第5節 理 科
第1款目標
自然の事物・現象に対する関心や探究心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,科学的に探究する能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め,科学的な自然観を育成する。
第2款各科目
第1科学と人間生活
1目標
自然と人間生活とのかかわり及び科学技術が人間生活に果たしてきた役割について,身近な事物・現象に関する観察,実験などを通して理解させ,科学的な見方や考え方を養うとともに,科学に対する興味・関心を高める。
2内容
(1) 科学技術の発展
科学技術の発展が今日の人間生活に対してどのように貢献してきたかについて理解させる。
(2) 人間生活の中の科学
身近な自然の事物・現象及び日常生活や社会の中で利用されている科学技術を取り上げ,科学と人間生活とのかかわりについて認識を深めさせる。
ア光や熱の科学
(ア) 光の性質とその利用
光を中心とした電磁波の性質とその利用について理解すること。
(イ) 熱の性質とその利用
熱の性質,エネルギーの変換と保存及び有効利用について理解すること。
イ物質の科学
(ア) 材料とその再利用
身近な材料であるプラスチックや金属の種類,性質及び用途と資源の再利用について理解すること。
(イ) 衣料と食品
身近な衣料材料の性質や用途,食品中の主な成分の性質について理解すること。
ウ生命の科学
(ア) 生物と光
植物の生育,動物の行動及びヒトの視覚と光とのかかわりについて理解すること。
(イ) 微生物とその利用
様々な微生物の存在と生態系での働き,微生物と人間生活とのかかわりについて理解すること。
エ宇宙や地球の科学
(ア) 身近な天体と太陽系における地球
太陽や月などの身近に見られる天体と人間生活とのかかわり,太陽系における地球について理解すること。
(イ) 身近な自然景観と自然災害
身近な自然景観の成り立ちと自然災害について,太陽の放射エネルギーによる作用や地球内部のエネルギーによる変動と関連付けて理解すること。
(3) これからの科学と人間生活
自然と人間生活とのかかわり及び科学技術が人間生活に果たしてきた役割についての学習を踏まえて,これからの科学と人間生活とのかかわり方について考察させる。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア中学校理科との関連を十分考慮するとともに,科学と人間生活とのかかわりについて理解させ,観察,実験などを中心に扱い,自然や科学技術に対する興味・関心を高めること。
イ内容の(1)については,この科目の導入として位置付け,身近な事例を基に科学技術に対する興味・関心を高めるよう展開すること。
ウ内容の(2)のアからエまでについては,生徒の実態等を考慮し,それぞれ(ア)又は(イ)のいずれかを選択して扱うこと。
エ内容の(3)については,内容の(2)の学習を踏まえ,課題を適宜設けて考察させ,報告書を作成させたり発表を行う機会を設けたりすること。その際,コンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用を図ること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)については,身近な科学技術の例を取り上げ,その変遷と人間生活の変化とのかかわりを扱うこと。
イ内容の(2)のアの(ア)については,光の波としての分類や性質,電磁波の利用に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,「電磁波の利用」については,電波やX線にも触れること。(イ)については,熱量保存,仕事や電流による熱の発生,エネルギーの変換に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,「エネルギーの変換と保存」については,熱機関と永久機関に関する歴史的な事項や熱が仕事に変わる際の不可逆性にも触れること。
ウ内容の(2)のイの(ア)については,代表的なプラスチックや金属の種類,性質に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,「プラスチック」については,その成分の違い,化学構造及び燃焼にかかわる安全性にも触れること。「金属」については,製錬や腐食とその防止にも触れること。「資源の再利用」については,ガラスにも触れること。(イ) については,衣料材料として用いられる代表的な天然繊維及び合成繊維の性質,食品中の主な成分である炭水化物,タンパク質及び脂質の性質に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,「身近な衣料材料の性質」や「食品中の主な成分の性質」については,化学構造との関連にも触れること。
エ内容の(2)のウの(ア)については,光合成と光,光に対する動物の行動,ヒトの視覚に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,「植物の生育」については,成長運動,開花にも触れること。「動物の行動」については,体内時計も取り上げ,ヒトの健康と光とのかかわりにも触れること。(イ)については,様々な微生物の存在,生態系での分解者としての働き,発酵に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,「様々な微生物の存在」については,微生物の発見の歴史にも触れること。「微生物と人間生活とのかかわり」については,微生物が医薬品などの生成に利用されることにも触れること。
オ内容の(2)のエの(ア)については,太陽や月の運行と時や暦などとの関係,太陽が地球や人間生活に及ぼす影響,太陽系の天体及び太陽系の広がりや構造に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,天動説,地動説にも触れること。(イ)については,地域の自然景観,その変化と自然災害に関して,観察,実験などを中心に扱うこと。その際,自然景観が長い時間の中で変化してできたことにも触れること。「自然景観の成り立ち」については,流水の作用,地震や火山活動と関連付けて扱うこと。「自然災害」については,防災にも触れること。
カ内容の(3)については,(2)で学習した内容を踏まえ,生徒の興味・関心等に応じて,自然や科学技術に関連した事例を課題として設定し考察させること。
第2物理基礎
1目標
日常生活や社会との関連を図りながら物体の運動と様々なエネルギーへの関心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに,物理学の基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な見方や考え方を養う。
2内容
(1) 物体の運動とエネルギー
日常に起こる物体の運動を観察,実験などを通して探究し,その基本的な概念や法則を理解させ,運動とエネルギーについての基礎的な見方や考え方を身に付けさせる。
ア運動の表し方
(ア) 物理量の測定と扱い方
身近な物理現象について,物理量の測定と表し方,分析の手法を理解すること。
(イ) 運動の表し方
物体の運動の表し方について,直線運動を中心に理解すること。
(ウ) 直線運動の加速度
物体が直線上を運動する場合の加速度を理解すること。
イ様々な力とその働き
(ア) 様々な力
物体に様々な力が働くことを理解すること。
(イ) 力のつり合い
物体に働く力のつり合いを理解すること。
(ウ) 運動の法則
運動の三法則を理解すること。
(エ) 物体の落下運動
物体が落下する際の運動の特徴及び物体に働く力と運動の関係について理解すること。
ウ力学的エネルギー
(ア) 運動エネルギーと位置エネルギー
運動エネルギーと位置エネルギーについて,仕事と関連付けて理解すること。
(イ) 力学的エネルギーの保存
力学的エネルギー保存の法則を仕事と関連付けて理解すること。
エ物体の運動とエネルギーに関する探究活動
