第2章 ねらい及び内容
この章に示すねらいは幼稚園修了までに育つことが期待される生きる力の基礎となる心情,意欲,態度などであり,内容はねらいを達成するために指導する事項である。これらを幼児の発達の側面から,心身の健康に関する領域「健康」,人とのかかわりに関する領域「人間関係」,身近な環境とのかかわりに関する領域「環境」,言葉の獲得に関する領域「言葉」及び感性と表現に関する領域「表現」としてまとめ,示したものである。
各領域に示すねらいは幼稚園における生活の全体を通じ,幼児が様々な体験を積み重ねる中で相互に関連をもちながら次第に達成に向かうものであること,内容は幼児が環境にかかわって展開する具体的な活動を通して総合的に指導されるものであることに留意しなければならない。
なお,特に必要な場合には,各領域に示すねらいの趣旨に基づいて適切な,具体的な内容を工夫し,それを加えても差し支えないが,その場合には,それが幼稚園教育の基本を逸脱しないよう慎重に配慮する必要がある。
健 康 |
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〔 |
健康な心と体を育て,自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。 |
〕 |
1 ねらい
(2) 自分の体を十分に動かし,進んで運動しようとする。
(3) 健康,安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける。
2 内 容
(2) いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。
(3) 進んで戸外で遊ぶ。
(4) 様々な活動に親しみ,楽しんで取り組む。
(5) 健康な生活のリズムを身に付ける。
(6) 身の回りを清潔にし,衣服の着脱,食事,排泄(せつ)など生活に必要な活動を自分でする。
(7) 幼稚園における生活の仕方を知り,自分たちで生活の場を整える。
(8) 自分の健康に関心をもち,病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
(9) 危険な場所,危険な遊び方,災害時などの行動の仕方が分かり,安全に気を付けて行動する。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。
(2) 様々な遊びの中で,幼児が興味や関心,能力に応じて全身を使って活動することにより,体を動かす楽しさを味わい,安全についての構えを身に付け,自分の体を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。
(3) 自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶことにより,体の諸機能の発達が促されることに留意し,幼児の興味や関心が戸外にも向くようにすること。その際,幼児の動線に配慮した園庭や遊具の配置などを工夫すること。
(4) 基本的な生活習慣の形成に当たっては,幼児の自立心を育て,幼児が他の幼児とかかわりながら主体的な活動を展開する中で,生活に必要な習慣を身に付けるようにすること。
人間関係 |
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〔 |
他の人々と親しみ,支え合って生活するために,自立心を育て,人とかかわる力を養う。 |
〕 |
1 ねらい
(2) 進んで身近な人とかかわり,愛情や信頼感をもつ。
(3) 社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
2 内 容
(2) 自分で考え,自分で行動する。
(3) 自分でできることは自分でする。
(4) 友達と積極的にかかわりながら喜びや悲しみを共感し合う。
(5) 自分の思ったことを相手に伝え,相手の思っていることに気付く。
(6) 友達のよさに気付き,一緒に活動する楽しさを味わう。
(7) 友達と一緒に物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。
(8) よいことや悪いことがあることに気付き,考えながら行動する。
(9) 友達とのかかわりを深め,思いやりをもつ。
(10) 友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き,守ろうとする。
(11) 共同の遊具や用具を大切にし,みんなで使う。
(12) 高齢者をはじめ地域の人々など自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。
(2) 幼児の主体的な活動は,他の幼児とのかかわりの中で深まり,豊かになるものであり,幼児はその中で互いに必要な存在であることを認識するようになることを踏まえ,一人一人を生かした集団を形成しながら人とかかわる力を育てていくようにすること。
(3) 道徳性の芽生えを培うに当たっては,基本的な生活習慣の形成を図るとともに,幼児が他の幼児とのかかわりの中で他人の存在に気付き,相手を尊重する気持ちをもって行動できるようにし,また,自然や身近な動植物に親しむことなどを通して豊かな心情が育つようにすること。特に,人に対する信頼感や思いやりの気持ちは,葛藤(かっとう)やつまずきをも体験し,それらを乗り越えることにより次第に芽生えてくることに配慮すること。
(4) 幼児の生活と関係の深い人々と触れ合い,自分の感情や意志を表現しながら共に楽しみ,共感し合う体験を通して,高齢者をはじめ地域の人々などに親しみをもち,人とかかわることの楽しさや人の役に立つ喜びを味わうことができるようにすること。また,生活を通して親の愛情に気付き,親を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。
環 境 |
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〔 |
周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかかわり,それらを生活に取り入れていこうとする力を養う。 |
〕 |
1 ねらい
(2) 身近な環境に自分からかかわり,発見を楽しんだり,考えたりし,それを生活に取り入れようとする。
