 化学的な事物・現象に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度を養う。
2 内 容
(1) 物質の状態と平衡
物質の状態と平衡についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 物質の状態とその変化,溶液と平衡について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 物質の状態とその変化
㋐ 状態変化
物質の沸点,融点を分子間力や化学結合と関連付けて理解すること。また,状態変化に伴うエネルギーの出入り及び状態間の平衡と温度や圧力との関係について理解すること。
㋑ 気体の性質
気体の体積と圧力や温度との関係を理解すること。
㋒ 固体の構造
結晶格子の概念及び結晶の構造を理解すること。
(イ) 溶液と平衡
㋐ 溶解平衡
溶解の仕組みを理解すること。また,溶解度を溶解平衡と関連付けて理解すること。
㋑ 溶液とその性質
溶液とその性質に関する実験などを行い,身近な現象を通して溶媒と溶液の性質の違いを理解すること。
イ 物質の状態と平衡について,観察,実験などを通して探究し,物質の状態とその変化,溶液と平衡における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(2) 物質の変化と平衡
物質の変化と平衡についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 化学反応とエネルギー,化学反応と化学平衡について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 化学反応とエネルギー
㋐ 化学反応と熱・光
化学反応と熱や光に関する実験などを行い,化学反応における熱及び光の発生や吸収は,反応の前後における物質のもつ化学エネルギーの差から生じることを理解すること。
㋑ 電池
電気エネルギーを取り出す電池の仕組みを酸化還元反応と関連付けて理解すること。
㋒ 電気分解
外部から加えた電気エネルギーによって電気分解が起こることを,酸化還元反応と関連付けて理解すること。また,その反応に関与した物質の変化量と電気量との関係を理解すること。
(イ) 化学反応と化学平衡
㋐ 反応速度
反応速度の表し方及び反応速度に影響を与える要因を理解すること。
㋑ 化学平衡とその移動
可逆反応,化学平衡及び化学平衡の移動を理解すること。
㋒ 電離平衡
水のイオン積,pH及び弱酸や弱塩基の電離平衡について理解すること。
イ 物質の変化と平衡について,観察,実験などを通して探究し,化学反応とエネルギー,化学反応と化学平衡における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(3) 無機物質の性質
無機物質の性質についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 無機物質について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 無機物質
㋐ 典型元素
典型元素に関する実験などを行い,典型元素の性質が周期表に基づいて整理できることを理解すること。
㋑ 遷移元素
遷移元素の単体と化合物の性質を理解すること。
イ 無機物質について,観察,実験などを通して探究し,典型元素,遷移元素の性質における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(4) 有機化合物の性質
有機化合物の性質についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 有機化合物,高分子化合物について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 有機化合物
㋐ 炭化水素
脂肪族炭化水素の性質や反応を構造と関連付けて理解すること。
㋑ 官能基をもつ化合物
官能基をもつ脂肪族化合物に関する実験などを行い,その構造,性質及び反応について理解すること。
㋒ 芳香族化合物
芳香族化合物の構造,性質及び反応について理解すること。
(イ) 高分子化合物
㋐ 合成高分子化合物
合成高分子化合物の構造,性質及び合成について理解すること。
㋑ 天然高分子化合物
天然高分子化合物の構造や性質について理解すること。
イ 有機化合物,高分子化合物について,観察,実験などを通して探究し,有機化合物,高分子化合物の性質における規則性や関係性を見いだして表現すること。
(5) 化学が果たす役割
化学が果たす役割について,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 化学が果たす役割を日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解すること。
(ア) 人間生活の中の化学
㋐ 様々な物質と人間生活
化学が果たしてきた役割として,無機物質,有機化合物及び高分子化合物がそれぞれの特徴を生かして人間生活の中で利用されていることを理解すること。
㋑ 化学が築く未来
化学の成果が様々な分野で利用され,未来を築く新しい科学技術の基盤となっていることを理解すること。