物体の運動とエネルギーに関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,物理学的に探究する能力を高めること。
(2) 様々な物理現象とエネルギーの利用
様々な物理現象を観察,実験などを通して探究し,それらの基本的な概念や法則を理解させ,物理現象とエネルギーについての基礎的な見方や考え方を身に付けさせる。
ア熱
(ア) 熱と温度
熱と温度について,原子や分子の熱運動という視点から理解すること。
(イ) 熱の利用
熱の移動及び熱と仕事の変換について理解すること。
イ波
(ア) 波の性質
波の性質について,直線状に伝わる場合を中心に理解すること。
(イ) 音と振動
気柱の共鳴,弦の振動及び音波の性質を理解すること。
ウ電気
(ア) 物質と電気抵抗
物質によって抵抗率が異なることを理解すること。
(イ) 電気の利用
交流の発生,送電及び利用について,基本的な仕組みを理解すること。
エエネルギーとその利用
(ア) エネルギーとその利用
人類が利用可能な水力,化石燃料,原子力,太陽光などを源とするエネルギーの特性や利用などについて,物理学的な視点から理解すること。
オ物理学が拓(ひら)く世界
(ア) 物理学が拓(ひら)く世界
「物理基礎」で学んだ事柄が,日常生活やそれを支えている科学技術と結び付いていることを理解すること。
カ様々な物理現象とエネルギーの利用に関する探究活動
様々な物理現象とエネルギーの利用に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,物理学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア中学校理科との関連を考慮しながら,物理学の基本的な概念の形成を図るとともに,物理学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,各項目の学習活動と関連させながら観察,実験を行い,報告書を作成させたり発表を行う機会を設けたりすること。また,その特質に応じて,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,実験による検証,実験データの分析・解釈,法則性の導出などの探究の方法を習得させるようにすること。その際,コンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用を図ること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)については,「物理基礎」の学習全体に通じる手法などを扱うこと。
イの(ア)については,摩擦力,弾性力,圧力及び浮力を扱うこと。また,空間を隔てて働く力にも定性的に触れること。(イ)については,平面内で働く力のつり合いを中心に扱うこと。(ウ)については,直線運動を中心に扱うこと。(エ)については,自由落下,鉛直投射を扱い,水平投射,斜方投射及び空気抵抗の存在にも定性的に触れること。
ウの(ア)の「位置エネルギー」については,重力による位置エネルギー,弾性力による位置エネルギーを扱うこと。(イ)については,摩擦や空気抵抗がない場合は力学的エネルギーが保存されることを中心に扱うこと。
イ内容の(2)のアの(ア)については,熱現象を微視的な視点でとらえ,原子や分子の熱運動と温度の関係を定性的に扱うこと。また,内部エネルギーや物質の三態にも触れること。
(イ)については,熱現象における不可逆性にも触れること。
イの(ア)については,作図を用いる方法を中心に扱うこと。また,定在波も扱い,縦波や横波にも触れること。(イ)については,波の反射,共振,うなりなどを扱うこと。
ウの(ア)については,金属中の電流が自由電子の流れによることも扱うこと。また,半導体や絶縁体があることにも触れること。(イ)については,交流の直流への変換や電磁波の利用にも触れること。
エの(ア)については,電気エネルギーへの変換を中心に扱うこと。「原子力」については,関連して放射線及び原子力の利用とその安全性の問題にも触れること。
オの(ア)については,日常生活や社会で利用されている科学技術の具体的事例を取り上げること。
第3物理
1目標
物理的な事物・現象に対する探究心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに,物理学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的な自然観を育成する。
2内容
(1) 様々な運動
運動とエネルギーについての基礎的な見方や考え方に基づき,物体の運動を観察,実験などを通して探究し,力と運動に関する概念や原理・法則を系統的に理解させ,それらを活用できるようにする。
ア平面内の運動と剛体のつり合い
(ア) 曲線運動の速度と加速度
平面内を運動する物体の運動について理解すること。
(イ) 斜方投射
斜方投射された物体の運動を理解すること。
(ウ) 剛体のつり合い
大きさのある物体のつり合いを理解すること。
イ運動量
(ア) 運動量と力積
運動量と力積の関係について理解すること。
(イ) 運動量の保存
物体の衝突や分裂における運動量の保存を理解すること。
(ウ) はね返り係数
衝突におけるはね返りについて理解すること。
ウ円運動と単振動
(ア) 円運動
円運動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。
(イ) 単振動
単振動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。
エ万有引力
(ア) 惑星の運動
惑星の運動に関する法則を理解すること。
(イ) 万有引力
万有引力の法則及び万有引力による物体の運動について理解すること。
オ気体分子の運動
(ア) 気体分子の運動と圧力
気体分子の運動と圧力の関係について理解すること。
(イ) 気体の内部エネルギー
気体の内部エネルギーについて,気体の分子運動と関連付けて理解すること。
(ウ) 気体の状態変化
気体の状態変化における熱,仕事及び内部エネルギーの関係を理解すること。
カ様々な運動に関する探究活動
様々な運動に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,物理学的に探究する能力を高めること。
(2) 波
水面波,音,光などの波動現象を観察,実験などを通して探究し,共通する基本的な概念や法則を系統的に理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア波の伝わり方
(ア) 波の伝わり方とその表し方
波の伝わり方とその表し方について理解すること。
(イ) 波の干渉と回折
波の干渉と回折について理解すること。
イ音
(ア) 音の干渉と回折
音の干渉と回折について理解すること。
(イ) 音のドップラー効果
音のドップラー効果について理解すること。
ウ光
(ア) 光の伝わり方
光の伝わり方について理解すること。
(イ) 光の回折と干渉
光の回折と干渉について理解すること。
エ波に関する探究活動
波に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,物理学的に探究する能力を高めること。
(3) 電気と磁気
電気や磁気に関する現象を観察,実験などを通して探究し,電気と磁気に関する基本的な概念や原理・法則を系統的に理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア電気と電流
(ア) 電荷と電界
電荷が相互に及ぼし合う力や電界の表し方を理解すること。
(イ) 電界と電位
電界と電位の関係を理解すること。
(ウ) コンデンサー
コンデンサーの性質を理解すること。
(エ) 電気回路
電気回路について理解すること。
イ電流と磁界
(ア) 電流による磁界
電流がつくる磁界の様子を理解すること。
(イ) 電流が磁界から受ける力
電流が磁界から受ける力について理解すること。
(ウ) 電磁誘導
電磁誘導と交流について,現象や法則を理解すること。
(エ) 電磁波の性質とその利用
電磁波について,性質とその利用を理解すること。
