第9節 外国語
第1 目 標
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを理解するとともに,これらの知識を,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けるようにする。
(2)コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。
(3)外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。
第2 各言語の目標及び内容等
英 語
1 目 標
英語学習の特質を踏まえ,以下に示す,聞くこと,読むこと,話すこと[やり取り],話すこと[発表],書くことの五つの領域別に設定する目標の実現を目指した指導を通して,第1の(1)及び(2)に示す資質・能力を一体的に育成するとともに,その過程を通して,第1の(3)に示す資質・能力を育成する。
(1)聞くこと
ア はっきりと話されれば,日常的な話題について,必要な情報を聞き取ることができるようにする。
イ はっきりと話されれば,日常的な話題について,話の概要を捉えることができるようにする。
ウ はっきりと話されれば,社会的な話題について,短い説明の要点を捉えることができるようにする。
(2)読むこと
ア 日常的な話題について,簡単な語句や文で書かれたものから必要な情報を読み取ることができるようにする。
イ 日常的な話題について,簡単な語句や文で書かれた短い文章の概要を捉えることができるようにする。
ウ 社会的な話題について,簡単な語句や文で書かれた短い文章の要点を捉えることができるようにする。
(3)話すこと[やり取り]
ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする。
イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いて伝えたり,相手からの質問に答えたりすることができるようにする。
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて述べ合うことができるようにする。
(4)話すこと[発表]
ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて即興で話すことができるようにする。
イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある内容を話すことができるようにする。
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて話すことができるようにする。
(5)書くこと
ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて正確に書くことができるようにする。
イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある文章を書くことができるようにする。
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて書くことができるようにする。
2 内 容
〔知識及び技能〕
(1)英語の特徴やきまりに関する事項
実際に英語を用いた言語活動を通して,小学校学習指導要領第2章第10節外国語第2の2の(1)及び次に示す言語材料のうち,1に示す五つの領域別の目標を達成するのにふさわしいものについて理解するとともに,言語材料と言語活動とを効果的に関連付け,実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けることができるよう指導する。
ア 音声
次に示す事項について取り扱うこと。
(ア)現代の標準的な発音
(イ)語と語の連結による音の変化
(ウ)語や句,文における基本的な強勢
(エ)文における基本的なイントネーション
(オ)文における基本的な区切り
イ 符号
感嘆符,引用符などの符号
ウ 語,連語及び慣用表現
(ア)1に示す五つの領域別の目標を達成するために必要となる,小学校で学習した語に1600〜1800語程度の新語を加えた語
(イ)連語のうち,活用頻度の高いもの
(ウ)慣用表現のうち,活用頻度の高いもの
エ 文,文構造及び文法事項
小学校学習指導要領第2章第10節外国語第2の2の(1)のエ及び次に示す事項について,意味のある文脈でのコミュニケーションの中で繰り返し触れることを通して活用すること。
(ア)文
a 重文,複文
b 疑問文のうち,助動詞(may,willなど)で始まるものやorを含むもの,疑問詞(which,whose)で始まるもの
c 感嘆文のうち基本的なもの
(イ)文構造
a [主語+動詞+補語]のうち,
b [主語+動詞+目的語]のうち,
c [主語+動詞+間接目的語+直接目的語]のうち,
(b) 主語+動詞+間接目的語+how(など)to不定詞
d [主語+動詞+目的語+補語]のうち,
(b) 主語+動詞+目的語+原形不定詞
e その他
(a) There+be動詞+〜
(b) It+be動詞+〜(+for〜)+to不定詞
(c) 主語+tell,wantなど+目的語+to不定詞
(d) 主語+be動詞+形容詞+thatで始まる節
(ウ)文法事項
a 代名詞
(a) 人称や指示,疑問,数量を表すもの
(b) 関係代名詞のうち,主格のthat,which,who,目的格のthat,whichの制限的用法
b 接続詞
c 助動詞
d 前置詞
e 動詞の時制及び相など
現在形や過去形,現在進行形,過去進行形,現在完了形,現在完了進行形,助動詞などを用いた未来表現
f 形容詞や副詞を用いた比較表現