イ 人間生活の中の化学について,これからの社会における化学が果たす役割を科学的に考察し,表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)から(5)までについては,「化学基礎」との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,「化学基礎」の3の(1) のイと同様に取り扱うとともに,この科目の学習を通して,探究の全ての学習過程を経験できるようにすること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,融解熱や蒸発熱を扱うこと。「状態間の平衡」については,気液平衡や蒸気圧を扱うこと。㋑については,ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を扱うこと。その際,分子量測定にも触れること。また,混合気体,分圧の法則及び実在気体も扱うこと。気体分子のエネルギー分布と絶対温度にも触れること。㋒の「結晶の構造」については,体心立方格子,面心立方格子及び六方最密構造を扱うこと。また,アモルファスにも触れること。
(イ)の㋐については,固体及び気体の溶解度を扱うこと。㋑については,蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下及び浸透圧を扱うこと。また,コロイド溶液も扱うこと。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,ヘスの法則を扱うこと。また,結合エネルギーにも触れるとともに,吸熱反応が自発的に進む要因にも定性的に触れること。㋑については,日常生活や社会で利用されている代表的な実用電池を扱うこと。㋒については,水溶液の電気分解を中心に扱うこと。
(イ)の㋐については,簡単な反応を扱うこと。「要因」については,濃度,温度及び触媒の有無を扱うこと。㋑の「化学平衡の移動」については,ルシャトリエの原理を中心に扱うこと。㋒については,塩の加水分解や緩衝液にも触れること。
ウ 内容の(3)のアの(ア)の㋐については,性質が類似する同族元素の単体や化合物を中心に扱うこと。㋑については,クロム,マンガン,鉄,銅,亜鉛及び銀を扱うこと。
エ 内容の(4)のアの(ア)の㋑については,アルコール,エーテル,アルデヒド,ケトン,カルボン酸及びエステルを取り上げ,それらの性質は炭素骨格及び官能基により特徴付けられることを扱うこと。また,鏡像異性体にも触れること。㋒については,芳香族炭化水素,フェノール類,芳香族カルボン酸及び芳香族アミンを扱うこと。
(イ)の㋐については,代表的な合成繊維及びプラスチックを扱うこと。㋑については,繊維や食物を構成している代表的な天然高分子化合物を扱うこと。その際,単糖類,二糖類及びアミノ酸も扱うこと。
オ 内容の(5)のアの(ア)の㋐については,人間生活に利用されている代表的な物質を扱うこと。㋑については,化学の発展と科学技術の進展に対する興味を喚起するような成果を取り上げること。
第6 生物基礎
1 目 標
生物や生物現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,生物や生物現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 日常生活や社会との関連を図りながら,生物や生物現象について理解するとともに,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 生物や生物現象に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度と,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養う。
2 内 容
(1) 生物の特徴
生物の特徴についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生物の特徴について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 生物の特徴
㋐ 生物の共通性と多様性
様々な生物の比較に基づいて,生物は多様でありながら共通性をもっていることを見いだして理解すること。また,生物の共通性と起源の共有を関連付けて理解すること。
㋑ 生物とエネルギー
生物とエネルギーに関する資料に基づいて,生命活動にエネルギーが必要であることを理解すること。また,光合成や呼吸などの代謝とATPを関連付けて理解すること。
(イ) 遺伝子とその働き
㋐ 遺伝情報とDNA
DNAの構造に関する資料に基づいて,遺伝情報を担う物質としてのDNAの特徴を見いだして理解するとともに,塩基の相補性とDNAの複製を関連付けて理解すること。
㋑ 遺伝情報とタンパク質の合成
遺伝情報の発現に関する資料に基づいて,DNAの塩基配列とタンパク質のアミノ酸配列との関係を見いだして理解すること。
イ 生物の特徴について,観察,実験などを通して探究し,多様な生物がもつ共通の特徴を見いだして表現すること。
(2) ヒトの体の調節
ヒトの体の調節についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア ヒトの体の調節について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などの技能を身に付けること。
(ア) 神経系と内分泌系による調節
㋐ 情報の伝達
体の調節に関する観察,実験などを行い,体内での情報の伝達が体の調節に関係していることを見いだして理解すること。
㋑ 体内環境の維持の仕組み
体内環境の維持の仕組みに関する資料に基づいて,体内環境の維持とホルモンの働きとの関係を見いだして理解すること。また,体内環境の維持を自律神経と関連付けて理解すること。
