第7節 図画工作

 

第1 目 標

 表現及び鑑賞の活動を通して,造形的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解するとともに,材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすることができるようにする。

(2) 造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,創造的に発想や構想をしたり,作品などに対する自分の見方や感じ方を深めたりすることができるようにする。

(3) つくりだす喜びを味わうとともに,感性を育み,楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養い,豊かな情操を培う。

 

第2 各学年の目標及び内容

 

 〔第1学年及び第2学年〕

1 目 標

 (1) 対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して気付くとともに,手や体全体の感覚などを働かせ材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすることができるようにする。

 (2) 造形的な面白さや楽しさ,表したいこと,表し方などについて考え,楽しく発想や構想をしたり,身の回りの作品などから自分の見方や感じ方を広げたりすることができるようにする。

 (3) 楽しく表現したり鑑賞したりする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しい生活を創造しようとする態度を養う。

 

2 内 容

A 表 現

 (1) 表現の活動を通して,発想や構想に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 造形遊びをする活動を通して,身近な自然物や人工の材料の形や色などを基に造形的な活動を思い付くことや,感覚や気持ちを生かしながら,どのように活動するかについて考えること。

  イ 絵や立体,工作に表す活動を通して,感じたこと,想像したことから,表したいことを見付けることや,好きな形や色を選んだり,いろいろな形や色を考えたりしながら,どのように表すかについて考えること。

 (2) 表現の活動を通して,技能に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 造形遊びをする活動を通して,身近で扱いやすい材料や用具に十分に慣れるとともに,並べたり,つないだり,積んだりするなど手や体全体の感覚などを働かせ,活動を工夫してつくること。

  イ 絵や立体,工作に表す活動を通して,身近で扱いやすい材料や用具に十分に慣れるとともに,手や体全体の感覚などを働かせ,表したいことを基に表し方を工夫して表すこと。

B 鑑 賞

 (1) 鑑賞の活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 身の回りの作品などを鑑賞する活動を通して,自分たちの作品や身近な材料などの造形的な面白さや楽しさ,表したいこと,表し方などについて,感じ取ったり考えたりし,自分の見方や感じ方を広げること。

 〔共通事項〕

 (1) 「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 自分の感覚や行為を通して,形や色などに気付くこと。

  イ 形や色などを基に,自分のイメージをもつこと。

 

 〔第3学年及び第4学年〕

1 目 標

 (1) 対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して分かるとともに,手や体全体を十分に働かせ材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすることができるようにする。

 (2) 造形的なよさや面白さ,表したいこと,表し方などについて考え,豊かに発想や構想をしたり,身近にある作品などから自分の見方や感じ方を広げたりすることができるようにする。

 (3) 進んで表現したり鑑賞したりする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養う。

 

2 内 容

A 表 現

 (1) 表現の活動を通して,発想や構想に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 造形遊びをする活動を通して,身近な材料や場所などを基に造形的な活動を思い付くことや,新しい形や色などを思い付きながら,どのように活動するかについて考えること。

  イ 絵や立体,工作に表す活動を通して,感じたこと,想像したこと,見たことから,表したいことを見付けることや,表したいことや用途などを考え,形や色,材料などを生かしながら,どのように表すかについて考えること。

 (2) 表現の活動を通して,技能に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 造形遊びをする活動を通して,材料や用具を適切に扱うとともに,前学年までの材料や用具についての経験を生かし,組み合わせたり,切ってつないだり,形を変えたりするなどして,手や体全体を十分に働かせ,活動を工夫してつくること。

  イ 絵や立体,工作に表す活動を通して,材料や用具を適切に扱うとともに,前学年までの材料や用具についての経験を生かし,手や体全体を十分に働かせ,表したいことに合わせて表し方を工夫して表すこと。

B 鑑 賞

 (1) 鑑賞の活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 身近にある作品などを鑑賞する活動を通して,自分たちの作品や身近な美術作品,製作の過程などの造形的なよさや面白さ,表したいこと,いろいろな表し方などについて,感じ取ったり考えたりし,自分の見方や感じ方を広げること。

 〔共通事項〕

 (1) 「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 自分の感覚や行為を通して,形や色などの感じが分かること。

  イ 形や色などの感じを基に,自分のイメージをもつこと。

 

 〔第5学年及び第6学年〕

1 目 標

 (1) 対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解するとともに,材料や用具を活用し,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすることができるようにする。

 (2) 造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,創造的に発想や構想をしたり,親しみのある作品などから自分の見方や感じ方を深めたりすることができるようにする。

 (3) 主体的に表現したり鑑賞したりする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養う。

 

2 内 容

A 表 現

 (1) 表現の活動を通して,発想や構想に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 造形遊びをする活動を通して,材料や場所,空間などの特徴を基に造形的な活動を思い付くことや,構成したり周囲の様子を考え合わせたりしながら,どのように活動するかについて考えること。

  イ 絵や立体,工作に表す活動を通して,感じたこと,想像したこと,見たこと,伝え合いたいことから,表したいことを見付けることや,形や色,材料の特徴,構成の美しさなどの感じ,用途などを考えながら,どのように主題を表すかについて考えること。

 (2) 表現の活動を通して,技能に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 造形遊びをする活動を通して,活動に応じて材料や用具を活用するとともに,前学年までの材料や用具についての経験や技能を総合的に生かしたり,方法などを組み合わせたりするなどして,活動を工夫してつくること。

  イ 絵や立体,工作に表す活動を通して,表現方法に応じて材料や用具を活用するとともに,前学年までの材料や用具などについての経験や技能を総合的に生かしたり,表現に適した方法などを組み合わせたりするなどして,表したいことに合わせて表し方を工夫して表すこと。