g to不定詞
h 動名詞
i 現在分詞や過去分詞の形容詞としての用法
j 受け身
k 仮定法のうち基本的なもの
〔思考力,判断力,表現力等〕
(2)情報を整理しながら考えなどを形成し,英語で表現したり,伝え合ったりすることに関する事項
具体的な課題等を設定し,コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,これらを論理的に表現することを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 日常的な話題や社会的な話題について,英語を聞いたり読んだりして必要な情報や考えなどを捉えること。
イ 日常的な話題や社会的な話題について,英語を聞いたり読んだりして得られた情報や表現を,選択したり抽出したりするなどして活用し,話したり書いたりして事実や自分の考え,気持ちなどを表現すること。
ウ 日常的な話題や社会的な話題について,伝える内容を整理し,英語で話したり書いたりして互いに事実や自分の考え,気持ちなどを伝え合うこと。
(3)言語活動及び言語の働きに関する事項
① 言語活動に関する事項
(2)に示す事項については, に示す事項を活用して,例えば,次のような言語活動を通して指導する。
ア 小学校学習指導要領第2章第10節外国語の第2の2のに示す言語活動のうち,小学校における学習内容の定着を図るために必要なもの。
イ 聞くこと
(ア) 日常的な話題について,自然な口調で話される英語を聞いて,話し手の意向を正確に把握する活動。
(イ) 店や公共交通機関などで用いられる簡単なアナウンスなどから,自分が必要とする情報を聞き取る活動。
(ウ) 友達からの招待など,身近な事柄に関する簡単なメッセージを聞いて,その内容を把握し,適切に応答する活動。
(エ) 友達や家族,学校生活などの日常的な話題や社会的な話題に関する会話や説明などを聞いて,概要や要点を把握する活動。また,その内容を英語で説明する活動。
ウ 読むこと
(ア) 書かれた内容や文章の構成を考えながら黙読したり,その内容を表現するよう音読したりする活動。
(イ) 日常的な話題について,簡単な表現が用いられている広告やパンフレット,予定表,手紙,電子メール,短い文章などから,自分が必要とする情報を読み取る活動。
(ウ) 簡単な語句や文で書かれた日常的な話題に関する短い説明やエッセイ,物語などを読んで概要を把握する活動。
(エ) 簡単な語句や文で書かれた社会的な話題に関する説明などを読んで,イラストや写真,図表なども参考にしながら,要点を把握する活動。また,その内容に対する賛否や自分の考えを述べる活動。
エ 話すこと[やり取り]
(ア) 関心のある事柄について,相手からの質問に対し,その場で適切に応答したり,関連する質問をしたりして,互いに会話を継続する活動。
(イ) 日常的な話題について,伝えようとする内容を整理し,自分で作成したメモなどを活用しながら相手と口頭で伝え合う活動。
(ウ) 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことから把握した内容に基づき,読み取ったことや感じたこと,考えたことなどを伝えた上で,相手からの質問に対して適切に応答したり自ら質問し返したりする活動。
オ 話すこと[発表]
(ア) 関心のある事柄について,その場で考えを整理して口頭で説明する活動。
(イ) 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどをまとめ,簡単なスピーチをする活動。
(ウ) 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことから把握した内容に基づき,自分で作成したメモなどを活用しながら口頭で要約したり,自分の考えや気持ちなどを話したりする活動。
カ 書くこと
(ア) 趣味や好き嫌いなど,自分に関する基本的な情報を語句や文で書く活動。
(イ) 簡単な手紙や電子メールの形で自分の近況などを伝える活動。
(ウ) 日常的な話題について,簡単な語句や文を用いて,出来事などを説明するまとまりのある文章を書く活動。
(エ) 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことから把握した内容に基づき,自分の考えや気持ち,その理由などを書く活動。
② 言語の働きに関する事項
言語活動を行うに当たり,主として次に示すような言語の使用場面や言語の働きを取り上げるようにする。
ア 言語の使用場面の例
(ア)生徒の身近な暮らしに関わる場面
・ 家庭での生活 ・ 学校での学習や活動
・ 地域の行事 など
(イ)特有の表現がよく使われる場面
・ 自己紹介 ・ 買物 ・ 食事
・ 道案内 ・ 旅行 ・ 電話での対応
・ 手紙や電子メールのやり取り など
イ 言語の働きの例
(ア)コミュニケーションを円滑にする
・ 話し掛ける ・ 相づちを打つ ・ 聞き直す
・ 繰り返す など
(イ)気持ちを伝える
・ 礼を言う ・ 苦情を言う ・ 褒める
・ 謝る ・ 歓迎する など
(ウ)事実・情報を伝える
・ 説明する ・ 報告する ・ 発表する
・ 描写する など
(エ)考えや意図を伝える
・ 申し出る ・ 約束する ・ 意見を言う
・ 賛成する ・ 反対する ・ 承諾する
・ 断る ・ 仮定する など
(オ)相手の行動を促す
・ 質問する ・ 依頼する ・ 招待する
・ 命令する など
3 指導計画の作成と内容の取扱い
(1)指導計画の作成に当たっては,小学校や高等学校における指導との接続に留意しながら,次の事項に配慮するものとする。