(イ) 免疫
㋐ 免疫の働き
免疫に関する資料に基づいて,異物を排除する防御機構が備わっていることを見いだして理解すること。
イ ヒトの体の調節について,観察,実験などを通して探究し,神経系と内分泌系による調節及び免疫などの特徴を見いだして表現すること。
(3) 生物の多様性と生態系
生物の多様性と生態系についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生物の多様性と生態系について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。また,生態系の保全の重要性について認識すること。
(ア) 植生と遷移
㋐ 植生と遷移
植生の遷移に関する資料に基づいて,遷移の要因を見いだして理解すること。また,植生の遷移をバイオームと関連付けて理解すること。
(イ) 生態系とその保全
㋐ 生態系と生物の多様性
生態系と生物の多様性に関する観察,実験などを行い,生態系における生物の種多様性を見いだして理解すること。また,生物の種多様性と生物間の関係性とを関連付けて理解すること。
㋑ 生態系のバランスと保全
生態系のバランスに関する資料に基づいて,生態系のバランスと人為的攪(かく)乱を関連付けて理解すること。また,生態系の保全の重要性を認識すること。
イ 生物の多様性と生態系について,観察,実験などを通して探究し,生態系における,生物の多様性及び生物と環境との関係性を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)から(3)までについては,中学校理科との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,観察,実験などを行い,探究の過程を踏まえた学習活動を行うようにすること。その際,学習内容の特質に応じて,問題を見いだすための観察,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,実験による検証,調査,データの分析・解釈,推論などの探究の方法を習得させるようにするとともに,報告書などを作成させたり,発表を行う機会を設けたりすること。
ウ 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,この科目の導入として位置付けること。
エ この科目で扱う用語については,用語の意味を単純に数多く理解させることに指導の重点を置くのではなく,主要な概念を理解させるための指導において重要となる200語程度から250語程度までの重要用語を中心に,その用語に関わる概念を,思考力を発揮しながら理解させるよう指導すること。なお,重要用語には中学校で学習した用語も含まれるものとする。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,生物は進化の過程で共通性を保ちながら多様化してきたことを扱うこと。その際,原核生物と真核生物に触れること。㋑については,呼吸と光合成の概要を扱うこと。その際,ミトコンドリアと葉緑体,酵素の触媒作用や基質特異性,ATPの役割にも触れること。
(イ)の㋐については,DNAの複製の概要を扱うこと。その際,細胞周期とDNAの二重らせん構造についても触れること。㋑については,転写と翻訳の概要を扱うこと。その際,タンパク質の生命現象における重要性にも触れること。また,全ての遺伝子が常に発現しているわけではないことにも触れること。さらに,遺伝子とゲノムとの関係にも触れること。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,体内環境の変化に応じた体の調節に神経系と内分泌系が関わっていることを取り上げること。また,中枢神経系に関連して脳死についても触れること。㋑については,血糖濃度の調節機構を取り上げること。その際,身近な疾患の例にも触れること。また,血液凝固にも触れること。
(イ)の㋐については,身近な疾患の例にも触れること。
ウ 内容の(3)のアの(ア)の㋐については,植生の遷移には光や土壌などが関係することを扱うこと。また,植物の環境形成作用にも触れること。環境条件によっては,遷移の結果として,森林の他に草原や荒原になることにも触れること。
(イ)の㋐については,生物の絶滅にも触れること。「生物間の関係性」については,捕食と被食を扱うこと。その際,それに起因する間接的な影響にも触れること。㋑については,人間の活動によって生態系が攪(かく)乱され,生物の多様性が損なわれることがあることを扱うこと。
第7 生 物
1 目 標
生物や生物現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,生物や生物現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 生物学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 生物や生物現象に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度と,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養う。
2 内 容
(1) 生物の進化
生物の進化についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生物の進化について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などの技能を身に付けること。