ウ電気と磁気に関する探究活動
電気や磁気に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,物理学的に探究する能力を高めること。
(4) 原子
電子,原子及び原子核に関する現象を観察,実験などを通して探究し,原子についての基本的な概念や原理・法則を理解させる。
ア電子と光
(ア) 電子
電子の電荷と質量について理解すること。
(イ) 粒子性と波動性
電子や光の粒子性と波動性について理解すること。
イ原子と原子核
(ア) 原子とスペクトル
原子の構造及びスペクトルと電子のエネルギー準位の関係について理解すること。
(イ) 原子核
原子核の構成,原子核の崩壊及び核反応について理解すること。
(ウ) 素粒子
素粒子の存在について知ること。
ウ物理学が築く未来
(ア) 物理学が築く未来
物理学の成果が様々な分野で利用され,未来を築く新しい科学技術の基盤となっていることを理解すること。
エ原子に関する探究活動
原子に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,物理学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア「物理基礎」との関連を考慮しながら,物理学の基本的な概念の形成を図るとともに,物理学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,「物理基礎」の3の(1)のイと同様に取り扱うこと。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)については,物体の平面内の運動を表す変位,速度及び加速度はベクトルで表されることを扱うこと。(イ)については,物体の水平投射や斜方投射における速度,加速度,重力の働きなどを扱うこと。また,空気の抵抗がある場合の落下運動にも触れること。(ウ)については,力のモーメントのつり合いを扱うこと。また,物体の重心にも触れること。
イの(ア)については,運動量と力積がベクトルで表されること,運動量の変化が力積に等しいことを扱うこと。(ウ)については,物体の衝突の際の力学的エネルギーの減少も扱うこと。
ウの(ア)については,等速円運動の速度,周期,角速度,向心加速度及び向心力を扱うこと。また,遠心力にも触れること。(イ)については,単振動をする物体の変位,速度,加速度及び復元力を扱うこと。「単振動」については,ばね振り子と単振り子を扱うこと。
エの(ア)については,ケプラーの法則を扱うこと。(イ)については,万有引力の位置エネルギーも扱うこと。
オの(ア)については,理想気体の状態方程式,気体分子の速さ,平均の運動エネルギーなどを扱うこと。(イ)については,理想気体を扱うこと。(ウ)については,熱力学第一法則を扱うこと。
イ内容の(2)のアの(ア)については,ホイヘンスの原理,水面波の反射・屈折及び波の式を扱うこと。(イ)については,水面波を扱うこと。
イの(イ)については,観測者と音源が同一直線上を動く場合を扱うこと。
ウの(ア)については,光の速さ,波長,反射,屈折,分散,偏光などを扱い,鏡やレンズの幾何光学的な性質については,基本的な扱いとすること。また,光は横波であることや光のスペクトルにも触れること。(イ)については,ヤングの実験,回折格子及び薄膜の干渉を扱うこと。
ウ内容の(3)のアの(ア)については,静電誘導も扱うこと。(ウ)については,コンデンサーの接続にも触れること。(エ)については,抵抗率の温度変化,内部抵抗も扱うこと。また,半導体にも触れること。
イの(ア)については,直線電流と円電流がつくる磁界を中心に扱うこと。(イ)については,ローレンツ力にも触れること。(ウ)については,電磁誘導の法則を中心に扱い,自己誘導,相互誘導及び交流の発生も扱うこと。また,交流回路の基本的な性質にも触れること。(エ) については,電気振動や電磁波の発生にも触れること。
エ内容の(4)のアの(ア)については,電子に関する歴史的な実験にも触れること。(イ)については,光電効果,電子線回折などを扱い,X線にも触れること。
イの(ア)については,水素原子の構造を中心にスペクトルと関連させて扱うこと。(イ)については,質量とエネルギーの等価性にも触れること。
ウの(ア)については,物理学の発展と科学技術の進展に対する興味を喚起するような成果を取り上げること。
第4化学基礎
1目標
日常生活や社会との関連を図りながら物質とその変化への関心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,化学的に探究する能力と態度を育てるとともに,化学の基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な見方や考え方を養う。
2内容
(1) 化学と人間生活
化学と人間生活とのかかわりについて関心を高め,化学が物質を対象とする科学であることや化学が人間生活に果たしている役割を理解させるとともに,観察,実験などを通し て物質を探究する方法の基礎を身に付けさせる。
ア化学と人間生活とのかかわり
(ア) 人間生活の中の化学
日常生活や社会を支える物質の利用とその製造の例を通して,化学に対する興味・関心を高めること。
(イ) 化学とその役割
日常生活や社会において物質が適切に使用されている例を通して,化学が果たしている役割を理解すること。
イ物質の探究
(ア) 単体・化合物・混合物
物質の分離・精製や元素の確認などの実験を通して,単体,化合物及び混合物について理解するとともに,実験における基本操作と物質を探究する方法を身に付けること。
(イ) 熱運動と物質の三態
粒子の熱運動と温度及び物質の三態変化との関係について理解すること。
ウ化学と人間生活に関する探究活動
化学と人間生活に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
(2) 物質の構成
原子の構造及び電子配置と周期律との関係を理解させる。また,物質の性質について観察,実験などを通して探究し,化学結合と物質の性質との関係を理解させ,物質について微視的な見方ができるようにする。
ア物質の構成粒子
(ア) 原子の構造
原子の構造及び陽子,中性子,電子の性質を理解すること。
(イ) 電子配置と周期表
元素の周期律及び原子の電子配置と周期表の族や周期との関係について理解すること。
イ物質と化学結合
(ア) イオンとイオン結合
イオンの生成を電子配置と関連付けて理解すること。また,イオン結合及びイオン結合でできた物質の性質を理解すること。
(イ) 金属と金属結合
金属結合及び金属の性質を理解すること。
(ウ) 分子と共有結合
共有結合を電子配置と関連付けて理解すること。また,分子からなる物質の性質を理解すること。
ウ物質の構成に関する探究活動
物質の構成に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
(3) 物質の変化
化学反応の量的関係,酸と塩基の反応及び酸化還元反応について観察,実験などを通して探究し,化学反応に関する基本的な概念や法則を理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア物質量と化学反応式
(ア) 物質量
物質量と粒子数,質量,気体の体積との関係について理解すること。
(イ) 化学反応式
化学反応式は化学反応に関与する物質とその量的関係を表すことを理解すること。
イ化学反応
(ア) 酸・塩基と中和
酸と塩基の性質及び中和反応に関与する物質の量的関係を理解すること。
(イ) 酸化と還元
酸化と還元が電子の授受によることを理解すること。また,酸化還元反応と日常生活や社会とのかかわりについて理解すること。
ウ物質の変化に関する探究活動