ア 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,具体的な課題等を設定し,生徒が外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせながら,コミュニケーションの目的や場面,状況などを意識して活動を行い,英語の音声や語彙,表現,文法の知識を五つの領域における実際のコミュニケーションにおいて活用する学習の充実を図ること。
イ 学年ごとの目標を適切に定め,3学年間を通じて外国語科の目標の実現を図るようにすること。
ウ 実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合うなどの言語活動を行う際は,2の(1)に示す言語材料について理解したり練習したりするための指導を必要に応じて行うこと。また,小学校第3学年から第6学年までに扱った簡単な語句や基本的な表現などの学習内容を繰り返し指導し定着を図ること。
エ 生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。
オ 言語活動で扱う題材は,生徒の興味・関心に合ったものとし,国語科や理科,音楽科など,他の教科等で学習したことを活用したり,学校行事で扱う内容と関連付けたりするなどの工夫をすること。
カ 障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。
キ 指導計画の作成や授業の実施に当たっては,ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得る等,指導体制の充実を図るとともに,指導方法の工夫を行うこと。
(2)2の内容に示す事項については,次の事項に配慮するものとする。
ア 2の(1)に示す言語材料については,平易なものから難しいものへと段階的に指導すること。また,生徒の発達の段階に応じて,聞いたり読んだりすることを通して意味を理解できるように指導すべき事項と,話したり書いたりして表現できるように指導すべき事項とがあることに留意すること。
イ 音声指導に当たっては,日本語との違いに留意しながら,発音練習などを通して2の(1)のアに示す言語材料を継続して指導するとともに,音声指導の補助として,必要に応じて発音表記を用いて指導することもできることに留意すること。また,発音と綴(つづ)りとを関連付けて指導すること。
ウ 文字指導に当たっては,生徒の学習負担にも配慮しながら筆記体を指導することもできることに留意すること。
エ 文法事項の指導に当たっては,次の事項に留意すること。
(ア)英語の特質を理解させるために,関連のある文法事項はまとめて整理するなど,効果的な指導ができるよう工夫すること。
(イ)文法はコミュニケーションを支えるものであることを踏まえ,コミュニケーションの目的を達成する上での必要性や有用性を実感させた上でその知識を活用させたり,繰り返し使用することで当該文法事項の規則性や構造などについて気付きを促したりするなど,言語活動と効果的に関連付けて指導すること。
(ウ)用語や用法の区別などの指導が中心とならないよう配慮し,実際に活用できるようにするとともに,語順や修飾関係などにおける日本語との違いに留意して指導すること。
オ 辞書の使い方に慣れ,活用できるようにすること。
カ 身近な事柄について,友達に質問をしたり質問に答えたりする力を育成するため,ペア・ワーク,グループ・ワークなどの学習形態について適宜工夫すること。その際,他者とコミュニケーションを行うことに課題がある生徒については,個々の生徒の特性に応じて指導内容や指導方法を工夫すること。
キ 生徒が身に付けるべき資質・能力や生徒の実態,教材の内容などに応じて,視聴覚教材やコンピュータ,情報通信ネットワーク,教育機器などを有効活用し,生徒の興味・関心をより高め,指導の効率化や言語活動の更なる充実を図るようにすること。
ク 各単元や各時間の指導に当たっては,コミュニケーションを行う目的,場面,状況などを明確に設定し,言語活動を通して育成すべき資質・能力を明確に示すことにより,生徒が学習の見通しを立てたり,振り返ったりすることができるようにすること。
(3)教材については,次の事項に留意するものとする。
ア 教材は,聞くこと,読むこと,話すこと[やり取り],話すこと[発表],書くことなどのコミュニケーションを図る資質・能力を総合的に育成するため,1に示す五つの領域別の目標と2に示す内容との関係について,単元など内容や時間のまとまりごとに各教材の中で明確に示すとともに,実際の言語の使用場面や言語の働きに十分配慮した題材を取り上げること。
イ 英語を使用している人々を中心とする世界の人々や日本人の日常生活,風俗習慣,物語,地理,歴史,伝統文化,自然科学などに関するものの中から,生徒の発達の段階や興味・関心に即して適切な題材を効果的に取り上げるものとし,次の観点に配慮すること。
(ア)多様な考え方に対する理解を深めさせ,公正な判断力を養い豊かな心情を育てるのに役立つこと。
(イ)我が国の文化や,英語の背景にある文化に対する関心を高め,理解を深めようとする態度を養うのに役立つこと。
(ウ)広い視野から国際理解を深め,国際社会と向き合うことが求められている我が国の一員としての自覚を高めるとともに,国際協調の精神を養うのに役立つこと。
その他の外国語
その他の外国語については,英語の1に示す五つの領域別の目標,2に示す内容及び3に示す指導計画の作成と内容の取扱いに準じて指導を行うものとする。
第3 指導計画の作成と内容の取扱い
1 外国語科においては,英語を履修させることを原則とすること。
2 第1章総則の第1の2の(2) に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,外国語科の特質に応じて適切な指導をすること。