(ア) 生命の起源と細胞の進化
㋐ 生命の起源と細胞の進化
生命の起源と細胞の進化に関する資料に基づいて,生命の起源に関する考えを理解するとともに,細胞の進化を地球環境の変化と関連付けて理解すること。
(イ) 遺伝子の変化と進化の仕組み
㋐ 遺伝子の変化
遺伝子の変化に関する資料に基づいて,突然変異と生物の形質の変化との関係を見いだして理解すること。
㋑ 遺伝子の組合せの変化
交配実験の結果などの資料に基づいて,遺伝子の組合せが変化することを見いだして理解すること。
㋒ 進化の仕組み
進化の仕組みに関する観察,実験などを行い,遺伝子頻度が変化する要因を見いだして理解すること。
(ウ) 生物の系統と進化
㋐ 生物の系統と進化
生物の遺伝情報に関する資料に基づいて,生物の系統と塩基配列やアミノ酸配列との関係を見いだして理解すること。
㋑ 人類の系統と進化
霊長類に関する資料に基づいて,人類の系統と進化を形態的特徴などと関連付けて理解すること。
イ 生物の進化について,観察,実験などを通して探究し,生物の進化についての特徴を見いだして表現すること。
(2) 生命現象と物質
生命現象と物質についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生命現象と物質について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などの技能を身に付けること。
(ア) 細胞と分子
㋐ 生体物質と細胞
生体物質と細胞に関する資料に基づいて,細胞を構成する物質を細胞の機能と関連付けて理解すること。
㋑ 生命現象とタンパク質
生命現象とタンパク質に関する観察,実験などを行い,タンパク質の機能を生命現象と関連付けて理解すること。
(イ) 代謝
㋐ 呼吸
呼吸に関する資料に基づいて,呼吸をエネルギーの流れと関連付けて理解すること。
㋑ 光合成
光合成に関する資料に基づいて,光合成をエネルギーの流れと関連付けて理解すること。
イ 生命現象と物質について,観察,実験などを通して探究し,生命現象と物質についての特徴を見いだして表現すること。
(3) 遺伝情報の発現と発生
遺伝情報の発現と発生についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 遺伝情報の発現と発生について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 遺伝情報とその発現
㋐ 遺伝情報とその発現
DNAの複製に関する資料に基づいて,DNAの複製の仕組みを理解すること。また,遺伝子発現に関する資料に基づいて,遺伝子の発現の仕組みを理解すること。
(イ) 発生と遺伝子発現
㋐ 遺伝子の発現調節
遺伝子の発現調節に関する資料に基づいて,遺伝子の発現が調節されていることを見いだして理解すること。また,転写の調節をそれに関わるタンパク質と関連付けて理解すること。
㋑ 発生と遺伝子発現
発生に関わる遺伝子の発現に関する資料に基づいて,発生の過程における分化を遺伝子発現の調節と関連付けて理解すること。
(ウ) 遺伝子を扱う技術
㋐ 遺伝子を扱う技術
遺伝子を扱う技術について,その原理と有用性を理解すること。
イ 遺伝情報の発現と発生について,観察,実験などを通して探究し,遺伝子発現の調節の特徴を見いだして表現すること。
(4) 生物の環境応答
生物の環境応答についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生物の環境応答について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などの技能を身に付けること。
(ア) 動物の反応と行動
㋐ 刺激の受容と反応
刺激の受容と反応に関する資料に基づいて,外界の刺激を受容し神経系を介して反応する仕組みを,関与する細胞の特性と関連付けて理解すること。
㋑ 動物の行動
動物の行動に関する資料に基づいて,行動を神経系の働きと関連付けて理解すること。
(イ) 植物の環境応答
㋐ 植物の環境応答
植物の環境応答に関する観察,実験などを行い,植物の成長や反応に植物ホルモンが関わることを見いだして理解すること。
イ 生物の環境応答について,観察,実験などを通して探究し,環境変化に対する生物の応答の特徴を見いだして表現すること。
(5) 生態と環境
生態と環境についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 生態と環境について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 個体群と生物群集
㋐ 個体群
個体群内の相互作用に関する観察,実験などを行い,個体群が維持される仕組みや個体間の関係性を見いだして理解すること。
㋑ 生物群集
個体群間の相互作用に関する資料に基づいて,生物群集が維持される仕組みや個体群間の関係性を見いだして理解すること。
(イ) 生態系
㋐ 生態系の物質生産と物質循環
生態系の物質生産と物質循環に関する資料に基づいて,生態系における物質生産及びエネルギーの移動と生態系での物質循環とを関連付けて理解すること。
㋑ 生態系と人間生活
生態系と人間生活に関する資料に基づいて,人間生活が生態系に及ぼす影響を見いだして理解すること。
