第2節 社会

 

第1 目 標

 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

 (1)我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等に関して理解するとともに,調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 (2)社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察したり,社会に見られる課題の解決に向けて選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 (3)社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の国土や歴史に対する愛情,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

 

第2 各分野の目標及び内容

 

 〔地理的分野〕

1 目 標

  社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

 (1)我が国の国土及び世界の諸地域に関して,地域の諸事象や地域的特色を理解するとともに,調査や諸資料から地理に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 (2)地理に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を,位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域などに着目して,多面的・多角的に考察したり,地理的な課題の解決に向けて公正に選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 (3)日本や世界の地域に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の国土に対する愛情,世界の諸地域の多様な生活文化を尊重しようとすることの大切さについての自覚などを深める。

 

2 内 容

A 世界と日本の地域構成

 (1)地域構成

    次の①と②の地域構成を取り上げ,位置や分布などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

  ① 世界の地域構成   ② 日本の地域構成

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)緯度と経度,大陸と海洋の分布,主な国々の名称と位置などを基に,世界の地域構成を大観し理解すること。

   (イ)我が国の国土の位置,世界各地との時差,領域の範囲や変化とその特色などを基に,日本の地域構成を大観し理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)世界の地域構成の特色を,大陸と海洋の分布や主な国の位置,緯度や経度などに着目して多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)日本の地域構成の特色を,周辺の海洋の広がりや国土を構成する島々の位置などに着目して多面的・多角的に考察し,表現すること。

B 世界の様々な地域

 (1)世界各地の人々の生活と環境

        場所や人間と自然環境との相互依存関係などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)人々の生活は,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件から影響を受けたり,その場所の自然及び社会的条件に影響を与えたりすることを理解すること。

   (イ)世界各地における人々の生活やその変容を基に,世界の人々の生活や環境の多様性を理解すること。その際,世界の主な宗教の分布についても理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)世界各地における人々の生活の特色やその変容の理由を,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件などに着目して多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)世界の諸地域

         次の①から⑥までの各州を取り上げ,空間的相互依存作用や地域などに着目して,主題を設けて課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

  ① アジア     ② ヨーロッパ   ③ アフリカ

  ④ 北アメリカ   ⑤ 南アメリカ   ⑥ オセアニア

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)世界各地で顕在化している地球的課題は,それが見られる地域の地域的特色の影響を受けて,現れ方が異なることを理解すること。

   (イ)①から⑥までの世界の各州に暮らす人々の生活を基に,各州の地域的特色を大観し理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)①から⑥までの世界の各州において,地域で見られる地球的課題の要因や影響を,州という地域の広がりや地域内の結び付きなどに着目して,それらの地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察し,表現すること。

C 日本の様々な地域

 (1)地域調査の手法

        場所などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)観察や野外調査,文献調査を行う際の視点や方法,地理的なまとめ方の基礎を理解すること。

   (イ)地形図や主題図の読図,目的や用途に適した地図の作成などの地理的技能を身に付けること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)地域調査において,対象となる場所の特徴などに着目して,適切な主題や調査,まとめとなるように,調査の手法やその結果を多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)日本の地域的特色と地域区分

         次の①から④までの項目を取り上げ,分布や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

  ① 自然環境   ② 人口   ③ 資源・エネルギーと産業

  ④ 交通・通信

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)日本の地形や気候の特色,海洋に囲まれた日本の国土の特色,自然災害と防災への取組などを基に,日本の自然環境に関する特色を理解すること。

   (イ)少子高齢化の課題,国内の人口分布や過疎・過密問題などを基に,日本の人口に関する特色を理解すること。

   (ウ)日本の資源・エネルギー利用の現状,国内の産業の動向,環境やエネルギーに関する課題などを基に,日本の資源・エネルギーと産業に関する特色を理解すること。

   (エ)国内や日本と世界との交通・通信網の整備状況,これを活用した陸上,海上輸送などの物流や人の往来などを基に,国内各地の結び付きや日本と世界との結び付きの特色を理解すること。

   (オ)①から④までの項目に基づく地域区分を踏まえ,我が国の国土の特色を大観し理解すること。

   (カ)日本や国内地域に関する各種の主題図や資料を基に,地域区分をする技能を身に付けること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)①から④までの項目について,それぞれの地域区分を,地域の共通点や差異,分布などに着目して,多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)日本の地域的特色を,①から④までの項目に基づく地域区分などに着目して,それらを関連付けて多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (3)日本の諸地域

    次の①から⑤までの考察の仕方を基にして,空間的相互依存作用や地域などに着目して,主題を設けて課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。

  ① 自然環境を中核とした考察の仕方

  ② 人口や都市・村落を中核とした考察の仕方

  ③ 産業を中核とした考察の仕方

  ④ 交通や通信を中核とした考察の仕方

  ⑤ その他の事象を中核とした考察の仕方

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)幾つかに区分した日本のそれぞれの地域について,その地域的特色や地域の課題を理解すること。

