第1章 総  則

第1節 教育目標

 高等部における教育については,学校教育法第71条に定める目的を実現するために,生徒の障害の状態及び特性等を十分考慮して,次に掲げる目標の達成に努めなければならない。

第2節 教育課程の編成

第1款 一般方針

1 各学校においては,法令及びこの章以下に示すところに従い,生徒の人間として調和のとれた育成を目指し,その障害の状態,発達段階及び特性等,地域や学校の実態並びに学科の特色を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。
 学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,生徒に生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で,自ら学び自ら考える力の育成を図るとともに,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。

2 学校における道徳教育は,生徒が自己探求と自己実現に努め,国家・社会の一員としての自覚に基づき行為し得る発達段階にあることを考慮し,人間としての在り方生き方に関する教育を学校の教育活動全体を通じて行うことにより,その充実を図るものとし,盲学校,聾(ろう)学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校においては,各教科に属する科目,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間において,また,知的障害者を教育する養護学校においては,道徳の時間をはじめとして,各教科,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間において,それぞれの特質に応じて適切な指導を行わなければならない。
 道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,豊かな心をもち,個性豊かな文化の創造と民主的な社会及び国家の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献し未来を拓(ひら)く主体性のある日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。
 道徳教育を進めるに当たっては,特に,道徳的実践力を高めるとともに,自律の精神や社会連帯の精神及び義務を果たし責任を重んずる態度や人権を尊重し差別のないよりよい社会を実現しようとする態度を養うための指導が適切に行われるよう配慮しなければならない。

3 学校における体育・健康に関する指導は,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に,体力の向上及び心身の健康の保持増進に関する指導については,「体育」及び「保健」(知的障害者を教育する養護学校においては「保健体育」)の時間はもとより,特別活動,自立活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めることとする。また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との連携を図りながら,日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない。

4 学校における自立活動の指導は,障害に基づく種々の困難を改善・克服し,自立し社会参加する資質を養うため,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に,自立活動の時間における指導は,各教科に属する科目,特別活動及び総合的な学習の時間(知的障害者を教育する養護学校においては,各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間)と密接な関連を保ち,個々の生徒の障害の状態や発達段階等を的確に把握して,適切な指導計画の下に行うよう配慮しなければならない。

5 学校においては,生徒の障害の状態,地域や学校の実態等に応じて,就業やボランティアにかかわる体験的な学習の指導を適切に行うようにし,勤労の尊さや創造することの喜びを体得させ,望ましい勤労観,職業観の育成や社会奉仕の精神の涵(かん)養に資するものとする。

第2款 盲学校,聾(ろう)学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校における各教科・科目等の履修等

第1 各教科・科目及び単位数等

1 卒業までに履修させる単位数等

 各学校においては,卒業までに履修させる下記2から5までに示す各教科に属する科目及びその単位数,特別活動及びそれらの授業時数,自立活動の授業時数並びに卒業までに行う総合的な学習の時間の授業時数及び単位数に関する事項を定めるものとする。この場合,各教科に属する科目(以下「各教科・科目」という。)及び総合的な学習の時間の単位数の計は,この款の第2に掲げる各教科・科目の単位数及び総合的な学習の時間の単位数を含めて74単位(自立活動の授業については,授業時数を単位数に換算して,この単位数に含めることができる。)以上とする。
 単位については,1単位時間を50分とし,35単位時間の授業を1単位として計算することを標準とする。

2 普通教育に関する各教科・科目及び標準単位数

 各学校においては,教育課程の編成に当たって,生徒に履修させる普通教育に関する各教科・科目及びその単位数について,次の表に掲げる各教科・科目及び標準単位数を踏まえ適切に定めるものとする。ただし,生徒の実態等を考慮し,特に必要がある場合には,標準単位数の標準の限度を超えて単位数を増加して配当することができる。
 
教  科
科  目
標準単

位数

教  科
科  目
標準単

位数

国  語
国 語 表 現 Ⅰ

国 語 表 現 Ⅱ

国 語 総 合

現  代  文

古     典

古 典 講 読

理  科
理 科 基 礎

理科総合A

理科総合B

物  理  Ⅰ

物  理  Ⅱ

化  学  Ⅰ

化  学  Ⅱ

生  物  Ⅰ

生  物  Ⅱ

地  学  Ⅰ

地  学  Ⅱ

地理歴史
世 界 史 A

世 界 史 B

日 本 史 A

日 本 史 B

地  理  A

地  理  B

保健体育
体     育

保     健

7〜8

 

公  民

現 代 社 会

倫     理

政 治・経 済

芸  術
音  楽  Ⅰ

音  楽  Ⅱ

音  楽  Ⅲ

美  術  Ⅰ

美  術  Ⅱ

美  術  Ⅲ

工  芸  Ⅰ

工  芸  Ⅱ

工  芸  Ⅲ

書  道  Ⅰ

書  道  Ⅱ

書  道  Ⅲ

数  学
数 学 基 礎

数  学  Ⅰ

数  学  Ⅱ

数  学  Ⅲ

数  学  A

数  学  B

数  学  C

外国語
オーラル・コミュ
ニケーションⅠ

オーラル・コミュ
ニケーションⅡ

英  語  Ⅰ

英  語  Ⅱ

リーディング

ライティング


 