イ 生態と環境について,観察,実験などを通して探究し,生態系における,生物間の関係性及び生物と環境との関係性を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)から(5)までについては,「生物基礎」との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,「生物基礎」の3の(1) のイと同様に取り扱うとともに,この科目の学習を通して,探究の全ての過程を経験できるようにすること。
ウ 内容の(1)については,この科目の導入として位置付け,以後の学習においても,進化の視点を意識させるよう展開すること。
エ この科目で扱う用語については,用語の意味を単純に数多く理解させることに指導の重点を置くのではなく,主要な概念を理解させるための指導において重要となる500語程度から600語程度までの重要用語を中心に,その用語に関わる概念を,思考力を発揮しながら理解させるよう指導すること。なお,重要用語には中学校や「生物基礎」で学習した用語も含まれるものとする。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,化学進化及び細胞内共生を扱うこと。
(イ)の㋑については,連鎖と組換えを扱うこと。また,性染色体にも触れること。㋒については,種分化の過程も扱うこと。
(ウ)の㋐については,3ドメインを扱うこと。また,高次の分類群として界や門にも触れること。
イ 内容の(2)については,生命現象を分子レベルで捉えるために必要な最小限の化学の知識にも触れること。
ウ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,生体膜を扱うこと。また,核酸や細胞骨格にも触れること。㋑については,タンパク質が生命現象を支えていることを2,3の例を挙げて扱うこと。また,酵素については,その働きとタンパク質の立体構造との関係を扱うこと。
(イ)の㋐については,ATP合成の仕組みを扱うこと。その際,解糖系,クエン酸回路及び電子伝達系に触れること。また,発酵にも触れること。㋑については,ATP合成の仕組みを扱うこと。その際,光化学系,電子伝達系及びカルビン回路に触れること。
エ 内容の(3)のアの(ア)の㋐の「DNAの複製の仕組み」については,DNAポリメラーゼに触れること。「遺伝子の発現の仕組み」については,転写及び翻訳を扱い,RNAポリメラーゼとリボソームに触れること。また,スプライシングにも触れること。
(イ)の㋐については,原核生物と真核生物に共通する転写レベルの調節を扱うこと。㋑については,2種類程度の生物を例にしてその概要を扱うこと。また,動物の配偶子形成,受精,卵割,形成体と誘導,細胞分化と形態形成,器官分化の始まりについても触れること。
(ウ)の㋐については,制限酵素,ベクター及び遺伝子の増幅技術に触れること。また,それらが実際にどのように用いられているかについても触れること。
オ 内容の(4)のアの(ア)の㋐については,受容器として眼(め)を,効果器として筋肉を扱うこと。また,刺激の受容から反応までの流れを扱うこと。その際,神経系に関連して記憶にも触れること。
(イ)の㋐については,被子植物を扱うこと。「植物の成長」については,配偶子形成,受精,胚(はい)発生及び器官分化について触れること。また,植物ホルモンは3,4種類について取り上げること。その際,植物ホルモンに関わる光受容体についても触れること。
カ 内容の(5)のアの(ア)の㋐については,個体群内の相互作用として種内競争と社会性を扱うこと。㋑については,個体群間の相互作用として種間競争と相利共生を扱うこと。また,多様な種が共存する仕組みを扱うこと。
(イ)の㋐の「物質生産」については,年間生産量を生産者の現存量と関連付けて扱うこと。また,「物質循環」については,炭素と窒素を扱うこと。その際,窒素同化についても触れること。㋑については,人間活動が生態系に及ぼす影響として地球規模のものを中心に扱うこと。
第8 地学基礎
1 目 標
地球や地球を取り巻く環境に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,地球や地球を取り巻く環境を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 日常生活や社会との関連を図りながら,地球や地球を取り巻く環境について理解するとともに,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 地球や地球を取り巻く環境に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度と,自然環境の保全に寄与する態度を養う。
2 内 容
(1) 地球のすがた
地球のすがたについての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 地球のすがたについて,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 惑星としての地球
㋐ 地球の形と大きさ
地球の形や大きさに関する観察,実験などを行い,地球の形の特徴と大きさを見いだして理解すること。
㋑ 地球内部の層構造
地球内部の層構造とその状態を理解すること。
(イ) 活動する地球
㋐ プレートの運動
プレートの分布と運動について理解するとともに,大地形の形成と地質構造をプレートの運動と関連付けて理解すること。
㋑ 火山活動と地震
火山活動や地震に関する資料に基づいて,火山活動と地震の発生の仕組みをプレートの運動と関連付けて理解すること。
(ウ) 大気と海洋
㋐ 地球の熱収支