   (イ)①から⑤までの考察の仕方で取り上げた特色ある事象と,それに関連する他の事象や,そこで生ずる課題を理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)日本の諸地域において,それぞれ①から⑤までで扱う中核となる事象の成立条件を,地域の広がりや地域内の結び付き,人々の対応などに着目して,他の事象やそこで生ずる課題と有機的に関連付けて多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (4)地域の在り方

    空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)地域の実態や課題解決のための取組を理解すること。

   (イ)地域的な課題の解決に向けて考察,構想したことを適切に説明,議論しまとめる手法について理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア)   地域の在り方を,地域の結び付きや地域の変容,持続可能性などに着目し,そこで見られる地理的な課題について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 

3 内容の取扱い

 (1)内容のA,B及びCについては,この順序で取り扱うものとし,既習の学習成果を生かすこと。

 (2)内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

  ア 世界や日本の場所や地域の特色には,一般的共通性と地方的特殊性があり,また,地域に見られる諸事象は,その地域の規模の違いによって現れ方が異なることに留意すること。

  イ 地図の読図や作図,景観写真の読み取り,地域に関する情報の収集や処理などの地理的技能を身に付けるに当たっては,系統性に留意して計画的に指導すること。その際,教科用図書「地図」を十分に活用すること。

  ウ 学習で取り上げる地域や国については,各項目間の調整を図り,一部の地域に偏ることのないようにすること。

  エ 地域の特色や変化を捉えるに当たっては,歴史的分野との連携を踏まえ,歴史的背景に留意して地域的特色を追究するよう工夫するとともに,公民的分野との関連にも配慮すること。

  オ 地域的特色を追究する過程で生物や地学的な事象などを取り上げる際には,地域的特色を捉える上で必要な範囲にとどめること。

 (3)内容のAについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,次のとおり取り扱うものとする。

   (ア)日本の地域構成を扱う際には,都道府県の名称と位置のほかに都道府県庁所在地名も取り上げること。

   (イ)「領域の範囲や変化とその特色」については,我が国の海洋国家としての特色を取り上げるとともに,竹島や北方領土が我が国の固有の領土であることなど,我が国の領域をめぐる問題も取り上げるようにすること。その際,尖閣諸島については我が国の固有の領土であり,領土問題は存在しないことも扱うこと。

   (ウ)地球儀や地図を積極的に活用し,学習全体を通して,大まかに世界地図や日本地図を描けるようにすること。

 (4)内容のBについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,世界各地の人々の生活の特色やその変容の理由と,その生活が営まれる場所の自然及び社会的条件との関係を考察するに当たって,衣食住の特色や,生活と宗教との関わりなどを取り上げるようにすること。

  イ (2)については,次のとおり取り扱うものとする。

   (ア)州ごとに設ける主題については,各州に暮らす人々の生活の様子を的確に把握できる事象を取り上げるとともに,そこで特徴的に見られる地球的課題と関連付けて取り上げること。

   (イ)取り上げる地球的課題については,地域間の共通性に気付き,我が国の国土の認識を深め,持続可能な社会づくりを考える上で効果的であるという観点から設定すること。また,州ごとに異なるものとなるようにすること。

 (5)内容のCについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,次のとおり取り扱うものとする。

   (ア)地域調査に当たっては,対象地域は学校周辺とし,主題は学校所在地の事情を踏まえて,防災,人口の偏在,産業の変容,交通の発達などの事象から適切に設定し,観察や調査を指導計画に位置付けて実施すること。なお,学習の効果を高めることができる場合には,内容のCの(3)の中の学校所在地を含む地域の学習や,Cの(4)と結び付けて扱うことができること。

   (イ)様々な資料を的確に読み取ったり,地図を有効に活用して事象を説明したりするなどの作業的な学習活動を取り入れること。また,課題の追究に当たり,例えば,防災に関わり危険を予測したり,人口の偏在に関わり人口動態を推測したりする際には,縮尺の大きな地図や統計その他の資料を含む地理空間情報を適切に取り扱い,その活用の技能を高めるようにすること。

  イ (2)については,次のとおり取り扱うものとする。

   (ア)①から④までで示した日本の地域的特色については,系統的に理解を深めるための基本的な事柄で構成すること。

   (イ)地域区分に際しては,日本の地域的特色を見いだしやすくなるようにそれぞれ適切な数で区分すること。

  ウ (3)については,次のとおり取り扱うものとする。

   (ア)日本の諸地域については,国内を幾つかの地域に区分して取り上げることとし,その地域区分は,指導の観点や学校所在地の事情などを考慮して適切に決めること。

   (イ)学習する地域ごとに①から⑤までの考察の仕方を一つ選択することとし,①から④までの考察の仕方は,少なくとも一度は取り扱うこと。また,⑤の考察の仕方は,様々な事象や事柄の中から,取り上げる地域に応じた適切なものを適宜設定すること。

