第8節 家庭

 

第1 目 標

 生活の営みに係る見方・考え方を働かせ,衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して,生活をよりよくしようと工夫する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 家族や家庭,衣食住,消費や環境などについて,日常生活に必要な基礎的な理解を図るとともに,それらに係る技能を身に付けるようにする。

(2) 日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し,様々な解決方法を考え,実践を評価・改善し,考えたことを表現するなど,課題を解決する力を養う。

(3) 家庭生活を大切にする心情を育み,家族や地域の人々との関わりを考え,家族の一員として,生活をよりよくしようと工夫する実践的な態度を養う。

 

第2 各学年の内容

 

 〔第5学年及び第6学年〕

1 内 容

A 家族・家庭生活

   次の(1)から(4)までの項目について,課題をもって,家族や地域の人々と協力し,よりよい家庭生活に向けて考え,工夫する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

 (1) 自分の成長と家族・家庭生活

  ア 自分の成長を自覚し,家庭生活と家族の大切さや家庭生活が家族の協力によって営まれていることに気付くこと。

 (2) 家庭生活と仕事

  ア 家庭には,家庭生活を支える仕事があり,互いに協力し分担する必要があることや生活時間の有効な使い方について理解すること。

  イ 家庭の仕事の計画を考え,工夫すること。

 (3) 家族や地域の人々との関わり

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)家族との触れ合いや団らんの大切さについて理解すること。

   (イ)家庭生活は地域の人々との関わりで成り立っていることが分かり,地域の人々との協力が大切であることを理解すること。

  イ 家族や地域の人々とのよりよい関わりについて考え,工夫すること。

 (4) 家族・家庭生活についての課題と実践

  ア 日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し,よりよい生活を考え,計画を立てて実践できること。

B 衣食住の生活

  次の(1)から(6)までの項目について,課題をもって,健康・快適・安全で豊かな食生活,衣生活,住生活に向けて考え,工夫する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

 (1) 食事の役割

  ア 食事の役割が分かり,日常の食事の大切さと食事の仕方について理解すること。

  イ 楽しく食べるために日常の食事の仕方を考え,工夫すること。

 (2) 調理の基礎

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)調理に必要な材料の分量や手順が分かり,調理計画について理解すること。

   (イ)調理に必要な用具や食器の安全で衛生的な取扱い及び加熱用調理器具の安全な取扱いについて理解し,適切に使用できること。

   (ウ)材料に応じた洗い方,調理に適した切り方,味の付け方,盛り付け,配膳及び後片付けを理解し,適切にできること。

   (エ)材料に適したゆで方,いため方を理解し,適切にできること。

   (オ)伝統的な日常食である米飯及びみそ汁の調理の仕方を理解し,適切にできること。

  イ おいしく食べるために調理計画を考え,調理の仕方を工夫すること。

 (3) 栄養を考えた食事

  ア 次のような知識を身に付けること。

   (ア)体に必要な栄養素の種類と主な働きについて理解すること。

   (イ)食品の栄養的な特徴が分かり,料理や食品を組み合わせてとる必要があることを理解すること。

   (ウ)献立を構成する要素が分かり,1食分の献立作成の方法について理解すること。

  イ 1食分の献立について栄養のバランスを考え,工夫すること。

 (4) 衣服の着用と手入れ

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)衣服の主な働きが分かり,季節や状況に応じた日常着の快適な着方について理解すること。

   (イ)日常着の手入れが必要であることや,ボタンの付け方及び洗濯の仕方を理解し,適切にできること。

  イ 日常着の快適な着方や手入れの仕方を考え,工夫すること。

 (5) 生活を豊かにするための布を用いた製作

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)製作に必要な材料や手順が分かり,製作計画について理解すること。

   (イ)手縫いやミシン縫いによる目的に応じた縫い方及び用具の安全な取扱いについて理解し,適切にできること。

  イ 生活を豊かにするために布を用いた物の製作計画を考え,製作を工夫すること。

 (6) 快適な住まい方

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)住まいの主な働きが分かり,季節の変化に合わせた生活の大切さや住まい方について理解すること。

   (イ)住まいの整理・整頓や清掃の仕方を理解し,適切にできること。

  イ 季節の変化に合わせた住まい方,整理・整頓や清掃の仕方を考え,快適な住まい方を工夫すること。

C 消費生活・環境

  次の(1)及び(2)の項目について,課題をもって,持続可能な社会の構築に向けて身近な消費生活と環境を考え,工夫する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

 (1) 物や金銭の使い方と買物

  ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

   (ア)買物の仕組みや消費者の役割が分かり,物や金銭の大切さと計画的な使い方について理解すること。

   (イ)身近な物の選び方,買い方を理解し,購入するために必要な情報の収集・整理が適切にできること。

  イ 購入に必要な情報を活用し,身近な物の選び方,買い方を考え,工夫すること。

 (2) 環境に配慮した生活

  ア 自分の生活と身近な環境との関わりや環境に配慮した物の使い方などについて理解すること。

  イ 環境に配慮した生活について物の使い方などを考え,工夫すること。

 

