第2節 地 理 歴 史

 

第1款 目 標

 

 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

 (1) 現代世界の地域的特色と日本及び世界の歴史の展開に関して理解するとともに,調査や諸資料から様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 (2) 地理や歴史に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,社会に見られる課題の解決に向けて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 (3) 地理や歴史に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される日本国民としての自覚,我が国の国土や歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

 

第2款 各 科 目

 

第1 地理総合

 1 目 標

   社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

  (1) 地理に関わる諸事象に関して,世界の生活文化の多様性や,防災,地域や地球的課題への取組などを理解するとともに,地図や地理情報システムなどを用いて,調査や諸資料から地理に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

  (2) 地理に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を,位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域などに着目して,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,地理的な課題の解決に向けて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

  (3) 地理に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される日本国民としての自覚,我が国の国土に対する愛情,世界の諸地域の多様な生活文化を尊重しようとすることの大切さについての自覚などを深める。

 2 内 容

 A 地図や地理情報システムで捉える現代世界

  (1) 地図や地理情報システムと現代世界

    位置や分布などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

    () 現代世界の地域構成を示した様々な地図の読図などを基に,方位や時差,日本の位置と領域,国内や国家間の結び付きなどについて理解すること。

    () 日常生活の中で見られる様々な地図の読図などを基に,地図や地理情報システムの役割や有用性などについて理解すること。

    () 現代世界の様々な地理情報について,地図や地理情報システムなどを用いて,その情報を収集し,読み取り,まとめる基礎的・基本的な技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 現代世界の地域構成について,位置や範囲などに着目して,主題を設定し,世界的視野から見た日本の位置,国内や国家間の結び付きなどを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 地図や地理情報システムについて,位置や範囲,縮尺などに着目して,目的や用途,内容,適切な活用の仕方などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 B 国際理解と国際協力

  (1) 生活文化の多様性と国際理解

    場所や人間と自然環境との相互依存関係などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 世界の人々の特色ある生活文化を基に,人々の生活文化が地理的環境から影響を受けたり,影響を与えたりして多様性をもつことや,地理的環境の変化によって変容することなどについて理解すること。

    () 世界の人々の特色ある生活文化を基に,自他の文化を尊重し国際理解を図ることの重要性などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 世界の人々の生活文化について,その生活文化が見られる場所の特徴や自然及び社会的条件との関わりなどに着目して,主題を設定し,多様性や変容の要因などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (2) 地球的課題と国際協力

    空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 世界各地で見られる地球環境問題,資源・エネルギー問題,人口・食料問題及び居住・都市問題などを基に,地球的課題の各地で共通する傾向性や課題相互の関連性などについて大観し理解すること。

    () 世界各地で見られる地球環境問題,資源・エネルギー問題,人口・食料問題及び居住・都市問題などを基に,地球的課題の解決には持続可能な社会の実現を目指した各国の取組や国際協力が必要であることなどについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 世界各地で見られる地球環境問題,資源・エネルギー問題,人口・食料問題及び居住・都市問題などの地球的課題について,地域の結び付きや持続可能な社会づくりなどに着目して,主題を設定し,現状や要因,解決の方向性などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 C 持続可能な地域づくりと私たち

  (1) 自然環境と防災

    人間と自然環境との相互依存関係や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

 () 我が国をはじめ世界で見られる自然災害や生徒の生活圏で見られる自然災害を基に,地域の自然環境の特色と自然災害への備えや対応との関わりとともに,自然災害の規模や頻度,地域性を踏まえた備えや対応の重要性などについて理解すること。

 () 様々な自然災害に対応したハザードマップや新旧地形図をはじめとする各種の地理情報について,その情報を収集し,読み取り,まとめる地理的技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 地域性を踏まえた防災について,自然及び社会的条件との関わり,地域の共通点や差異,持続可能な地域づくりなどに着目して,主題を設定し,自然災害への備えや対応などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (2) 生活圏の調査と地域の展望

    空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を探究する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 生活圏の調査を基に,地理的な課題の解決に向けた取組や探究する手法などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 生活圏の地理的な課題について,生活圏内や生活圏外との結び付き,地域の成り立ちや変容,持続可能な地域づくりなどに着目して,主題を設定し,課題解決に求められる取組などを多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 3 内容の取扱い

  (1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。

   ア 中学校社会科との関連を図るとともに,1の目標に即して基本的な事柄を基に指導内容を構成すること。

   イ 地図の読図や作図,衛星画像や空中写真,景観写真の読み取りなど地理的技能を身に付けることができるよう系統性に留意して計画的に指導すること。その際,教科用図書「地図」を十分に活用するとともに,地図や統計などの地理情報の収集・分析には,地理情報システムや情報通信ネットワークなどの活用を工夫すること。

   ウ 地図の読図や作図などを主とした作業的で具体的な体験を伴う学習を取り入れるとともに,各項目を関連付けて地理的技能が身に付くよう工夫すること。また,地図を有効に活用して事象を説明したり,自分の解釈を加えて論述したり,討論したりするなどの活動を充実させること。

   エ 学習過程では取り扱う内容の歴史的背景を踏まえることとし,政治的,経済的,生物的,地学的な事象なども必要に応じて扱うことができるが,それらは空間的な傾向性や諸地域の特色を理解するのに必要な程度とすること。

   オ 調査の実施や諸資料の収集に当たっては,専門家や関係諸機関などと円滑に連携・協働するなどして,社会との関わりを意識した活動を重視すること。

   カ 各項目の内容に応じて日本を含めて扱うとともに,日本と比較し関連付けて考察するようにすること。

  (2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

   ア 内容のAについては,次のとおり取り扱うものとすること。

    () (1)については,次のとおり取り扱うこと。

      「現代世界の地域構成を示した様々な地図の読図」については,様々な地図の読図によって現代世界を地理的な視点から概観するとともに,球面上の世界の捉え方にも習熟するよう工夫すること。「日本の位置と領域」については,世界的視野から日本の位置を捉えるとともに,日本の領域をめぐる問題にも触れること。また,我が国の海洋国家としての特色と海洋の果たす役割を取り上げるとともに,竹島や北方領土が我が国の固有の領土であることなど,我が国の領域をめぐる問題も取り上げるようにすること。その際,尖閣諸島については我が国の固有の領土であり,領土問題は存在しないことも扱うこと。また,「国内や国家間の結び付き」については,国内の物流や人の往来,それを支える陸運や海運などの現状や動向,世界の国家群,貿易,交通・通信,観光の現状や動向に関する諸事象を,様々な主題図などを基に取り上げ,地図や地理情報システムの適切な活用の仕方が身に付くよう工夫すること。

「日常生活の中で見られる様々な地図」については,観察や調査,統計,画像,文献などの地理情報の収集,選択,処理,諸資料の地理情報化や地図化などの作業的で具体的な体験を伴う学習を取り入れるよう工夫すること。また,今後の学習全体を通じて地理的技能を活用する端緒となるよう,地図や地理情報システムに関する基礎的・基本的な知識や技能を習得するとともに,地図や地理情報システムが日常生活の様々な場面で持続可能な社会づくりのために果たしている役割やその有用性に気付くことができるよう工夫すること。

   イ 内容のBについては,次のとおり取り扱うものとすること。

    () (1)については,次のとおり取り扱うこと。

      「世界の人々の特色ある生活文化」については,「地理的環境から影響を受けたり,影響を与えたりして多様性をもつこと」や,「地理的環境の変化によって変容すること」などを理解するために,世界の人々の多様な生活文化の中から地理的環境との関わりの深い,ふさわしい特色ある事例を選んで設定すること。その際,地理的環境には自然環境だけでなく,歴史的背景や人々の産業の営みなどの社会環境も含まれることに留意すること。また,ここでは,生活と宗教の関わりなどについて取り上げるとともに,日本との共通点や相違点に着目し,多様な習慣や価値観などをもっている人々と共存していくことの意義に気付くよう工夫すること。

    () (2)については,次のとおり取り扱うこと。

      ここで取り上げる地球的課題については,国際連合における持続可能な開発のための取組などを参考に,「地球的課題の地域間で共通する傾向性や課題相互の関連性」などを理解するために,世界各地で見られる様々な地球的課題の中から,ふさわしい特色ある事例を選んで設定すること。その際,地球環境問題,資源・エネルギー問題,人口・食料問題及び居住・都市問題などの地球的課題は,それぞれ相互に関連し合い,地域を越えた課題であるとともに地域によって現れ方が異なるなど共通性とともに地域性をもつことに留意し,それらの現状や要因の分析,解決の方向性については,複数の立場や意見があることに留意すること。また,地球的課題の解決については,人々の生活を支える産業などの経済活動との調和のとれた取組が重要であり,それが持続可能な社会づくりにつながることに留意すること。