 

家  庭
家 庭 基 礎

家 庭 総 合

生 活 技 術

情  報
情  報  A

情  報  B

情  報  C

3 専門教育に関する各教科・科目

 各学校においては,教育課程の編成に当たって,生徒に履修させる専門教育に関する各教科・科目及びその単位数について,盲学校にあっては次の表の(1)及び(2),聾(ろう)学校にあっては次の表の(1)及び(3),肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校にあっては次の表の(1)に掲げる各教科・科目及び設置者の定める標準単位数を踏まえ適切に定めるものとする。

4 学校設定科目

 学校においては,地域,学校及び生徒の実態,学科の特色等に応じ,特色ある教育課程の編成に資するよう,上記2及び3の表に掲げる教科について,これらに属する科目以外の科目(以下「学校設定科目」という。)を設けることができる。この場合において,学校設定科目の名称,目標,内容,単位数等については,その科目の属する教科の目標に基づき,各学校の定めるところによるものとする。

5 学校設定教科

 

第2 各教科・科目の履修

1 必履修教科・科目

 すべての生徒に履修させる各教科・科目(以下「必履修教科・科目」という。)は次のとおりとし,その単位数は,この款の第1の2に標準単位数として示された単位数を下らないものとする。ただし,生徒の実態及び専門教育を主とする学科の特色等を考慮し,特に必要がある場合には,標準単位数が2単位である必履修教科・科目を除き,その単位数の一部を減じることができる。

2 専門教育を主とする学科における各教科・科目の履修

 専門教育を主とする学科における各教科・科目の履修については,上記1のほか次のとおりとする。

 

第3 総合的な学習の時間

1 総合的な学習の時間においては,各学校は,地域や学校,生徒の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。

2 総合的な学習の時間においては,次のようなねらいをもって指導を行うものとする。

3 各学校においては,上記2に示すねらいを踏まえ,地域や学校の特色,生徒の特性等に応じ,例えば,次のような学習活動などを行うものとする。 4 各学校における総合的な学習の時間の名称については,各学校において適切に定めるものとする。

5 総合的な学習の時間の学習活動を行うに当たっては,次の事項に配慮するものとする。

6 職業教育を主とする学科においては,総合的な学習の時間における学習活動により,農業,工業,商業,水産,家庭,情報,調律,保健理療,印刷,理容・美容若しくはクリーニングの各教科に属する「課題研究」,「看護臨床実習」又は「社会福祉演習」(以下この項において「課題研究等」という。)の履修と同様の成果が期待できる場合においては,総合的な学習の時間における学習活動をもって課題研究等の履修の一部又は全部に替えることができる。また,課題研究等の履修により,総合的な学習の時間における学習活動と同様の成果が期待できる場合においては,課題研究等の履修をもって総合的な学習の時間における学習活動の一部又は全部に替えることができる。

 

第4 各教科・科目,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間の授業時数等

1 各教科・科目,ホームルーム活動及び自立活動の授業は,年間35週行うことを標準とし,必要がある場合には,各教科・科目及び自立活動の授業を特定の学期又は期間に行うことができる。

2 週当たりの授業時数は,30単位時間を標準とする。

3 ホームルーム活動の授業時数については,原則として,年間35単位時間以上とするものとする。

4 生徒会活動及び学校行事については,学校や生徒の実態に応じて,それぞれ適切な授業時数を充てるものとする。

5 卒業までに総合的な学習の時間に充てる授業時数については,各学校において,学校や生徒の実態に応じて,適切に定めるものとする。

6 各学年における自立活動の時間に充てる授業時数は,生徒の障害の状態に応じて,適切に定めるものとする。

7 各教科・科目,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間(以下「各教科・科目等」という。)のそれぞれの授業の1単位時間は,各学校において,各教科・科目等の授業時数を確保しつつ,生徒の実態及び各教科・科目等の特質を考慮して適切に定めるものとする。

8 障害のため通学して教育を受けることが困難な生徒に対して,教員を派遣して教育を行う場合について,特に必要があるときは,実情に応じた授業時数を適切に定めるものとする。

 

第3款 知的障害者を教育する養護学校における各教科等の履修等

第1 各教科等の履修

1 普通教育に関する各教科等

2 専門教育に関する各教科 3 学校設定教科  

第2 総合的な学習の時間

 総合的な学習の時間の取扱いについては,第2款第3(6は除く。)に示すところによるものとする。

 

第3 各教科,道徳,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間の授業時数等

1 各教科,道徳,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間(以下「各教科等」という。ただし,1,2及び8において,特別活動についてはホームルーム活動に限る。)の総授業時数は,各学年とも1,050単位時間(1単位時間は,50分として計算するものとする。3において同じ。)を標準とする。この場合,各教科,道徳,特別活動及び自立活動の目標及び内容並びに総合的な学習の時間のねらいを考慮し,それぞれの年間の授業時数を適切に定めるものとする。