物質の変化に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア中学校理科との関連を考慮しながら,化学の基本的な概念の形成を図るとともに,化学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,各項目の学習活動と関連させながら観察,実験を行い,報告書を作成させたり発表を行う機会を設けたりすること。また,その特質に応じて,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,実験による検証,実験データの分析・解釈などの探究の方法を習得させるようにすること。その際,コンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用を図ること。
ウ内容の(1)のアについては,この科目の導入として位置付け,化学に対する興味・関心を高めるよう展開すること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)については,代表的な金属やプラスチックを扱うこと。その際,再利用にも触れること。(イ)については,洗剤や食品添加物など身近な例を扱うこと。その際,物質の性質や使用する量が有効性と危険性に関連していることにも触れること。
イの(ア)の「物質の分離・精製」については,ろ過,蒸留,抽出,再結晶及びクロマトグラフィーを扱うこと。「元素の確認」については,炎色反応や沈殿反応を扱うこと。(イ) については,物理変化と化学変化の違いにも触れること。「粒子の熱運動」については,気体分子のエネルギー分布と絶対温度にも触れること。
イ内容の(2)のアの(ア)については,原子番号,質量数及び同位体を扱うこと。その際放射性同位体とその利用にも触れること。(イ)の「電子配置」については,代表的な典型元素を扱うこと。「周期律」については,イオン化エネルギーの変化にも触れること。
イの(ア)については,多原子イオンも扱うこと。「イオン結合でできた物質」については,代表的なものを扱い,その用途にも触れること。(イ)については,代表的な金属を扱い,その用途にも触れること。(ウ)については,代表的な無機物質及び有機化合物を扱い,それらの用途にも触れること。また,分子の極性や配位結合にも触れるとともに,共有結合の結晶及びプラスチックなどの高分子化合物の構造にも触れること。
ウ内容の(3)のアの(ア)については,モル質量や溶液のモル濃度も扱うこと。
イの(ア)については,酸,塩基の強弱と電離度の大小との関係も扱うこと。「酸と塩基」については,水素イオン濃度とpHとの関係にも触れること。「中和反応」については,生成する塩の性質にも触れること。(イ)については,代表的な酸化剤,還元剤を扱うこと。
第5化学
1目標
化学的な事物・現象に対する探究心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,化学的に探究する能力と態度を育てるとともに,化学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的な自然観を育成する。
2内容
(1) 物質の状態と平衡
気体,液体,固体の性質を観察,実験などを通して探究し,物質の状態変化,状態間の平衡,溶解平衡及び溶液の性質について理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア物質の状態とその変化
(ア) 状態変化
物質の沸点,融点を分子間力や化学結合と関連付けて理解すること。また,状態変化に伴うエネルギーの出入り及び状態間の平衡と温度や圧力との関係について理解すること。
(イ) 気体の性質
気体の体積と圧力や温度との関係を理解すること。
(ウ) 固体の構造
結晶格子の概念及び結晶の構造を理解すること。
イ溶液と平衡
(ア) 溶解平衡
溶解の仕組みを理解すること。また,溶解度を溶解平衡と関連付けて理解すること。
(イ) 溶液とその性質
身近な現象を通して溶媒と溶液の性質の違いを理解すること。
ウ物質の状態と平衡に関する探究活動
物質の状態と平衡に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
(2) 物質の変化と平衡
化学反応に伴うエネルギーの出入り,反応速度及び化学平衡を観察,実験などを通して探究し,化学反応に関する概念や法則を理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア化学反応とエネルギー
(ア) 化学反応と熱・光
化学反応における熱及び光の発生や吸収は,反応の前後における物質のもつ化学エネルギーの差から生じることを理解すること。
(イ) 電気分解
外部から加えた電気エネルギーによって,電極で酸化還元反応が起こることを理解すること。また,その反応に関与した物質の変化量と電気量との関係を理解すること。
(ウ) 電池
電池は,酸化還元反応によって電気エネルギーを取り出す仕組みであることを理解すること。
イ化学反応と化学平衡
(ア) 反応速度
反応速度の表し方及び反応速度に影響を与える要因を理解すること。
(イ) 化学平衡とその移動
可逆反応,化学平衡及び化学平衡の移動を理解すること。
(ウ) 電離平衡
水のイオン積,pH及び弱酸や弱塩基の電離平衡について理解すること。
ウ物質の変化と平衡に関する探究活動
物質の変化と平衡に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
(3) 無機物質の性質と利用
無機物質の性質や反応を観察,実験などを通して探究し,元素の性質が周期表に基づいて整理できることを理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア無機物質
(ア) 典型元素
典型元素の単体と化合物の性質や反応を周期表と関連付けて理解すること。
(イ) 遷移元素
遷移元素の単体と化合物の性質や反応について理解すること。
イ無機物質と人間生活
(ア) 無機物質と人間生活
無機物質が,その特徴を生かして人間生活の中で利用されていることを理解すること。
ウ無機物質の性質と利用に関する探究活動
無機物質の性質と利用に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
(4) 有機化合物の性質と利用
有機化合物の性質や反応を観察,実験などを通して探究し,有機化合物の分類と特徴を理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア有機化合物
(ア) 炭化水素
脂肪族炭化水素の性質や反応を構造と関連付けて理解すること。
(イ) 官能基をもつ化合物
官能基をもつ脂肪族化合物の性質や反応について理解すること。
(ウ) 芳香族化合物
芳香族化合物の構造,性質及び反応について理解すること。
イ有機化合物と人間生活
(ア) 有機化合物と人間生活
有機化合物が,その特徴を生かして人間生活の中で利用されていることを理解すること。
ウ有機化合物の性質と利用に関する探究活動
有機化合物の性質と利用に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
(5) 高分子化合物の性質と利用
高分子化合物の性質や反応を観察,実験などを通して探究し,合成高分子化合物と天然高分子化合物の特徴を理解させるとともに,それらを日常生活や社会と関連付けて考察できるようにする。
ア高分子化合物
(ア) 合成高分子化合物
合成高分子化合物の構造,性質及び合成について理解すること。
(イ) 天然高分子化合物
天然高分子化合物の構造や性質について理解すること。
イ高分子化合物と人間生活
(ア) 高分子化合物と人間生活
高分子化合物が,その特徴を生かして人間生活の中で利用されていることを理解すること。
ウ高分子化合物の性質と利用に関する探究活動
