第6章 特別活動

 

第1 目 標

 集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力を育成することを目指す。

(1) 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。

(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。

(3) 自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,自己の生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。

 

第2 各活動・学校行事の目標及び内容

 

 〔学級活動〕

1 目 標

  学級や学校での生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成し,役割を分担して協力して実践したり,学級での話合いを生かして自己の課題の解決及び将来の生き方を描くために意思決定して実践したりすることに,自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,全ての学年において,次の各活動を通して,それぞれの活動の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1) 学級や学校における生活づくりへの参画

  ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決

    学級や学校における生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図り,実践すること。

  イ 学級内の組織づくりや役割の自覚

    学級生活の充実や向上のため,児童が主体的に組織をつくり,役割を自覚しながら仕事を分担して,協力し合い実践すること。

  ウ 学校における多様な集団の生活の向上

    児童会など学級の枠を超えた多様な集団における活動や学校行事を通して学校生活の向上を図るため,学級としての提案や取組を話し合って決めること。

 (2) 日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全

  ア 基本的な生活習慣の形成

    身の回りの整理や挨拶などの基本的な生活習慣を身に付け,節度ある生活にすること。

  イ よりよい人間関係の形成

    学級や学校の生活において互いのよさを見付け,違いを尊重し合い,仲よくしたり信頼し合ったりして生活すること。

  ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成

    現在及び生涯にわたって心身の健康を保持増進することや,事件や事故,災害等から身を守り安全に行動すること。

  エ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

    給食の時間を中心としながら,健康によい食事のとり方など,望ましい食習慣の形成を図るとともに,食事を通して人間関係をよりよくすること。

 (3) 一人一人のキャリア形成と自己実現

  ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成

    学級や学校での生活づくりに主体的に関わり,自己を生かそうとするとともに,希望や目標をもち,その実現に向けて日常の生活をよりよくしようとすること。

  イ 社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解

    清掃などの当番活動や係活動等の自己の役割を自覚して協働することの意義を理解し,社会の一員として役割を果たすために必要となることについて主体的に考えて行動すること。

  ウ 主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用

    学ぶことの意義や現在及び将来の学習と自己実現とのつながりを考えたり,自主的に学習する場としての学校図書館等を活用したりしながら,学習の見通しを立て,振り返ること。

 

3 内容の取扱い

 (1) 指導に当たっては,各学年段階で特に次の事項に配慮すること。

 〔第1学年及び第2学年〕

   話合いの進め方に沿って,自分の意見を発表したり,他者の意見をよく聞いたりして,合意形成して実践することのよさを理解すること。基本的な生活習慣や,約束やきまりを守ることの大切さを理解して行動し,生活をよくするための目標を決めて実行すること。

 〔第3学年及び第4学年〕

  理由を明確にして考えを伝えたり,自分と異なる意見も受け入れたりしながら,集団としての目標や活動内容について合意形成を図り,実践すること。自分のよさや役割を自覚し,よく考えて行動するなど節度ある生活を送ること。

 〔第5学年及び第6学年〕

  相手の思いを受け止めて聞いたり,相手の立場や考え方を理解したりして,多様な意見のよさを積極的に生かして合意形成を図り,実践すること。高い目標をもって粘り強く努力し,自他のよさを伸ばし合うようにすること。

 (2) 2の(3)の指導に当たっては,学校,家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て,学んだことを振り返りながら,新たな学習や生活への意欲につなげたり,将来の生き方を考えたりする活動を行うこと。その際,児童が活動を記録し蓄積する教材等を活用すること。

 

 〔児童会活動〕

1 目 標

   異年齢の児童同士で協力し,学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向けて,計画を立て役割を分担し,協力して運営することに自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,学校の全児童をもって組織する児童会において,次の各活動を通して,それぞれの活動の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1) 児童会の組織づくりと児童会活動の計画や運営

   児童が主体的に組織をつくり,役割を分担し,計画を立て,学校生活の課題を見いだし解決するために話し合い,合意形成を図り実践すること。

 (2) 異年齢集団による交流

   児童会が計画や運営を行う集会等の活動において,学年や学級が異なる児童と共に楽しく触れ合い,交流を図ること。

 (3) 学校行事への協力

   学校行事の特質に応じて,児童会の組織を活用して,計画の一部を担当したり,運営に協力したりすること。

 

3 内容の取扱い

(1)     児童会の計画や運営は,主として高学年の児童が行うこと。その際,学校の全児童が主体的に活動に参加できるものとなるよう配慮すること。

 

 〔クラブ活動〕

1 目 標

  異年齢の児童同士で協力し,共通の興味・関心を追求する集団活動の計画を立てて運営することに自主的,実践的に取り組むことを通して,個性の伸長を図りながら,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,主として第4学年以上の同好の児童をもって組織するクラブにおいて,次の各活動を通して,それぞれの活動の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1) クラブの組織づくりとクラブ活動の計画や運営