   (ウ)地域の考察に当たっては,そこに暮らす人々の生活・文化,地域の伝統や歴史的な背景,地域の持続可能な社会づくりを踏まえた視点に留意すること。

  エ (4)については,次のとおり取り扱うものとする。

   (ア)取り上げる地域や課題については,各学校において具体的に地域の在り方を考察できるような,適切な規模の地域や適切な課題を取り上げること。

   (イ)学習の効果を高めることができる場合には,内容のCの(1)の学習や,Cの(3)の中の学校所在地を含む地域の学習と結び付けて扱うことができること。

   (ウ)考察,構想,表現する際には,学習対象の地域と類似の課題が見られる他の地域と比較したり,関連付けたりするなど,具体的に学習を進めること。

   (エ)観察や調査の結果をまとめる際には,地図や諸資料を有効に活用して事象を説明したり,自分の解釈を加えて論述したり,意見交換したりするなどの学習活動を充実させること。

 

 〔歴史的分野〕

1 目 標

  社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

 (1)我が国の歴史の大きな流れを,世界の歴史を背景に,各時代の特色を踏まえて理解するとともに,諸資料から歴史に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 (2)歴史に関わる事象の意味や意義,伝統と文化の特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりなどに着目して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し複数の立場や意見を踏まえて公正に選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 (3)歴史に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の歴史に対する愛情,国民としての自覚,国家及び社会並びに文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を尊重しようとすることの大切さについての自覚などを深め,国際協調の精神を養う。

 

2 内 容

A 歴史との対話

 (1)私たちと歴史

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)年代の表し方や時代区分の意味や意義についての基本的な内容を理解すること。

   (イ)資料から歴史に関わる情報を読み取ったり,年表などにまとめたりするなどの技能を身に付けること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)時期や年代,推移,現在の私たちとのつながりなどに着目して,小学校での学習を踏まえて歴史上の人物や文化財,出来事などから適切なものを取り上げ,時代区分との関わりなどについて考察し表現すること。

 (2)身近な地域の歴史

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)自らが生活する地域や受け継がれてきた伝統や文化への関心をもって,具体的な事柄との関わりの中で,地域の歴史について調べたり,収集した情報を年表などにまとめたりするなどの技能を身に付けること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)比較や関連,時代的な背景や地域的な環境,歴史と私たちとのつながりなどに着目して,地域に残る文化財や諸資料を活用して,身近な地域の歴史的な特徴を多面的・多角的に考察し,表現すること。

B 近世までの日本とアジア

 (1)古代までの日本

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)世界の古代文明や宗教のおこり

      世界の古代文明や宗教のおこりを基に,世界の各地で文明が築かれたことを理解すること。

   (イ)日本列島における国家形成

日本列島における農耕の広まりと生活の変化や当時の人々の信仰,大和朝廷(大和政権)による統一の様子と東アジアとの関わりなどを基に,東アジアの文明の影響を受けながら我が国で国家が形成されていったことを理解すること。

   (ウ)律令(りつりょう)国家の形成

      律令(りつりょう)国家の確立に至るまでの過程,摂関政治などを基に,東アジアの文物や制度を積極的に取り入れながら国家の仕組みが整えられ,その後,天皇や貴族による政治が展開したことを理解すること。

   (エ)古代の文化と東アジアとの関わり

      仏教の伝来とその影響,仮名文字の成立などを基に,国際的な要素をもった文化が栄え,それらを基礎としながら文化の国風化が進んだことを理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)古代文明や宗教が起こった場所や環境,農耕の広まりや生産技術の発展,東アジアとの接触や交流と政治や文化の変化などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)から(エ)までについて古代の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)古代までの日本を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)中世の日本

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)武家政治の成立とユーラシアの交流

      鎌倉幕府の成立,元寇(げんこう)(モンゴル帝国の襲来)などを基に,武士が台頭して主従の結び付きや武力を背景とした武家政権が成立し,その支配が広まったこと,元寇(げんこう)がユーラシアの変化の中で起こったことを理解すること。

   (イ)武家政治の展開と東アジアの動き

      南北朝の争乱と室町幕府,日明(にちみん)貿易,琉球(りゅうきゅう)の国際的な役割などを基に,武家政治の展開とともに,東アジア世界との密接な関わりが見られたことを理解すること。

   (ウ)民衆の成長と新たな文化の形成

      農業など諸産業の発達,畿内を中心とした都市や農村における自治的な仕組みの成立,武士や民衆などの多様な文化の形成,応仁(おうにん)の乱後の社会的な変動などを基に,民衆の成長を背景とした社会や文化が生まれたことを理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)武士の政治への進出と展開,東アジアにおける交流,農業や商工業の発達などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)から(ウ)までについて中世の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)中世の日本を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (3)近世の日本

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)世界の動きと統一事業

      ヨーロッパ人来航の背景とその影響,織田(おだ)・豊臣(とよとみ)による統一事業とその当時の対外関係,武将や豪商などの生活文化の展開などを基に,近世社会の基礎がつくられたことを理解すること。

