第5章 特別活動

 

第1 目 標

 集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力を育成することを目指す。

 (1)多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。

 (2)集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。

 (3)自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,人間としての生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。

 

第2 各活動・学校行事の目標及び内容

 

 〔学級活動〕

1 目 標

  学級や学校での生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成し,役割を分担して協力して実践したり,学級での話合いを生かして自己の課題の解決及び将来の生き方を描くために意思決定して実践したりすることに,自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,全ての学年において,次の各活動を通して,それぞれの活動の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1)学級や学校における生活づくりへの参画

  ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決

    学級や学校における生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図り,実践すること。

  イ 学級内の組織づくりや役割の自覚

    学級生活の充実や向上のため,生徒が主体的に組織をつくり,役割を自覚しながら仕事を分担して,協力し合い実践すること。

  ウ 学校における多様な集団の生活の向上

    生徒会など学級の枠を超えた多様な集団における活動や学校行事を通して学校生活の向上を図るため,学級としての提案や取組を話し合って決めること。

 (2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全

  ア 自他の個性の理解と尊重,よりよい人間関係の形成

    自他の個性を理解して尊重し,互いのよさや可能性を発揮しながらよりよい集団生活をつくること。

  イ 男女相互の理解と協力

    男女相互について理解するとともに,共に協力し尊重し合い,充実した生活づくりに参画すること。

  ウ 思春期の不安や悩みの解決,性的な発達への対応

    心や体に関する正しい理解を基に,適切な行動をとり,悩みや不安に向き合い乗り越えようとすること。

  エ 心身ともに健康で安全な生活態度や習慣の形成

    節度ある生活を送るなど現在及び生涯にわたって心身の健康を保持増進することや,事件や事故,災害等から身を守り安全に行動すること。

  オ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

    給食の時間を中心としながら,成長や健康管理を意識するなど,望ましい食習慣の形成を図るとともに,食事を通して人間関係をよりよくすること。

 (3)一人一人のキャリア形成と自己実現

  ア 社会生活,職業生活との接続を踏まえた主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用

    現在及び将来の学習と自己実現とのつながりを考えたり,自主的に学習する場としての学校図書館等を活用したりしながら,学ぶことと働くことの意義を意識して学習の見通しを立て,振り返ること。

  イ 社会参画意識の醸成や勤労観・職業観の形成

    社会の一員としての自覚や責任をもち,社会生活を営む上で必要なマナーやルール,働くことや社会に貢献することについて考えて行動すること。

  ウ 主体的な進路の選択と将来設計

    目標をもって,生き方や進路に関する適切な情報を収集・整理し,自己の個性や興味・関心と照らして考えること。

 

3 内容の取扱い

 (1)2の(1)の指導に当たっては,集団としての意見をまとめる話合い活動など小学校からの積み重ねや経験を生かし,それらを発展させることができるよう工夫すること。

 (2)2の(3) の指導に当たっては,学校,家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て,学んだことを振り返りながら,新たな学習や生活への意欲につなげたり,将来の生き方を考えたりする活動を行うこと。その際,生徒が活動を記録し蓄積する教材等を活用すること。

 

 〔生徒会活動〕

1 目 標

  異年齢の生徒同士で協力し,学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向けて,計画を立て役割を分担し,協力して運営することに自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,学校の全生徒をもって組織する生徒会において,次の各活動を通して,それぞれの活動の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1)生徒会の組織づくりと生徒会活動の計画や運営

    生徒が主体的に組織をつくり,役割を分担し,計画を立て,学校生活の課題を見いだし解決するために話し合い,合意形成を図り実践すること。

 (2)学校行事への協力

    学校行事の特質に応じて,生徒会の組織を活用して,計画の一部を担当したり,運営に主体的に協力したりすること。

 (3)ボランティア活動などの社会参画

    地域や社会の課題を見いだし,具体的な対策を考え,実践し,地域や社会に参画できるようにすること。

 