   児童が活動計画を立て,役割を分担し,協力して運営に当たること。

 (2) クラブを楽しむ活動

   異なる学年の児童と協力し,創意工夫を生かしながら共通の興味・関心を追求すること。

 (3) クラブの成果の発表

   活動の成果について,クラブの成員の発意・発想を生かし,協力して全校の児童や地域の人々に発表すること。

 

 〔学校行事〕

1 目 標

  全校又は学年の児童で協力し,よりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精神を養いながら,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

 

2 内 容

  1の資質・能力を育成するため,全ての学年において,全校又は学年を単位として,次の各行事において,学校生活に秩序と変化を与え,学校生活の充実と発展に資する体験的な活動を行うことを通して,それぞれの学校行事の意義及び活動を行う上で必要となることについて理解し,主体的に考えて実践できるよう指導する。

 (1) 儀式的行事

   学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるようにすること。

 (2) 文化的行事

   平素の学習活動の成果を発表し,自己の向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするようにすること。

 (3) 健康安全・体育的行事

   心身の健全な発達や健康の保持増進,事件や事故,災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得,運動に親しむ態度の育成,責任感や連帯感の涵(かん)養,体力の向上などに資するようにすること。

 (4) 遠足・集団宿泊的行事

   自然の中での集団宿泊活動などの平素と異なる生活環境にあって,見聞を広め,自然や文化などに親しむとともに,よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにすること。

 (5) 勤労生産・奉仕的行事

   勤労の尊さや生産の喜びを体得するとともに,ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるようにすること。

 

3 内容の取扱い

(1)     児童や学校,地域の実態に応じて,2に示す行事の種類ごとに,行事及びその内容を重点化するとともに,各行事の趣旨を生かした上で,行事間の関連や統合を図るなど精選して実施すること。また,実施に当たっては,自然体験や社会体験などの体験活動を充実するとともに,体験活動を通して気付いたことなどを振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの事後の活動を充実すること。

 

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 特別活動の各活動及び学校行事を見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,よりよい人間関係の形成,よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己実現に資するよう,児童が集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組む中で,互いのよさや個性,多様な考えを認め合い,等しく合意形成に関わり役割を担うようにすることを重視すること。

 (2) 各学校においては特別活動の全体計画や各活動及び学校行事の年間指導計画を作成すること。その際,学校の創意工夫を生かし,学級や学校,地域の実態,児童の発達の段階などを考慮するとともに,第2に示す内容相互及び各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間などの指導との関連を図り,児童による自主的,実践的な活動が助長されるようにすること。また,家庭や地域の人々との連携,社会教育施設等の活用などを工夫すること。

 (3) 学級活動における児童の自発的,自治的な活動を中心として,各活動と学校行事を相互に関連付けながら,個々の児童についての理解を深め,教師と児童,児童相互の信頼関係を育み,学級経営の充実を図ること。その際,特に,いじめの未然防止等を含めた生徒指導との関連を図るようにすること。

 (4) 低学年においては,第1章総則の第2の4の(1)を踏まえ,他教科等との関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにするとともに,幼稚園教育要領等に示す幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮すること。特に,小学校入学当初においては,生活科を中心とした関連的な指導や,弾力的な時間割の設定を行うなどの工夫をすること。

 (5) 障害のある児童などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 (6) 第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,特別活動の特質に応じて適切な指導をすること。

2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 学級活動,児童会活動及びクラブ活動の指導については,指導内容の特質に応じて,教師の適切な指導の下に,児童の自発的,自治的な活動が効果的に展開されるようにすること。その際,よりよい生活を築くために自分たちできまりをつくって守る活動などを充実するよう工夫すること。

 (2) 児童及び学校の実態並びに第1章総則の第6の2に示す道徳教育の重点などを踏まえ,各学年において取り上げる指導内容の重点化を図るとともに,必要に応じて,内容間の関連や統合を図ったり,他の内容を加えたりすることができること。

 (3) 学校生活への適応や人間関係の形成などについては,主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと,個々の児童の多様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリング(教育相談を含む。)の双方の趣旨を踏まえて指導を行うこと。特に入学当初や各学年のはじめにおいては,個々の児童が学校生活に適応するとともに,希望や目標をもって生活できるよう工夫すること。あわせて,児童の家庭との連絡を密にすること。

 (4) 異年齢集団による交流を重視するとともに,幼児,高齢者,障害のある人々などとの交流や対話,障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を通して,協働することや,他者の役に立ったり社会に貢献したりすることの喜びを得られる活動を充実すること。

3 入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。