高分子化合物の性質と利用に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,化学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア「化学基礎」との関連を考慮しながら,化学の基本的な概念の形成を図るとともに,化学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,「化学基礎」の3の(1)のイと同様に取り扱うこと。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)については,融解熱や蒸発熱を扱うこと。「状態間の平衡」については,気液平衡や蒸気圧を扱うこと。(イ)については,ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を扱うこと。その際,分子量測定にも触れること。また,混合気体,分圧の法則及び実在気体も扱うこと。(ウ)の「結晶の構造」については,体心立方格子,面心立方格子及び六方最密構造を扱うこと。また,アモルファスにも触れること。
イの(ア)については,固体及び気体の溶解度を扱うこと。(イ)については,蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下及び浸透圧を扱うこと。また,コロイド溶液も扱うこと。
イ内容の(2)のアの(ア)については,熱化学方程式やヘスの法則を扱うこと。また,結合エネルギーにも触れること。(イ)については,水溶液の電気分解を中心に扱うこと。(ウ)については,水の電気分解の逆反応を用いた電池を扱うこと。また,ダニエル電池や代表的な実用電池の反応にも触れること。
イの(ア)については,簡単な反応を扱うこと。「要因」については,濃度,温度及び触媒の有無を扱うこと。(イ)の「化学平衡の移動」については,ルシャトリエの原理を中心に扱うこと。(ウ)については,塩の加水分解や緩衝液にも触れること。
ウ内容の(3)のアの(ア)については,各族の代表的な元素の単体と化合物を扱うこと。(イ) については,クロム,マンガン,鉄,銅,銀及びそれらの化合物を扱うこと。
イの(ア)については,アで取り上げた物質のほか,人間生活に利用されている代表的な金属,セラミックスなどを扱うこと。
エ内容の(4)のアの(イ)については,アルコール,エーテル,カルボニル化合物,カルボン酸,エステルなどを取り上げ,それらの性質は炭素骨格及び官能基により特徴付けられることを扱うこと。また,光学異性体にも触れること。(ウ)については,芳香族炭化水素,フェノール類,芳香族カルボン酸,芳香族アミンなどを扱うこと。
イの(ア)については,アで取り上げた物質のほか,単糖類,二糖類,アミノ酸などを扱うこと。また,代表的な医薬品,染料,洗剤などの主な成分にも触れること。
オ内容の(5)のアの(ア)については,代表的な合成繊維及びプラスチックを扱うこと。その際,合成高分子化合物の開発の歴史にも触れること。(イ)については,繊維や食物を構成している代表的な天然高分子化合物を扱うこと。また,核酸の構造にも触れること。
イの(ア)については,高分子化合物の用途を中心に扱うこと。その際,資源の再利用にも触れること。
第6生物基礎
1目標
日常生活や社会との関連を図りながら生物や生物現象への関心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,生物学的に探究する能力と態度を育てるとともに,生物学の基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な見方や考え方を養う。
2内容
(1) 生物と遺伝子
生物と遺伝子について観察,実験などを通して探究し,細胞の働き及びDNAの構造と機能の概要を理解させ,生物についての共通性と多様性の視点を身に付けさせる。
ア生物の特徴
(ア) 生物の共通性と多様性
生物は多様でありながら共通性をもっていることを理解すること。
(イ) 細胞とエネルギー
生命活動に必要なエネルギーと代謝について理解すること。
イ遺伝子とその働き
(ア) 遺伝情報とDNA
遺伝情報を担う物質としてのDNAの特徴について理解すること。
(イ) 遺伝情報の分配
DNAが複製され分配されることにより,遺伝情報が伝えられることを理解すること。
(ウ) 遺伝情報とタンパク質の合成
DNAの情報に基づいてタンパク質が合成されることを理解すること。
ウ生物と遺伝子に関する探究活動
生物と遺伝子に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
(2) 生物の体内環境の維持
生物の体内環境の維持について観察,実験などを通して探究し,生物には体内環境を維持する仕組みがあることを理解させ,体内環境の維持と健康との関係について認識させる。
ア生物の体内環境
(ア) 体内環境
体内環境が保たれていることを理解すること。
(イ) 体内環境の維持の仕組み
体内環境の維持に自律神経とホルモンがかかわっていることを理解すること。
(ウ) 免疫
免疫とそれにかかわる細胞の働きについて理解すること。
イ生物の体内環境の維持に関する探究活動
生物の体内環境の維持に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
(3) 生物の多様性と生態系
生物の多様性と生態系について観察,実験などを通して探究し,生態系の成り立ちを理解させ,その保全の重要性について認識させる。
ア植生の多様性と分布
(ア) 植生と遷移
陸上には様々な植生がみられ,植生は長期的に移り変わっていくことを理解すること。
(イ) 気候とバイオーム
気温と降水量の違いによって様々なバイオームが成立していることを理解すること。
イ生態系とその保全
(ア) 生態系と物質循環
生態系では,物質が循環するとともにエネルギーが移動することを理解すること。
(イ) 生態系のバランスと保全
生態系のバランスについて理解し,生態系の保全の重要性を認識すること。
ウ生物の多様性と生態系に関する探究活動
生物の多様性と生態系に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア中学校理科との関連を考慮しながら,生物学の基本的な概念の形成を図るとともに,生物学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,各項目の学習活動と関連させながら観察,実験を行い,報告書を作成させたり発表を行う機会を設けたりすること。また,その特質に応じて,問題を見いだすための観察,仮説の設定,実験の計画,実験による検証,調査,実験データの分析・解釈などの探究の方法を習得させること。その際,コンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用を図ること。
ウ内容の(1)のアの(ア)については,この科目の導入として位置付け,以後の学習においても,生物についての共通性と多様性の視点を意識させるよう展開すること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)については,生物が共通性を保ちながら進化し多様化してきたこと,その共通性は起源の共有に由来することを扱うこと。その際,原核生物と真核生物の観察を行うこと。(イ)については,呼吸と光合成の概要を扱うこと。その際,酵素の触媒作用やATPの役割,ミトコンドリアと葉緑体の起源にも触れること。
イの(ア)については,DNAの二重らせん構造と塩基の相補性を扱うこと。また,遺伝子とゲノムとの関係に触れること。(イ)については,細胞周期と関連付けて扱うこと。(ウ) については,転写と翻訳の概要を扱うこと。その際,タンパク質の生命現象における重要性にも触れること。また,すべての遺伝子が常に発現しているわけではないことにも触れること。
イ内容の(2)のアの(ア)については,体液の成分とその濃度調節を扱うこと。また,血液凝固にも触れること。(イ)については,血糖濃度の調節機構を取り上げること。その際,身近な疾患の例にも触れること。(ウ)については,身近な疾患の例にも触れること。
ウ内容の(3)のアの(ア)については,植生の成り立ちには光や土壌などが関係することを扱うこと。また,植物の環境形成作用にも触れること。(イ)については,気温と降水量に対する適応に関連付けて扱うこと。また,日本のバイオームも扱うこと。
イの(ア)の物質の「循環」については,窒素の循環も扱うこと。(イ)については,人間の活動によって生態系が攪(かく)乱され,生物の多様性が損なわれることがあることを扱うこと。