   (イ)江戸幕府の成立と対外関係

      江戸幕府の成立と大名統制,身分制と農村の様子,鎖国などの幕府の対外政策と対外関係などを基に,幕府と藩による支配が確立したことを理解すること。

   (ウ)産業の発達と町人文化

      産業や交通の発達,教育の普及と文化の広がりなどを基に,町人文化が都市を中心に形成されたことや,各地方の生活文化が生まれたことを理解すること。

   (エ)幕府の政治の展開

      社会の変動や欧米諸国の接近,幕府の政治改革,新しい学問・思想の動きなどを基に,幕府の政治が次第に行き詰まりをみせたことを理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)交易の広がりとその影響,統一政権の諸政策の目的,産業の発達と文化の担い手の変化,社会の変化と幕府の政策の変化などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)から(エ)までについて近世の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)近世の日本を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

C 近現代の日本と世界

 (1)近代の日本と世界

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)欧米における近代社会の成立とアジア諸国の動き

      欧米諸国における産業革命や市民革命,アジア諸国の動きなどを基に,欧米諸国が近代社会を成立させてアジアへ進出したことを理解すること。

   (イ)明治維新と近代国家の形成

      開国とその影響,富国強兵・殖産興業政策,文明開化の風潮などを基に,明治維新によって近代国家の基礎が整えられて,人々の生活が大きく変化したことを理解すること。

   (ウ)議会政治の始まりと国際社会との関わり

      自由民権運動,大日本帝国憲法の制定,日清(にっしん)・日露戦争,条約改正などを基に,立憲制の国家が成立して議会政治が始まるとともに,我が国の国際的な地位が向上したことを理解すること。

   (エ)近代産業の発展と近代文化の形成

      我が国の産業革命,この時期の国民生活の変化,学問・教育・科学・芸術の発展などを基に,我が国で近代産業が発展し,近代文化が形成されたことを理解すること。

   (オ)第一次世界大戦前後の国際情勢と大衆の出現

      第一次世界大戦の背景とその影響,民族運動の高まりと国際協調の動き,我が国の国民の政治的自覚の高まりと文化の大衆化などを基に,第一次世界大戦前後の国際情勢及び我が国の動きと,大戦後に国際平和への努力がなされたことを理解すること。

   (カ)第二次世界大戦と人類への惨禍

      経済の世界的な混乱と社会問題の発生,昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治・外交の動き,中国などアジア諸国との関係,欧米諸国の動き,戦時下の国民の生活などを基に,軍部の台頭から戦争までの経過と,大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)工業化の進展と政治や社会の変化,明治政府の諸改革の目的,議会政治や外交の展開,近代化がもたらした文化への影響,経済の変化の政治への影響,戦争に向かう時期の社会や生活の変化,世界の動きと我が国との関連などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)から(カ)までについて近代の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)近代の日本と世界を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)現代の日本と世界

    課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導すること。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)日本の民主化と冷戦下の国際社会

      冷戦,我が国の民主化と再建の過程,国際社会への復帰などを基に,第二次世界大戦後の諸改革の特色や世界の動きの中で新しい日本の建設が進められたことを理解すること。

   (イ)日本の経済の発展とグローバル化する世界

      高度経済成長,国際社会との関わり,冷戦の終結などを基に,我が国の経済や科学技術の発展によって国民の生活が向上し,国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことを理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)諸改革の展開と国際社会の変化,政治の展開と国民生活の変化などに着目して,事象を相互に関連付けるなどして,アの(ア)及び(イ)について現代の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)現代の日本と世界を大観して,時代の特色を多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (ウ)これまでの学習を踏まえ,歴史と私たちとのつながり,現在と未来の日本や世界の在り方について,課題意識をもって多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 

3 内容の取扱い

 (1)内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

  ア 生徒の発達の段階を考慮して,各時代の特色や時代の転換に関係する基礎的・基本的な歴史に関わる事象を重点的に選んで指導内容を構成すること。

  イ 調査や諸資料から歴史に関わる事象についての様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習を重視すること。その際,年表を活用した読み取りやまとめ,文献,図版などの多様な資料,地図などの活用を十分に行うこと。

  ウ 歴史に関わる事象の意味・意義や特色,事象間の関連を説明したり,課題を設けて追究したり,意見交換したりするなどの学習を重視して,思考力,判断力,表現力等を養うとともに,学習内容の確かな理解と定着を図ること。

  エ 各時代の文化については,代表的な事例を取り上げてその特色を考察させるようにすること。

  オ 歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ,我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深く関わっていることを考察させるようにすること。その際,歴史に見られる文化や生活の多様性に気付かせること。

  カ 国家及び社会並びに文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産について,生徒の興味・関心を育てる指導に努めるとともに,それらの時代的背景や地域性などと関連付けて考察させるようにすること。その際,身近な地域の歴史上の人物と文化遺産を取り上げることにも留意すること。