   ウ 内容のCについては,次のとおり取り扱うものとすること。

    () (1)については,次のとおり取り扱うこと。

      日本は変化に富んだ地形や気候をもち,様々な自然災害が多発することから,早くから自然災害への対応に努めてきたことなどを,具体例を通して取り扱うこと。その際,地形図やハザードマップなどの主題図の読図など,日常生活と結び付いた地理的技能を身に付けるとともに,防災意識を高めるよう工夫すること。

      「我が国をはじめ世界で見られる自然災害」及び「生徒の生活圏で見られる自然災害」については,それぞれ地震災害や津波災害,風水害,火山災害などの中から,適切な事例を取り上げること。

    () (2)については,次のとおり取り扱うこと。

      「生活圏の調査」については,その指導に当たって,これまでの学習成果を活用しながら,生徒の特性や学校所在地の事情などを考慮して,地域調査を実施し,生徒が適切にその方法を身に付けるよう工夫すること。

 

第2 地理探究

 1 目 標

   社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

  (1) 地理に関わる諸事象に関して,世界の空間的な諸事象の規則性,傾向性や,世界の諸地域の地域的特色や課題などを理解するとともに,地図や地理情報システムなどを用いて,調査や諸資料から地理に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

  (2) 地理に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を,位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域などに着目して,系統地理的,地誌的に,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,地理的な課題の解決に向けて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

  (3) 地理に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に探究しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される日本国民としての自覚,我が国の国土に対する愛情,世界の諸地域の多様な生活文化を尊重しようとすることの大切さについての自覚などを深める。

 2 内 容

 A 現代世界の系統地理的考察

  (1) 自然環境

     場所や人間と自然環境との相互依存関係などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 地形,気候,生態系などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,地球環境問題の現状や要因,解決に向けた取組などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 地形,気候,生態系などに関わる諸事象について,場所の特徴や自然及び社会的条件との関わりなどに着目して,主題を設定し,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,関連する地球的課題の要因や動向などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (2) 資源,産業

    場所や空間的相互依存作用などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 資源・エネルギーや農業,工業などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,資源・エネルギー,食料問題の現状や要因,解決に向けた取組みなどについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 資源・エネルギーや農業,工業などに関わる諸事象について,場所の特徴や場所の結び付きなどに着目して,主題を設定し,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,関連する地球的課題の要因や動向などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (3) 交通・通信,観光

    場所や空間的相互依存作用などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 交通・通信網と物流や人の移動に関する運輸,観光などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,交通・通信,観光に関わる問題の現状や要因,解決に向けた取組などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 交通・通信網と物流や人の移動に関する運輸,観光などに関わる諸事象について,場所の特徴や場所の結び付きなどに着目して,主題を設定し,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,関連する地球的課題の要因や動向などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (4) 人口,都市・村落

    場所や空間的相互依存作用などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 人口,都市・村落などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,人口,居住・都市問題の現状や要因,解決に向けた取組などについて理解すること。

    イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 人口,都市・村落などに関わる諸事象について,場所の特徴や場所の結び付きなどに着目して,主題を設定し,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,関連する地球的課題の要因や動向などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (5) 生活文化,民族・宗教

    場所や空間的相互依存作用などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 生活文化,民族・宗教などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,民族,領土問題の現状や要因,解決に向けた取組などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 生活文化,民族・宗教などに関わる諸事象について,場所の特徴や場所の結び付きなどに着目して,主題を設定し,それらの事象の空間的な規則性,傾向性や,関連する地球的課題の要因や動向などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 B 現代世界の地誌的考察

  (1) 現代世界の地域区分

    位置や分布,地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

    () 世界や世界の諸地域に関する各種の主題図や資料を基に,世界を幾つかの地域に区分する方法や地域の概念,地域区分の意義などについて理解すること。

    () 世界や世界の諸地域について,各種の主題図や資料を踏まえて地域区分をする地理的技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 世界や世界の諸地域の地域区分について,地域の共通点や差異,分布などに着目して,主題を設定し,地域の捉え方などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (2) 現代世界の諸地域

    空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

     () 幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域を基に,諸地域に見られる地域的特色や地球的課題などについて理解すること。

    () 幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域を基に,地域の結び付き,構造や変容などを地誌的に考察する方法などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 現代世界の諸地域について,地域の結び付き,構造や変容などに着目して,主題を設定し,地域的特色や地球的課題などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 C 現代世界におけるこれからの日本の国土像

  (1) 持続可能な国土像の探究

    空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を探究する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 現代世界におけるこれからの日本の国土像の探究を基に,我が国が抱える地理的な諸課題の解決の方向性や将来の国土の在り方などを構想することの重要性や,探究する手法などについて理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 現代世界におけるこれからの日本の国土像について,地域の結び付き,構造や変容,持続可能な社会づくりなどに着目して,主題を設定し,我が国が抱える地理的な諸課題の解決の方向性や将来の国土の在り方などを多面的・多角的に探究し,表現すること。

 3 内容の取扱い

  (1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。

   ア 1の目標に即して基本的な事柄を基に指導内容を構成すること。

   イ 地図の読図や作図,衛星画像や空中写真,景観写真の読み取りなど地理的技能を身に付けることができるよう系統性に留意して計画的に指導すること。その際,教科用図書「地図」を十分に活用するとともに,地図や統計などの地理情報の収集・分析には,「地理総合」における学習の成果を生かし,地理情報システムや情報通信ネットワークなどの活用を工夫すること。

   ウ 地図を有効に活用して事象を説明したり,自分の解釈を加えて論述したり,討論したりするなどの活動を充実させること。

   エ 学習過程では取り扱う内容の歴史的背景を踏まえることとし,政治的,経済的,生物的,地学的な事象なども必要に応じて扱うことができるが,それらは空間的な傾向性や諸地域の特色を理解するのに必要な程度とすること。

   オ 調査の実施や諸資料の収集に当たっては,専門家や関係諸機関などと円滑に連携・協働するなどして,社会との関わりを意識した活動を重視すること。

   カ 内容のA及びBについては,各項目の内容に応じて日本を含めて扱うとともに,日本と比較し関連付けて考察するようにすること。

  (2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

   ア 内容のAについては,次のとおり取り扱うものとすること。

     分析,考察の過程を重視し,現代世界を系統地理的に捉える視点や考察方法が身に付くよう工夫すること。

    () (1)については,次のとおり取り扱うこと。

      ここで取り上げる自然環境については,「地理総合」の内容のCの(1) の自然環境と防災における学習を踏まえた取扱いに留意すること。

    () (2)については,次のとおり取り扱うこと。

      「資源・エネルギーや農業,工業などに関わる諸事象」については,技術革新などによって新たに資源やエネルギーの利用が可能になったり,新たな産業が生まれたり成長したりすることから,社会の動向を踏まえて取り上げる事象を工夫すること。

    () (3)については,次のとおり取り扱うこと。

      「交通・通信網と物流や人の移動に関する運輸」に関わる諸事象については,道路や線路,港湾,空港,通信施設などの施設とともに,自動車や鉄道,船舶や航空機といった交通機関や通信手段を介した貿易や情報通信ネットワークなどの結び付きなどに関わる諸事象を取り扱うこと。

    () (4)については,次のとおり取り扱うこと。

      「人口,都市・村落などに関わる諸事象」については,国や地方公共団体の取組とも深く関わることから,中学校社会科公民的分野及び高等学校公民科などとの関連を踏まえた取扱いに留意すること。

    () (5)については,次のとおり取り扱うこと。

      ここで取り上げる生活文化については,「地理総合」の内容のBの(1) の生活文化の多様性と国際理解における学習を踏まえて取り上げる事象を工夫すること。

      「領土問題の現状や要因,解決に向けた取組」については,それを扱う際に日本の領土問題にも触れること。また,我が国の海洋国家としての特色と海洋の果たす役割を取り上げるとともに,竹島や北方領土が我が国の固有の領土であることなど,我が国の領域をめぐる問題も取り上げるようにすること。その際,尖閣諸島については我が国の固有の領土であり,領土問題は存在しないことも扱うこと。

   イ 内容のBについては,次のとおり取り扱うものとすること。

    () (1)については,次のとおり取り扱うこと。

      現代世界が自然,政治,経済,文化などの指標によって様々に地域区分できることに着目し,それらを比較対照することによって,地域の概念,地域区分の意義などを理解するようにすること。

    () (2)については,次のとおり取り扱うこと。

      ここで取り上げる地域は,中学校社会科地理的分野の「世界の諸地域」の学習における主に州を単位とする取り上げ方とは異なり,(1) で学習した地域区分を踏まえるとともに,様々な規模の地域を世界全体から偏りなく取り上げるようにすること。また,取り上げた地域の多様な事象を項目ごとに整理して考察する地誌,取り上げた地域の特色ある事象と他の事象を有機的に関連付けて考察する地誌,対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察する地誌の考察方法を用いて学習できるよう工夫すること。