第7生物
1目標
生物や生物現象に対する探究心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,生物学的に探究する能力と態度を育てるとともに,生物学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的な自然観を育成する。
2内容
(1) 生命現象と物質
生命現象を支える物質の働きについて観察,実験などを通して探究し,タンパク質や核酸などの物質の働きを理解させ,生命現象を分子レベルでとらえさせる。
ア細胞と分子
(ア) 生体物質と細胞
細胞の内部構造とそれを構成する物質の特徴を理解すること。
(イ) 生命現象とタンパク質
様々なタンパク質が様々な生命現象を支えていることを理解すること。
イ代謝
(ア) 呼吸
呼吸によって有機物からエネルギーが取り出される仕組みを理解すること。
(イ) 光合成
光合成によって光エネルギーを用いて有機物がつくられる仕組みを理解すること。
(ウ) 窒素同化
窒素同化について理解すること。
ウ遺伝情報の発現
(ア) 遺伝情報とその発現
DNAの複製の仕組み,遺伝子の発現の仕組み及び遺伝情報の変化を理解すること。
(イ) 遺伝子の発現調節
遺伝子の発現が調節されていること及びその仕組みの概要を理解すること。
(ウ) バイオテクノロジー
遺伝子を扱った技術について,その原理と有用性を理解すること。
エ生命現象と物質に関する探究活動
生命現象と物質に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
(2) 生殖と発生
生物の生殖や発生について観察,実験などを通して探究し,動物と植物の配偶子形成から形態形成までの仕組みを理解させる。
ア 有性生殖
(ア) 減数分裂と受精
減数分裂による遺伝子の分配と受精により多様な遺伝的な組合せが生じることを理解すること。
(イ) 遺伝子と染色体
遺伝子の連鎖と組換えについて理解すること。
イ 動物の発生
(ア) 配偶子形成と受精
配偶子形成と受精の過程について理解すること。
(イ) 初期発生の過程
卵割から器官分化の始まりまでの過程について理解すること。
(ウ) 細胞の分化と形態形成
細胞の分化と形態形成の仕組みを理解すること。
ウ植物の発生
(ア) 配偶子形成と受精,胚(はい)発生
配偶子形成と受精及び胚(はい)発生の過程について理解すること。
(イ) 植物の器官の分化
被子植物の器官の分化の過程について理解すること。
エ生殖と発生に関する探究活動
生殖と発生に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
(3) 生物の環境応答
環境の変化に生物が反応していることについて観察,実験などを通して探究し,生物個体が外界の変化を感知し,それに反応する仕組みを理解させる。
ア 動物の反応と行動
(ア) 刺激の受容と反応
外界の刺激を受容し,神経系を介して,反応する仕組みを理解すること。
(イ) 動物の行動
刺激に対する反応としての動物個体の行動について理解すること。
イ 植物の環境応答
(ア) 植物の環境応答
植物が環境変化に反応する仕組みを理解すること。
ウ生物の環境応答に関する探究活動
生物の環境応答に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
(4) 生態と環境
生物の個体群と群集及び生態系について観察,実験などを通して探究し,それらの構造や変化の仕組みを理解させ,生態系のバランスや生物多様性の重要性について認識させる。
ア個体群と生物群集
(ア) 個体群
個体群とその変動について理解すること。
(イ) 生物群集
生物群集の成り立ちについて理解すること。
イ生態系
(ア) 生態系の物質生産
生態系における物質生産とエネルギー効率について理解すること。
(イ) 生態系と生物多様性
生態系における生物多様性に影響を与える要因を理解し,生物多様性の重要性を認識すること。
ウ生態と環境に関する探究活動
生態と環境に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
(5) 生物の進化と系統
生物の進化の過程とその仕組み及び生物の系統について,観察,実験などを通して探究し,生物界の多様性と系統を理解させ,進化についての考え方を身に付けさせる。
ア生物の進化の仕組み
(ア) 生命の起源と生物の変遷
生命の起源と生物進化の道筋について理解すること。
(イ) 進化の仕組み
生物進化がどのようにして起こるのかを理解すること。
イ生物の系統
(ア) 生物の系統
生物はその系統に基づいて分類できることを理解すること。
ウ生物の進化と系統に関する探究活動
生物の進化と系統に関する探究活動を行い,学習内容の理解を深めるとともに,生物学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア「生物基礎」との関連を考慮しながら,生物学の基本的な概念の形成を図るとともに,生物学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,「生物基礎」の3の(1)のイと同様に取り扱うこと。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)については,生命現象を分子レベルでとらえるために必要な最小限の化学の知識にも触れること。
イ内容の(1)のアの(ア)については,生体膜を扱い,細胞骨格にも触れること。(イ)については,物質輸送,情報伝達などにかかわるタンパク質を扱うこと。また,酵素については,その働きとタンパク質の立体構造との関係を扱うこと。
イの(ア)については,解糖系,クエン酸回路及び電子伝達系を扱うこと。発酵にも触れること。(イ)については,光化学系,電子伝達系及びカルビン・べンソン回路を扱うこと。また,光合成細菌と化学合成細菌にも触れること。(ウ)については,有機物にアミノ基が導入されてアミノ酸がつくられることにも触れること。
ウの(ア)の「遺伝子の発現の仕組み」については,転写,スプライシング及び翻訳を扱うこと。「遺伝情報の変化」については,同一種内でのゲノムの多様性にも触れること。(イ) については,転写レベルの調節を扱うこと。(ウ)については,制限酵素,ベクター及び遺伝子の増幅技術に触れること。
ウ内容の(2)のアの(ア)については,性染色体の存在にも触れること。(イ)については,組換えによって遺伝子の新しい組合せが生じることを扱うこと。
イの(イ)については,胚(はい)の前後軸の決定に卵の細胞質における不均一性が関与していることを扱うこと。(ウ)については,形成体と誘導現象を扱うこと。また,細胞分化や形態形成にかかわる代表的な遺伝子の働きにも触れること。
ウの(ア)については,被子植物を中心に扱うこと。(イ)については,花の形態形成における遺伝子の働きを扱うこと。
エ内容の(3)のアの(ア)については,受容器として眼(め)と耳を中心に,効果器として筋肉を中心に取り上げ,刺激の受容から反応までの流れを扱うこと。(イ)については,神経系の働きに関連付けられる動物の行動を扱うこと。
イの(ア)については,植物ホルモンと光受容体を扱うこと。
オ内容の(4)のアの(ア)については,個体群内の相互作用として種内競争と社会性,個体群間の相互作用として捕食と被食,種間競争及び相利共生を扱うこと。(イ)については,多様な種が共存する仕組みを扱うこと。
イの(ア)の「物質生産」については,年間生産量を取り上げ,生産者の現存量と関連付けて扱うこと。(イ)については,遺伝的多様性,種多様性及び生態系多様性を扱うこと。また,個体群の絶滅を加速する要因も扱うこと。
カ内容の(5)のアの(ア)については,生物の変遷を地球環境の変化に関連付けて扱うこと。
(イ)については,種分化の過程も扱うこと。
イの(ア)については,ドメインや界・門などの高次の分類群を中心に扱うこと。
第8地学基礎
1目標