気圧や気温の鉛直方向の変化などについての資料に基づいて,大気の構造の特徴を見いだして理解するとともに,太陽放射の受熱量と地球放射の放熱量がつり合っていることを理解すること。
㋑ 大気と海水の運動
大気と海水の運動に関する資料に基づいて,大気と海洋の大循環について理解するとともに,緯度により太陽放射の受熱量が異なることなどから,地球規模で熱が輸送されていることを見いだして理解すること。
イ 地球のすがたについて,観察,実験などを通して探究し,惑星としての地球,活動する地球,大気と海洋について,規則性や関係性を見いだして表現すること。
(2) 変動する地球
変動する地球についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 変動する地球について,宇宙や太陽系の誕生から今日までの一連の時間の中で捉えながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。また,自然環境の保全の重要性について認識すること。
(ア) 地球の変遷
㋐ 宇宙,太陽系と地球の誕生
宇宙の誕生,太陽系の誕生と生命を生み出す条件を備えた地球の特徴を理解すること。
㋑ 古生物の変遷と地球環境
地層や化石に関する観察などを行い,地質時代が古生物の変遷に基づいて区分されることを理解するとともに,地球環境の変化に関する資料に基づいて,大気の変化と生命活動の相互の関わりを見いだして理解すること。
(イ) 地球の環境
㋐ 地球環境の科学
地球規模の自然環境に関する資料に基づいて,地球環境の変化を見いだしてその仕組みを理解するとともに,それらの現象と人間生活との関わりについて認識すること。
㋑ 日本の自然環境
日本の自然環境を理解し,それらがもたらす恩恵や災害など自然環境と人間生活との関わりについて認識すること。
イ 変動する地球について,観察,実験などを通して探究し,地球の変遷,地球の環境について,規則性や関係性を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)及び(2)については,中学校理科との関連を考慮し,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究させるために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,観察,実験などを行い,探究の過程を踏まえた学習活動を行うようにすること。その際,学習内容の特質に応じて,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,野外観察,調査,データの分析・解釈,推論などの探究の方法を習得させるようにするとともに,報告書などを作成させたり,発表を行う機会を設けたりすること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,測定の歴史や方法にも触れること。㋑については,構成物質にも触れること。
(イ)の㋐については,マントル内のプルームの存在にも触れること。「地質構造」については,変成岩と変成作用との関係についても触れること。㋑の「火山活動」については,プレートの発散境界と収束境界における火山活動を扱い,ホットスポットにおける火山活動にも触れること。また,多様な火成岩の成因をマグマと関連付けて扱うこと。「地震の発生の仕組み」については,プレートの収束境界における地震を中心に扱い,プレート内地震についても触れること。
(ウ)の㋐については,温室効果に触れること。また,「大気の構造」については,大気中で見られる現象にも触れること。㋑については,海洋の層構造と深層に及ぶ循環にも触れること。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐の「宇宙の誕生」については,ビッグバンを扱い,宇宙の年齢と水素やヘリウムがつくられたことにも触れること。「太陽系の誕生」については,惑星が形成された過程を中心に扱い,惑星内部の層構造に触れること。その際,太陽の誕生と太陽のエネルギー源についても触れること。「地球の特徴」については,海が形成されたことを中心に扱うこと。㋑の「古生物の変遷」については,代表的な化石を取り上げること。また,ヒトの進化にも触れること。
(イ)の㋐の「地球規模の自然環境」については,地球温暖化,オゾン層破壊,エルニーニョ現象などの現象を,データに基づいて人間生活と関連させて扱うこと。㋑の「恩恵や災害」については,日本に見られる気象現象,地震や火山活動など特徴的な現象を扱うこと。また,自然災害の予測や防災にも触れること。
第9 地 学
1 目 標
地球や地球を取り巻く環境に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,地球や地球を取り巻く環境を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 地学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 地球や地球を取り巻く環境に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度と,自然環境の保全に寄与する態度を養う。
2 内 容
(1) 地球の概観
地球の形状や内部構造についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 地球の形状や内部構造について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 地球の形状
㋐ 地球の形と重力