   ウ 内容のCについては,次のとおり取り扱うものとすること。

    () (1)については,次のとおり取り扱うこと。

      この科目のまとめとして位置付けること。

      「我が国が抱える地理的な諸課題の解決の方向性や将来の国土の在り方」については,国際連合における持続可能な開発のための取組などを参考に,生徒の興味・関心などを踏まえて適切な事例を選定し,学習できるよう工夫すること。その際,「我が国が抱える地理的な諸課題」に関しては,それぞれの課題が相互に関連し合うとともに,それらの現状や要因の分析,解決の方向性については,複数の立場や意見があることに留意すること。

 

第3 歴史総合

 1 目 標

   社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

  (1) 近現代の歴史の変化に関わる諸事象について,世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を理解するとともに,諸資料から歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

  (2) 近現代の歴史の変化に関わる事象の意味や意義,特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりなどに着目して,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

  (3) 近現代の歴史の変化に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される日本国民としての自覚,我が国の歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

 2 内 容

 A 歴史の扉

  (1) 歴史と私たち

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 私たちの生活や身近な地域などに見られる諸事象を基に,それらが日本や日本周辺の地域及び世界の歴史とつながっていることを理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 近代化,国際秩序の変化や大衆化,グローバル化などの歴史の変化と関わらせて,アで取り上げる諸事象と日本や日本周辺の地域及び世界の歴史との関連性について考察し,表現すること。

  (2) 歴史の特質と資料

     日本や世界の様々な地域の人々の歴史的な営みの痕跡や記録である遺物,文書,図像などの資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 資料に基づいて歴史が叙述されていることを理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 複数の資料の関係や異同に着目して,資料から読み取った情報の意味や意義,特色などを考察し,表現すること。

 B 近代化と私たち

  (1) 近代化への問い

    交通と貿易,産業と人口,権利意識と政治参加や国民の義務,学校教育,労働と家族,移民などに関する資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 近代化に伴う生活や社会の変容について考察し,問いを表現すること。

  (2) 結び付く世界と日本の開国

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 18世紀のアジアや日本における生産と流通,アジア各地域間やアジア諸国と欧米諸国の貿易などを基に,18世紀のアジアの経済と社会を理解すること。

    () 産業革命と交通・通信手段の革新,中国の開港と日本の開国などを基に,工業化と世界市場の形成を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 18世紀のアジア諸国の経済が欧米諸国に与えた影響などに着目して,主題を設定し,アジア諸国とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,18世紀のアジア諸国における経済活動の特徴,アジア各地域間の関係,アジア諸国と欧米諸国との関係などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 産業革命の影響,中国の開港と日本の開国の背景とその影響などに着目して,主題を設定し,アジア諸国とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,アジア諸国と欧米諸国との関係の変容などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (3) 国民国家と明治維新

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 18世紀後半以降の欧米の市民革命や国民統合の動向,日本の明治維新や大日本帝国憲法の制定などを基に,立憲体制と国民国家の形成を理解すること。

    () 列強の進出と植民地の形成,日清(にっしん)・日露戦争などを基に,列強の帝主義政策とアジア諸国の変容を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 国民国家の形成の背景や影響などに着目して,主題を設定し,アジア諸国とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,政治変革の特徴,国民国家の特徴や社会の変容などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 帝国主義政策の背景,帝国主義政策がアジア・アフリカに与えた影響などに着目して,主題を設定し,アジア諸国とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,帝国主義政策の特徴,列強間の関係の変容などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (4) 近代化と現代的な諸課題

    内容のA及びBの(1)から(3)までの学習などを基に,自由・制限,平等・格差,開発・保全,統合・分化,対立・協調などの観点から主題を設定し,諸資料を活用して,追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 現代的な諸課題の形成に関わる近代化の歴史を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 事象の背景や原因,結果や影響などに着目して,アジア諸国とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,主題について多面的・多角的に考察し,表現すること。

 C 国際秩序の変化や大衆化と私たち

  (1) 国際秩序の変化や大衆化への問い

     国際関係の緊密化,アメリカ合衆国とソヴィエト連邦の台頭,植民地の独立,大衆の政治的・経済的・社会的地位の変化,生活様式の変化などに関する資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 国際秩序の変化や大衆化に伴う生活や社会の変容について考察し,問いを表現すること。

  (2) 第一次世界大戦と大衆社会

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 第一次世界大戦の展開,日本やアジアの経済成長,ソヴィエト連邦の成立とアメリカ合衆国の台頭,ナショナリズムの動向と国際連盟の成立などを基に,総力戦と第一次世界大戦後の国際協調体制を理解すること。

    () 大衆の政治参加と女性の地位向上,大正デモクラシーと政党政治,大量消費社会と大衆文化,教育の普及とマスメディアの発達などを基に,大衆社会の形成と社会運動の広がりを理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 第一次世界大戦の推移と第一次世界大戦が大戦後の世界に与えた影響,日本の参戦の背景と影響などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,関連付けたりするなどして,第一次世界大戦の性格と惨禍,日本とアジア及び太平洋地域の関係や国際協調体制の特徴などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 第一次世界大戦前後の社会の変化などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,関連付けたりするなどして,第一次世界大戦後の社会の変容と社会運動との関連などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (3) 経済危機と第二次世界大戦

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 世界恐慌,ファシズムの伸張,日本の対外政策などを基に,国際協調体制の動揺を理解すること。

    () 第二次世界大戦の展開,国際連合と国際経済体制,冷戦の始まりとアジア諸国の動向,戦後改革と日本国憲法の制定,平和条約と日本の独立の回復などを基に,第二次世界大戦後の国際秩序と日本の国際社会への復帰を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 経済危機の背景と影響,国際秩序や政治体制の変化などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,各国の世界恐慌への対応の特徴,国際協調体制の動揺の要因などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 第二次世界大戦の推移と第二次世界大戦が大戦後の世界に与えた影響,第二次世界大戦後の国際秩序の形成が社会に及ぼした影響などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,第二次世界大戦の性格と惨禍,第二次世界大戦下の社会状況や人々の生活,日本に対する占領政策と国際情勢との関係などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (4) 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題

    内容のA及びCの(1)から(3)までの学習などを基に,自由・制限,平等・格差,開発・保全,統合・分化,対立・協調などの観点から主題を設定し,諸資料を活用して,追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 現代的な諸課題の形成に関わる国際秩序の変化や大衆化の歴史を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 事象の背景や原因,結果や影響などに着目して,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,主題について多面的・多角的に考察し表現すること。

 D グローバル化と私たち

  (1) グローバル化への問い

    冷戦と国際関係,人と資本の移動,高度情報通信,食料と人口,資源・エネルギーと地球環境,感染症,多様な人々の共存などに関する資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () グローバル化に伴う生活や社会の変容について考察し,問いを表現すること。

  (2) 冷戦と世界経済

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

 () 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国,冷戦下の地域紛争,先進国の政治の動向,軍備拡張や核兵器の管理などを基に,国際政治の変容を理解すること。

 () 西ヨーロッパや東南アジアの地域連携,計画経済とその波及,日本の高度経済成長などを基に,世界経済の拡大と経済成長下の日本の社会を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 地域紛争の背景や影響,冷戦が各国の政治に及ぼした影響などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,地域紛争と冷戦の関係,第三世界の国々の経済政策の特徴,欧米やソヴィエト連邦の政策転換の要因などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 冷戦が各国経済に及ぼした影響,地域連携の背景と影響,日本の高度経済成長の背景と影響などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,冷戦下の世界経済や地域連携の特徴,経済成長による生活や社会の変容などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (3) 世界秩序の変容と日本

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 石油危機,アジアの諸地域の経済発展,市場開放と経済の自由化,情報通信技術の発展などを基に,市場経済の変容と課題を理解すること。

    () 冷戦の終結,民主化の進展,地域統合の拡大と変容,地域紛争の拡散とそれへの対応などを基に,冷戦終結後の国際政治の変容と課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () アジアの諸地域の経済発展の背景,経済の自由化や技術革新の影響,資源・エネルギーと地球環境問題が世界経済に及ぼした影響などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,市場経済のグローバル化の特徴と日本の役割などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 冷戦の変容と終結の背景,民主化や地域統合の背景と影響,地域紛争の拡散の背景と影響などに着目して,主題を設定し,日本とその他の国や地域の動向を比較したり,相互に関連付けたりするなどして,冷戦終結後の国際政治の特徴と日本の役割などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (4) 現代的な諸課題の形成と展望

     内容のA,B及びC並びにDの(1)から(3)までの学習などを基に,持続可能な社会の実現を視野に入れ,主題を設定し,諸資料を活用し探究する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