日常生活や社会との関連を図りながら地球や地球を取り巻く環境への関心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,地学的に探究する能力と態度を育てるとともに,地学の基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な見方や考え方を養う。
2内容
(1) 宇宙における地球
宇宙の誕生と地球の形成について観察,実験などを通して探究し,宇宙と惑星としての地球の特徴を理解させる。
ア宇宙の構成
(ア) 宇宙のすがた
宇宙の誕生と銀河の分布について理解すること。
(イ) 太陽と恒星
太陽の表面の現象と太陽のエネルギー源及び恒星としての太陽の進化を理解すること。
イ惑星としての地球
(ア) 太陽系の中の地球
太陽系の誕生と生命を生み出す条件を備えた地球の特徴を理解すること。
(イ) 地球の形と大きさ
地球の形の特徴と大きさについて理解すること。
(ウ) 地球内部の層構造
地球内部の層構造とその状態を理解すること。
ウ宇宙における地球に関する探究活動
宇宙における地球に関する探究活動を行い,その学習内容の理解を深めるとともに,地学的に探究する能力を高めること。
(2) 変動する地球
変動する地球について観察,実験などを通して探究し,地球がプレートの運動や太陽の放射エネルギーによって変動してきたことを理解させる。また,地球の環境と人間生活とのかかわりについて考察させる。
ア活動する地球
(ア) プレートの運動
プレートの分布と運動及びプレート運動に伴う大地形の形成について理解すること。
(イ) 火山活動と地震
火山活動と地震の発生の仕組みについて理解すること。
イ移り変わる地球
(ア) 地層の形成と地質構造
地層が形成される仕組みと地質構造について理解すること。
(イ) 古生物の変遷と地球環境
古生物の変遷と地球環境の変化について理解すること。
ウ大気と海洋
(ア) 地球の熱収支
大気の構造と地球全体の熱収支について理解すること。
(イ) 大気と海水の運動
大気の大循環と海水の運動及びそれらによる地球規模の熱の輸送について理解すること。
エ地球の環境
(ア) 地球環境の科学
地球環境の変化を科学的に考察すること。
(イ) 日本の自然環境
日本の自然環境を理解し,その恩恵や災害など自然環境と人間生活とのかかわりについて考察すること。
オ変動する地球に関する探究活動
変動する地球に関する探究活動を行い,その学習内容の理解を深めるとともに,地学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア中学校理科との関連を考慮しながら,地学の基本的な概念の形成を図るとともに,地学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,各項目の学習活動と関連させながら観察,実験などを行い,報告書を作成させたり発表を行う機会を設けたりすること。また,その特質に応じて,情報の収集,仮説の設定,実験の計画,野外観察,調査,データの分析・解釈,推論などの探究の方法を習得させるようにすること。その際,コンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用を図ること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)の「宇宙の誕生」については,ビッグバンを扱い,水素やヘリウムがつくられたことにも触れること。「銀河の分布」については,大規模構造にも触れること。(イ)の「太陽の表面の現象」については,スペクトルも扱うこと。また,恒星の進化の過程で元素が生成されることにも触れること。
イの(ア)の「太陽系の誕生」については,惑星が形成された過程を中心に扱い,惑星内部の層構造にも触れること。「地球の特徴」については,海が形成されたことを中心に扱うこと。(イ)については,測定の歴史や方法にも触れること。(ウ)については,構成物質にも触れること。
イ内容(2)のアの(ア)については,マントル内のプルームの存在にも触れること。(イ)の「火山活動」については,プレートの発散境界や収束境界における火山活動を扱い,ホットスポットにおける火山活動にも触れること。また,火成岩の観察を行うこと。「地震の発生の仕組み」については,プレートの収束境界における地震を中心に扱うこと。
イの(ア)については,地層や岩石の観察,実験などを行い,褶(しゅう)曲,断層,不整合なども扱うこと。また,変成岩と変成作用の関係にも触れること。(イ)の「古生物の変遷」については,化石の観察を行い,地質時代が生物の変遷に基づいて区分されることを中心に扱うこと。また,ヒトの進化にも触れること。「地球環境の変化」については,大気の変化と生命活動との相互のかかわりを中心に扱うこと。
ウの(ア)の「大気の構造」については,気圧や気温の鉛直方向の変化を扱い,大気中で見られる現象にも触れること。「地球全体の熱収支」については,太陽放射の受熱量と地球放射の放熱量がつり合っていることを扱い,温室効果にも触れること。(イ)については,緯度により太陽放射の受熱量が異なることから,大気の大循環や海水の運動が生じ,熱が輸送されていることを扱うこと。また,海洋の層構造と深層に及ぶ循環にも触れること。
エの(ア)については,地球温暖化,オゾン層破壊,エルニーニョ現象などの現象をデータに基づいて人間生活と関連させて扱うこと。(イ)の「恩恵や災害」については,日本に見られる季節の気象現象,地震や火山活動など特徴的な現象を扱うこと。また,自然災害の予測や防災にも触れること。
第9地学
1目標
地学的な事物・現象に対する探究心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,地学的に探究する能力と態度を育てるとともに,地学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め,科学的な自然観を育成する。
2内容
(1) 地球の概観
地球の形状や内部構造を観察,実験などを通して探究し,地球の概観を理解させる。
ア 地球の形状
(ア) 地球の形と重力
地球の形状と重力とのかかわりを理解すること。
(イ) 地球の磁気
地磁気の特徴とその働きを理解すること。
イ地球の内部
(ア) 地球の内部構造
地震波の伝わり方に基づいて地球内部の構造を理解すること。
(イ) 地球内部の状態と物質
地球内部の温度,密度,圧力及び構成物質の組成について理解すること。
ウ地球の概観に関する探究活動
地球の概観に関する探究活動を行い,その学習内容の理解を深めるとともに,地学的に探究する能力を高めること。
(2) 地球の活動と歴史
地球に見られる様々な事物・現象を観察,実験などを通して探究し,地球の活動と歴史を理解させる。
ア 地球の活動
(ア) プレートテクトニクス
プレートテクトニクスとその成立過程を理解すること。
(イ) 地震と地殻変動
プレート境界における地震活動の特徴とそれに伴う地殻変動などについて理解すること。
(ウ) 火成活動
マグマの発生と分化及び火成岩の形成について理解すること。
(エ) 変成作用と変成岩
変成作用や変成岩の特徴及び造山帯について理解すること。
イ地球の歴史
(ア) 地表の変化
風化,侵食,運搬及び堆(たい)積の諸作用による地形の形成について理解すること。
(イ) 地層の観察
地層に関する野外観察や実験などを通して,地質時代における地球環境や地殻変動について理解すること。
(ウ) 地球環境の変遷
大気,海洋,大陸及び古生物などの変遷を基に地球環境の移り変わりを総合的に理解すること。
(エ) 日本列島の成り立ち
島弧としての日本列島の地学的な特徴と形成史を理解すること。
ウ地球の活動と歴史に関する探究活動
地球の活動と歴史に関する探究活動を行い,その学習内容の理解を深めるとともに,地学的に探究する能力を高めること。
(3) 地球の大気と海洋
地球の大気と海洋の事物・現象を観察,実験などを通して探究し,大気と海洋の構造や運動を理解させる。
ア大気の構造と運動
(ア) 大気の構造
大気の組成と構造を理解すること。
(イ) 大気の運動と気象
大循環と対流による現象及び日本や世界の気象の特徴を理解すること。
イ海洋と海水の運動
(ア) 海洋の構造
海水の組成と海洋の構造を理解すること。
(イ) 海水の運動