2 内容の取扱い

 (1) 内容の「A家族・家庭生活」については,次のとおり取り扱うこと。

  ア (1)のアについては,AからCまでの各内容の学習と関連を図り,日常生活における様々な問題について,家族や地域の人々との協力,健康・快適・安全,持続可能な社会の構築等を視点として考え,解決に向けて工夫することが大切であることに気付かせるようにすること。

  イ (2)のイについては,内容の「B衣食住の生活」と関連を図り,衣食住に関わる仕事を具体的に実践できるよう配慮すること。

  ウ (3)については,幼児又は低学年の児童や高齢者など異なる世代の人々との関わりについても扱うこと。また,イについては,他教科等における学習との関連を図るよう配慮すること。

 (2) 内容の「B衣食住の生活」については,次のとおり取り扱うこと。

  ア 日本の伝統的な生活についても扱い,生活文化に気付くことができるよう配慮すること。

  イ (2)のアの(エ)については,ゆでる材料として青菜やじゃがいもなどを扱うこと。(オ)については,和食の基本となるだしの役割についても触れること。

  ウ (3)のアの(ア)については,五大栄養素と食品の体内での主な働きを中心に扱うこと。(ウ)については,献立を構成する要素として主食,主菜,副菜について扱うこと。

  エ 食に関する指導については,家庭科の特質に応じて,食育の充実に資するよう配慮すること。また,第4学年までの食に関する学習との関連を図ること。

  オ (5)については,日常生活で使用する物を入れる袋などの製作を扱うこと。

  カ (6)のアの(ア)については,主として暑さ・寒さ,通風・換気,採光,及び音を取り上げること。暑さ・寒さについては,(4)のアの(ア)の日常着の快適な着方と関連を図ること。

 (3) 内容の「C消費生活・環境」については,次のとおり取り扱うこと。

  ア (1)については,内容の「A家族・家庭生活」の(3),「B衣食住の生活」の(2),(5)及び(6)で扱う用具や実習材料などの身近な物を取り上げること。

  イ (1)のアの(ア)については,売買契約の基礎について触れること。

  ウ (2)については,内容の「B衣食住の生活」との関連を図り,実践的に学習できるようにすること。

 

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 題材など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,生活の営みに係る見方・考え方を働かせ,知識を生活体験等と関連付けてより深く理解するとともに,日常生活の中から問題を見いだして様々な解決方法を考え,他者と意見交流し,実践を評価・改善して,新たな課題を見いだす過程を重視した学習の充実を図ること。

 (2) 第2の内容の「A家族・家庭生活」から「C消費生活・環境」までの各項目に配当する授業時数及び各項目の履修学年については,児童や学校,地域の実態等に応じて各学校において適切に定めること。その際,「A家族・家庭生活」の(1)のアについては,第4学年までの学習を踏まえ,2学年間の学習の見通しをもたせるために,第5学年の最初に履修させるとともに,「A家族・家庭生活」,「B衣食住の生活」,「C消費生活・環境」の学習と関連させるようにすること。

 (3) 第2の内容の「A家族・家庭生活」の(4)については,実践的な活動を家庭や地域などで行うことができるよう配慮し,2学年間で一つ又は二つの課題を設定して履修させること。その際,「A家族・家庭生活」の(2)又は(3),「B衣食住の生活」,「C消費生活・環境」で学習した内容との関連を図り,課題を設定できるようにすること。

 (4) 第2の内容の「B衣食住の生活」の(2)及び(5)については,学習の効果を高めるため,2学年間にわたって取り扱い,平易なものから段階的に学習できるよう計画すること。

 (5) 題材の構成に当たっては,児童や学校,地域の実態を的確に捉えるとともに,内容相互の関連を図り,指導の効果を高めるようにすること。その際,他教科等との関連を明確にするとともに,中学校の学習を見据え,系統的に指導ができるようにすること。

 (6) 障害のある児童などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 (7) 第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,家庭科の特質に応じて適切な指導をすること。

2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 指導に当たっては,衣食住など生活の中の様々な言葉を実感を伴って理解する学習活動や,自分の生活における課題を解決するために言葉や図表などを用いて生活をよりよくする方法を考えたり,説明したりするなどの学習活動の充実を図ること。

 (2) 指導に当たっては,コンピュータや情報通信ネットワークを積極的に活用して,実習等における情報の収集・整理や,実践結果の発表などを行うことができるように工夫すること。

 (3) 生活の自立の基礎を培う基礎的・基本的な知識及び技能を習得するために,調理や製作等の手順の根拠について考えたり,実践する喜びを味わったりするなどの実践的・体験的な活動を充実すること。

 (4) 学習内容の定着を図り,一人一人の個性を生かし伸ばすよう,児童の特性や生活体験などを把握し,技能の習得状況に応じた少人数指導や教材・教具の工夫など個に応じた指導の充実に努めること。

 (5) 家庭や地域との連携を図り,児童が身に付けた知識及び技能などを日常生活に活用できるよう配慮すること。

3 実習の指導に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 施設・設備の安全管理に配慮し,学習環境を整備するとともに,熱源や用具,機械などの取扱いに注意して事故防止の指導を徹底すること。

 (2) 服装を整え,衛生に留意して用具の手入れや保管を適切に行うこと。

 (3) 調理に用いる食品については,生の魚や肉は扱わないなど,安全・衛生に留意すること。また,食物アレルギーについても配慮すること。