 () 歴史的経緯を踏まえて,現代的な諸課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

 () 事象の背景や原因,結果や影響などに着目して,日本とその他の国や地域の動向を比較し相互に関連付けたり,現代的な諸課題を展望したりするなどして,主題について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 3 内容の取扱い

  (1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。

   ア この科目では,中学校までの学習との連続性に留意して諸事象を取り上げることにより,生徒が興味・関心をもって近現代の歴史を学習できるよう指導を工夫すること。その際,近現代の歴史の変化を大観して理解し,考察,表現できるようにすることに指導の重点を置き,個別の事象のみの理解にとどまることのないよう留意すること。

   イ 歴史に関わる諸事象については,地理的条件と関連付けて扱うとともに,特定の時間やその推移及び特定の空間やその広がりの中で生起することを踏まえ,時間的・空間的な比較や関連付けなどにより捉えられるよう指導を工夫すること。

   ウ 近現代の歴史と現代的な諸課題との関わりを考察する際には,政治,経済,社会,文化,宗教,生活などの観点から諸事象を取り上げ,近現代の歴史を多面的・多角的に考察できるようにすること。また,過去の視点のみで一面的に現在を捉えたり,現在の視点のみで一面的に過去を捉えたりすることがないよう留意すること。

   エ 年表や地図,その他の資料を積極的に活用し,文化遺産,博物館や公文書館,その他の資料館などを調査・見学したりするなど,具体的に学ぶよう指導を工夫すること。その際,歴史に関わる諸資料を整理・保存することの意味や意義に気付くようにすること。また,科目の内容に関係する専門家や関係諸機関などとの円滑な連携・協働を図り,社会との関わりを意識した指導を工夫すること。

   オ 活用する資料の選択に際しては,生徒の興味・関心,学校や地域の実態などに十分配慮して行うこと。

   カ 指導に当たっては,客観的かつ公正な資料に基づいて,事実の正確な理解に導くとともに,多面的・多角的に考察し公正に判断する能力を育成すること。その際,核兵器などの脅威に着目させ,戦争や紛争などを防止し,平和で民主的な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識するよう指導を工夫すること。

  (2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

   ア 内容のA,B,C及びDについては,この順序で取り扱うものとし,A,B及びC並びにDの(1)から(3)までの学習をすることにより,Dの(4)の学習が充実するように年間指導計画を作成すること。

   イ 内容のAについては,次のとおり取り扱うものとすること。

この科目の導入として位置付け,(1)(2)の順で取り扱うこと。また,中学校社会科の学習の成果を踏まえ,より発展的に学習できるよう留意するとともに,B,C及びDの学習の基盤を養うよう指導を工夫すること。

 (1)については,中学校社会科の学習を踏まえ,生徒の空間的な認識に広がりをもたせるよう指導を工夫すること。

 (2)については,資料から読み取る諸事象の解釈の違いが複数の叙述を生むことを理解できるよう具体的な事例を取り上げて指導すること。また,歴史の叙述には,諸資料の検証と論理性などが求められることに気付くようにすること。

   ウ 内容のBについては,次のとおり取り扱うものとすること。

 (1)については,中学校までの学習及びAの学習を踏まえ,学習内容への課題意識をもたせるとともに,(2)(3)及び(4)の学習内容を見通して指導すること。

 (2)のアについては,日本の美術などのアジアの文物が欧米諸国に与えた影響に気付くようにすること。また,欧米諸国がアジア諸国に進出し,軍事力を背景に勢力拡張を目指した競争が展開され,アジアの経済と社会の仕組みが変容したことにも触れること。また,アジア貿易における琉球(りゅうきゅう)の役割,北方との交易をしていたアイヌについて触れること。その際,琉球(りゅうきゅう)やアイヌの文化についても触れること。

 (3)のアの()については,人々の政治的な発言権が拡大し近代民主主義社会の基礎が成立したことや,国民国家以外の国家形態が存在したことにも触れること。また,富国強兵や大日本帝国憲法の制定など日本の近代化への諸政策については,この時期に日本の立憲国家としての基礎が形成されたことや,それらと欧米諸国の諸政策を比較するなどして近代国家として日本の国際的地位を欧米諸国と対等に引き上げようとするものであったことに気付くようにすること。また,日本の国民国家の形成などの学習において,領土の画定などを取り扱うようにすること。その際,北方領土に触れるとともに,竹島,尖閣諸島の編入についても触れること。

 (3)のアの()については,アジア諸国では,近代化に向けた動向や民族意識の形成など,主体的な社会変革への動きがあったことにも気付くようにすること。また,日本の近代化や日露戦争の結果が,アジアの諸民族の独立や近代化の運動に与えた影響とともに,欧米諸国がアジア諸国へ勢力を拡張し,日本が朝鮮半島や中国東北地方へ勢力を拡張したことに触れ,各国の国内状況や国際関係の変化に気付くようにすること。

 (4)については,一つ,あるいは複数の観点について取り上げ,これまでの学習を振り返り適切な主題を設定すること。その際,自由・制限,平等・格差,開発・保全,統合・分化,対立・協調などの観点に示された二つの要素のどちらかのみに着目することのないよう留意すること。

   エ 内容のCについては,次のとおり取り扱うものとすること。

 (1)については,中学校までの学習並びにA及びBの学習を踏まえ,学習内容への課題意識をもたせるとともに,(2)(3)及び(4)の学習内容を見通して指導すること。

 (2)のアの()については,社会主義思想の広がりやロシア革命によるソヴィエト連邦の成立が,その後の世界に与えた影響にも触れること。また,国際連盟の成立,国際的な軍縮条約や不戦条約の締結などを扱い,その中で日本が果たした役割や国際的な立場の変化について触れること。

 (2)のアの()については,世論の影響力が高まる中で民主主義的風潮が形成され,日本において議会政治に基づく政党内閣制が機能するようになったことに触れること。

 (3)のアの()については,世界恐慌による混乱,日本の政治体制や対外政策の変化,国際協調を基調とするこれまでの国際秩序の変容などについて触れること。その際,当時の政治制度の特性や国際情勢に触れること。

 (3)のアの()については,第二次世界大戦の過程での米ソ対立や脱植民地化への萌(ほう)芽などに触れ,大戦の複合的な性格に気付くようにすること。また,この戦争が人類全体に惨禍を及ぼしたことを基に,平和で民主的な国際社会の実現に努めることが大切であることを認識できるようにすること。戦後の国際政治では,冷戦と植民地の独立の動向が相互に関連していたことに触れること。

 (4)については,一つ,あるいは複数の観点について取り上げ,これまでの学習を振り返り適切な主題を設定すること。その際,自由・制限,平等・格差,開発・保全,統合・分化,対立・協調などの観点に示された二つの要素のどちらかのみに着目することのないよう留意すること。

   オ 内容のDについては,次のとおり取り扱うものとすること。

 (1)については,中学校までの学習並びにA,B及びCの学習を踏まえ,学習内容への課題意識をもたせるとともに,(2)及び(3)の学習内容を見通して指導すること。

 (2)については,アジア・アフリカ諸国が国際関係の変化に主体的に対応して国家建設を進めたことや,地域連携や経済成長と冷戦との関わりに気付くようにすること。また,この時期の日本の国内政治や,日本とアジア諸国との関係についても触れること。

 (3)については,冷戦終結後も引き続き課題として残されたことや,冷戦終結後に新たに生じた課題などに触れること。その際,国家間の対立だけでなく,民族対立が拡大したり,武装集団によるテロ行為を契機として戦争が生じたりするなど,地域紛争の要因が多様化していることにも触れること。また,世界経済の安定に向けた取組を扱い,日本が先進国としての国際的な地位を確立してきたことに気付くようにするとともに,政府開発援助(ODA)や国際連合平和維持活動(PKO),持続可能な開発のための取組などを扱い,日本が国際社会における重要な役割を担ってきたことにも気付くようにすること。

 (4)については,この科目のまとめとして位置付けること。その際,Bの(4)及びCの(4)の内容を更に深めたり,Bの(4)及びCの(4)とは異なる観点を取り上げたりして,この科目の学習を振り返り適切な主題を設定すること。

 

第4 日本史探究

 1 目 標

   社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

  (1) 我が国の歴史の展開に関わる諸事象について,地理的条件や世界の歴史と関連付けながら総合的に捉えて理解するとともに,諸資料から我が国の歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

  (2) 我が国の歴史の展開に関わる事象の意味や意義,伝統と文化の特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりなどに着目して,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

  (3) 我が国の歴史の展開に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に探究しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される日本国民としての自覚,我が国の歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

