第6章 自立活動

第1款 目標

 個々の生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う。

第2款 内容

1 健康の保持
 (1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。
 (2) 病気の状態の理解と生活管理に関すること。
 (3) 身体各部の状態の理解と養護に関すること。
 (4) 健康状態の維持・改善に関すること。

2 心理的な安定
 (1) 情緒の安定に関すること。
 (2) 状況の理解と変化への対応に関すること。
 (3) 障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること。

3 人間関係の形成
 (1) 他者とのかかわりの基礎に関すること。
 (2) 他者の意図や感情の理解に関すること。
 (3) 自己の理解と行動の調整に関すること。
 (4) 集団への参加の基礎に関すること。

4 環境の把握
 (1) 保有する感覚の活用に関すること。
 (2) 感覚や認知の特性への対応に関すること。
 (3) 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。
 (4) 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。
 (5) 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。

5 身体の動き
 (1) 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。
 (2) 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。
 (3) 日常生活に必要な基本動作に関すること。
 (4) 身体の移動能力に関すること。
 (5) 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。

6 コミュニケーション
 (1) コミュニケーションの基礎的能力に関すること。
 (2) 言語の受容と表出に関すること。
 (3) 言語の形成と活用に関すること。
 (4) コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。
 (5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること。

第3款 指導計画の作成と内容の取扱い

  1.  自立活動の指導に当たっては,個々の生徒の障害の状態や発達の段階等の的確な把握に基づき,指導の目標及び指導内容を明確にし,個別の指導計画を作成するものとする。その際,第2款に示す内容の中からそれぞれに必要とする項目を選定し,それらを相互に関連付け,具体的に指導内容を設定するものとする。
  2.  個別の指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
    (1) 個々の生徒について,障害の状態,発達や経験の程度,興味・関心,生活や学習環境などの実態を的確に把握すること。
    (2) 実態把握に基づき,長期的及び短期的な観点から指導の目標を設定し,それらを達成するために必要な指導内容を段階的に取り上げること。
    (3) 具体的に指導内容を設定する際には,以下の点を考慮すること。
     ア 生徒が興味をもって主体的に取り組み,成就感を味わうとともに自己を肯定的にとらえることができるような指導内容を取り上げること。
     イ 生徒が,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとする意欲を高めることができるような指導内容を重点的に取り上げること。
     ウ 個々の生徒の発達の進んでいる側面を更に伸ばすことによって,遅れている側面を補うことができるような指導内容も取り上げること。
     エ 個々の生徒が,活動しやすいように自ら環境を整えたり,必要に応じて周囲の人に支援を求めたりすることができるような指導内容も計画的に取り上げること。
    (4) 生徒の学習の状況や結果を適切に評価し,個別の指導計画や具体的な指導の改善に生かすよう努めること。
  3.  指導計画の作成に当たっては,各教科・科目,総合的な学習の時間及び特別活動(知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校においては,各教科,道徳,総合的な学習の時間及び特別活動)の指導と密接な関連を保つようにし,計画的,組織的に指導が行われるようにするものとする。
  4.  個々の生徒の実態に応じた具体的な指導方法を創意工夫し,意欲的な活動を促すようにするものとする。
  5.  重複障害者のうち自立活動を主として指導を行うものについては,全人的な発達を促すために必要な基本的な指導内容を,個々の生徒の実態に応じて設定し,系統的な指導が展開できるようにするものとする。
  6.  自立活動の時間における指導は,専門的な知識や技能を有する教師を中心として,全教師の協力の下に効果的に行われるようにするものとする。
  7.  生徒の障害の状態により,必要に応じて,専門の医師及びその他の専門家の指導・助言を求めるなどして,適切な指導ができるようにするものとする。