2 各教科等の授業は,年間35週以上にわたって行うものとする。この場合,生徒の知的発達の遅滞の状態を十分考慮し,週当たりの授業時数が負担過重とならないようにするものとする。また,必要がある場合には,各教科,道徳,自立活動及び総合的な学習の時間の授業を特定の学期又は期間に行うことができる。

3 専門教育を主とする学科においては,専門教育に関する各教科について,すべての生徒に履修させる授業時数は,875単位時間を下らないものとする。

4 ホームルーム活動の授業時数については,原則として,年間35単位時間以上とするものとする。

5 生徒会活動及び学校行事については,学校や生徒の実態に応じて,それぞれ適切な授業時数を充てるものとする。

6 総合的な学習の時間に充てる授業時数については,各学校において,学校や生徒の実態に応じて,適切に定めるものとする。

7 各学年における自立活動の時間に充てる授業時数は,生徒の障害の状態に応じて,適切に定めるものとする。

8 各教科等のそれぞれの授業の1単位時間は,各学校において,生徒の実態及び各教科等の特質を考慮して適切に定めるものとする。

9 障害のため通学して教育を受けることが困難な生徒に対して,教員を派遣して教育を行う場合について,特に必要があるときは,実情に応じた授業時数を適切に定めるものとする。

 

第4款 教育課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項

1 選択履修の趣旨を生かした適切な教育課程編成

 教育課程の編成に当たっては,生徒の障害の状態,特性及び進路等に応じた適切な各教科・科目(知的障害者を教育する養護学校においては各教科。この款及び第6款において同じ。)の履修ができるようにし,このため,多様な各教科・科目を設け生徒が自由に選択履修することのできるよう配慮するものとする。また,教育課程の類型を設け,そのいずれかの類型を選択して履修させる場合においても,その類型において履修させることになっている各教科・科目以外の各教科・科目を履修させたり,生徒が自由に選択履修することのできる各教科・科目を設けたりするものとする。

2 各教科・科目等の内容等の取扱い

3 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項

 各学校においては,次の事項に配慮しながら,学校の創意工夫を生かし,全体として,調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。

4 職業教育に関して配慮すべき事項 5 教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項

 以上のほか,次の事項について配慮するものとする。

 

第5款 単位の修得及び卒業の認定

第1 盲学校,聾(ろう)学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校

1 各教科・科目及び総合的な学習の時間における学習活動の単位の修得の認定

2 卒業までに修得させる単位数

 学校においては,卒業までに修得させる単位数を定め,校長は,当該単位数を修得した者で,特別活動及び自立活動の成果がそれらの目標からみて満足できると認められるものについて,高等部の全課程の修了を認定するものとする。この場合,卒業までに修得させる単位数は,74単位(自立活動の授業については,授業時数を単位数に換算して,この単位数に含めることができる。)以上とする。なお,普通科においては,学校設定科目及び学校設定教科に関する科目に係る修得単位数は,合わせて20単位までを卒業までに修得させる単位数に含めることができる。

3 各学年の課程の修了の認定

 学校においては,各学年の課程の修了の認定については,単位制が併用されていることを踏まえ,弾力的に行うよう配慮するものとする。

 

第2 知的障害者を教育する養護学校

 学校においては,卒業までに履修させる各教科,道徳,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間のそれぞれの授業時数を定めるものとする。

 校長は,各教科,道徳,特別活動,自立活動及び総合的な学習の時間を履修した者で,その成果がそれらの目標(総合的な学習の時間についてはねらい)からみて満足できると認められるものについて,高等部の全課程の修了を認定するものとする。

 

第6款 重複障害者等に関する特例

1 障害の状態により学習が困難な生徒について特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。

2 重複障害者を教育する場合には,次に示すところによるものとする。 3 障害のため通学して教育を受けることが困難な生徒に対して,教員を派遣して教育を行う場合については,次に示すところによるものとする。 4 療養中の生徒及び障害のため通学して教育を受けることが困難な生徒について,各教科・科目の一部を通信により教育を行う場合の1単位当たりの添削指導及び面接指導の回数等(知的障害者を教育する養護学校においては,通信により教育を行うこととなった各教科の一部の授業時数に相当する添削指導及び面接指導の回数等)については,生徒の実態に応じて適切に定めるものとする。

 

第7款 専 攻 科

1 盲学校又は聾(ろう)学校の専攻科における教科及び科目のうち標準的なものは,次の表に掲げるとおりである。盲学校又は聾(ろう)学校においては,必要がある場合には同表に掲げる教科について,これらに属する科目以外の科目を設けることができる。

2 盲学校又は聾(ろう)学校においては,必要がある場合には上記1の表に掲げる教科及び科目以外の教科及び科目を設けることができる。