 2 内 容

 A 原始・古代の日本と東アジア

  (1) 黎(れい)明期の日本列島と歴史的環境

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

     () 旧石器文化から縄文文化への変化,弥生(やよい)文化の成立などを基に,黎(れい)明期の日本列島の歴史的環境と文化の形成,原始社会の特色を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 自然環境と人間の生活との関わり,中国大陸・朝鮮半島などアジア及び太平洋地域との関係,狩猟採集社会から農耕社会への変化などに着目して,環境への適応と文化の形成について,多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 黎(れい)明期の日本列島の変化に着目して,原始社会の特色について多面的・多角的に考察し,時代を通観する問いを表現すること。

  (2) 歴史資料と原始・古代の展望

     諸資料を活用し,(1)で表現した時代を通観する問いを踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 原始・古代の特色を示す適切な歴史資料を基に,資料から歴史に関わる情報を収集し,読み取る技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 歴史資料の特性を踏まえ,資料を通して読み取れる情報から,原始・古代の特色について多面的・多角的に考察し,仮説を表現すること。

  (3) 古代の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈,説明,論述)

    諸資料を活用し,(2)で表現した仮説を踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 国家の形成と古墳文化,律令(りつりょう)体制の成立過程と諸文化の形成などを基に,原始から古代の政治・社会や文化の特色を理解すること。

    () 貴族政治の展開,平安期の文化,地方支配の変化や武士の出現などを基に,律令(りつりょう)体制の再編と変容,古代の社会と文化の変容を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 中国大陸・朝鮮半島との関係,隋(ずい)・唐など中国王朝との関係と政治や文化への影響などに着目して,主題を設定し,小国の形成と連合,古代の国家の形成の過程について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 地方の諸勢力の成長と影響,東アジアとの関係の変化,社会の変化と文化との関係などに着目して,主題を設定し,古代の国家・社会の変容について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

 B 中世の日本と世界

  (1) 中世への転換と歴史的環境

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

     () 貴族政治の変容と武士の政治進出,土地支配の変容などを基に,古代から中世への時代の転換を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 権力の主体の変化,東アジアとの関わりなどに着目して,古代から中世の国家・社会の変容を多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 時代の転換に着目して,中世の特色について多面的・多角的に考察し,時代を通観する問いを表現すること。

  (2) 歴史資料と中世の展望

     諸資料を活用し,(1)で表現した時代を通観する問いを踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 中世の特色を示す適切な歴史資料を基に,資料から歴史に関わる情報を収集し,読み取る技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 歴史資料の特性を踏まえ,資料を通して読み取れる情報から,中世の特色について多面的・多角的に考察し,仮説を表現すること。

  (3) 中世の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈,説明,論述)

     諸資料を活用し,(2)で表現した仮説を踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 武家政権の成立と展開,産業の発達,宗教や文化の展開などを基に,武家政権の伸張,社会や文化の特色を理解すること。

    () 武家政権の変容,日明(にちみん)貿易の展開と琉球(りゅうきゅう)王国の成立,村落や都市の自立,多様な文化の形成や融合などを基に,地域権力の成長,社会の変容と文化の特色を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 公武関係の変化,宋(そう)・元(モンゴル帝国)などユーラシアとの交流と経済や文化への影響などに着目して,主題を設定し,中世の国家・社会の展開について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 社会や経済の変化とその影響,東アジアの国際情勢の変化とその影響,地域の多様性,社会の変化と文化との関係などに着目して,主題を設定し,中世の国家・社会の変容について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

 C 近世の日本と世界

  (1) 近世への転換と歴史的環境

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 織豊政権の政治・経済政策,貿易や対外関係などを基に,中世から近世への時代の転換を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 村落や都市の支配の変化,アジア各地やヨーロッパ諸国との交流の影響などに着目して,中世から近世の国家・社会の変容を多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 時代の転換に着目して,近世の特色について多面的・多角的に考察し,時代を通観する問いを表現すること。

  (2) 歴史資料と近世の展望

     諸資料を活用し,(1)で表現した時代を通観する問いを踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 近世の特色を示す適切な歴史資料を基に,資料から歴史に関わる情報を収集し,読み取る技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 歴史資料の特性を踏まえ,資料を通して読み取れる情報から,近世の特色について多面的・多角的に考察し,仮説を表現すること。

  (3) 近世の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈,説明,論述)

     諸資料を活用し,(2)で表現した仮説を踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 法や制度による支配秩序の形成と身分制,貿易の統制と対外関係,技術の向上と開発の進展,学問・文化の発展などを基に,幕藩体制の確立,近世の社会と文化の特色を理解すること。

    () 産業の発達,飢饉(ききん)や一揆(いっき)の発生,幕府政治の動揺と諸藩の動向,学問・思想の展開,庶民の生活と文化などを基に,幕藩体制の変容,近世の庶民の生活と文化の特色,近代化の基盤の形成を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 織豊政権との類似と相違,アジアの国際情勢の変化,交通・流通の発達,都市の発達と文化の担い手との関係などに着目して,主題を設定し,近世の国家・社会の展開について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 社会・経済の仕組みの変化,幕府や諸藩の政策の変化,国際情勢の変化と影響,政治・経済と文化との関係などに着目して,主題を設定し,近世の国家・社会の変容について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

 D 近現代の地域・日本と世界

  (1) 近代への転換と歴史的環境

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 対外政策の変容と開国,幕藩体制の崩壊と新政権の成立などを基に,近世から近代への時代の転換を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 欧米諸国の進出によるアジア諸国の変化,政治・経済の変化と思想への影響などに着目して,近世から近代の国家・社会の変容を多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 時代の転換に着目して,近代の特色について多面的・多角的に考察し,時代を通観する問いを表現すること。

  (2) 歴史資料と近代の展望

     諸資料を活用し,(1)で表現した時代を通観する問いを踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 近代の特色を示す適切な歴史資料を基に,資料から歴史に関わる情報を収集し,読み取る技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 歴史資料の特性を踏まえ,資料から読み取れる情報から,近代の特色について多面的・多角的に考察し,仮説を表現すること。

  (3) 近現代の地域・日本と世界の画期と構造

     諸資料を活用し,(2)で表現した仮説を踏まえ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 明治維新,自由民権運動,大日本帝国憲法の制定,条約改正,日清(にっしん)・日露戦争,第一次世界大戦,社会運動の動向,政党政治などを基に,立憲体制への移行,国民国家の形成,アジアや欧米諸国との関係の変容を理解すること。

    () 文明開化の風潮,産業革命の展開,交通の整備と産業構造の変容,学問の発展や教育制度の拡充,社会問題の発生などを基に,産業の発展の経緯と近代の文化の特色,大衆社会の形成を理解すること。

    () 恐慌と国際関係,軍部の台頭と対外政策,戦時体制の強化と第二次世界大戦の展開などを基に,第二次世界大戦に至る過程及び大戦中の政治・社会,国民生活の変容を理解すること。

    () 占領政策と諸改革,日本国憲法の成立,平和条約と独立の回復,戦後の経済復興,アジア諸国との関係,高度経済成長,社会・経済・情報の国際化などを基に,我が国の再出発及びその後の政治・経済や対外関係,現代の政治や社会の枠組み,国民生活の変容を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () アジアや欧米諸国との関係,地域社会の変化,戦争が及ぼした影響などに着目して,主題を設定し,近代の政治の展開と国際的地位の確立,第一次世界大戦前後の対外政策や国内経済,国民の政治参加の拡大について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 欧米の思想・文化の影響,産業の発達の背景と影響,地域社会における労働や生活の変化,教育の普及とその影響などに着目して,主題を設定し,日本の工業化の進展,近代の文化の形成について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 国際社会やアジア近隣諸国との関係,政治・経済体制の変化,戦争の推移と国民生活への影響などに着目して,主題を設定し,第二次世界大戦と日本の動向の関わりについて,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 第二次世界大戦前後の政治や社会の類似と相違,冷戦の影響,グローバル化の進展の影響,国民の生活や地域社会の変化などに着目して,主題を設定し,戦前と戦後の国家・社会の変容,戦後政治の展開,日本経済の発展,第二次世界大戦後の国際社会における我が国の役割について,事象の意味や意義,関係性などを多面的・多角的に考察し,歴史に関わる諸事象の解釈や歴史の画期などを根拠を示して表現すること。

    () 日本と世界の相互の関わり,地域社会の変化,()から()までの学習で見いだした画期などに着目して,事象の意味や意義,関係性などを構造的に整理して多面的・多角的に考察し,我が国の近現代を通した歴史の画期を見いだし,根拠を示して表現すること。

  (4) 現代の日本の課題の探究

     次の①から③までについて,内容のA,B及びC並びにDの(1)から(3) までの学習を踏まえ,持続可能な社会の実現を視野に入れ,地域社会や身の回りの事象と関連させて主題を設定し,諸資料を活用して探究する活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