地球楕(だ)円体や地球表面における重力に関する資料に基づいて,地球の形状と重力との関係を見いだして理解すること。
㋑ 地球の磁気
地磁気に関する観察,実験などを行い,地磁気の特徴とその働きを理解すること。
(イ) 地球の内部
㋐ 地球の内部構造
地震波の伝わり方についての資料に基づいて,地球内部の構造を見いだして理解すること。
㋑ 地球内部の状態と物質
地球内部の温度,密度,圧力及び構成物質の組成について理解すること。
イ 地球の形状や内部構造について,観察,実験などを通して探究し,地球の形状や内部構造の特徴を見いだして表現すること。
(2) 地球の活動と歴史
地球の活動と歴史についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができよう指導する。
ア 地球の活動と歴史について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 地球の活動
㋐ プレートテクトニクス
プレートテクトニクスとその成立過程を理解すること。
㋑ 地震と地殻変動
世界の震源分布についての資料に基づいて,プレート境界における地震活動の特徴をプレート運動と関連付けて理解するとともに,それに伴う地殻変動などについて理解すること。
㋒ 火成活動
島弧−海溝系における火成活動の特徴を,マグマの発生と分化及び火成岩の形成と関連付けて理解すること。
㋓ 変成作用と変成岩
変成岩に関する観察,実験などを行い,変成作用と変成岩の特徴及び造山帯について理解すること。
(イ) 地球の歴史
㋐ 地表の変化
風化,侵食,運搬及び堆積の諸作用による地形の形成について,身近な地形と関連付けて理解すること。
㋑ 地層の観察
地層に関する野外観察や実験などを行い,地層の形成及び地質時代における地球環境や地殻変動について理解すること。
㋒ 地球環境の変遷
大気,海洋,大陸及び古生物などの変遷に関する資料に基づいて,地球環境の移り変わりを総合的に理解すること。
㋓ 日本列島の成り立ち
日本列島の地形や地質に関する資料に基づいて,島弧としての日本列島の地学的な特徴と形成史をプレート運動などと関連付けて理解すること。
イ 地球の活動と歴史について,観察,実験などを通して探究し,地球の活動の特徴と歴史の概要を見いだして表現すること。
(3) 地球の大気と海洋
地球の大気と海洋についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができよう指導する。
ア 地球の大気と海洋について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 大気の構造と運動
㋐ 大気の構造
大気の組成,太陽放射と地球放射の性質を理解するとともに,大気に関する観測資料などに基づいて,各圏の特徴と地球全体の熱収支など大気の構造を理解すること。
㋑ 大気の運動と気象
大循環と対流による現象及び日本や世界の気象の特徴を理解すること。
(イ) 海洋と海水の運動
㋐ 海洋の構造
海水の組成を理解するとともに,海洋に関する観測資料などに基づいて,水温と塩分の分布との関係など海洋の構造を理解すること。
㋑ 海水の運動
海水の運動と循環及び海洋と大気の相互作用について理解すること。
イ 地球の大気と海洋について,観察,実験などを通して探究し,地球の大気と海洋の構造や運動の規則性や関係性を見いだして表現すること。
(4) 宇宙の構造
宇宙に関する事物・現象についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができよう指導する。
ア 宇宙に関する事物・現象について,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 太陽系
㋐ 地球の自転と公転
地球の自転と公転に関する観察,実験などを行い,地球の自転と公転の証拠となる現象を理解すること。
㋑ 太陽系天体とその運動
太陽系天体に関する観測資料などに基づいて,太陽系天体の特徴を理解するとともに,惑星の運動の規則性を見いだし,視運動と関連付けて理解すること。
㋒ 太陽の活動
太陽に関する観察,実験などを行い,太陽表面の現象を太陽の活動と関連付けて理解すること。
(イ) 恒星と銀河系
㋐ 恒星の性質と進化
恒星に関する観察,実験などを行い,恒星の性質と進化の特徴を見いだして理解すること。
㋑ 銀河系の構造
銀河系に関する観測資料などに基づいて,銀河系の構成天体とその分布について理解すること。
(ウ) 銀河と宇宙
㋐ 様々な銀河
銀河についての観測資料などに基づいて,様々な銀河の存在と銀河の分布の特徴を理解すること。
㋑ 膨張する宇宙
宇宙の誕生や進化について調べ,現代の宇宙像の概要を理解すること。
イ 宇宙に関する事物・現象について,観察,実験などを通して探究し,天体の運動や宇宙の構造を見いだして表現すること。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)から(4)までについては,「地学基礎」との関係を考慮しながら,それぞれのアに示す知識及び技能とイに示す思考力,判断力,表現力等とを相互に関連させながら,この科目の学習を通して,科学的に探究するために必要な資質・能力の育成を目指すこと。
イ この科目で育成を目指す資質・能力を育むため,「地学基礎」の3の(1) のイと同様に取り扱うとともに,この科目の学習を通して,探究の全ての学習過程を経験できるようにすること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のアの(ア)の㋐については,ジオイドと重力異常にも触れること。㋑については,地磁気の三要素及び磁気圏と太陽風との関連を扱うこと。また,地磁気の原因と古地磁気にも触れること。