 〔学校行事〕

1 目 標

  全校又は学年の生徒で協力し,よりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精神を養いながら,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,全ての学年において,全校又は学年を単位として,次の各行事において,学校生活に秩序と変化を与え,学校生活の充実と発展に資する体験的な活動を行うことを通して,それぞれの学校行事の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1)儀式的行事

    学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるようにすること。

 (2)文化的行事

    平素の学習活動の成果を発表し,自己の向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするようにすること。

 (3)健康安全・体育的行事

    心身の健全な発達や健康の保持増進,事件や事故,災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得,運動に親しむ態度の育成,責任感や連帯感の涵(かん)養,体力の向上などに資するようにすること。

 (4)旅行・集団宿泊的行事

    平素と異なる生活環境にあって,見聞を広め,自然や文化などに親しむとともに,よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにすること。

 (5)勤労生産・奉仕的行事

    勤労の尊さや生産の喜びを体得し,職場体験活動などの勤労観・職業観に関わる啓発的な体験が得られるようにするとともに,共に助け合って生きることの喜びを体得し,ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるようにすること。

 

3 内容の取扱い

(1)   生徒や学校,地域の実態に応じて,2に示す行事の種類ごとに,行事及びその内容を重点化するとともに,各行事の趣旨を生かした上で,行事間の関連や統合を図るなど精選して実施すること。また,実施に当たっては,自然体験や社会体験などの体験活動を充実するとともに,体験活動を通して気付いたことなどを振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの事後の活動を充実すること。

(2)    

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

 (1)特別活動の各活動及び学校行事を見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,よりよい人間関係の形成,よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己実現に資するよう,生徒が集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組む中で,互いのよさや個性,多様な考えを認め合い,等しく合意形成に関わり役割を担うようにすることを重視すること。

 (2)各学校においては特別活動の全体計画や各活動及び学校行事の年間指導計画を作成すること。その際,学校の創意工夫を生かし,学級や学校,地域の実態,生徒の発達の段階などを考慮するとともに,第2に示す内容相互及び各教科,道徳科,総合的な学習の時間などの指導との関連を図り,生徒による自主的,実践的な活動が助長されるようにすること。また,家庭や地域の人々との連携,社会教育施設等の活用などを工夫すること。

 (3)学級活動における生徒の自発的,自治的な活動を中心として,各活動と学校行事を相互に関連付けながら,個々の生徒についての理解を深め,教師と生徒,生徒相互の信頼関係を育み,学級経営の充実を図ること。その際,特に,いじめの未然防止等を含めた生徒指導との関連を図るようにすること。

 (4)障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 (5)第1章総則の第1の2の (2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,特別活動の特質に応じて適切な指導をすること。

2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

 (1)学級活動及び生徒会活動の指導については,指導内容の特質に応じて,教師の適切な指導の下に,生徒の自発的,自治的な活動が効果的に展開されるようにすること。その際,よりよい生活を築くために自分たちできまりをつくって守る活動などを充実するよう工夫すること。

 (2)生徒及び学校の実態並びに第1章総則の第6の2に示す道徳教育の重点などを踏まえ,各学年において取り上げる指導内容の重点化を図るとともに,必要に応じて,内容間の関連や統合を図ったり,他の内容を加えたりすることができること。

 (3)学校生活への適応や人間関係の形成,進路の選択などについては,主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと,個々の生徒の多様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリング(教育相談を含む。)の双方の趣旨を踏まえて指導を行うこと。特に入学当初においては,個々の生徒が学校生活に適応するとともに,希望や目標をもって生活をできるよう工夫すること。あわせて,生徒の家庭との連絡を密にすること。

 (4)異年齢集団による交流を重視するとともに,幼児,高齢者,障害のある人々などとの交流や対話,障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を通して,協働することや,他者の役に立ったり社会に貢献したりすることの喜びを得られる活動を充実すること。

3 入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚すとともに,国歌を斉唱すよう指導すものとする。