   ① 社会や集団と個人

   ② 世界の中の日本

   ③ 伝統や文化の継承と創造

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 歴史的経緯を踏まえて,現代の日本の課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 歴史の画期,地域社会の諸相と日本や世界との歴史的な関係,それ以前の時代からの継続や変化などに着目して,現代の日本の課題の形成に関わる歴史について,多面的・多角的に考察,構想して表現すること。

 3 内容の取扱い

  (1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。

   ア 我が国の歴史と文化について各時代の国際環境や地理的条件などと関連付け,世界の中の日本という視点から考察できるよう指導を工夫すること。

   イ この科目では,中学校までの学習や「歴史総合」の学習との連続性に留意して諸事象を取り上げることにより,生徒が興味・関心をもって我が国の歴史の展開を学習できるよう工夫すること。その際,我が国の歴史を大観して理解し,考察,表現できるようにすることに指導の重点を置き,個別の事象のみの理解にとどまることのないよう留意すること。また,各時代の特色を総合的に考察する学習及び前後の時代を比較してその移り変わりを考察する学習の充実を図ること。

   ウ 年表や地図,その他の資料を積極的に活用し,地域の文化遺産,博物館や公文書館,その他の資料館などを調査・見学したりするなど,具体的に学ぶよう指導を工夫すること。その際,歴史に関わる諸資料を整理・保存することの意味や意義,文化財保護の重要性に気付くようにすること。また,科目の内容に関係する専門家や関係諸機関などとの円滑な連携・協働を図り,社会との関わりを意識した指導を工夫すること。

   エ 活用する資料の選択に際しては,生徒の興味・関心,学校や地域の実態などに十分配慮して行うこと。

   オ 近現代史の指導に当たっては,客観的かつ公正な資料に基づいて,事実の正確な理解に導くとともに,多面的・多角的に考察し公正に判断する能力を育成すること。その際,核兵器などの脅威に着目させ,戦争や紛争などを防止し,平和で民主的な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識するよう指導を工夫すること。

   カ 近現代史の指導に当たっては,「歴史総合」の学習の成果を踏まえ,より発展的に学習できるよう留意すること。

   キ 文化に関する指導に当たっては,各時代の文化とそれを生み出した時代的背景との関連,外来の文化などとの接触や交流による文化の変容や発展の過程などに着目させ,我が国の伝統と文化の特色とそれを形成した様々な要因を総合的に考察できるよう指導を工夫すること。衣食住や風習・信仰などの生活文化についても,時代の特色や地域社会の様子などと関連付け,民俗学や考古学などの成果の活用を図りながら扱うようにすること。

   ク 地域社会の歴史と文化について扱うようにするとともに,祖先が地域社会の向上と文化の創造や発展に努力したことを具体的に理解させ,それらを尊重する態度を育てるようにすること。

  (2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

   ア 内容のA,B,C及びDは,この順序で扱うこと。また,「歴史総合」で学習した歴史の学び方を活用すること。

   イ 内容のA,B,C及びDのそれぞれの(1)については,対外的な環境の変化や国内の諸状況の変化などを扱い,時代の転換を理解できるようすること。それぞれの(1)のイの()については,アの理解に加え,中学校社会科歴史的分野における学習の成果を活用するなどして,対象となる時代の特色を考察するための時代を通観する問いが表現できるよう指導を工夫すること。

   ウ 内容のA,B,C及びDのそれぞれの(2)については,政治や経済,社会,生活や文化,国際環境など,各時代の特色を生徒が読み取ることができる複数の適切な資料を活用し,それぞれの(1)で表現した問いを踏まえ,中学校社会科歴史的分野における学習の成果を活用するなどして,対象となる時代の特色について,生徒が仮説を立てることができるよう指導を工夫すること。その際,様々な歴史資料の特性に着目し,諸資料に基づいて歴史が叙述されていることを踏まえて多面的・多角的に考察できるよう,資料を活用する技能を高める指導を工夫すること。また,デジタル化された資料や,地域の遺構や遺物,歴史的な地形,地割や町並みの特徴などを積極的に活用し,具体的に学習できるよう工夫するとともに,歴史資料や遺構の保存・保全などの努力が図られていることに気付くようにすること。

   エ 内容のA,B,C及びDのそれぞれの(3)については,それぞれの(2) で表現した仮説を踏まえて主題を設定すること。その際,資料を活用し,事象の意味や意義,事象相互の関係性などを考察できるよう指導を工夫すること。また,根拠や論理を踏まえ,筋道を立てて説明するなどの学習から,歴史に関わる諸事象には複数の解釈が成り立つことや,歴史の変化の意味や意義の考察から,様々な画期を示すことができることに気付くようにすること。また,それらの考察の結果を,文章としてまとめたりするなどの一連の学習を通して,思考力,判断力,表現力等の育成を図ること。

   オ 内容のAについては,次のとおり取り扱うものとすること。

     (1)(2)及び(3)については,遺構や遺物,編纂(さん)された歴史書,公家(くげ)の日記などの資料や,それらを基に作成された資料などから適切なものを取り上げること。

   カ 内容のBについては,次のとおり取り扱うものとすること。

     (1)(2)及び(3)については,武家,公家(くげ),幕府や寺社の記録,絵画などの資料や,それらを基に作成された資料などから適切なものを取り上げること。(3)のアの()については,公家(くげ)や武家,庶民などの文化の形成や融合について扱うこと。また,アイヌや琉球(りゅうきゅう)の文化の形成についても扱うこと。

   キ 内容のCについては,次のとおり取り扱うものとすること。

      (1)(2)及び(3)については,幕府や藩の法令,地域に残る村方(地方(じかた))・町方文書,浮世絵などの絵画や出版物などの資料や,それらを基に作成された資料などから適切なものを取り上げること。(3)のアの()については,長崎,琉球(りゅうきゅう),対馬,松前藩やアイヌの人々を通して,それぞれオランダ,中国,朝鮮との交流や北方貿易が行われたことについて取り上げること。

   ク 内容のDについては,次のとおり取り扱うものとすること。

       (1)(2)及び(3)については,日記,書簡,自伝,公文書,新聞,統計,写真,地図,映像や音声,生活用品の変遷などの資料や,それらを基に作成された資料などから適切なものを取り上げること。(3)のアの()については,明治維新や国民国家の形成などの学習において,領土の画定などを取り扱うようにすること。その際,北方領土に触れるとともに,竹島,尖閣諸島の編入についても触れること。(3)のアの()については,第二次世界大戦の学習において,この戦争が人類全体に惨禍を及ぼしたことを基に,平和で民主的な国際社会の実現に努めることが大切であることを認識できるようにすること。(3)のイの()()()及び()については,地域社会と日本や世界の歴史的な変化との関係性に着目して具体的に考察できるようにすること。(3)のイの()については,(1)から(3)までの学習のまとめとして,日本の近現代の推移を踏まえ,生徒が近現代を通した歴史の中に,根拠をもって画期を見いだし表現できるよう指導を工夫すること。その際,事象の因果関係,地域社会と日本や世界などの相互の関係性,政治や経済,社会,文化など歴史の諸要素の関係性など,様々な側面から構造的に整理して考察できるようにすること。(4)については,この科目のまとめとして位置付けること。その際,生徒の生活や生活空間,地域社会との関わりを踏まえた主題を設定するとともに,歴史的な経緯や根拠を踏まえた展望を構想することができるよう指導を工夫すること。

 

第5 世界史探究

 1 目 標

   社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

  (1) 世界の歴史の大きな枠組みと展開に関わる諸事象について,地理的条件や日本の歴史と関連付けながら理解するとともに,諸資料から世界の歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

  (2) 世界の歴史の大きな枠組みと展開に関わる事象の意味や意義,特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現代世界とのつながりなどに着目して,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

  (3) 世界の歴史の大きな枠組みと展開に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に探究しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される日本国民としての自覚,我が国の歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

 2 内 容

 A 世界史へのまなざし

  (1) 地球環境から見る人類の歴史

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 人類の誕生と地球規模での拡散・移動を基に,人類の歴史と地球環境との関わりを理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 諸事象を捉えるための時間の尺度や,諸事象の空間的な広がりに着目し,主題を設定し,地球の歴史における人類の歴史の位置と人類の特性を考察し,表現すること。

  (2) 日常生活から見る世界の歴史

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 衣食住,家族,教育,余暇などの身の回りの諸事象を基に,私たちの日常生活が世界の歴史とつながっていることを理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 諸事象の来歴や変化に着目して,主題を設定し,身の回りの諸事象と世界の歴史との関連性を考察し,表現すること。

 B 諸地域の歴史的特質の形成

  (1) 諸地域の歴史的特質への問い

     生業,身分・階級,王権,宗教,文化・思想などに関する資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 文明の形成に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連などに着目し,諸地域の歴史的特質を読み解く観点について考察し,問いを表現すること。