  キ 歴史に関わる事象の指導に当たっては,地理的分野との連携を踏まえ,地理的条件にも着目して取り扱うよう工夫するとともに,公民的分野との関連にも配慮すること。

  ク 日本人の生活や生活に根ざした文化については,政治の動き,社会の動き,各地域の地理的条件,身近な地域の歴史とも関連付けて指導したり,民俗学や考古学などの成果の活用や博物館,郷土資料館などの施設を見学・調査したりするなど具体的に学ぶことを通して理解させるように工夫すること。

 (2)内容のAについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,中学校の歴史学習の導入として実施することを原則とすること。小学校での学習を踏まえ,扱う内容や活動を工夫すること。「課題を追究したり解決したりする活動」については,内容のB以下の学習と関わらせて,歴史を追究するために,課題意識をもって学ぶことを促す適切な学習活動を設けるような工夫をすること。(1)のアの(ア)の「年代の表し方や時代区分」の学習については,導入における学習内容を基盤にし,内容のB以下の学習と関わらせて継続的・計画的に進めること。また,(1)のイの(ア)の「時期や年代,推移,現在の私たちとのつながり」については,内容のB以下の学習と関わらせて,事象相互の関連などにも留意し,それぞれの時代でこれらに着目して考察することが大切であることに気付かせること。

  イ (2)については,内容のB以下の学習と関わらせて計画的に実施し,地域の特性に応じた時代を取り上げるようにするとともに,人々の生活や生活に根ざした伝統や文化に着目した取扱いを工夫すること。その際,博物館,郷土資料館などの地域の施設の活用や地域の人々の協力も考慮すること。

 (3)内容のBについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)のアの(ア)の「世界の古代文明」については,人類の出現にも触れ,中国の文明をはじめとして諸文明の特徴を取り扱い,生活技術の発達,文字の使用,国家のおこりと発展などの共通する特徴に気付かせるようにすること。また,ギリシャ・ローマの文明について,政治制度など民主政治の来歴の観点から取り扱うこと。「宗教のおこり」については,仏教,キリスト教,イスラム教などを取り上げ,古代の文明とともに大きく捉えさせるようにすること。(1)のアの(イ)の「日本列島における国家形成」については,狩猟・採集を行っていた人々の生活が農耕の広まりとともに変化していったことに気付かせるようにすること。また,考古学などの成果を活用するとともに,古事記,日本書紀,風土記などにまとめられた神話・伝承などの学習を通して,当時の人々の信仰やものの見方などに気付かせるよう留意すること。「大和朝廷(大和政権)による統一の様子と東アジアとの関わり」については,古墳の広まりにも触れるとともに,大陸から移住してきた人々の我が国の社会や文化に果たした役割にも気付かせるようにすること。(1)のアの(ウ)の「律令(りつりょう)国家の確立に至るまでの過程」については,聖徳太子(しょうとくたいし)の政治,大化の改新から律令(りつりょう)国家の確立に至るまでの過程を,小学校での学習内容を活用して大きく捉えさせるようにすること。なお,「聖徳太子(しょうとくたいし)の政治」を取り上げる際には,聖徳太子(しょうとくたいし)が古事記や日本書紀においては「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」などと表記され,後に「聖徳太子(しょうとくたいし)」と称されるようになったことに触れること。

  イ (2)のアの(ア)の「ユーラシアの変化」については,モンゴル帝国の拡大によるユーラシアの結び付きについて気付かせること。(2)のアの(イ)の「琉(りゅうきゅう)球の国際的な役割」については,琉球(りゅうきゅう)の文化についても触れること。(2)のアの(ウ)の「武士や民衆などの多様な文化の形成」については,代表的な事例を取り上げてその特色を捉えさせるようにすること。その際,この時代の文化の中に現在に結び付くものが見られることに気付かせるようにすること。また,禅宗の文化的な影響についても触れること。「応仁(おうにん)の乱後の社会的な変動」については,戦国の動乱も取り扱うようにすること。

  ウ (3)のアの(ア)の「ヨーロッパ人来航の背景」については,新航路の開拓を中心に取り扱い,その背景となるアジアの交易の状況やムスリム商人などの役割と世界の結び付きに気付かせること。また,宗教改革についても触れること。「織田(おだ)・豊臣(とよとみ)による統一事業」については,検地・刀狩などの政策を取り扱うようにすること。(3)のアの(イ)の「鎖国などの幕府の対外政策と対外関係」については,オランダ,中国との交易のほか,朝鮮との交流や琉球(りゅうきゅう)の役割,北方との交易をしていたアイヌについて取り扱うようにすること。その際,アイヌの文化についても触れること。「幕府と藩による支配」については,その支配の下に大きな戦乱のない時期を迎えたことなどに気付かせること。(3)のアの(ウ)の「産業や交通の発達」については,身近な地域の特徴を生かすようにすること。「各地方の生活文化」については,身近な地域の事例を取り上げるように配慮し,藩校や寺子屋などによる「教育の普及」や社会的な「文化の広がり」と関連させて,現在との結び付きに気付かせるようにすること。(3)のアの(エ)の「幕府の政治改革」については,百姓一揆(いっき)などに結び付く農村の変化や商業の発達などへの対応という観点から,代表的な事例を取り上げるようにすること。