(3) 身近な事象を見たり,考えたり,扱ったりする中で,物の性質や数量,文字などに対する感覚を豊かにする。
2 内 容
(2) 生活の中で,様々な物に触れ,その性質や仕組みに興味や関心をもつ。
(3) 季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。
(4) 自然などの身近な事象に関心をもち,取り入れて遊ぶ。
(5) 身近な動植物に親しみをもって接し,生命の尊さに気付き,いたわったり,大切にしたりする。
(6) 身近な物を大切にする。
(7) 身近な物や遊具に興味をもってかかわり,考えたり,試したりして工夫して遊ぶ。
(8) 日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ。
(9) 日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ。
(10) 生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心をもつ。
(11) 幼稚園内外の行事において国旗に親しむ。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。
(2) 幼児期において自然のもつ意味は大きく,自然の大きさ,美しさ,不思議さなどに直接触れる体験を通して,幼児の心が安らぎ,豊かな感情,好奇心,思考力,表現力の基礎が培われることを踏まえ,幼児が自然とのかかわりを深めることができるよう工夫すること。
(3) 身近な事象や動植物に対する感動を伝え合い,共感し合うことなどを通して自分からかかわろうとする意欲を育てるとともに,様々なかかわり方を通してそれらに対する親しみや畏(い)敬の念,生命を大切にする気持ち,公共心,探究心などが養われるようにすること。
(4) 数量や文字などに関しては,日常生活の中で幼児自身の必要感に基づく体験を大切にし,数量や文字などに関する興味や関心,感覚が養われるようにすること。
言 葉 |
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〔 |
経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し,相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て,言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。 |
〕 |
1 ねらい
(2) 人の言葉や話などをよく聞き,自分の経験したことや考えたことを話し,伝え合う喜びを味わう。
(3) 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに,絵本や物語などに親しみ,先生や友達と心を通わせる。
2 内 容
(2) したこと,見たこと,聞いたこと,感じたことなどを自分なりに言葉で表現する。
(3) したいこと,してほしいことを言葉で表現したり,分からないことを尋ねたりする。
(4) 人の話を注意して聞き,相手に分かるように話す。
(5) 生活の中で必要な言葉が分かり,使う。
(6) 親しみをもって日常のあいさつをする。
(7) 生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。
(8) いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
(9) 絵本や物語などに親しみ,興味をもって聞き,想像をする楽しさを味わう。
(10) 日常生活の中で,文字などで伝える楽しさを味わう。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。
(2) 絵本や物語などで,その内容と自分の経験とを結び付けたり,想像を巡らせたりする楽しみを十分に味わうことによって,次第に豊かなイメージをもち,言葉に対する感覚が養われるようにすること。
(3) 幼児が日常生活の中で,文字などを使いながら思ったことや考えたことを伝える喜びや楽しさを味わい,文字に対する興味や関心をもつようにすること。
表 現 |
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〔 |
感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して,豊かな感性や表現する力を養い,創造性を豊かにする。 |
〕 |
1 ねらい
(2) 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
(3) 生活の中でイメージを豊かにし,様々な表現を楽しむ。
2 内 容
(2) 生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ,イメージを豊かにする。
(3) 様々な出来事の中で,感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
(4) 感じたこと,考えたことなどを音や動きなどで表現したり,自由にかいたり,つくったりする。
(5) いろいろな素材に親しみ,工夫して遊ぶ。
(6) 音楽に親しみ,歌を歌ったり,簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう。
(7) かいたり,つくったりすることを楽しみ,遊びに使ったり,飾ったりする。
(8) 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり,演じて遊んだりする楽しさを味わう。
3 内容の取扱い
上記の取扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。
(2) 幼児の自己表現は素朴な形で行われることが多いので,教師はそのような表現を受容し,幼児自身の表現しようとする意欲を受け止めて,幼児が生活の中で幼児らしい様々な表現を楽しむことができるようにすること。
(3) 生活経験や発達に応じ,自ら様々な表現を楽しみ,表現する意欲を十分に発揮させることができるような遊具や用具などを整え,自己表現を楽しめるように工夫すること。