  (2) 古代文明の歴史的特質

     諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () オリエント文明,インダス文明,中華文明などを基に,古代文明の歴史的特質を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 古代文明に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連などに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,自然環境と生活や文化との関連性,農耕・牧畜の意義などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (3) 諸地域の歴史的特質

     諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 秦(しん)・漢と遊牧国家,唐と近隣諸国の動向などを基に,東アジアと中央ユーラシアの歴史的特質を理解すること。

    () 仏教の成立とヒンドゥー教,南アジアと東南アジアの諸国家などを基に,南アジアと東南アジアの歴史的特質を理解すること。

    () 西アジアと地中海周辺の諸国家,キリスト教とイスラームの成立とそれらを基盤とした国家の形成などを基に,西アジアと地中海周辺の歴史的特質を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 東アジアと中央ユーラシアの歴史に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互の関わりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,唐の統治体制と社会や文化の特色,唐と近隣諸国との関係,遊牧民の社会の特徴と周辺諸地域との関係などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 南アジアと東南アジアの歴史に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互の関わりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,南アジアと東南アジアにおける宗教や文化の特色,東南アジアと周辺諸地域との関係などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 西アジアと地中海周辺の歴史に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互の関わりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,西アジアと地中海周辺の諸国家の社会や文化の特色,キリスト教とイスラームを基盤とした国家の特徴などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 C 諸地域の交流・再編

  (1) 諸地域の交流・再編への問い

     交易の拡大,都市の発達,国家体制の変化,宗教や科学・技術及び文化・思想の伝播(ぱ)などに関する資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような技能を身に付けること。

    () 資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 諸地域の交流・再編に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,諸地域の交流・再編を読み解く観点について考察し,問いを表現すること。

  (2) 結び付くユーラシアと諸地域

    諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 西アジア社会の動向とアフリカ・アジアへのイスラームの伝播(ぱ),ヨーロッパ封建社会とその展開,宋(そう)の社会とモンゴル帝国の拡大などを基に,海域と内陸にわたる諸地域の交流の広がりを構造的に理解すること。

    () アジア海域での交易の興隆,明(みん)と日本・朝鮮の動向,スペインとポルトガルの活動などを基に,諸地域の交易の進展とヨーロッパの進出を構造的に理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 諸地域の交流の広がりに関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,諸地域へのイスラームの拡大の要因,ヨーロッパの社会や文化の特色,中国社会の特徴やモンゴル帝国が果たした役割などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 諸地域の交易とヨーロッパの進出に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,アジア海域での交易の特徴,ユーラシアとアメリカ大陸間の交易の特徴とアメリカ大陸の変容などを多面的・多角的に考察し,表現する。

  (3) アジア諸地域とヨーロッパの再編

     諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 西アジアや南アジアの諸帝国,清(しん)と日本・朝鮮などの動向を基に,アジア諸地域の特質を構造的に理解すること。

    () 宗教改革とヨーロッパ諸国の抗争,大西洋三角貿易の展開,科学革命と啓蒙(もう)思想 などを基に,主権国家体制の形成と地球規模での交易の拡大を構造的に理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () アジア諸地域の動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,諸帝国の統治の特徴,アジア諸地域の経済と社会や文化の特色,日本の対外関係の特徴などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () ヨーロッパ諸地域の動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,宗教改革の意義,大西洋両岸諸地域の経済的連関の特徴,主権国家の特徴と経済活動との関連,ヨーロッパの社会や文化の特色などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 D 諸地域の結合・変容

  (1) 諸地域の結合・変容への問い

     人々の国際的な移動,自由貿易の広がり,マスメディアの発達,国際規範の変容,科学・技術の発達,文化・思想の展開などに関する資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

    () 資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 諸地域の結合・変容に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,諸地域の結合・変容を読み解く観点について考察し,問いを表現すること。

  (2) 世界市場の形成と諸地域の結合

     諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 産業革命と環大西洋革命,自由主義とナショナリズム,南北戦争の展開などを基に,国民国家と近代民主主義社会の形成を構造的に理解すること。

    () 国際的な分業体制と労働力の移動,イギリスを中心とした自由貿易体制,アジア諸国の植民地化と諸改革などを基に,世界市場の形成とアジア諸国の変容を構造的に理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 大西洋両岸諸地域の動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,産業革命や環大西洋革命の意味や意義,自由主義とナショナリズムの特徴,南北アメリカ大陸の変容などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 世界市場の形成とアジア諸国の動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,労働力の移動を促す要因,イギリスの覇権の特徴,アジア諸国の変容の地域的な特徴などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (3) 帝国主義とナショナリズムの高揚

     諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 第二次産業革命と帝国主義諸国の抗争,アジア諸国の変革などを基に,世界分割の進展とナショナリズムの高まりを構造的に理解すること。

    () 第一次世界大戦とロシア革命,ヴェルサイユ・ワシントン体制の形成,アメリカ合衆国の台頭,アジア・アフリカの動向とナショナリズムなどを基に,第一次世界大戦の展開と諸地域の変容を構造的に理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 列強の対外進出とアジア・アフリカの動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,世界経済の構造的な変化,列強の帝国主義政策の共通点と相違点,アジア諸国のナショナリズムの特徴などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 第一次世界大戦と大戦後の諸地域の動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,第一次世界大戦後の国際協調主義の性格,アメリカ合衆国の台頭の要因,アジア・アフリカのナショナリズムの性格などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (4) 第二次世界大戦と諸地域の変容

    諸資料を活用し,(1)で考察した観点を踏まえた問いを基に,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 世界恐慌とファシズムの動向,ヴェルサイユ・ワシントン体制の動揺などを基に,国際関係の緊張と対立を構造的に理解すること。

    () 第二次世界大戦の展開と大戦後の国際秩序,冷戦とアジア諸国の独立の始まりなどを基に,第二次世界大戦の展開と諸地域の変容を構造的に理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 世界恐慌と国際協調体制の動揺に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,世界恐慌に対する諸国家の対応策の共通点と相違点,ファシズムの特徴,第二次世界大戦に向かう国際関係の変化の要因などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

    () 第二次世界大戦と大戦後の諸地域の動向に関わる諸事象の背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,第二次世界大戦中の連合国による戦後構想と大戦後の国際秩序との関連,アジア諸国の独立の地域的な特徴などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

 E 地球世界の課題

  (1) 国際機構の形成と平和への模索

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 集団安全保障と冷戦の展開,アジア・アフリカ諸国の独立と地域連携の動き,平和共存と多極化の進展,冷戦の終結と地域紛争の頻発などを基に,紛争解決の取組と課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 国際機構の形成と紛争に関わる諸事象の歴史的背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,国際連盟と国際連合との共通点と相違点,冷戦下の紛争解決と冷戦後の紛争解決との共通点と相違点,紛争と経済や社会の変化との関連性などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (2) 経済のグローバル化と格差の是正

     諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 先進国の経済成長と南北問題,アメリカ合衆国の覇権の動揺,資源ナショナリズムの動きと産業構造の転換,アジア・ラテンアメリカ諸国の経済成長と南南問題,経済のグローバル化などを基に,格差是正の取組と課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 国際競争の展開と経済格差に関わる諸事象の歴史的背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,先進国による経済援助や経済の成長が見られた地域の特徴,諸地域間の経済格差や各国内の経済格差の特徴,経済格差と政治や社会の変化との関連性などを多面的・多角的に考察し,表現する。

  (3) 科学技術の高度化と知識基盤社会

    諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 原子力の利用や宇宙探査などの科学技術,医療技術・バイオテクノロジーと生命倫理,人工知能と労働の在り方の変容,情報通信技術の発達と知識の普及などを基に,知識基盤社会の展開と課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 科学技術の高度化と知識基盤社会に関わる諸事象の歴史的背景や原因,結果や影響,事象相互の関連などに着目し,主題を設定し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,現代の科学技術や文化の歴史的な特色,第二次世界大戦後の科学技術の高度化と政治・経済・社会の変化との関連性などを多面的・多角的に考察し,表現すること。

  (4) 地球世界の課題の探究

    次の①から③までについて,内容のA,B,C及びD並びにEの(1)から(3)までの学習を基に,持続可能な社会の実現を視野に入れ,主題を設定し,諸資料を活用し探究する活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

   ① 紛争解決や共生

   ② 経済格差の是正や経済発展

   ③ 科学技術の発展や文化の変容

   ア 次のような知識を身に付けること。

    () 歴史的経緯を踏まえて,地球世界の課題を理解すること。

   イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

    () 地球世界の課題の形成に関わる諸事象の歴史的背景や原因,結果や影響,事象相互の関連,諸地域相互のつながりなどに着目し,諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き,地球世界の課題の形成に関わる世界の歴史について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 3 内容の取扱い