 (4)内容のCについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)のアの(ア)の「市民革命」については,政治体制の変化や人権思想の発達や広がり,現代の政治とのつながりなどと関連付けて,アメリカの独立,フランス革命などを扱うこと。「アジア諸国の動き」については,欧米諸国の進出に対するアジア諸国の対応と変容という観点から,代表的な事例を取り上げるようにすること。(1)のアの(イ)の「開国とその影響」については,(1)のアの(ア)の欧米諸国のアジア進出と関連付けて取り扱うようにすること。「富国強兵・殖産興業政策」については,この政策の下に新政府が行った,廃藩置県,学制・兵制・税制の改革,身分制度の廃止,領土の画定などを取り扱うようにすること。その際,北方領土に触れるとともに,竹島,尖閣諸島の編入についても触れること。「明治維新」については,複雑な国際情勢の中で独立を保ち,近代国家を形成していった政府や人々の努力に気付かせるようにすること。(1)のアの(ウ)の「日清(にっしん)・日露戦争」については,この頃の大陸との関係を踏まえて取り扱うようにすること。「条約改正」については,当時の国内の社会状況や国際情勢との関わりを踏まえて,欧米諸国と対等な外交関係を樹立する過程の中から代表的な事例を取り上げるようにすること。「立憲制の国家が成立して議会政治が始まる」については,その歴史上の意義や現代の政治とのつながりに気付かせるようにすること。(1)のアの(エ)の「近代文化」については,伝統的な文化の上に欧米文化を受容して形成されたものであることに気付かせるようにすること。(1)のアの(オ)の「第一次世界大戦」については,世界に戦禍が広がった背景や,日本の参戦,ロシア革命なども取り上げて,世界の動きと我が国との関連を踏まえて取り扱うようにすること。「我が国の国民の政治的自覚の高まり」については,大正デモクラシーの時期の政党政治の発達,民主主義的な思想の普及,社会運動の展開を取り扱うようにすること。(1)のアの(カ)については,国際協調と国際平和の実現に努めることが大切であることに気付かせるようにすること。

  イ (2)のアの(ア)の「我が国の民主化と再建の過程」については,国民が苦難を乗り越えて新しい日本の建設に努力したことに気付かせるようにすること。その際,男女普通選挙の確立,日本国憲法の制定などを取り扱うこと。(2)のアの(イ)については,沖縄返還,日中国交正常化,石油危機などの節目となる歴史に関わる事象を取り扱うようにすること。また,民族や宗教をめぐる対立や地球環境問題への対応などを取り扱い,これまでの学習と関わらせて考察,構想させるようにすること。

 

 〔公民的分野〕

1 目 標

  現代社会の見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

 (1)個人の尊厳と人権の尊重の意義,特に自由・権利と責任・義務との関係を広い視野から正しく認識し,民主主義,民主政治の意義,国民の生活の向上と経済活動との関わり,現代の社会生活及び国際関係などについて,個人と社会との関わりを中心に理解を深めるとともに,諸資料から現代の社会的事象に関する情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

 (2)社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を現代の社会生活と関連付けて多面的・多角的に考察したり,現代社会に見られる課題について公正に判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

 (3)現代の社会的事象について,現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うことの大切さについての自覚などを深める。

 

2 内 容

A 私たちと現代社会

 (1)私たちが生きる現代社会と文化の特色

    位置や空間的な広がり,推移や変化などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)現代日本の特色として少子高齢化,情報化,グローバル化などが見られることについて理解すること。

   (イ)現代社会における文化の意義や影響について理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)少子高齢化,情報化,グローバル化などが現在と将来の政治,経済,国際関係に与える影響について多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)文化の継承と創造の意義について多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)現代社会を捉える枠組み

    対立と合意,効率と公正などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)現代社会の見方・考え方の基礎となる枠組みとして,対立と合意,効率と公正などについて理解すること。

   (イ)人間は本来社会的存在であることを基に,個人の尊厳と両性の本質的平等,契約の重要性やそれを守ることの意義及び個人の責任について理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)社会生活における物事の決定の仕方,契約を通した個人と社会との関係,きまりの役割について多面的・多角的に考察し,表現すること。

B 私たちと経済

 (1)市場の働きと経済

    対立と合意,効率と公正,分業と交換,希少性などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)身近な消費生活を中心に経済活動の意義について理解すること。

   (イ)市場経済の基本的な考え方について理解すること。その際,市場における価格の決まり方や資源の配分について理解すること。

   (ウ)現代の生産や金融などの仕組みや働きを理解すること。

   (エ)勤労の権利と義務,労働組合の意義及び労働基準法の精神について理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)個人や企業の経済活動における役割と責任について多面的・多角的に考察し,表現すること。

   (イ)社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善について多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)国民の生活と政府の役割

    対立と合意,効率と公正,分業と交換,希少性などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)社会資本の整備,公害の防止など環境の保全,少子高齢社会における社会保障の充実・安定化,消費者の保護について,それらの意義を理解すること。