(イ)の㋐については,走時曲線を扱い,地震波トモグラフィーにも触れること。㋑については,アイソスタシーも扱うこと。また,放射性同位体の崩壊など地球内部の熱源にも触れること。
イ 内容の(2)のアの(ア)の㋐については,マントル内のプルームも扱うこと。㋑の「地震活動の特徴」については,地震災害にも触れること。「地殻変動」については,活断層と地形との関係にも触れること。㋒の「火成活動の特徴」については,火山災害にも触れること。㋓については,造山帯の特徴を安定地塊と対比させて扱うこと。
(イ)の㋐については,段丘,陸上及び海底の堆積物も扱うこと。「地形の形成」については,土砂災害にも触れること。㋑の「地質時代における地球環境や地殻変動」については,地層や化石に基づいて過去の様子を探究する方法を扱うこと。また,地質図の読み方の概要を扱うこと。㋒については,放射年代も扱うこと。㋓については,付加体も扱うこと。
ウ 内容の(3)のアの(ア)の㋐の「大気の組成」については,大気中の水分も扱うこと。「地球全体の熱収支」については,地表や大気圏などに分けて扱うこと。㋑の「大循環」による現象については,偏西風波動と地上の高気圧や低気圧との関係も扱うこと。「対流」による現象については,大気の安定と不安定にも触れること。「日本や世界の気象の特徴」については,人工衛星などから得られる情報も活用し,大気の大循環と関連させて扱うこと。また,気象災害にも触れること。
(イ)の㋑の「海水の運動と循環」については,波浪と潮汐(せき)も扱うこと。また,高潮災害にも触れること。「海洋と大気の相互作用」については,地球上の水の分布と循環にも触れること。
エ 内容の(4)のアの(ア)の㋐の「自転」については,フーコーの振り子を扱うこと。「公転」については,年周視差と年周光行差を扱うこと。また,時刻と太陽暦にも触れること。㋑の「太陽系天体の特徴」については,観測や探査機などによる研究成果を踏まえて特徴を扱うこと。「惑星の運動」については,視運動及びケプラーの法則を扱うこと。また,その発見過程にも触れること。㋒の「太陽表面の現象」については,スペクトルも扱うこと。「太陽の活動」については,太陽の活動周期と地球への影響も扱うこと。太陽の内部構造にも触れること。
(イ)の㋐の恒星の「性質」については,距離,絶対等級,半径,表面温度,スペクトル型及び質量を扱うこと。恒星の「進化」については,HR図を扱い,質量により恒星の進化の速さ,恒星の終末及び生成元素が異なることも扱うこと。㋑の「銀河系の構成天体とその分布」については,恒星の進化と関連付けて扱うこと。また,銀河系の回転運動にも触れること。
(ウ)の㋐の「様々な銀河の存在」については,銀河までの距離の求め方も扱うこと。「銀河の分布」については,宇宙の大規模構造を扱うこと。㋑の「現代の宇宙像」については,ビッグバンの証拠を扱うこと。ハッブルの法則も扱うこと。
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,理科の学習過程の特質を踏まえ,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどの科学的に探究する学習活動の充実を図ること。
(2) 「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」の各科目については,原則として,それぞれに対応する基礎を付した科目を履修した後に履修させること。
(3) 各科目を履修させるに当たっては,当該科目や理科に属する他の科目の履修内容を踏まえ,相互の連携を一層充実させるとともに,他教科等の目標や学習の内容の関連に留意し,連携を図ること。
(4) 障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。
2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 各科目の指導に当たっては,問題を見いだし観察,実験などを計画する学習活動,観察,実験などの結果を分析し解釈する学習活動,科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動などが充実するようにすること。
(2) 生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度の育成を図ること。また,環境問題や科学技術の進歩と人間生活に関わる内容等については,持続可能な社会をつくることの重要性も踏まえながら,科学的な見地から取り扱うこと。
(3) 各科目の指導に当たっては,観察,実験の過程での情報の収集・検索,計測・制御,結果の集計・処理などにおいて,コンピュータや情報通信ネットワークなどを積極的かつ適切に活用すること。
(4) 観察,実験,野外観察などの体験的な学習活動を充実させること。また,環境整備に十分配慮すること。
(5) 各科目の指導に当たっては,大学や研究機関,博物館や科学学習センターなどと積極的に連携,協力を図るようにすること。
(6) 科学技術が日常生活や社会を豊かにしていることや安全性の向上に役立っていることに触れること。また,理科で学習することが様々な職業などと関連していることにも触れること。
(7) 観察,実験,野外観察などの指導に当たっては,関連する法規等に従い,事故防止に十分留意するとともに,使用薬品などの管理及び廃棄についても適切な措置を講ずること。