  (1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。

   ア この科目では,中学校までの学習や「歴史総合」の学習との連続性に留意して諸事象を取り上げることにより,生徒が興味・関心をもって世界の歴史を学習できるよう指導を工夫すること。その際,世界の歴史の大きな枠組みと展開を構造的に理解し,考察,表現できるようにすることに指導の重点を置き,個別の事象のみの理解にとどまることのないように留意すること。

   イ 歴史に関わる諸事象については,地理的条件と関連付けて扱うとともに,特定の時間やその推移及び特定の空間やその広がりの中で生起することを踏まえ,時間的・空間的な比較や関連付けなどにより捉えられるよう指導を工夫すること。

   ウ 年表や地図,その他の資料を積極的に活用し,文化遺産,博物館やその他の資料館などの施設を調査・見学するなど,具体的に学ぶよう指導を工夫すること。その際,歴史に関わる諸資料を整理・保存することの意味や意義に気付くようにすること。また,科目の内容に関係する専門家や関係諸機関などとの円滑な連携・協働を図り,社会との関わりを意識した指導を工夫すること。

   エ 活用する資料の選択に際しては,生徒の興味・関心,学校や地域の実態などに十分配慮して行うこと。

   オ 近現代史の指導に当たっては,客観的かつ公正な資料に基づいて,事実の正確な理解に導くとともに,多面的・多角的に考察し公正に判断する能力を育成すること。その際,核兵器などの脅威に着目させ,戦争や紛争などを防止し,平和で民主的な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識するよう指導を工夫すること。

   カ 近現代史の指導に当たっては,「歴史総合」の学習の成果を踏まえ,より発展的に学習できるよう留意すること。

  (2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

ア 内容のA,B,C,D及びEについては,この順序で取り扱うものとし,A,B,C及びD並びにEの(1)から(3)までの学習をすることにより,Eの(4)の学習が充実するように年間指導計画を作成すること。また,「歴史総合」で学習した歴史の学び方を活用すること。

イ 内容のAについては,この科目の導入としての位置付けを踏まえ,生徒が現在と異なる過去や現在につながる過去に触れ,世界史学習の意味や意義に気付くようにすること。

 (1)については,地球,生命,人類の誕生などの歴史は,それぞれ異なる時間の尺度をもっていることに触れること。

 (2)については,日常生活に見る世界の歴史に関わる具体的な事例を取り上げ,世界史学習への興味・関心をもたせるよう指導を工夫すること。

   ウ 内容のBについては,自然環境と人類との活動の関わりの中で,歴史的に形成された諸地域の生活,社会,文化,宗教の多様性に気付くようにすること。また,遺物や碑文,歴史書,年表や地図などの資料から適切なものを取り上げること。

 (1)については,生徒の学習意欲を喚起する具体的な事例を取り上げ,(2)及び(3)の学習内容への課題意識やそれらの学習への見通しをもたせるよう指導を工夫すること。また,観点を踏まえることで,諸地域の歴史的特質を構造的に捉えることができることに気付くようにすること。

 (2)については,自然環境が人類の活動に与える影響や,人類が自然環境に積極的に働きかけた具体的な事例を取り上げ,自然環境と人類の活動との相互の関係を地理的視野から触れること。

 (3)については,国家と宗教の関係や,文化や宗教が人々の暮らしに与えた影響,異なる宗教の共存に気付くようにすること。また,日本の動向も視野に入れて,日本と他のアジア諸国との比較や関係についても触れること。

   エ 内容のCについては,諸地域の交流の広がりとともに再編が進む中で,地球規模で諸地域がつながり始めたことに気付くようにすること。また,日本の動向も視野に入れて,日本と他の国々との比較や関係についても触れること。なお,遺物や碑文,旅行記や歴史書,年表や地図などの資料から適切なものを取り上げること。

 (1)については,生徒の学習意欲を喚起する具体的な事例を取り上げ,(2)及び(3)の学習内容への課題意識やそれらの学習への見通しをもたせるよう指導を工夫すること。また,観点を踏まえることで,諸地域の交流・再編を構造的に捉えることができることに気付くようにすること。

 (2)については,人,物産,情報などの具体的な事例を取り上げ,諸地域の交流が海域と内陸の交易ネットワークの形成により活性化したことに気付くようにすること。

 (3)については,アジアとヨーロッパにおいて特色ある社会構成や文化をもつ諸国家が形成されたことに気付くようにすること。

オ 内容のDについては,諸地域の結合の進展とともに変容が進む中で,地球規模で諸地域のつながりが広まり始めたことに気付くようにすること。また,日本の動向も視野に入れて,日本と他の国々との比較や関係についても触れること。なお,公文書や手紙・日記,歴史書,芸術作品や風刺画,写真や映像,統計,年表や地図などの資料から適切なものを取り上げること。

 (1)については,生徒の学習意欲を喚起する具体的な事例を取り上げ,(2)(3)及び(4)の学習内容への課題意識やそれらの学習への見通しをもたせるよう指導を工夫すること。また,観点を踏まえることで,諸地域の結合・変容を構造的に捉えることができることに気付くようにすること。

 (2)については,諸地域が政治的,経済的に緊密な関係を持ち始めた19世紀の世界の一体化の特徴に触れること。

 (3)については,19世紀末に世界経済の構造が大きく変容し,第一次世界大戦を経てこれまでのヨーロッパ中心の国際秩序の見直しが図られたことに気付くようにすること。

 (4)については,自由主義経済の危機により,資本主義諸国では国家による経済への関与が積極的に進められるようになり,そのことが,第二次世界大戦を経て,福祉国家体制の成立の契機となったことに気付くようにすること。また,第二次世界大戦を契機とした欧米諸国の覇権の推移に触れるとともに,Eとのつながりに留意すること。

   カ 内容のEについては,この科目の学習全体を視野に入れた(4)の主題を探究する活動が充実するよう(1)(2)及び(3)の主題を設定し,多元的な相互依存関係を深める現代世界の特質を考察できるよう指導を工夫すること。

 (1)については,平和で民主的な世界を目指す多様な行動主体に気付くようにすること。

 (2)については,経済格差の是正を目指す多様な行動主体に気付くようにすること。

 (3)については,欧米などの動向のみを取り上げることのないよう留意し,持続可能な社会の実現に向け,科学技術における知識の在り方について,人文科学や社会科学等の知識との学際的な連携が求められていることに気付くようにすること。

 (4)については,この科目のまとめとして位置付けること。その際,この科目の学習を振り返り,よりよい社会を展望できるようにすること。また,①から③までについては,相互につながりをもっていることに気付くようにすること。

 

第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

 

 1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

  (1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,科目の特質に応じた見方・考え方を働かせ,社会的事象の意味や意義などを考察し,概念などに関する知識を獲得したり,社会との関わりを意識した課題を追究したり解決したりする活動の充実を図ること。

  (2) 地理歴史科の目標を達成するため,公民科などとの関連を図るとともに,地理歴史科に属する科目相互の関連に留意しながら,全体としてのまとまりを工夫し,特定の事項だけに指導が偏らないようにすること。

  (3) 各科目の履修については,全ての生徒に履修させる科目である「地理総合」を履修した後に選択科目である「地理探究」を,同じく全ての生徒に履修させる科目である「歴史総合」を履修した後に選択科目である「日本史探究」,「世界史探究」を履修できるという,この教科の基本的な構造に留意し,各学校で創意工夫して適切な指導計画を作成すること。

  (4) 障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

  (1) 社会的な見方・考え方を働かせることをより一層重視する観点に立って,社会的事象の意味や意義,事象の特色や事象間の関連,社会に見られる課題などについて,考察したことや構想したことを論理的に説明したり,立場や根拠を明確にして議論したりするなどの言語活動に関わる学習を一層重視すること。

  (2) 調査や諸資料から,社会的事象に関する様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに,作業的で具体的な体験を伴う学習の充実を図るようにすること。その際,地図や年表を読んだり作成したり,現代社会の諸課題を捉え,多面的・多角的に考察,構想するに当たっては,関連する各種の統計,年鑑,白書,画像,新聞,読み物,その他の資料の出典などを確認し,その信頼性を踏まえつつ適切に活用したり,観察や調査などの過程と結果を整理し報告書にまとめ,発表したりするなどの活動を取り入れるようにすること。

  (3) 社会的事象については,生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示するよう配慮し,多様な見解のある事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,有益適切な教材に基づいて指導するとともに,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いにより,生徒が多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意すること。

  (4) 情報の収集,処理や発表などに当たっては,学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用し,指導に生かすことで,生徒が主体的に学習に取り組めるようにすること。その際,課題の追究や解決の見通しをもって生徒が主体的に情報手段を活用できるようにするとともに,情報モラルの指導にも留意すること。

 3 内容の指導に当たっては,教育基本法第14条及び第15条の規定に基づき,適切に行うよう特に慎重に配慮して,政治及び宗教に関する教育を行うものとする。