   (イ)財政及び租税の意義,国民の納税の義務について理解すること。

  イ 国民の生活と福祉の向上を図ることに向けて,次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)市場の働きに委ねることが難しい諸問題に関して,国や地方公共団体が果たす役割について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

   (イ)財政及び租税の役割について多面的・多角的に考察し,表現すること。

C 私たちと政治

 (1)人間の尊重と日本国憲法の基本的原則

    対立と合意,効率と公正,個人の尊重と法の支配,民主主義などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)人間の尊重についての考え方を,基本的人権を中心に深め,法の意義を理解すること。

   (イ)民主的な社会生活を営むためには,法に基づく政治が大切であることを理解すること。

   (ウ)日本国憲法が基本的人権の尊重,国民主権及び平和主義を基本的原則としていることについて理解すること。

   (エ)日本国及び日本国民統合の象徴としての天皇の地位と天皇の国事に関する行為について理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)我が国の政治が日本国憲法に基づいて行われていることの意義について多面的・多角的に考察し,表現すること。

 (2)民主政治と政治参加

    対立と合意,効率と公正,個人の尊重と法の支配,民主主義などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)国会を中心とする我が国の民主政治の仕組みのあらましや政党の役割を理解すること。

   (イ)議会制民主主義の意義,多数決の原理とその運用の在り方について理解すること。

   (ウ)国民の権利を守り,社会の秩序を維持するために,法に基づく公正な裁判の保障があることについて理解すること。

   (エ)地方自治の基本的な考え方について理解すること。その際,地方公共団体の政治の仕組み,住民の権利や義務について理解すること。

  イ 地方自治や我が国の民主政治の発展に寄与しようとする自覚や住民としての自治意識の基礎を育成することに向けて,次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)民主政治の推進と,公正な世論の形成や選挙など国民の政治参加との関連について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

D 私たちと国際社会の諸課題

 (1)世界平和と人類の福祉の増大

    対立と合意,効率と公正,協調,持続可能性などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)世界平和の実現と人類の福祉の増大のためには,国際協調の観点から,国家間の相互の主権の尊重と協力,各国民の相互理解と協力及び国際連合をはじめとする国際機構などの役割が大切であることを理解すること。その際,領土(領海,領空を含む。),国家主権,国際連合の働きなど基本的な事項について理解すること。

   (イ)地球環境,資源・エネルギー,貧困などの課題の解決のために経済的,技術的な協力などが大切であることを理解すること。

  イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

   (ア)日本国憲法の平和主義を基に,我が国の安全と防衛,国際貢献を含む国際社会における我が国の役割について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。

 (2)よりよい社会を目指して

    持続可能な社会を形成することに向けて,社会的な見方・考え方を働かせ,課題を探究する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を多面的・多角的に考察,構想し,自分の考えを説明,論述すること。

 

3 内容の取扱い

 (1)内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

  ア 地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに,これらの分野で育成された資質・能力が,更に高まり発展するようにすること。また,社会的事象は相互に関連し合っていることに留意し,特定の内容に偏ることなく,分野全体として見通しをもったまとまりのある学習が展開できるようにすること。

  イ 生徒が内容の基本的な意味を理解できるように配慮し,現代社会の見方・考え方を働かせ,日常の社会生活と関連付けながら具体的事例を通して,政治や経済などに関わる制度や仕組みの意義や働きについて理解を深め,多面的・多角的に考察,構想し,表現できるようにすること。

  ウ 分野全体を通して,課題の解決に向けて習得した知識を活用して,事実を基に多面的・多角的に考察,構想したことを説明したり,論拠を基に自分の意見を説明,論述させたりすることにより,思考力,判断力,表現力等を養うこと。また,考察,構想させる場合には,資料を読み取らせて解釈させたり,議論などを行って考えを深めさせたりするなどの工夫をすること。

  エ 合意形成や社会参画を視野に入れながら,取り上げた課題について構想したことを,妥当性や効果,実現可能性などを踏まえて表現できるよう指導すること。

  オ 分野の内容に関係する専門家や関係諸機関などと円滑な連携・協働を図り,社会との関わりを意識した課題を追究したり解決したりする活動を充実させること。

 (2)内容のAについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,次のとおり取り扱うものとすること。

   (ア)「情報化」については,人工知能の急速な進化などによる産業や社会の構造的な変化などと関連付けたり,災害時における防災情報の発信・活用などの具体的事例を取り上げたりすること。アの(イ)の「現代社会における文化の意義や影響」については,科学,芸術,宗教などを取り上げ,社会生活との関わりなどについて学習できるように工夫すること。

   (イ)イの(イ)の「文化の継承と創造の意義」については,我が国の伝統と文化などを取り扱うこと。

  イ (1)及び(2)については公民的分野の導入部として位置付け,(1),(2)の順で行うものとし,適切かつ十分な授業時数を配当すること。

 (3)内容のBについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,次のとおり取り扱うものとすること。