海水の運動や循環及び海洋と大気の相互作用について理解すること。
ウ地球の大気と海洋に関する探究活動
地球の大気と海洋に関する探究活動を行い,その学習内容の理解を深めるとともに,地
学的に探究する能力を高めること。
(4) 宇宙の構造
宇宙に関する事物・現象を観察,実験などを通して探究し,宇宙の構造について理解させる。
ア太陽系
(ア) 地球の自転と公転
地球の自転と公転の証拠となる現象を理解すること。
(イ) 太陽系天体とその運動
太陽系天体の特徴と惑星の運動を理解すること。
(ウ) 太陽の活動
太陽の活動と内部構造を理解すること。
イ恒星と銀河系
(ア) 恒星の性質と進化
恒星の性質と進化について理解すること。
(イ) 銀河系の構造
銀河系の構成天体とその分布について理解すること。
ウ銀河と宇宙
(ア) 様々な銀河
様々な銀河の存在や銀河の後退運動を理解すること。
(イ) 膨張する宇宙
現代の宇宙像の概要を理解すること。
エ宇宙の構造に関する探究活動
宇宙の構造に関する探究活動を行い,その学習内容の理解を深めるとともに,地学的に探究する能力を高めること。
3内容の取扱い
(1) 内容の構成及びその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア「地学基礎」との関係を考慮しながら,地学の基本的な概念の形成を図るとともに,地学的に探究する方法の習得を通して,科学的な思考力,判断力及び表現力を育成すること。
イ「探究活動」においては,「地学基礎」の3の(1)のイと同様に取り扱うこと。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)のアの(ア)については,地球楕(だ)円体や地球表面における重力を扱い,ジオイドや重力異常にも触れること。(イ)については,地磁気の三要素及び磁気圏と太陽風との関連を扱うこと。また,地磁気の原因と古地磁気にも触れること。
イの(ア)については,走時曲線を扱い,地震波トモグラフィーにも触れること。(イ)については,アイソスタシーも扱うこと。また,放射性同位元素の崩壊など地球内部の熱源にも触れること。
イ内容の(2)のアの(ア)については,マントル内のプルームも扱うこと。(イ)については,世界の地震帯の特徴をプレート運動と関連付けて扱うこと。また,日本列島付近におけるプレート間地震やプレート内地震の特徴も扱うこと。地殻変動については,活断層と地形との関係にも触れること。(ウ)については,多様な火成岩の成因をマグマの分化と関連付けて扱うこと。また,島弧−海溝系における火成活動の特徴をプレート運動と関連付けて触れること。(エ)については,造山帯の特徴を安定地塊と対比させて扱うこと。
イの(ア)については,段丘や海底堆(たい)積物も扱うこと。(イ)については,地層や化石に基づいて過去の様子を探究する方法を扱うこと。また,地質図の読み方の概要を扱うこと。(ウ) については,放射年代も扱うこと。(エ)については,日本列島の形成史を地形や地質の特徴に基づいてプレート運動と関連付けて扱うこと。また,付加体も扱うこと。
ウ内容の(3)のアの(ア)の大気の「組成」については,大気中の水分も扱うこと。大気の「構造」については,各圏の特徴と大気における熱収支を扱うこと。(イ)の「大循環」による現象については,偏西風波動と地上の高気圧・低気圧との関係も扱うこと。「対流」による現象については,大気の安定・不安定にも触れること。「日本や世界の気象の特徴」については,人工衛星などから得られる情報も活用し,大気の大循環と関連させて扱うこと。また,気象災害にも触れること。
内容のイの(ア)の「海洋の構造」については,水温と塩分の分布との関係を中心に扱うこと。(イ)の「海水の運動や循環」については,波浪や潮汐(せき)も扱うこと。「海洋と大気の相互作用」については,地球上の水の分布と循環にも触れること。
エ内容の(4)のアの(ア)の「自転」については,フーコーの振り子を扱うこと。「公転」については,年周視差と年周光行差を扱うこと。また,時刻と太陽暦にも触れること。(イ) の「太陽系天体の特徴」については,観測や探査機による研究成果を踏まえて特徴を扱うこと。「惑星の運動」については,視運動及びケプラーの法則とその発見過程を扱うこと。(ウ)については,活動周期や地球への影響も扱うこと。
イの(ア)の恒星の「性質」については,距離,絶対等級,半径,表面温度,スペクトル型及び質量を扱うこと。恒星の「進化」については,HR図を扱い,質量により恒星の進化の速さ,恒星の終末及び生成元素が異なることも扱うこと。(イ)の「銀河系の構成天体とその分布」については,恒星の進化と関連付けて扱うこと。また,銀河系の回転運動にも触れること。
ウの(ア)については,銀河までの距離の求め方や銀河が形により分類できることも扱うこと。「銀河の後退運動」については,ハッブルの法則も扱うこと。(イ)については,ビッグバンの証拠や宇宙の年齢も扱うこと。
第10 理科課題研究
1目標
科学に関する課題を設定し,観察,実験などを通して研究を行い,科学的に探究する能力と態度を育てるとともに,創造性の基礎を培う。
2内容
(1) 特定の自然の事物・現象に関する研究
(2) 先端科学や学際的領域に関する研究
(3) 自然環境の調査に基づく研究
(4) 科学を発展させた実験に関する研究
3内容の取扱い
(1) 内容の構成とその取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア生徒の興味・関心,進路希望等に応じて,内容の(1)から(4)までの中から,個人又はグループで適切な課題を設定させること。なお,課題は内容の(1)から(4)までの2項目以上にまたがる課題を設定することができること。
イ指導に効果的な場合には,大学や研究機関,博物館などと積極的に連携,協力を図ること。
ウ研究の成果について,報告書を作成させ,発表を行う機会を設けること。
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする。
ア内容の(1)については,高等学校理科の内容と関連させて扱うこと。
イ内容の(4)については,科学の歴史における著名な実験などを行い,原理・法則の確立の経緯とも関連付けて扱うこと。
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
1指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」の各科目については,原則として,それぞれに対応する基礎を付した科目を履修した後に履修させること。
(2) 「理科課題研究」については,一つ以上の基礎を付した科目を履修した後に履修させること。
また,課題の特性や学校の実態に応じて,授業を特定の期間に実施するなど,指導を効果的に行うこと。
(3) 各科目の指導に当たっては,大学や研究機関,博物館などと積極的に連携,協力を図るようにすること。
(4) 各科目を履修させるに当たっては,当該科目や他の科目の内容及び数学科や家庭科等の内容を踏まえ,相互の関連を図るとともに,学習の内容の系統性に留意すること。
2内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 各科目の指導に当たっては,観察,実験などの結果を分析し解釈して自らの考えを導き出し,それらを表現するなどの学習活動を充実すること。
(2) 生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度の育成を図ること。また,環境問題や科学技術の進歩と人間生活にかかわる内容等については,持続可能な社会をつくることの重要性も踏まえながら,科学的な見地から取り扱うこと。
(3) 観察,実験,野外観察,調査などの指導に当たっては,関連する法規等に従い,事故防止について十分留意するとともに,使用薬品などの管理及び廃棄についても適切な措置を講ずること。
(4) 各科目の指導に当たっては,観察,実験の過程での情報の収集・検索,計測・制御,結果の集計・処理などにおいて,コンピュータや情報通信ネットワークなどを積極的かつ適切に活用すること。