B 鑑 賞

 (1) 鑑賞の活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 親しみのある作品などを鑑賞する活動を通して,自分たちの作品,我が国や諸外国の親しみのある美術作品,生活の中の造形などの造形的なよさや美しさ,表現の意図や特徴,表し方の変化などについて,感じ取ったり考えたりし,自分の見方や感じ方を深めること。

 〔共通事項〕

 (1) 「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  ア 自分の感覚や行為を通して,形や色などの造形的な特徴を理解すること。

  イ 形や色などの造形的な特徴を基に,自分のイメージをもつこと。

 

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 題材など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,造形的な見方・考え方を働かせ,表現及び鑑賞に関する資質・能力を相互に関連させた学習の充実を図ること。

 (2) 第2の各学年の内容の「A表現」及び「B鑑賞」の指導については相互の関連を図るようにすること。ただし,「B鑑賞」の指導については,指導の効果を高めるため必要がある場合には,児童や学校の実態に応じて,独立して行うようにすること。

 (3) 第2の各学年の内容の〔共通事項〕は,表現及び鑑賞の学習において共通に必要となる資質・能力であり,「A表現」及び「B鑑賞」の指導と併せて,十分な指導が行われるよう工夫すること。

 (4) 第2の各学年の内容の「A表現」については,造形遊びをする活動では,(1)のア及び(2)のアを,絵や立体,工作に表す活動では,(1)のイ及び(2)のイを関連付けて指導すること。その際,(1)のイ及び(2)のイの指導に配当する授業時数については,工作に表すことの内容に配当する授業時数が,絵や立体に表すことの内容に配当する授業時数とおよそ等しくなるように計画すること。

 (5) 第2の各学年の内容の「A表現」の指導については,適宜共同してつくりだす活動を取り上げるようにすること。

 (6) 第2の各学年の内容の「B鑑賞」においては,自分たちの作品や美術作品などの特質を踏まえて指導すること。

 (7) 低学年においては,第1章総則の第2の4の(1)を踏まえ,他教科等との関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにするとともに,幼稚園教育要領等に示す幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮すること。特に,小学校入学当初においては,生活科を中心とした合科的・関連的な指導や,弾力的な時間割の設定を行うなどの工夫をすること。

 (8) 障害のある児童などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。

 (9) 第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,道徳科などとの関連を考慮しながら,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容について,図画工作科の特質に応じて適切な指導をすること。

2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

 (1) 児童が個性を生かして活動することができるようにするため,学習活動や表現方法などに幅をもたせるようにすること。

 (2) 各学年の「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,児童が〔共通事項〕のアとイとの関わりに気付くようにすること。

 (3) 〔共通事項〕のアの指導に当たっては,次の事項に配慮し,必要に応じて,その後の学年で繰り返し取り上げること。

  ア 第1学年及び第2学年においては,いろいろな形や色,触った感じなどを捉えること。

  イ 第3学年及び第4学年においては,形の感じ,色の感じ,それらの組合せによる感じ,色の明るさなどを捉えること。

  ウ 第5学年及び第6学年においては,動き,奥行き,バランス,色の鮮やかさなどを捉えること。

 (4) 各学年の「A表現」の指導に当たっては,活動の全過程を通して児童が実現したい思いを大切にしながら活動できるようにし,自分のよさや可能性を見いだし,楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養うようにすること。

 (5) 各活動において,互いのよさや個性などを認め尊重し合うようにすること。

 (6) 材料や用具については,次のとおり取り扱うこととし,必要に応じて,当該学年より前の学年において初歩的な形で取り上げたり,その後の学年で繰り返し取り上げたりすること。

  ア 第1学年及び第2学年においては,土,粘土,木,紙,クレヨン,パス,はさみ,のり,簡単な小刀類など身近で扱いやすいものを用いること。

  イ 第3学年及び第4学年においては,木切れ,板材,釘(くぎ),水彩絵の具,小刀,使いやすいのこぎり,金づちなどを用いること。

  ウ 第5学年及び第6学年においては,針金,糸のこぎりなどを用いること。

 (7) 各学年の「A表現」の(1)のイ及び(2)のイについては,児童や学校の実態に応じて,児童が工夫して楽しめる程度の版に表す経験や焼成する経験ができるようにすること。

 (8) 各学年の「B鑑賞」の指導に当たっては,児童や学校の実態に応じて,地域の美術館などを利用したり,連携を図ったりすること。

 (9) 各学年の「A表現」及び「B鑑賞」の指導に当たっては,思考力,判断力,表現力等を育成する観点から,〔共通事項〕に示す事項を視点として,感じたことや思ったこと,考えたことなどを,話したり聞いたり話し合ったりする,言葉で整理するなどの言語活動を充実すること。

 (10) コンピュータ,カメラなどの情報機器を利用することについては,表現や鑑賞の活動で使う用具の一つとして扱うとともに,必要性を十分に検討して利用すること。

 (11) 創造することの価値に気付き,自分たちの作品や美術作品などに表れている創造性を大切にする態度を養うようにすること。また,こうした態度を養うことが,美術文化の継承,発展,創造を支えていることについて理解する素地となるよう配慮すること。

3 造形活動で使用する材料や用具,活動場所については,安全な扱い方について指導する,事前に点検するなどして,事故防止に留意するものとする。

4 校内の適切な場所に作品を展示するなどし,平素の学校生活においてそれを鑑賞できるよう配慮するものとする。また,学校や地域の実態に応じて,校外に児童の作品を展示する機会を設けるなどするものとする。