   (ア)アの(イ)の「市場における価格の決まり方や資源の配分」については,個人や企業の経済活動が様々な条件の中での選択を通して行われていることや,市場における取引が貨幣を通して行われていることなどを取り上げること。

   (イ)イの(ア)の「個人や企業の経済活動における役割と責任」については,起業について触れるとともに,経済活動や起業などを支える金融などの働きについて取り扱うこと。イの(イ)の「社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善」については,仕事と生活の調和という観点から労働保護立法についても触れること。

  イ (2)については,次のとおり取り扱うものとすること。

   (ア)アの(ア)の「消費者の保護」については,消費者の自立の支援なども含めた消費者行政を取り扱うこと。

   (イ)イの(イ)の「財政及び租税の役割」については,財源の確保と配分という観点から,財政の現状や少子高齢社会など現代社会の特色を踏まえて財政の持続可能性と関連付けて考察し,表現させること。

 (4)内容のCについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (2)のアの(ウ)の「法に基づく公正な裁判の保障」に関連させて,裁判員制度についても触れること。

 (5)内容のDについては,次のとおり取り扱うものとする。

  ア (1)については,次のとおり取り扱うものとすること。

   (ア)アの(ア)の「国家間の相互の主権の尊重と協力」との関連で,国旗及び国歌の意義並びにそれらを相互に尊重することが国際的な儀礼であることの理解を通して,それらを尊重する態度を養うように配慮すること。また,「領土(領海,領空を含む。),国家主権」については関連させて取り扱い,我が国が,固有の領土である竹島や北方領土に関し残されている問題の平和的な手段による解決に向けて努力していることや,尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は存在していないことなどを取り上げること。「国際連合をはじめとする国際機構などの役割」については,国際連合における持続可能な開発のための取組についても触れること。

   (イ)イの(ア)の「国際社会における我が国の役割」に関連させて,核兵器などの脅威に触れ,戦争を防止し,世界平和を確立するための熱意と協力の態度を育成するように配慮すること。また,国際社会における文化や宗教の多様性について取り上げること。

  イ (2)については,身近な地域や我が国の取組との関連性に着目させ,世界的な視野と地域的な視点に立って探究させること。また,社会科のまとめとして位置付け,適切かつ十分な授業時数を配当すること。

 

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

 (1)単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,分野の特質に応じた見方・考え方を働かせ,社会的事象の意味や意義などを考察し,概念などに関する知識を獲得したり,社会との関わりを意識した課題を追究したり解決したりする活動の充実を図ること。また,知識に偏り過ぎた指導にならないようにするため,基本的な事柄を厳選して指導内容を構成するとともに,各分野において,第2の内容の範囲や程度に十分配慮しつつ事柄を再構成するなどの工夫をして,基本的な内容が確実に身に付くよう指導すること。

 (2)小学校社会科の内容との関連及び各分野相互の有機的な関連を図るとともに,地理的分野及び歴史的分野の基礎の上に公民的分野の学習を展開するこの教科の基本的な構造に留意して,全体として教科の目標が達成できるようにする必要があること。

 (3)各分野の履修については,第1,第2学年を通じて地理的分野及び歴史的分野を並行して学習させることを原則とし,第3学年において歴史的分野及び公民的分野を学習させること。各分野に配当する授業時数は,地理的分野115 単位時間,歴史的分野135 単位時間,公民的分野100 単位時間とすること。これらの点に留意し,各学校で創意工夫して適切な指導計画を作成すること。

 (4)障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 (5)第1章総則の第1の2の(2) に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,社会科の特質に応じて適切な指導をすること。

2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

 (1)社会的な見方・考え方を働かせることをより一層重視する観点に立って,社会的事象の意味や意義,事象の特色や事象間の関連,社会に見られる課題などについて,考察したことや選択・判断したことを論理的に説明したり,立場や根拠を明確にして議論したりするなどの言語活動に関わる学習を一層重視すること。

 (2)情報の収集,処理や発表などに当たっては,学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用し,指導に生かすことで,生徒が主体的に調べ分かろうとして学習に取り組めるようにすること。その際,課題の追究や解決の見通しをもって生徒が主体的に情報手段を活用できるようにするとともに,情報モラルの指導にも留意すること。

 (3)調査や諸資料から,社会的事象に関する様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに,作業的で具体的な体験を伴う学習の充実を図るようにすること。その際,地図や年表を読んだり作成したり,現代社会の諸課題を捉え,多面的・多角的に考察,構想するに当たっては,関連する新聞,読み物,統計その他の資料に平素から親しみ適切に活用したり,観察や調査などの過程と結果を整理し報告書にまとめ,発表したりするなどの活動を取り入れるようにすること。

 (4)社会的事象については,生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示するよう配慮し,多様な見解のある事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,有益適切な教材に基づいて指導するとともに,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いにより,生徒が多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意すること。

3 第2の内容の指導に当たっては,教育基本法第14条及び第15条の規定に基づき,適切に行うよう特に慎重に配慮して,政治及び宗教に関する教育を行うものとする。